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2013年8月24日 土曜日

イベント

おさかなの夏 Part1

その1.魚の思い出

 この夏はどこへも行けない(度重なるヨーロッパ旅行による金欠で)ので、引きこもりの夏になるのはわかっていたが、大学が終わって8月になってから絶賛引きこもり中。理由は単に暑いから。
 なんというか若い頃から怠惰だった私は、年取ってから異常に我慢ができなくなっちゃって、というか、むしろ年取って知恵が付いたら、なんで必要もないのに我慢しなくちゃならないのか理解できなくなって、仕事ならしょうがないから行くが、遊ぶために炎天下で苦しい思いをしているディズニーランドの客とかコミケの客とかをテレビで眺めては、「どこにも行かないですむ贅沢」を味わっている。
 ただ、未だに膝のリハビリと縁の切れない私は、ある程度運動しないとほんとにヤバいことになるのはわかっているので、しょうがないからときどき出かけている。今年の夏のお出かけのテーマは「魚」! 魚と言っても食べる方じゃなく(食べるのも好きだけど)見るほうね。魚はいいよ。水の中だし、涼しげだし、泳ぐし!
 私は(霊長類と足が6本以上あるやつ以外)の動物は何でも好きだが、最近特に凝っているのが水中生物。霊長類が嫌いなのは同族嫌悪というところからわかるように、人間と異質な動物ほど好き。その点、水中生物なんてみんなすごい変わってるし、美しいし、怖いし、キモいし、すてき! (それなら虫でも同じはずだが、私にも絶対に譲れない一線というものはある

 もちろん魚も飼ってました。子供の頃は夜店の金魚とかメダカとか飼ってたし、大人になってからは、同棲していた彼氏がいきなり熱帯魚を飼いたいと言い出して、水槽一式を買ってきて、2人でワイワイ言いながら楽しんだ。もっとも、彼は熱しやすく冷めやすいタイプで、すぐに飽きてろくに世話をしなくなったが、私は何時間でも魚が泳いでいるところを見つめているだけでも楽しめた。
 いや、魚はかわいいよ。人間に慣れたりはしないし、触って遊んだりはできないけど、見てるとちゃんと小さいなりに個性があるし、ちゃんと意思や感情も持って生きてるし。
 私は今でも魚が好きなので、ときどきアクアリウム関係のサイトや掲示板を見たりしているのだが、それで初めて知ったのは、熱帯魚の飼育って、本来めちゃくちゃお金と手間がかかるものらしい。水替えばかりじゃなく水作りだけで何週間とか。私たちなんて、水は汚れたら替える感じで、薬とかもなんにも使わず、せいぜいくみ置きの水を使うぐらいだった。
 水槽の大きさに対して、魚が多すぎるのもいけないらしく、巨大な水槽にこれっぽっち?みたいなのが賞賛されているけど、私たちはたくさんいる方がうれしくて、いろんな種類の魚をいっぱい入れてたけどな。さすがにベタを2匹入れたらケンカしたのでベタだけは1匹ずつ分けたけど。この調子で、2人揃ってズボラだったので、なんでも適当にやってたけど、魚が死ぬことなんてめったになかったし、元気で繁殖までしてたけどな。病気になったときは赤チン塗って治したし、他の魚に食われることはあったけど、それは単なる生存競争として。
 もっとも猫スレとか見ていても、ネットは異常にうるさいことを言う神経質なやつばかりなので、魚も推して知るべしだが。もちろん動物のためには、ルール通りに細かく面倒をみたほうがいいには決まってるが、神経質すぎる人は本物の動物飼いにはなれないよ。ペットぐらいならいいけど、馬をやっていて、動物と付き合う上で大切なのは、些細な事に動じない図太い神経だと思った。

