英文の書き方――超初心者篇


最初に、これだけはちゃんとしておかないと笑われるという初歩的な心得について書きます。これを間違えたり無視すると、たとえ英文はちゃんとしていても(まずそういうことはありませんが)笑いものになるので、何があっても守って下さい。
  • タイトルはこういうふうに↑文章の上の中央に書く。タイトル中の内容語(動詞・名詞・形容詞・副詞)の語頭は大文字で書く。
  • 段落に分けて書く。(「パラグラフ・ライティング」については次のページを見て下さい)
  • 段落の頭には必ずインデントを付ける。(3〜5文字下げて書き始める)
  • 無意味な改行をしない。特に文の途中やピリオドごとに改行をしないこと! レポートはネット掲示板でもブログでもなく、ましてや日本語ではありません。
  • Capitalization(大文字の使用)に気を付ける。文頭と固有名詞は必ず大文字で始めるが、それ以外は強調などの特殊な場合を除き、大文字は使わない。
  • Punctuation(句読法)に気を付ける。文末のピリオドを忘れないカンマの前に無駄なスペースを入れないピリオドとカンマの後には必ずスペースを入れる適当なところにカンマを打たない
  • その他、おバカに見える文章を書くコツとしては、日本語フォントを使うやたら大きなフォントを使う、などがあります。書式は文字間は0に、行間はこのページの行間ぐらい開ける(これで200%です)のがいちばん読みやすく美しく見えます。
  • 引用には必ず出典を明記する。形式は問わないが、どこからどこまでが引用部分で、それはどこからの引用なのかをはっきりさせること。(出典が書かれていない引用は、「剽窃」と見なされ、カンニングと同等の大幅減点になるので注意! 特にネットからの引用は検索をかければ一発でばれる)
  • 短い引用は“ ”で囲み、長い引用は独立した段落にして前後を1行開けるか、インデントを付ける
  • 出典はカッコに入れて文章の中に組み込んでもいいし、(1)のように注番号を振って脚注にしてもいいし、最後のページにまとめてもいい。引用の種類や量によって、見やすい形にすること。
  • 書物からの引用の場合は、著者名、書名、出版社名、発行年、引用したページを書く。書名はイタリックで書く。
  • ネットからの引用の場合は該当記事のURL、筆者名、サイト名、書かれた年などを書く。URLは手打ちは間違いが多いので、必ずブラウザからコピー&ペーストすること。


英文の書き方――初心者篇

実際に日本人学生が書いた英文で減点されることが多い間違いを挙げてみました。どれも初歩的な間違いで、気を付ければ防げることばかりです。
  • 冠詞がない――英語の名詞はむしろ無冠詞が例外です。
× I'm 19 year old Japanese student.
○ I'm a 19 year old Japanese student.
  • スペリングのミス――スペルチェッカーかければすむことなのに。
  • 三単現のsがない
  • 時制の誤り。英語の時制なんて基本3つしかないのに、なんで間違えられるのか‥‥
  • 単複の誤り。というか、単複をまったく無視して書く人多数。同様に、時制や冠詞も完全無視多数。
  • 接続詞を使わない。もしくは、接続詞はすべてsoで済ませる。――あとはせいぜい、andとbut。たまには他の接続詞も使って下さい。それだけで文章がぐっとなめらかで大人っぽくなります。接続詞を一切使わないのは幼稚園児の作文の典型です。
  • 代名詞を使わない
  • 無意味な関係代名詞
× I like a girl who is tall.  関係代名詞は長い文をつなぐためのもの。こんな短い文で必要ない。
○ I like a tall girl.
  • 無意味な繰り返し(おそらくは語数稼ぎと思われる)。書いたあとで削ぎ落とせる余分はないか確認すること。
× In my high school days, a school festival of my high school was most impressive.
○ A school festival was the most impressive memory in my high school days.
  • 不必要なof
× He cut his class of English.   「イングランド人のクラス」って何?
○ He cut his English class.
  • その他、初歩的文法ミス多数。
  • 日本語の直訳 ← 直訳はすべて間違いと思っていい。労を惜しまず、簡単な表現でも辞書に当たること。
  • 和製英語の直訳。皆さんが書くことを求められているのはa reportではありません。にも関わらず、“In this report, I'd like to...”といった書き方をする人多数。和製英語、外来語が出てきたときは必ずそれでいいのか辞書にあたること。

先週の小テストで見つけた間違いの例


英文の書き方――中級者篇

最後に、良い英文を書くこつを書いておきます。

学術書であれ、小説であれ、大統領の演説であれ、ネイティブスピーカーの英語は(専門用語を除けば)、ほとんどが高校生レベルの語彙と文法で書かれていることはすでにお気づきだと思います。また読みやすく平易な言葉で書かれた文章ほど名文とされます。
にもかかわらず、学生が書いた英文はほとんど判じ物のように錯綜して、おそらく本人もこれまで見たこともないであろう語彙で埋め尽くされていることがしばしばあります。
良い英文の条件として、最初に挙げておきたいのは、なるべく易しい単語を使って、シンプルな構文で書けということです。パッと見て意味がわからないような文章は、ひどい悪文か、そもそも英語が間違っているかのどちらかです。


調べる労を惜しむな!

