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2012年2月27日 月曜日

映画評

春休み映画劇場 その6
The Day the Earth Stood Still (2008)
directed by Scott Derrickson
『地球が静止する日

これもいいのはポスターだけか。

 今回はもっぱら好きな役者名だけで選んでDVDを借りてきたのも、たとえ映画がどんなにカスでも、最低限好きな役者だけ見ているぶんには楽しめるからだ。というわけで、トリはもしかしてやっぱり今でもいちばん好きなキアヌー・リーヴス主演、『地球が静止する日』。オリジナルは古典SF映画だが私は見てないので、その埋め合わせのつもりもあった。
 今言ったようにこれは1951年の同名作(邦題のみ、オリジナルは『地球静止する日』で、一文字違う)のリメイク。なんでまたそんな古いもの引っ張り出してきたんだろうね。「地球を救え!」というテーマがむしろ現代的と思ったのかもしれないが、そういう環境論自体がもうめっちゃくちゃ古くさく感じるのに。
 というわけで、この映画の敗因は一言でいえる。古すぎる! いくらCG使って飾り立てたところで、根っこが古いのはもうどうしようもなく、今の人の感覚にはまるっきり合わない。
 おまけにSFでしょう? SFこそ時代を最も色濃く反映するものなので、そのぶん古びるのも早いのだ。たとえば、親子のドラマとか恋愛ものなら、それはある意味不変なので、原作が16世紀でもそんなに違和感ない。でもSFは無理だ。原作のSFなんて1940年の作品だよ。1940年に想像する2012年なんて、空いっぱいに宇宙船が飛びかってる感じだったのに!
 同じSFでもH・G・ウェルズぐらいの大物の作品なら、現代でも通用するだろうが、こんな聞いたこともないマイナー作家の短編(ハリー・ベイツの“Farewell to the Master ”)じゃねえ。51年の映画は監督のロバート・ワイズの力で、まだなんとかなったんだろうけど。
 私は名作と呼ばれるものはこの当時のSFもけっこう持ってるんだけど、今読むと作品の良否以前に、感覚とか肌合いが違いすぎて調子が狂う。あのナイーブさと、のんびりまったりしていながら、妙にぎごちなくてぶっきらぼうな感じが。この映画を見ていても、感じがちょうどあれにそっくりだと思った。その意味では原作に忠実な映画化。実際、ストーリーはほとんどオリジナルの映画通りらしい。
 ここまで古い映画をリメイクするなら、もっと根本的なところからひっくり返さなくちゃ。空飛ぶ円盤を光の球に変えたり、ヒロインの息子を、黒人の継子に変えたぐらいじゃね。
 しかもSFとか宇宙人に対してまだナイーブだった昔の人にくらべ、現代人はある意味、SF映画に慣れすぎ、SFずれしている。(ただし私に言わせればあんなのは本物のSFじゃない。本物のSFが映画化されたことは、『2001年』とタルコフスキーぐらいしかない) そういう現代人の目から見れば、「なんだこれ?」となるのは当然。でもこれはよく言われるような駄作じゃない。それなりに良心的に作られているが、ただどうしようもなく古いだけだ。

 だから映画についてはあまり語ることはない。ストーリーは、キアヌーの顔した宇宙人がニューヨークに降り立って、「地球破壊するのやめないと人類皆殺しにする」と脅すんだけど、アホのアメリカ政府が耳を貸さずに攻撃するから、「こりゃだめだ」と言って人類滅ぼそうとするんだけど、ジェニファー・コネリーと息子の愛情を見て「やっぱりいい人たちだからやめた」というお話。なんだこれ?

 そこで映画は放り出してキアヌーの話をする。『T4』のリビューで、エディー・ファーロングとクリスチャン・ベイルが子役時代からどれほど変わったかというのを検証したが、そういえば、キアヌーは年を取らない吸血鬼として有名だった。そこでほんとかしら?とこれも検証してみました。

年を取らない宇宙人 キアヌー・リーヴス
1986年(22才) 1991年(27才) 1997年(33才)
作品名を忘れたけど、さすがにこの頃は初々しい、っていうか年のわりに幼い。 実生活でも親友だったリヴァー・フェニックスと共演した『マイ・オウン・プライベート・アイダホ』。もうこの頃になると、今と寸分違わない。ちなみに私はこの映画のキアヌーがいちばんきれいだったと思うので好き。 『ディアボロス』 顔だけじゃなく服装まで同じ。
2003年(39才) 2008年(44才) 2012年(48才)
『マトリックス・レボリューションズ』 本作『地球が静止する日』 なんでいつもダークスーツなんだ! 流し目もいっしょだし。
ていうか、この格好じゃ宇宙人じゃなくて、メニン・ブラックのほうだろう!という突っ込みは予期しなかったのか?
 