 ところでこの水槽には後日談がある。彼と別れて1年ぐらいたったあとで、用事があって彼の家に行ったのだが、水槽が大変なことになっていた。私がいたころは、それでもまだなんとか世話をしていたのだが、私が出て行ってからは、水槽は完全放置だったらしい。それじゃあ、水槽の中は今ごろ死臭の漂うヘドロになっているのではと、ビクビクしながら見に行ったのだが、なんと魚たちは全員元気で生きていた。
 素人が言うことなのでどこまで本当かわからないのだが、彼が言うには、もう水替えもせず、エサも一切与えていないにも関わらず、魚は水槽や岩に生えるコケを食べ、魚のフンはそれを食べる魚がいて、さらにそれらのフンを栄養に育った水草を食べる魚もいるので、完全に自給自足が成立しているのだという。
 えええ? それじゃこれって完全に外界から隔絶したバイオトープになってるってことじゃない。そんな永久機関みたいなもの、本当にあり得るの? (いちおう酸素を送り込むポンプは回ってるし、ライトは付いてるので、外からまったくエネルギーを得てないわけではないが)
 しかしエサをやってないというのは嘘じゃないだろうし、魚の数も私が最後に見たときからほとんど減ってない。だいいち魚たちはみんな元気いっぱいで丸々太ってるし。特にすごいのは金魚すくいで取ってきた金魚。最初は指先ぐらいの大きさだったのだが、環境が良すぎる熱帯魚水槽に入れてエサも栄養たっぷりなせいか、みるみる大きくなってきていたんだが、そいつが20cmほどに成長していたのにはびっくりした。さすがに60cm水槽では狭そうというか、もう金魚には見えない。小さな熱帯魚の中にいると鯨みたいに見えた。
 水槽の内部の壁は緑色のコケにびっしり覆われて、外からはほとんど何も見えないので飼ってる意味もなさそうだが、水はべつに濁ってもいないし、変な臭いもしない。というか、水が腐ってたら魚死んでるはずだしなあ。コケと水草と魚だけで生態系が成り立つとも思えないので、何かの拍子で入り込んだバクテリアかなんかがフンやゴミを分解しているんだろうか。本当になんの手もかけないでこんなバイオトープが成立するんなら、私も作りたいと思ったほど。まあ常識で考えて、万に一つの偶然の結果だったんだろうが。

 あれから思い出してはまた熱帯魚飼いたいと思うのだが、初期投資の大きさや世話のことを思うとついためらってしまう。いや、魚の世話なんてほんと手がかからないんだが、動物がいると長期の旅行とか行けないしなあ。旅行から帰ってきたらみんな死んで浮いてたなんて友達もいたが、そういうズボラはいけませんよ。命を犠牲にするようなズボラは。弟も猫がいるので長い旅行に行けないと嘆いている。うちのは元野良なので、ペットホテルなんかに預けると発狂してしまうんだよね。
 あと、魚を飼えないというより飼う必要のない理由は、やっぱり葛西臨海水族園が近いから。魚というのは金魚ぐらいならまだしも、水槽が大がかりになったり、魚が珍しいものになればなるほど、際限なしに天文学的な金と技術と手間がかかるものだが、プロがすべて管理してくれているのをいつでもタダで(本当はタダじゃないが、年間パスポート持ってるのでタダ同然)見られるんだから、何も狭いマンションで狭い水槽買うまでもないやって気になってる。
 というわけで葛西臨海水族園はしょっちゅう行ってるが、今回はそれ以外も含めたお魚特集。

目が怖いダイオウイカ。確かにこの映像はすばらしいが、これだけくっきり見えるのはほんの一瞬なんだよね。あと、釣り上げられたダイオウイカはゆでダコみたいに真っ赤っかなのに、なんでこれは銀色なのか? 深海には赤い光が届かないから?