これが辞書持ち込み可の試験ならば、みんな必死で辞書を引くでしょう。なのに、レポートだと辞書を引く手間すら惜しむ人があまりに多いのは驚きです。
その代わりにどうするかというと、当てずっぽう、勝手な思い込み、生半可な記憶だけで書くのです。あなたが知ってると思いこんでいる簡単な単語ほど、使い方をわかっていないことが多いです。わかったつもりでも必ず裏を取りましょう。

あなたの辞書の引き方は間違っている

ところが、その辞書の引き方が根本から間違っている人が多いです。これは特に具体的に例を挙げて説明します。

話を単純化するために、「犠牲を払う」という表現の英訳がわからなかったとします。
このとき、たいていの学生はまず、「犠牲」を和英辞典で引き、「a sacrifice」を見つけます。次に「払う」を捜して、和英辞典の最初に出てきた「clear」を見つけます。私の辞書の場合、たまたまこれが最初に出てきました。
ならば「犠牲を払う」は「clear a sacrifice」でいいでしょうか? もちろん違います。「辞書を引いても最初の語義しか見ない」というのが英語のできない学生の特徴です。

もう少し賢い学生は、「clear」はなんかおかしいと気づき、もう少し下を見て、「pay」を見つけます。なんとなく意味的にこちらのほうが正しいような気がして、「pay a sacrifice」とします。これは正しいでしょうか? もちろん違います。

こういうのは単なる勘で選んでいるだけですから、これを繰り返して正解に至る確率はきわめて低いです。実際、私は学生から「辞書を引いても意味がたくさんありすぎて、どれが正しいのかわからない」という質問をよく受けます。それは辞書の引き方が間違っているからです。

単語を調べるのに辞書を使うのは高校生まで。大学生はフレーズで調べ、フレーズを覚えなさい。つまり「犠牲を払う」の英訳が知りたかったら、「犠牲を払う」を捜すのです。

動詞とその目的語の名詞には無数の組み合わせがありますが、実際に特定の意味で使われる組み合わせは習慣で決まっており、それ以外の何を使っても通じません。名詞とそれを修飾する形容詞、動詞と副詞などの組み合わせも同様です。
こういう組み合わせをcollocationと呼び、使える英語が書ける、話せるかどうかの決め手は、語彙の多さよりもどれだけcollocationを知っているかにかかっていると言ってもいいぐらいです。

そしてもちろんのこと、英語と日本語では、あるものを表すのに違う単語を用いるのと同様に、collocationも違います。 たとえば、日本語では帽子は「かぶる」、靴は「履く」、手袋は「はめる」、めがねは「かける」、化粧は「する」ものですが、英語ではすべて「wear」を使います。でたらめなcollocationで英文を書くのは、帽子を履いたり、靴をかぶったりするようなものです。

つまり、単語の意味だけ知っていても英語は書けないし話せないということです。「keep a promise」のようなcollocationは中高でも教わりますが、もちろんすべてを知っているはずはないので、辞書を引く必要があります。

いちばん手っ取り早いのは英和辞典で、sacrificeを引き、「犠牲を払う」が出てくる用例を捜すことです。しかし、そううまく例文があるとは限りません。そこで専門のcollocation辞典を使います。
日本で代表的なものには新編 英和活用大辞典(研究社)があります。高価な辞典ですが買えなくても図書館には必ずありますし、電子辞書にはこれを搭載している機種もあります。この辞典でsacrificeを調べれば、すぐに「make a sacrifice」という正解にたどり着けるはずです。
この辞典でなくても、用例が豊富な辞典を使うことがかんじんです。ある程度ボリュームのある和英辞典ならば、こういう用例は豊富に載っていますし、「make a sacrifice」ぐらいは必ず載っているはずです。それを調べられないのは単なる怠慢です。

ある程度基礎力のある人なら、Googleを使った裏技も使えます。記憶がうろ覚えで、「pay a sacrifice」と「make a sacrifice」と、どっちだったっけ?というときなど、Googleで検索をかければ(もちろんその前に英語版のGoogleに移動しておく必要があります)、一発でわかります。「pay a sacrifice」という形はひとつも出て来ないのに、「make a sacrifice」は無数にヒットするからです。

とにかく直訳禁止!

