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2012年2月23日 木曜日

映画評

子役の話

 実は『ターミネーター4』のリビューを書こうと思ったのだが、映画はわりとどうでもいいので、こっちから話を始めさせてもらう。私も長く映画を見ているが、映画初出演作(たぶん)を見ただけで、子役に一目惚れして(男のみ)、「この子は将来絶対大物になるから、目を離さないで見守って行こう」、と心に決めた少年俳優がこれまでに4人いる。
 順不同だが、ひとりは『エクスプローラーズ』のリバー・フェニックス。ルックス・スタイル・演技力ともに、並はずれたものを感じた。彼は着々と名声を集め、期待した通りの名優への道を歩き始めたのだが、残念なことに若くして命を落とした。生きていればもちろん今ごろはハリウッドのトップスターだったことは間違いない。
 ちなみにリバーはその前にテレビ出演はあるけど、映画は『エクスプローラーズ』がデビュー作。こんな映画知ってる人は少ないだろうが、監督のジョー・ダンテのファンだったので見た。主役はリバーじゃなく、こちらも後にスターとなったイーサン・ホークで、当時はイーサン・ホークのほうが圧倒的な美少年だったのだが、私はマンガで言う「ハカセ」タイプのメガネをかけたリバーに惚れてしまった。
 それからレオナルド・ディカプリオ。私は彼が知的障害者を演じた『ギルバート・グレイプ』で知ったのだが、さすがにあれはデビュー作じゃなかったか。しかし『クリッター3』がデビュー作ってのもけっこう恥ずかしいな。でも、デビューが91年でこれが93年だからかなり早い。
 顔は変な顔だったが、あの頃はあどけない金髪に情けない顔立ちがかわいかったし、何よりまだ子供なのに本物の○○にしか見えない迫真の演技にたまげてしまった。共演のジョニー・デップにはなんとも思わなかったのにね。
 もちろんディカプリオのその後の成功は言うまでもない。ただ私は、『バスケットボール・ダイアリーズ』とか、『太陽と月に背いて』みたいなインディーに出ていたころはたまらなく好きだったんだが、『ロミオとジュリエット』でちょっと引き(映画の出来はかなり良かったんだけどねえ)、『タイタニック』でもう私の関心からは消えてしまった。あれも映画はよくできていたし(そういや、あれもキャメロンだった)、演技派であることには変わりないんだけどねえ。なんか成長の仕方を間違えたというか、見るに耐えない変な顔のデブになっちゃったんで。(ひでーな)
 それで残る2人がこのクリスチャン・ベイルと、なんの因果か『T2』のジョン・コナー役だったエドワード・ファーロングなのである。そのエディの役を、大人になったクリスチャンがやるなんて、運命というのは不思議なものですな。ましてや成人してからの彼らの役者人生にこれほどまでに差が付いてしまうとは‥‥

 クリスチャン・ベイルはスピルバーグの『太陽の帝国』で、原作者J・G・バラードの分身であるジム少年役でデビューした。私は大のアンチ・スピルバーグで、バラードの狂信者なので、罵倒するつもりで見たのだが、原作のテーマと主張を完全にねじ曲げてしまったところを除けば、よくできた映画で、特にこれが映画初出演(彼もテレビムービーの主演歴はあり)だったクリスチャンの演技に目を見張った。
 だいたいにおいてスピルバーグは子供の演技指導がうまいけど、まだ声変わりもしてないキンキン声の子供のくせに、ジョン・マルコビッチと演技で対等に張り合うってのがまるっきり普通じゃない。メイキングも見たんだけど、なんかあの頃からプロ根性とか演技にかける異常な執念みたいなものを感じた。ぜんぜんかわいくはなかったんだけどね。いかにもイギリス人子役らしい、生意気でこまっしゃくれた子で。
 一方のエドワード・ファーロングはもちろん『ターミネーター2』がデビュー作。私が惚れ込んだのはもちろん、あまりにも私好みの美少年だったから。特に子供のくせに虚無的な雰囲気と危険な色気があるところにしびれた。

 で、私はこの2人の子役を彼らが成長してティーネイジャーを経て、大人の男になるまで、何十年も追い続けてきたんだけど、その変遷は写真で見てもらった方が早いだろう。いや、ほんと子供(特に西洋人の男の子)の成長って、どうなるかわからないね。子役の頃はイライジャ・ウッド(LOTRのフロド)より、ショーン・アスティン(同じくサム)のほうがずっとかわいかったりするんだから。
 ただ、彼らがまだ子供だった頃の私の予想としては、エディはあの通りのハンサムだし、大ヒット作で名を売ったから、このまま華やかな超大作の常連としてのハリウッドスターになるだろう。クリスチャンはイギリス人だし、残念ながら大人になってもハンサムにはならないだろうけど、重厚な演技派として、地味で良心的な芸術映画で活躍するだろう、というものだった。こんな予想がいかに当たらないかは、以下の写真を見てもらえればわかる。