その2.NHKスペシャル 「世界初撮影 深海の超巨大イカ」 (NHK、2013)

 もともとこの海洋生物ブームは深海魚に凝り始めたあたりに端を発してるんだけどね。深海魚自体は子供の頃から大好きだったが、例の深海魚の本を買ってから火が付いた。そうそう、深海魚と言えば、NHKのダイオウイカ騒動について触れなくては。
 もちろんあの番組は楽しんだし、映像は良かった。でもなんか騒ぎすぎじゃない?と思うのは、私が日ごろBBCのネイチャー・ドキュメントばかり見ていて、NHKのネイチャー番組のレベルの低さにうんざりしているせいもある。
 だいたいかんじんのダイオウイカが(ダイオウイカに期待されるサイズとしては)小さすぎて、「超巨大」という煽り文句には嘘があるし、あれぽっちの映像のために1時間も引っ張るのは無理がある。と思っていたら、今度はあれを映画にして公開するらしい。そんなにネタあるのかよ? 場所が深海だから、きれいな景色の中タレントを歩かせて時間を稼ぐわけにもいかないし。
 BBCのドキュメントなんて、それこそ1分で終わる決定的瞬間を取るために、準備に3年ぐらいかけて、撮影チームが現地で1か月とか2か月とかかけて撮ってるのに、実際の番組では本当に1分で終わって、それに伴う苦労話とかはDVDの特典映像でちょっと見られるだけ。そして余分な能書き一切なしに、そういう超貴重な1分の映像だけ集めて5時間も6時間ものシリーズを毎年作ってるんだから。もうああいうのを見慣れちゃうと、日本の番組はショボすぎで見れない。っていうか、BBCの“Earth”をNHKで1回だけ見たけど、タレントにおしゃべりさせて、まったく別の番組になっちゃってるのを見て以来、NHKの動物番組は見てなかったんだが。
 それに「世界初撮影」ってのも本当なの? 窪寺先生のプロフィールを見ると、「2004年、小笠原沖の深海でダイオウイカの生きている姿を初めて水中カメラにとらえることに成功」、さらに、「2006年には実際にダイオウイカを釣り上げて、その動き回る衝撃的な映像をメディアに公表」と書いてあるんですが。要するに、深海で生きているダイオウイカを「テレビカメラで」撮影したのが初めてっていうだけだよね。なんかこの過大宣伝と商魂がいや。

 そうそう、この番組の宣伝を見たとき、「窪寺先生出るといいなあ」と思っていたのだが、見たら彼が科学者チームのリーダーだったので感激した。いや、別に知り合いじゃないっす。ただ名前を知っていたのは、彼の本を持ってるから。(編著だから、実際書いたのはお弟子さんたちかもしれないけど) 私は生物学の本も大量に持ってるが、研究者向けの専門書ならともかく、日本人が書いた一般向けの啓蒙書は、程度が低いか子供向けなのか、私には知ってることばかりで易しすぎてつまんないので普通は買わないのだ。(同じような啓蒙書でも海外のやつはほとんどもれなくおもしろいし、勉強になるだけじゃなくエンターテインメントとしてよく書けてる。そもそも紙数が和書の20倍ぐらいあるけど)
 なのに窪寺恒己先生の本『海に生きるものたちの掟』(Softbank Creative)はつい買ってしまったのは、表紙がまさにその釣り上げられたダイオウイカの写真で、「生きてるダイオウイカ」の姿を見たのは生まれて初めてだった私は、「すげえ!!!」と思ってしまったから。まさか、この写真も著者が撮影していたとは知らなかったよ。
 本の中身はあいにくダイオウイカとは関係なく、タイトルからわかるように、さまざまな海の生き物の生態を易しく説明したものなんだけどね。新書だし、いわゆる教養書なんだが、それなりにおもしろく読めたし、貴重なカラー写真もたくさん入っている。それで著者は誰なんだろ?と著者紹介を読んで、「ダイオウイカ研究の第一人者」と知ったわけ。そもそも日本にダイオウイカ研究者なんて人がいるとは思わなかったんで、それだけでも感動したよ。(金にならない研究、それも深海探査みたいに金のかかる研究で食べていくのは大変なはずなので) それで番組見たら窪寺先生が主役だったのでうれしくなったわけ。それで実際、先生かっこよかったっす。イカよりむしろこの先生(あと、他の学者連中も)のほうが良かったわ。