Generation um...” 撮影中の一コマ。現在のキアヌー。前髪たらしてヒゲ生やしてスーツ脱いだだけ。この人はオフではいつもこの格好。

 うーむ。確かに不老不死だわ。〈不老なだけでたぶん死ぬと思う〉 ただ、その半面、「それほど驚くことでもないんでない?」とも思う。つまり、年を取らないのにびっくりするのは、あくまで白人基準で考えてるからで、これが日本人なら、これぐらい年を取らない人は男でも女でもそんなにめずらしくはないから。
 現に私だって、さすがに50過ぎて太ったらメタメタになったが、50才ぐらいまではしわひとつなかったし、体型も30代の頃とそんなに変わらなかったし。大柄なせいでつねに年より老けて見られた私ですらそうだからね。
 しかもこの人は半分中国人なので、その血のせいだと考えれば何も不思議はない。でもどう考えてもずるいよな。端正なルックスと彫りの深さはお母さん譲りで、年取らないところだけお父さん譲りってのは。ちなみにお父さんという人は1枚だけ写真見たけど、ものすごいデブでゴブリンみたいな顔つきの下品なオヤジだった。ユーレイジャン(欧亜混血児)にはときたま、両親のいいところだけを取ったチート性能の子が生まれるが、そのいい例。(ただし逆の可能性も高いので、あまり期待しないように)
 上の写真でもわかるように、さすがにこの映画ではアップになると、口元とか首回りにほんのちょっとくたびれが見えるのだが、それはかえって味わいにしかならず、むしろあの陶器のお人形みたいなつるんとした感じがなくなって人間らしくて良い、というあたり、ほんと美形は得だわ。卑怯すぎる。

 で、芝居についてなんだが、この人は昔から、すごい演技派なのか、それともただのデクノボーの大根役者なのか、決めかねて迷っている。彼もハリウッドスターとしては、(こないだの『スキャナー・ダークリー』みたいな)かなり冒険的な作品やマイナーな作品にもよく出ていて、ああいうのはデクにはできるはずがないから、演技も上手なんだろう、とは思うのだが、その一方、この作品みたいに、棒を呑んだような直立不動で、無表情セリフ棒読みの演技が多すぎるので、???と思うのだ。
 が、その半面、この宇宙人がまさにそうなんだが、ここはどうしてもこの演技でなくてはだめという役柄が多いのも事実。というか、そういう顔つきだからそういう役ばかりが回ってくるのか? というのは、「日頃はいつも浮浪者みたいな格好してるのに、スクリーンではなんでいつもダークスーツなのか? ワードローブ係は仕事してるのか?」というのと同様、キアヌー・リーヴスにつねにまとわりつく疑問のひとつだ。

 どうやら大友克洋の『アキラ』の実写版の計画がハリウッドで進んでいるようだが、キアヌーは金田役(実質主役)をオファーされて断ったらしい。まあ、原作では専門学校生だっけ? ティーンエイジャーを演じるというのはいくらなんでも‥‥。ん? そのニュースには46才って書いてあるぞ。どっかで計算間違えたかな? それにしても若いけどね。
 キアヌーの『アキラ』は個人的には見たかったけれど、どこかのアメリカのガキがやる『アキラ』なんぞ、死んでも見たくないや。あ、でも大佐役は渡辺謙で決まりみたい。えー、確かに似てる! と、やっぱり気になるが、やはり原作ファンとしてはボツになってほしい。

 あと、キャストについてもう少し。

ジェニファー・コネリーと息子役のジェイデン・スミス

 ヒロインのヘレンなんだが、知的で母性的で、ジェニファー・コネリーみたいだけど、すごい美人でいいなーと思って見ていた。そしたら本当にジェニファー・コネリーご本人でした。いや、昔は彼女のこと嫌いだったんですよ。主として日本ではロリ美少女として紹介されたせいで(笑)。それで、ロリはいいけど、あのゲジゲジ眉毛はないだろーって感じで、すごい嫌ってた。とにかく何もかも濃すぎ。私は男も女も、こういう髪も眉毛もまつげも黒々として、コテコテに濃いタイプは生理的に受け付けなくて。
 でも彼女も中年になったら、いつのまにかあのギトギトした脂っ気が抜けて、いい感じに枯れてきた。そうなれば、もともと美人なのは事実だし。キラン!(獲物を発見した目の輝き) もっとババアになったらもっと好みかも。
 ところで彼女、今はポール・ベタニーと結婚してるんだよね。というところで、前の章ともつながってくる。『ビューティフル・マインド』で共演した縁なんだそうだが、あれにベタニー出てたっけ? わりとクソ映画だったんでよく覚えてない。とりあえず、ベタニー兄貴、いい趣味してるじゃん。彼が何もかも薄いタイプなので、この対比がすごいけど。子供はどうなっちゃうのかしら?
 それで2人の間に生まれた息子の名前がステランなのだが、それはポールの親友ステラン・スカルスガルドからもらったという。えーっ! 私、『レギオン』のリビューを書くため、『キス★キス★バン★バン』を見直したばっかりなんだよ! 映画の中だけじゃなくて、私生活でも仲良しなのか! (このリビューも見直して、写真をいっぱい貼ったので、ぜひ読んで下さい)
 あ、そういえば、『インセプション』では『ダークスター』を絶賛してたけど、その『ダークスター』のヒロインもジェニファーだったわ。

 ヘレンの義理の息子ジェイコブ、(お父さんがヘレンと再婚したのだが、死んじゃって、今はヘレンに育てられている)役にはジェイデン・スミス。ウィル・スミスの息子ってことで、それなりに注目されているようだが、あの親にしてこの子ありという、うざいガキとしか。すでに述べてきたように子役フェチである私も、これにはまったく食指が動きませんね。
 ていうか、この映画のテーマのひとつが母子の愛なのに、このガキがウザくてウザくて、とっとと宇宙人に食わしちまえ!としか思わないので、よけい乗れなかったというお話。

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