エドワード・ファーロングとクリスチャン・ベイルに見る、子役スターの天国と地獄
少年期 思春期 青年期 現在
『T2』のエディー。天使だ。 写真は『アメリカン・ヒストリーX』。スキンヘッドもぜんぜん問題ない。っていうか美しすぎる。
アイドル路線を歩むのかと思ったら、なぜか硬派な社会的問題作路線へ。むずかしい役柄ばかりをこなした演技の評判も上々で、前途は洋々に思えたのだが‥‥
ところがほどなく酒とドラッグで身を持ち崩し、一気にどん底へ。精神病院とブタ箱を行ったり来たりの生活で、映画界からは完全に干される。これも芝居の一場面じゃないかと思えるほどの、絵に描いたようなジャンキー顔。 いちおう健康は取り戻したようだが、ブクブクに太った現在は、「あの人は今?」的なイベントにしかお呼びがかからない。
『太陽の帝国』のクリスチャン。イギリスのスクールボーイの制服がよく似合うが、ぜんぜんかわいくはない。 十代のクリスチャン。あまり作品にも恵まれず、雌伏の時が続く。生涯チビのままだったエディーとは対照的に、体は見る見る成長したが、ルックスはビミョー‥‥ が、大人になったら絵に描いたような英国紳士に。でも演技の鬼。こわい。 そして頂点へ。アカデミー賞授賞式でオスカーを手にするクリスチャン。

  はあー‥‥ほんと感無量ですわ。私はどっちも愛していただけに。しかし上に書いた未来予測が完全に逆になってしまうなんて、(あくまでエディーがあんなことにならず、普通に役者を続けていればの話だけど)、誰に予想できただろう。

 ここまで書いたから、いちおう私の見解を記すと、エディーの転落は完全に彼自身の落ち度で言い訳がきかない。子役スターの悲劇というのはよく語られるけど、まさかその例として引き合いに出されることになろうとは、夢にも思わなかった。(女優の例はリンダ・ブレアか?)
 いや、だって、彼って頭良さそうに見えたから、そんな見え透いた罠にははまらないだろうと思って。それに普通なら周囲の大人だって少しは気を遣ってやるはずだと思わない?
 『T2』以降の出演作も、『ペット・セメタリー2』は別として(でもエディーはきれいだった)、『アメリカン・ハート』、『リトル・オデッサ』、『判決前夜』、『グラスハープ』、『I love ペッカー』はジョン・ウォーターズ作品だからあれだけど、「きれいなジョン・ウォーターズ」になってからのまじめな作品だし、そしてあの『アメリカン・ヒストリーX』と、超シリアスで良心的な社会的問題作ばかりで、しかもそこでの演技がすばらしかったから、この子は顔だけじゃない、これは思ってた以上の逸物と、舞い上がってたんだよ。
 そしたら相次ぐスキャンダルで、文字通り自滅した。役者なんてイカレてるのが当たり前、多少のスキャンダルは芸の肥やしというハリウッドで干されたんだからよっぽど手に負えなかったんだと思う。
 でも今にしてみると、転落の兆しはあったのかも。彼の最初の奥さんって、学校に行く暇のないエディーに付けられた家庭教師の女性で、10何才年上の人だったんだよね。でも当時の私はそれを喜んでたのだ。それこそ関わり合ったら終わりという魑魅魍魎みたいな女がひしめくハリウッドでは、早い内に結婚した方が安全だし、姉さん女房なら彼を変な方へ行かないように守ってくれるんじゃないかと思って。(ったく、母親でもないのにそこまで心配してたんだから!) でも常識的に考えて、教え子の子供に手を出すような女がまともなわけないなー。結局、その奥さんとは別れて、関わり合ったら終わりという魑魅魍魎ナンバーワンみたいなパリス・ヒルトンなんかとつき合ってたし。
 そんなわけで、私も彼のことはなかったことにしたいのだが、それにしては転落までの芝居が素晴らしすぎたし、自慢の美貌は見る影もなく変わり果てたとはいえ、アップの写真でよくよく見れば、その下には、「まともならこうなっていたはず」の絶世の美青年が隠れているのを見るに付け、どうにもやりきれずあきらめきれない悔しさに歯噛みをしている。