「ジャガー・ウィスパラー』(ジャガーと話ができる男)なんてキャプションがついてるが、」トラに限らず大型猫の保護に心血を注いでいるアラン・ラビノヴィッツ。まん丸い黄色っぽいグリーンの目だけでも猫っぽいんだけど、テレビでは病気のせいか、目のまわりにくっきり黒いクマができていて、それが猫族の「アイライン」そっくりで、私は諸星大二郎の「ライオンの顔をした人間」を思い出してしまった。完全に肉食獣の目をしていますわ。

 こういうことも海外のドキュメンタリーではよくあるんだけど。なぜか動物学者(生物学・古生物学含む)って、キャラが立ってる人が多いので。こないだもBBCのドキュメンタリーで、ヒマラヤで絶滅寸前のトラの保護活動をしているアメリカの動物学者アラン・ラビノヴィッツ(Alan Rabinowitz)が出てきたんだけど、完全にトラの目をしていたので笑ってしまった。飼い主とペットが似てくるという話はよくあるけど、学者と研究対象も似るんだなと。窪寺先生はべつにイカには似てないけど(笑)。でも、このラビノヴィッツという人は、癌だったかの病気でもう余命幾ばくもないそうで、それでも過酷なフィールドワークに精を出している様子は、まるでトラの命を救うことが失われる自分の命の代償になっているかのようで、なんだかいろいろとたまらない話だった。

 話がイカからそれてしまったが、ダイオウイカ人気に便乗して(というかNHKの写真をそのまま使ってるからタイアップなのかな)、国立科学博物館では特別展「深海」をやっている。これも普通なら私はすぐに飛びつくんだが、どうも食指が動かずにいる。
 深海展なら、ロンドンの自然史博物館のを見ちゃったからなあ。あれよりいいはずはないし、あれ見て、深海生物の展示のむずかしさを知ってしまったし。ダイオウイカはともかく、だいたいの深海生物は小さいうえに、柔らかくて水っぽい体をしているので、標本にしちゃうとみすぼらしいのだ。生きたのを展示するのはほぼ不可能だし(低水圧にも適応できる奴らなら水族館で見られますけどね)、ビデオなら家でも見られるし。これは10月までやってるから、また気が向いたら行くかも知れないけど。

その3.上野水族館の思い出

 子供の頃から動物きちがいの私は、動物園はもちろんだが、水族館にも並大抵でない思い入れを持っていた。東京の下町、神田淡路町で生まれ育った私にとって、動物園はもちろん上野動物園、そして水族館は不忍池のほとりにあった今はなき上野水族館である。(ちなみに調べようと思って上野水族館で検索かけたら、なぜか居酒屋ばかりがヒットする。店の中に大水槽のある店で、これはこれできれいなので、一度は行ってみたいかも)
 例によって記憶力ゼロ人間なので、どこまで正確な記憶かは自信がないが、私の記憶にある上野水族館は、暗くて涼しかったというのがまず頭に浮かぶ。動物園も楽しいが、あくまで太陽の下で日常の延長なのに、水族館は一歩入ったときから、異空間に引きずり込まれたような感じがたまらない。当然ながら技術的もまだ大水槽なんて作れない時代だから、水槽も小さく、っていうか、真っ暗な廊下のような長い通路の片側の壁に沿って、窓のように壁にはめ込まれた、ぼーっと暗闇に浮かんで見える水槽を覗き込むように見るのが、異世界を覗いて見ているようで良かった。実際、我々にとって水中の世界はまさに異世界そのものなんだけど。
 正確なところを知りたいと思ってネットを探していたら、「水族館の歴史」というサイトに、上野水族館の前身である、上野動物園の分館「観魚室(うをのぞき)」についての描写があった。