コロケーションに限らず、日本語の比喩表現や慣用表現は直訳してもまず意味がないこと、そして私たちがふだん使う言葉には驚くほど比喩や慣用表現が多いことも肝に銘じておいてください。
理想は日本語に頼らず、最初から英語で発想して英語で書くことですが(難しそうに聞こえますが、学術論文やビジネス文書などの定型文が多い文書では、ちょっと慣れれば自然にできるようになります)、それができないうちは、とにかく「英語ではなんと言うのか?」をつねに考え、調べながら書くしかありません。
どうしてもわからない時は
書いていくうちには、先のコロケーション辞典でも見つからないような表現が出てくるかもしれません。そういうときどうすればいいのか、対策はさまざまですが、いちばん合理的なのは別の言葉で表現し直すことです。「英語で何と言ったらいいのかわからない言葉の翻訳に悩む」ぐらいなら、「簡単に英語に直せるような別の表現を探す」ほうがはるかに手っ取り早いです。
たとえば、「一世を風靡した」という文の英訳がわからなかったら、「とても人気があった」と言い換えれば、辞書を引く必要すらありません。
逆に言うと、これぐらいの融通がきかない人、「でも自分の言いたいこととは微妙にニュアンスが違う」などとこだわる人は、あまり語学には向いてないし、なかなか上達しません。

結局、書くためにいちばん役立つのは読むこと

というのが私の印象です。辞書はあくまで補助的な道具。ネイティブ・スピーカーが書いた文章を読むことぐらい役立つ勉強はありません。
たとえば、安楽死問題をトピックに選んだら、そのトピックについて英語で書かれたものを、原発問題について書きたければ、原発問題を扱った本や記事を、サッカーについて書きたければサッカーの試合結果や評論を読むのです。
ここでのポイントは、引用のために読むのではないので、必ずしも筆者の意見にあなたが賛同する必要はないと言うことです。飛ばし読みでもかまわないし、最後まで読む必要もありません。
そもそも、そのトピックに関心があるから読むわけですから、聞き慣れない単語や表現もだいたい見当が付きますし、数10ページも読めば、そのジャンルで多用される用語や表現はだいたい頭に入ります。また、昔はそのために高価な洋書を買わなくてはならなかったのに、今はネット経由で無料でいくらでも手に入るのもポイントです。
これは言ってみればあなたがそのトピックを料理する上で必要な材料のようなもので、そういう材料を揃えてから、おもむろに自分の意見を書き始めればいいわけです。


その他の注意点


必要のない資料的な文章をなるべく避ける

百科事典を書けと言っているのではない。
同様に、本論に必要でない限り、些末な枝葉はなるべく刈り取る。
  • 例としては、ある人物について述べるのに、○年に何をして、○年に何をしたと、歴史年表のように列挙する。または、あるアーティストや作家について述べるのに、その代表作をいちいち取り上げて解説するなど。こういうのは読んで退屈だし、単なる語数稼ぎにしか見えない。
  • 教員はそのジャンルの専門家であること、そして採点するのは教員であることを覚えておいた方がいい。自分がよく知っているジャンルの些細な蘊蓄を読まされるのは苦痛だが、学生ならではの自由な発想や率直な感想は新鮮に読めるし、得点も高い。
 書き出しと「私は思います」

「私は○○について考えました」
「私は○○について書きたいと思います」

これはタイトルに記すべきこと。タイトルは一目で何の話かわかるためにある。(もちろん文学作品は別) こういう書き出しを使う人に限って、タイトルがあいまいだったり、そもそもタイトルがついてなかったりする。

また、上の直訳である

I'm going to write about...
I'd like to tell about...
I will explain...

などはいずれも、書き言葉ではきわめて不自然。(スピーチならばあり) よけいな前置きは抜きにして、いきなり本題に入ること。

この関連として、文中で

I think...

を多用するのも日本人の癖である。これは日本語の「断言を避ける」言い方、「私は〜と思います」の直訳だが、英語では文に余計な曖昧さを与え、自信のない感じがするので避けるべき。“I think...”はあくまで個人的な意見を述べるときだけにすべき。
× I think Japanese summer is very hot.
○ I think Japanese food is the best in the world.

英語は大切なことを最初に言う/日本語は大切なことを最後に言う

これはパラグラフ・ライティングについて述べたことに通じるが、順番が日本語と英語では逆なことに注意。

彼は料金は高いがいい弁護士だ
He is a good lawyer although his fee is high.

彼はいい弁護士だが料金が高い
His fee is high although he is a good lawyer.

もちろん、最初の文は
His fee is high but he is a good lawyer.
とも言えるが、これだと全体に意味が弱まり、「わりとどっちでもいい」感じがする。英語ではつねに大事なことを先に言うようにすること。


参考エッセイ
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