 一方のクリスチャンは、ちょうどエディーとは反対に、『太陽の帝国』以後の出演作に恵まれず、これまた私はずーっとくやしい思いをしていた。映画に出てないわけじゃなかったし、そんなひどい映画ばかりってわけでもなかったんだけど、なんか地味っていうかつまらないっていうか、どうでもいいような映画ばかりで、彼の役柄も別に誰がやってもいいようなものだった。このあたりはキャリア的にはエディーの方が完全リードしてたんだよなー。
 『ベルベット・ゴールドマイン』や『アメリカン・サイコ』は、私に関わりのある重要な作品だから見たけど、あまりにもアレな映画だったし、その中のクリスチャンも魅力的というのとはほど遠かったし。この時点でもう彼のことはほとんどあきらめていた。確かにそんなにハンサムでもないし、イギリス人だし、ハリウッドで成功するのはむずかしいだろうなーと思って、イギリス帰って舞台でもやってればいいのにと思った。(「ハンサムでない」というのは実は私の好みの問題で、実はこの手の顔はアメリカ人視点では超ハンサムと見られる)
 むしろ頭をがーんと殴られたように、改めて彼の持つ底知れない力を思い知らされたのは『マシニスト』だ。もちろんあの激痩せのことを言ってるんだが、「たかが映画のためにここまでするか!」というところで、昔のクリスチャンにかけた期待を思い出した。でも皮肉なことに、あれ見て以来、私はすっかり引いてしまい、昔ほど彼に関心持てなくなっちゃったんだけどね。だってあれはいくらなんでもやりすぎ! たかが映画のためにあんなことできる役者はこわい! しかも一度だけならともかく、今度は『バットマン』のために筋肉付けたり、やりすぎ感が異常なんだもん。しかしエディーはああいう劇的変化を実人生でやっちゃったわけで、どっちもどっちか(苦笑)。(参考までにクリスチャンの肉体改造ビフォー&アフター『マシニスト』の写真がこれです。かなりグロいので『マシニスト』見てない人は閲覧注意。ていうか、これが特撮じゃなくて生身の体って、この目で見ても信じられない!)
 でもその努力が認められたのか、その後、『バットマン』のおかげで、ハリウッドのスーパースターの仲間入り。これは私としてはちっとも偉いとは思わないし、うれしいとも思わないが、いちおう役者人生の「上がり」なわけだから祝福してあげよう。少なくとも、今のハリウッドスターの誰よりも、私はクリスチャンの方が好きだし、ジョニー・デップだの、ブラッド・ピットだの、トム・クルーズだのを見なくてすむだけでもありがたい。(だって、クリスチャンがいなければ、このジョン・コナーもそういった連中の誰かが演じていたはずだからね)

 はー、しかしエディーがまともでありさえすれば、この役は間違いなく彼にまわってきただろうに。そうすれば、たとえ冷や飯食っていたとしても、一線に返り咲くことも夢ではなかったのに。どれだけ多くのものを捨てちまったんだ、このバカは。まさかこんなに長の年月がたってから未来編が作られるとは思わなかったもんなー。『T2』公開当時は、「いつか将来、エディーが大人になってから、続編が作られるといいなあ」なんて夢を見ていたものだが。本当に未来はわからない。

 しかし我が身を振り返ってみれば、子供の頃の夢を叶えるためにおまえは何をしたか? この長の年月に身も心もどれだけ変わったかと言われれば、返す言葉もない。やっぱりクリスチャンは偉いわ。っていうか、夢を叶える人ってあそこまでしなきゃならないもんなら私にはとうてい無理だわ。
 おっとっと、なぜか変な内省モードに入ってしまった。ヤブヘビだからここらでやめて映画の話に行こう。

春休み映画劇場 その4
Terminator Salvation (2009) directed by McG
『ターミネーター4

 実はこの映画、ヨーロッパへ行く飛行機の中で見たんだけど、あまりに眠すぎて意識朦朧となってたので、何ひとつ覚えていない(笑)。しょうがないからまた借りて見るはめに。そんな眠けりゃ眠ればいいと思われるだろうが、私はどーしても飛行機じゃ寝られない(椅子が窮屈なせいで)ので、眠いつらさを映画でまぎらすつもりだったんだけど。