その建物は、内側の一方が壁で、もう一方がガラスをはめ込んだ壁水槽の観覧窓になり、水槽内には外からの自然光が差し込んで明るく、室内は無照明で、観客は暗い室内から、明るい水槽の魚をのぞきながら一方向に通っていくようになっていたらしい。水槽の数は15くらいで、ひんやりと涼しい風の通り過ぎる薄暗いホールの一方の壁に、ほの明るい水槽が浮かぶように並んだ、素朴な昔の水族館の情景が想像されます。(水族館の歴史から引用)

開館が明治15年だから、私が通っていた昭和30年代には、いくらなんでも改装されていただろうが、私の記憶にある印象とそっくりなので驚いた。いや、昭和39年に新上野水族館として開館とあるから、幼い私が見たのはどっちかというと古いほうの水族館で、本当に明治以来の建物だったのかも。
 ただ母はなぜか水族館に私を連れて行くのをいやがり(魚嫌いだったからか? 少なくとも母は魚は一切食べなかった)、私が「水族館行きたいよー」とせがんでも、めったに連れてってくれなかったので、それがトラウマになって今になって水族館通いしてるのかも。

 この水族館は1989年に閉館したのだが、私はそれをまったく知らず、久しぶりに上野動物園に行ったとき、「そうだ、水族館にも行ってみよう」と思って行ったら、なくなっていたので非常にショックを受けた。そのときはなんとなく、「きっと上野動物園に併合されて、動物園の中に移転したんだろう」ぐらいに思っていた。
 何しろネットもない時代でしたからね。知らなかったよ。上野水族館は動物園に併合されたわけでも、閉鎖されたわけでもなく、(おそらくはもっと大きな本格的水族館にするために)葛西の海岸に移転しただけだったなんて! あきれたことに、これだけ通っていながら、私は葛西臨海水族園が、子供の頃あんなに好きだった上野水族館の現在の姿だとは知らなかったのだ。いや、ほんと、もう一度あそこに戻りたいと夢に見るほど好きだったんだから。
 西葛西に越してきたのは水族館ができたのよりあとだったけど(できてすぐに訪れてはいる)、どういう偶然か、子供時代と今と、偶然同じ水族館の(比較的)そばに住んでいるというのは、なんかの因縁を感じずにはいられない。とにかく、最初から好きだったけど、これを知ってますます好きになったよ。

その4.葛西臨海水族園 「夏休みナイトアクアリウム」

 その葛西臨海水族園で8月13〜15日だけの3日間「ナイトアクアリウム」と称して夜間開館のイベントがあるというので行ってきた。いつもは5時閉園なのを夜8時まで延ばして、さらに時間と共に館内を暗くして、夜の生き物たちについてのレクチャーもあるという。うんうん、水族館はやっぱり暗くなくちゃ。ナイトミュージアムもいいが、水族館はもっと雰囲気ありそう。夏休み中だが、夜ならお子様は少ないだろうし、これはチャンス!と思って。
 しかし、「アクアリウム」で定着したからしょうがなく使ってるが、英語屋の私はこれを聞くたび、「アクエリアム!」と心の中で訂正してます。

 さっそく愛車(こないだ買ったクロスバイク)を引っ張り出して臨海公園へ向かう。そうそう、自転車とサイクリングについてはまだまだ書きたいことがあるんだけど、今は写真を撮りだめているところなので、ある程度写真がたまったら書きます。それと今回はカメラを持って行ったので写真中心になる予定だったのだが‥‥

 臨海公園に着いたらもうこんな感じ(葛西海岸からお台場方面を臨む)。さすがに平日夜なんで公園もガラガラ。それでもけっこう客がいて、飲み物やホットドッグを売るバンが出ているのはさすが夏休み。しかし都心は40度とか言ってるのに、うちのあたりはめったに30度を越えない。さらに海から強い風が吹くので、自転車で走ってると寒いぐらい。さすがに自転車から降りると(けっこうハードな運動なので)汗がどっと噴き出すけどね。