 もう何も紹介は必要ない人気シリーズのパート4だけど、このシリーズ、私はキャメロンが撮った『T1』と『T2』は(突っ込みどころも多いが)高く評価する。だけど、どっかの馬の骨が撮った2003年の『T3』があまりにひどかったので、これはもう記憶から消し去った。マジで。自分の才能に恐ろしくなるのだが、ちゃんと見たのに、ラストの溶けるところ以外何ひとつ覚えていない。
 だからもう『T4』が作られても、キャメロンが監督するんでないかぎり見る気がしなかった。しかし、この26年間、いつか作られるはずと信じて待っていた「未来編」で、(上の事情を読んで頂ければおわかりのように)、クリスチャン・ベイル主演とあっては見ないわけにはいかなかった。クリスチャンがジョン・コナーを演じる‥‥と思っただけでいろいろと感無量。というわけで、冒頭のあの話になったのだが。

 映画は現代から始まる。死刑囚のマーカス・ライト(Sam Worthington)はサイバーダイン社の科学者セリーナ(Helena Bonham Carter)に懇願され、献体に同意する。それで彼は処刑されるのだが、2018年に再び目覚める。自分が何者で、なんでここにいるのかもわからないまま、彼は機械と人間が戦う戦場をさまよい歩く。
 これには最初からかなりとまどった。冒頭からほとんどサム・ワージントンの視点で描かれ、明らかに彼が主役なんで、何を思ったか、私はてっきり彼がカイル・リースなんだと思って混乱した。そりゃ名前は違うけどさ、死んだマーカスが蘇ったのがカイルだったのかと‥‥。だって、ジョンはクリスチャンが演じることはわかってるから、その相方はカイルしか考えられないじゃないさ。
 それで、なんでもうちょっと(T1でカイルを演じた)マイケル・ビーンに似た役者にしなかったのかと、ずっとブツブツ文句を言っていた(笑)。そりゃジョンが似ても似つかないのはしょうがないにしても、カイルは年がほとんど変わらないんだから、せめて明るい髪に青い目じゃないとおかしいじゃないさ、とか言って。

カイル(右)とその道連れ
なんか未来って言うより『オリバー・ツイスト』の一場面みたい(笑)

 そしたらカイル・リース(Anton Yelchin)はあとから出てきて、あららら? じゃあ、マーカスって誰よ?
 実はそれが本作の最大のキモなんだが、だいたい想像つくと思うのでバラしちゃうと、彼はマーカスの死体を元に作られたアンドロイドなのだ。しかも彼はジョンをスカイネット(人類を滅ぼそうとしている悪いコンピューター)の本拠地に誘い込むようにプログラムされていた。しかし、彼はまた人間としての自我と記憶も失っていなかったのだ。
 ううう‥‥これだけでもSF的には突っ込みどころ満載。突っ込みたい、がそれをやっているとまたとんでもなく長くなるし、そんなに書くほどの価値のある傑作でもないのでやめた。
 とりあえず一安心したことには、カイルはけっこうマイケル・ビーンに似てた。明るい色の髪と目もそうだが、特に、チンピラっぽいところが(笑)。
 ここでのカイルはまだティーンエイジャーで、浮浪児をしている。ジョンとしては、自分の「未来の父」であるカイルを保護することが最優先なのだが、カイルの正体を知っているらしいスカイネットは、彼を誘拐してしまう。たまたま町でカイルと知り合ったマーカスは、彼を助けに行こうとして、レジスタンスに捕まってしまうのだが‥‥

 あとの話はだいたいご想像通りなので省略。とりあえず愕然としたのは、この映画ではジョンとカイルの物語はサブプロットだということ。メインはあくまでマーカスの話なのだ。
 ええー! タイトルでもあるターミネーターを別とすれば、この2人こそはこのシリーズのかなめ、人類を救うという重い運命を背負った人たちで、ここで初めて父と子が出会うというのに、なのにそれを差し置いて、ロボット風情を主人公にするか? だいたい、シリーズのファンは1と2でこの2人にものすごい思い入れを持っているはずで、特にカイルなんて26年ぶりの再会になるわけだから、それだけで胸がいっぱいになってるのに、聞いたこともないマーカスなんて馬の骨が物語を引っさらって行ったら怒るぜ。というか、少なくとも私はかんかんに怒った。
 ていうか、そもそもかんじんのターミネーターですら、やけに弱っちくて、ただのやられ役でしかないし

 これでわかるのは、この映画の製作者はオリジナルの『ターミネーター』シリーズに、これっぽっちも愛情を抱いていないんだということ。まあ、T3の時点でもそれは感じたけどね。
 そこが同じ長寿SFシリーズでも『エイリアン』との違いね。『エイリアン』は作り手と演じるシガニー・ウィーバーが、この作品に並々ならぬ愛着と思い入れを抱いているから、あれだけタイプの違う映画を作っても、どれもがちゃんと『エイリアン』になっていた。
 このMcGというふざけた名前の監督は、ずっとテレビシリーズを撮ってきた人みたいだが、これってテレビドラマの手法だなと思った。シーズンごとに新しい登場人物を登場させるの。視聴率によっては途中で主役が変わったり、話の設定そのものが変わったりとか平気でやるからね、テレビの奴らは。
 まさにテレビ版『ターミネーター』の番外編でも見ているような気にさせられる。実はテレビ版『ターミネーター』も存在するのだが、もちろん私はそんなパチモンは見る気がしないし見ていない。アメリカじゃああいうのがよく作られるけど、原作映画に思い入れのある人なら見る気がするはずがないと思うんだけど。だって、見たこともないやつが、お気に入りのキャラクターの名前を名乗って、そいつのふりをしてるんだぜ! むかつくだけじゃん!

戦場のジョン・コナー

 不満はストーリーだけではない。この世界観そのものが『T1』を見て想像していた未来世界と違いすぎるので生理的に受け付けない。そもそも明るすぎる! 陽が差してるじゃん! 地球は永遠に雲に閉ざされたんじゃなかったの?!
 と書いてから、それは『マトリックス』の話だったと気が付いた(笑)。まぎらわしいんだよ! あれも人間が機械の奴隷にされる話だったし。実を言うと、やはりキャメロンが監督して、マイケル・ビーンが出ていた『エイリアン2』も、しょっちゅうごっちゃになってしまう。
 とりあえず、『T1』には未来世界も出てきたけど、未来の世界はもっともっと暗くて汚くて荒廃してて、レジスタンスはもっと追い詰められて、穴ぐらみたいなところに隠れ住んで困窮している雰囲気だったのに、なんかこの連中余裕だし、かなりの軍事力を有しているし、地表はただの野戦場で、内戦やってるような国では今でもどこでも見られるような景色。ちっ、つまんねーの。あの「暗い未来」が見られると思ったから未来編に期待したのに。

せっかくだから『T1』のカイルの写真も貼っておこう
ジョンのご両親
それでこちらがシェイプアップして戦士として生まれ変わったた『T2』のリンダ
(ゴクリ‥‥)

 そう思い始めたら、この映画、『ターミネーター』シリーズに私が見いだしていた魅力を完全に欠いていることに気が付いた。だいたい、私は『T1』を見る前から、(もちろんあいつが政治家になる前から)、アーノルド・シュワルツェネッガーが大嫌いで、どっちかというと見ただけで虫酸が走るタイプだった。だから、本当を言うと、ターミネーターそのものには、まったくなんの思い入れもないの。
 なのになんでこのシリーズが好きだったかというと、そもそも映画としてよくできていておもしろいというのが第一だが、それに加えてエロい下心を満足させてくれたから(笑)。
 『T1』はもちろんカイル・リース。マイケル・ビーンは上にも書いたようにチンピラ顔で、とてもじゃないが、クリスチャンみたいな名優とは比較にならない安っぽい役者だし、(実際、『A2』以降まったく名前も聞かないし)、早い話がたいしてハンサムでもないのだが、少なくともあの時点ではそれなりにセクシーだったし魅力的だったのよ。相手役のサラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトンはすごいブスだったが。
 なのにこの2人のラブストーリー部分が、普段ラブストーリーを毛嫌いしている私の心の琴線に触れちゃったのね。なんでかというと、ああいう絶望的な逃避行の合間の恋とか、戦場の恋というのは、私が見る性夢の典型だったから。私的には萌え要素満載の映画だったわけ。それでもリンダ・ハミルトンに感情移入して見るのは、かなりつらかったですけどね(笑)。ブス邪魔! どいて!という感じで。
 そして『T2』はもちろんエディー・ファーロングにリビドー全開。おまけに、これは自分でも意外だったのだが、何を思ったかシェイプアップして、筋肉女に変身してしまったリンダ・ハミルトンにクラクラとなってしまったので親子丼でイケた(笑)。
 いや、私はレズじゃないが、このリンダは『T1』のカイルより好きだ。この手のハリウッド映画にうじゃうじゃ出てくる、空気でふくらませたみたいな風船女(この映画の女たちがまさにそうだった)とくらべ、見よ、この鍛え抜かれた肉体! こうなるとかえってブスなのもオバサンなのも味があって、下手な美人より見ていて楽しい。〈シュワルツェネッガーの筋肉は嫌いだったのに?〉 だってあんなの気持ち悪いだけで美しくないじゃん!