着きました。年パスが切れていたので新しいのを買って入る。やっぱりナイトなんちゃら目当てなのか、この時間なのに帰る人より入る人の方が多いなあ。

 

 いつも思うがこの建物の設計をした人(谷口吉生)は天才だね。ここは水族館の丸い建物をぐるっと取り囲むように作られた広い池なのだが、池の縁が見えないよう、池の水面と海面が同じ高さに見えるように作ってあるので、海が目の前まで迫っているような、あるいは池が水平線まで続いているような錯視を引き起こす作り。白いヨットの帆のように見えるものは、下のレストランの庭にある日よけなのだが、これもまるでヨットが海に浮いているように見えるように作ってある。今日は曇りの夕方だから灰色に見えるけど、晴れた日は見渡す限り真っ青でとてもきれい。ちなみに池のはしっこに浮いている小さいゴミのように見えるのは水鳥。この池は魚はいないのだが、ときどき鳥が遊びに来て水浴びしたりしている。
 しかし中に入って驚いた。意外と混んでる! とにかく私は混むのがいやで、地元民の特権を活かして、なるべく空いてそうな日の早朝とか閉館間際にしか来なかったので、こんなに混んでるのを見るのは久しぶりだ。すでに水槽の前で何か解説をやっているが、人が多すぎて近づけず、ガヤガヤとうるさすぎて何を言ってるのかも聞き取れない。これは失敗したか‥‥だいたい、「夜だから子供は来ない」なんてはずもないか。私が子供だった頃と違って、今時は深夜1時にドンキホーテに行っても子連れいっぱいいるからなあ。

 売り物のマグロ回遊水槽だが、いつもはすごいスピードでビュンビュン泳いでいるマグロも、夜は心なしかゆっくりフラフラ泳いでる。眠ってるのかな? マグロみたいな魚なら泳ぎながら寝そう。ところでこのブクブクは普段は見ないものなんだが、なんだろう? 実際、この泡が邪魔でマグロがよく見えない。マグロが寝ぼけてガラスにぶつからないための目印? わからん。いつもならガイドさんをつかまえて訊くのに、こんなに混んでちゃ無理。

 私のいちばんのお気に入りの海藻の森。ジャイアントケルプが生い茂る巨大な水槽の中に色とりどりのお魚が人工の波に揺られている。この水槽の前にはベンチが置かれているので、ここで一休みするのが習慣。この水槽はちょっと奥まった一角にあるので、誰もいない時間帯なんか、まるで自分専用の海中シアターみたいですてきよ。実際はもっとカラフルなんだが、写真がヘボいのは勘弁。だんだん照明が暗くなっていくので、私のカメラではこれぐらいがもう限界みたい。

 あまりにも人が多くて魚を見る気分じゃなくなったので、閉館が近づいて人が減るのを待とうとカフェテラスへ。そしたらカリビアンバンドの生演奏をやっていた。へえー、こんなのも初めて見た。さすが夏休み。テーブルもいっぱいだが、そこはずうずうしく最前列の一人客のテーブルに「ここ、いいですか?」と割り込む。
 なぜか外出するとカフェオレとチップスが食べたくなる。おそらく日頃ダイエットのため、砂糖入りの飲料と揚げ物を断っているせい。だけど、お出かけした日ぐらいは‥‥となるんだよね。ここのチップスは太くて、外はカラッと、中はホクホクに揚がっていて、正統イギリス流チップスでとてもおいしい。(マックポテトみたいな細くてシナシナのポテトは嫌い)
 というわけで、ここで1時間ぐらいぼーっとしてようと思ったんだけど、あいにくカリビアン・ミュージックって嫌いなんだよね。あのスチールドラムの音が嫌いで。なのに周囲はノリノリで、このノリの違いに耐えられなくなったので、また館内へ戻る。

 脱走ペンギンで有名になったペンギン山だが、ペンギンたちも眠そう。鳥は夜は眠るんだから、夜見てもあまり意味ないよねえ。ていうか、この人たち夜でも部屋に戻らないのか?