 つい昔を思い出して興奮してしまったが、なのに、(T3もだったけど)この映画にはそういう楽しみがまったくないのよ。
 『アバター』のサム・ワージントンは元々顔が嫌いだし、クリスチャンは好きだけど、彼の顔も好みじゃないし、ストイックすぎてそもそもそういう気分にならないし。女たちはまさに風船女でマネキンみたいで、まるで魅力がないし。おっと、上のちびカイルと一緒に映ってる白髪の老女は私的にはかなりイケる口だけどね(笑)。おばあちゃんかっこよかった。
 役者の話のついでだから言わせてもらうけど、あの黒人の少女を出したのは、致命的な欠陥。だいたいこういう映画に、ストーリー上の必然性もなく、こまっしゃくれた黒人の幼女とか出すのって、人間をマスコット扱いにしているみたいですごい不快。私は『A2』に少女を出したことで、未だにキャメロンを許してないぐらいなのに。
 だいたいアクション映画に子供を出しちゃだめ。子供は死ぬはずがないから、大人がバンバン死んでいくのに子供だけ生き残るという不自然なプロットになるし、先が読めちゃってつまらないし、逆に殺しちゃったら後味が悪いだけだし。〈『T2』のジョンは「アクション映画に出てくる子供」じゃあないんですか?〉 だからストーリー上の必然があればいいんだって! この子なんてただのお飾りでしょ?

今回は影が薄いターミネーターさん
巨大ロボを出すなー!

 ついでにターミネーターにも八つ当たりする。今回出てくるターミネーターはサイバーダインT-600だか800だか、シュワルツェネッガーの皮剥いたスケルトンのやつ。なんか弱いし、影薄いし、かわいそうな存在だが、その分たくさん出てくる。それだけ。
 あと、シュワルツェネッガーもちらっとだけど登場。もちろん年老いた知事さん連れてくるわけにいかないからCGだけど。
 ロボットというのは男の子の夢らしいけど、水を差すようで申し訳ないが、私はまーったく興味持てないんだよね。機械は嫌いじゃないけど、何も人間の形してなくてもいいじゃないかと思って。でもべつにロボットが敵役でもかまわない。人型巨大ロボットさえ出て来なければ! なのにやっちまったよ、これは。
 それが右の写真なわけだが、これを見たとき、もう全身の血がすーっと冷めて、どうでもいい気分になりました。こんなの私の『ターミネーター』じゃない。
 機械軍が巨大ロボを作っちゃいけないとは言わない。でもそれは機械が作るものだからして、人間性をまったく欠いたメカメカしい怪物で、トゲトゲだらけで、足が100本ぐらいあって、人間をグチャグチャ踏みつぶしてミンチにするみたいなのなら許すけど、これはだめだ。人間型は。『トランスフォーマー』とかもあるし、日本のおたく文化が徐々に世界に浸透して行く‥‥。世も末だ。

 まあ、そういったもろもろも含めて、この映画は初期の『ターミネーター』が持ってたダークサイドを完全に欠いている。男の裸すら出て来ない(笑)。(『T1』は主としてシュワルツェネッガーの体を見せるためだと思うけど、やたらヌードシーンが多かった)
 あくまでお子ちゃま(と知恵遅れの大きなお友達)向けのファミリー・ムービーなんですわ。だからそういう層には受けがいいかもしれないが、私は無理。いやいや、私もけっこう子供映画喜んで見てるから、子供向けでも出来さえ良ければいいんだが、ちょっとこれはひどすぎる。キャメロン版も突っ込みどころ満載だったとはいえ、これほどひどくなかったし。なんでこんな聞いたこともない、頭の悪そうな監督にやらせたの? 確か予算だけは超大作なんだよね。気前がいいなー。それだけの金をドブに捨てるなんて。
 だいたい考えてみれば、ジェイムズ・キャメロンとなんたらいう馬の骨をくらべるだけ無理があった。キャメロンも出世作をこれだけボロボロにされて腹立たないのかね? とりあえずひとつだけ言えることは、たとえ『T5』が作られても私は見ないだろうということ。というわけで、今度もまた頭の消去スイッチを押すことにした。

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