 氷点下でも凍らない透明な血を持つ南極生まれのコオリウオ(オセレイテッド・アイスフィッシュ)。私はBBCで見て知っていたから、最初に現物を見たときは「うわー!」ってなった。この子、生態もすごいけど、見た目もかなり変わっててかっこいいよね。私はもっと小さいものを想像していたが、実際はかなり大きくて20cmぐらいある。寒いところの魚らしくほとんど動かない。
 館内は時間を追って照明を落としているようで、通路も水槽もどんどん暗くなってくる。中には魚のためだろうか、真っ暗で何も見えなくなってしまう水槽も。見えてるところも目をこらしてようやく見えるという感じで、写真を撮ろうとしても私のデジカメじゃこんな心霊写真みたいになってしまう。

お気に入りのタチウオを撮ろうとしたんですがねえ。というわけで、魚の写真はこれしか撮れませんでした。魚の多くは寝ているみたいでじっとしているのだが、この薄暗い中でいったい何を見ろというのか、それこそ解説してもらわなくちゃわからないよ。

普段はこんなすごいライトで照明しているのにね。
 とにかく混んでるので気分が悪くなったし、見るものもなくて手持ちぶさたになったので、閉館にはまだ間があったけど帰ることにしました。

 それでも必ずお土産屋には立ち寄る。ここの売り物はやはりこのマグロのぬいぐるみだが、私は見るたびに「ちがーう!」と心の中で叫ばずにはいられない。マグロは青くなんかなくて、メタリック・シルバーでしょうが。あと、ひれやしっぽがフニャフニャなのが気になる。ひれがもっとピンとしてればいいのに。ちなみにうちのシャチくんはひれやしっぽにはちゃんと詰め物がしてあってピンと伸びている。
 でもほんと不思議だよなあ。魚類と哺乳類って天と地ほども違う生物なのに、適応進化で体つきは完全に一致っていうの。百歩譲って流線型なところとか、ひれやしっぽがあるのはわかるよ。ひれは前足が変化したものとすぐわかるし、しっぽはもともとあったものだし。だけど背びれってなんなのよ? 哺乳類の背中になんでそんなものが生えてくるのよ? ほんと進化はおもしろい。

外へ出たら夕焼けをバックにライトアップされた大観覧車が。

 振り返ってみたら水族館のドームもライトアップされていた。おーっ! これは初めて見た。なかなかきれいだね。普段もときどきは夜やればいいのに。対岸のディズニーランドの夜景もきれいだったので、写真に撮ろうと思ったのだが、光量が足りなすぎてだめだった。

 というわけで、この日は帰ったのだが、なんとなく消化不良で物足りなかったので最終日にまた行ってきました。今度は本当に閉館間際に。おかげでだいぶ空いてたけど、やっぱり何を見ればいいのかよくわからなかった。どうもナイトアクアリウムはやや当て外れってところか。
 あと、水族館の外壁を使ってプロジェクション・マッピングのショーもやってるということを知って、それを見たかった。プロジェクション・マッピングというのは、建物の凹凸に合わせてCG映像を投影する幻灯みたいなものです。「幻灯」なんて知ってるやついるかい! 年がモロバレだが、学校の校庭とかで開かれる幻灯上映会も子供の頃のなつかしい思い出です。それはともかく、プロジェクション・マッピングはYouTubeで外国のやつをいろいろ見て、すげー!と思っていたので、一度生で見たかったのだ。
 それで映像自体はすごくよくできていたんだが、問題は投影する壁が小さいこと。この水族館はほとんど地下にあるので、外壁と言っても低いんだよね。YouTubeで見たのは10階建てぐらいの大きな建物の壁一面使うようなやつだったんで、ちょっと物足りない。狭いところでやってるので、近くで見れるのはいいと思ったが、これって近くで見るものでもなかった。近いと「地」の部分がはっきり見えちゃうので。あと、時間も短かった。まあ、ご予算からいってもこれぐらいが限界なのか。もっとちゃんとしたの作って定期的に上映すれば、それだけでもお客呼べると思うけどね。個人的にはこれってすごい好きだし(やっぱり幻灯のワクワク感を思い出すので)、まだまだ可能性があると思った。

 最後にまとめ。アクアリウム・スレとかではけっこう絶賛されてる葛西臨海水族園だが、私もいい水族館だと思う。だけど、日本を代表する東京の公営水族館としては、もっともっと立派なでっかい水族館にしてほしい。都営の動物園は上野も多摩もあんなに大きくて立派なんだから。いや、それでもここがいちばんお金かかってるのも知ってますよ。実際、料金はここがいちばん高いし。でもオリンピック招致なんかやめればそれぐらい建つんでない? 土地はたっぷりあるんだし。
 個人的にはやっぱり哺乳類が見たい。アザラシやアシカやラッコやセイウチやイルカや、特にシャチが! 鴨川シーワールドも大好きだけど、近所でいつでもシャチが見られたら、うれしくて死んじゃう。

 いや、水族館でのイルカやシャチの飼育については、最近非難の声が高まってるのは知ってますよ。ただ、詳しい言い分は知らないけど、これってシーシェパードや「動物園の動物は虐待でかわいそう」論者みたいな狂信者の言い分と違うの?
 ちょっと調べたら、フロリダのシーワールドで3人殺したシャチのティクリム(前にも書いたよね)が反対派のやり玉にあがっているので驚いた。シーワールドが動物を虐待してるから、シャチが気が狂って人殺すようになったというのだ。
 う〜ん。本当のところはわからないが、なんかあやしげな言い分だなあ。だいたい本気で殺す気なら、噛まれただけで人間なんか真っ二つなのに、彼が殺した人たちは全員水中に引き込まれての溺死。どう見ても遊んでただけで、この子は人間はシャチほど長く息を止めていられないということがわからないおバカさんというだけじゃないの? まあ、すでに2人殺してるのにまだそのシャチをショーに使ってたという点で、このシーワールドも異常だけどね。
 とりあえず、イルカやシャチに芸をさせるのは虐待だという理論はおかしいと言っておこう。それって犬にお手を教えるのは虐待だと言ってるみたいだ。彼らは明らかに喜んで芸をしているし(強制しなくても他の仲間がやってるのを見ると覚えてまねする)、彼らぐらい知能の高い生き物はそれぐらいやらないと退屈で耐えられないし、運動不足解消のためにもなる。飼うなというのはまた別だけど、前にも書いたように、イルカ・クジラ類が本当に絶滅の危機に瀕しているなら、繁殖や研究目的のためだけでも飼育する価値がある。

 まあ、ショーはなくてもいいけど、せめて沖縄の美ら海水族館ぐらいのスケールの水族館が東京に欲しいわ。もちろん、あれは沖縄にあるからこそいいんだが、沖縄は遠すぎて誰でも気軽には行けないし。
 税金で箱物を建てることにも風当たりが強いが、それは建てたってどうせ利用者もいないような地方のコンサートホールだとかアリーナだとかの話でしょう。世界最大級の水族館が東京都心にあったらどれだけ客が集まると思う? それこそ海外からも観光客が集まるし。ディズニーランドが近いから相乗効果も期待できる。
 こういう「文化」にどれだけお金をかけられるかで、先進国かどうかが決まると思う。イギリスがまさにそう。どんなに落ちぶれても、あの美術館・博物館群がある限り、ヨーロッパの中心であることに変わりはないだろう。美術館・博物館はくらべものにならないが、動物園は(最近どっちの国でも行ってないので自信がないが)少なくとも2つ会わせればイギリスに勝ってると思うので、水族館はさらに世界トップをねらってほしいね。ほんとオリンピックなんて一過性のものはどうでもいいから。あとパンダもいらない。
 とか言いつつ、ここに人が押し寄せるようになったらやっぱりいやなので、本音を言えば今のままでいいんだが。

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