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2012年7月28日土曜日

スポーツ

ロンドン・オリンピック 開会式

フィナーレの花火

 やれやれ。やはり英国ってことで、つい義理で開会式まで見てしまったよ。昼寝したから、午前4時半からの放送ぐらい余裕で起きてられると思ったけど、まさか9時までやるとは思わなくて眠くて死にそうになった。現地時間は午前1時! 例によってのイギリス時間で、電車で帰る人のことなんか何も考えていないが、それができるフリーダムさがやっぱり少しうらやましい。

 演出を担当したのは、映画監督のダニー・ボイル。『トレインスポッティング』はまったく感心しなかったし、『28日後』もキリアン・マーフィーの美貌以外まったく評価しないが、その後『スラムドッグ$ミリオネア』で当てたらしく、(私はまだ見てない)、確かに今のイギリスを代表する映画監督と言ってもいいだろう。『トレインスポッティング』がアレだったように、ミュージックビデオ乗りの映像が撮れる監督だから、こういう式典にも合ってるような気がした。
 ただその一方で、こないだの北京オリンピックみたいに物量作戦の国威発揚ショーにはならないっていうか、イギリス人の国民性から言って、どうせゆるいものになることは予想が付いたので、式典自体はまーったく期待していなかった。イギリスでこの手のものに期待することがあるとしたら音楽以外ないでしょ。
 音楽監督はUnderworldが担当することに決まっていた。この人選もまあまともかな。少し前ならいくらも候補はいたけれど、今の英国ロックの状況ってお寒い限りだし、むしろ彼らダンス畑の人の方がちゃんとやってるし、そもそもダンス屋ってミュージシャンというよりプロデューサーだから、こういう仕事には向いてる。個人的には「なんでUNKLEじゃないんだー!」と思うけど、やっぱり知名度が違うし、Underworldも好きだからいいことにする。
 事前にリークされた全プレイリストなるものがネットに流れてたけど、これ、偽物だと思ったな。いちいち照合してみたわけじゃないけど。たとえばSex Pistolsの“God Save the Queen”がリストアップされてるけど、そんなの流れなくてPistolsは“Pretty Vacant”だけだと思ったけど。いや、本気で女王本人の前で“God Save the Queen”やったらすごいと思って、少し期待してたのよ。さすがに他の曲もあまり不穏当な歌詞のものは避けてたような気がした。

 最初はイギリスの歴史の紹介から始まるというから、ストーンヘンジの辺から始まるのかと思ったら、せいぜい18世紀だったのでちょっとがっかり。北京は中国三千年を見せたのに(笑)。アリーナにあるのはいかにも英国風の田園風景のセット。簡単に言っちゃうとホビット庄のセット(笑)。しかしこういうのは実に心が安らぐし、ここで牛や羊といっしょにダンサーが踊ったり歌手が歌ったりするのかと思ったら、さすがにそうはならなかった。
 その次はいきなり産業革命が起きちゃって、工場風。私は工場萌えでもあるので、こういうのはこういうので好き。でも歴史ってこれだけ。端折りすぎ(笑)。

 その次(順番までちゃんと覚えてないので前後するかも)は歌とダンスのショーになって、イギリスのポップ・ミュージックの歴史を一気に見せる。待ってました!と思ったが、これもあんまりにも端折りすぎ。50年代から始まって各時代の代表的ヒットソングが流れるはずだったんだが、時間が短すぎて代表的なバンドや歌手がずいぶんもれてるし! 個人的にはNew Orderが入ってたのがうれしかったけど、そういや、UnderworldってBernardと共演してたっけ? とにかく好き嫌いと関係なく、私が英国音楽と言われて思い浮かべるのはSmithsなんで、Smiths抜きのイギリス音楽なんてありえない! なんか90年代以降がごそっと抜けてたような。
 こういう音楽はその後もBGM的にずっと流れてたが、とにかくテレビじゃ音響悪すぎ。会場のノイズにまぎれて、テレビのマイクで拾ったようなモゴモゴの音しか聞こえなくて、曲の判別もろくにつかないし、その時点で終わったも同然。

トリを飾ったPaul McCartney

 生演奏をしたのは、誰だか知らない女性歌手と聖歌隊を除けば、Mike OldfieldとArctic MonkeysとPaul McCartney。
 Paulが最後に“Hey Jude”を歌うってのはこれも事前のリークで知っていた。個人的にはもうBeatlesなんかどうでもいいと思うんだけど、一般の人はやっぱりイギリスというとこれを出さなくてはすまないんだろう。いちおう「生きてるBeatle」というだけでも骨董的価値があるし。なんかこのセリフ、こういうイベントがある度に言ってるような気がするけど。
 この“Hey Jude”の歌い出しの部分で、変なディレイがかかったようになって、おやっ?と思ったんだけど、案の定、あとから「口パクだったんじゃないか?」と話題になっていた。北京のあれのあとだから、みんな疑心暗鬼になってるな。
 実は最初は口パクでやるはずだったのだが、Paulが強く主張して生でやることになったんだそうだ。あの出だしはその口パクテープが間違って流れてしまったんだそうだ。
 Paulが見る影もなく年取ったのは知っていたが、意外や声はそんなに変わってないし、高い声もちゃんと出ていたので感心した。ただ、童顔が年取ると悲惨だねえ。あの赤ちゃん顔のままシワシワになっちゃって、おまけに髪型だけは若い頃のままだから、男とも女とも、老人とも赤ん坊ともつかない、なんか不気味な生物になってしまっている。それなりに年寄りらしい格好と髪型すれば貫禄も出るだろうに。うちのPaul(Draperです、念のため)もそうなるんじゃないかと心配なのだが。
 “Hey Jude”もBeatlesの歌の中では嫌いな部類なのだが、こういう場所ではいちばん向いてるのかもね。何より、誰でも歌詞を知らなくてもいっしょに歌えるのがいい(笑)。考えたらそんな歌そんなにないもんね。

 Mike Oldfieldが出てきて、“Tubular Bells”を演奏し始めたときは正直驚いた。なんで今さら?って感じで。それに合わせてベッドに乗った子供たちが出てきたので、てっきり子供がのたうちまわって、口から緑色の豆スープ吐いて、宙に浮かぶものとばっかり‥‥(笑)。いや、もちろんあの曲が映画『エクソシスト』のために作られたものじゃないのは知ってるけど、世界的にはあれって『エクソシスト』のイメージ以外の何者でもないでしょ。
 そういやあの病院のシークエンスもいまいちわからないな。子供のための病院と国民健康保険を記念してっていうけど、そりゃ偉業かも知れないけど、なんかあまりにもローカルな話題で、そもそもスポーツとなんの関係もないし。

 Arctic Monkeysは完全に場違いでかわいそうとしか。ていうか、今の英国を代表するバンドがこれなのかよと。だいたい私が今のロックに興味失ってきたのもArctic Monkeysが売れ始めたときだしねえ。悪いけど、どこがいいのかさっぱりわからない。まだKasabianとかFrantz Ferdinandのほうがまし。
 ていうか、これが20年前か30年前か40年前なら、どれだけきらびやかなメンツが揃ったことかと考えると泣けてくる。こういうスタジアムでやっていい音楽というのは、やはりスタジアム・ロックに限られるんで、Arctic Monkeysでなくても、インディーバンドじゃ絶対無理。それこそ全盛期のQueenとか、Bowieとかが出たらどんなに盛り上がったかと思うと。ていうか、Underworldでレイブパーティーでもよかったんだが、ご本尊が出ないのは遠慮したのか?
 Queenで思い出したが、“We Are the Champions”の「ズンズン、タッ! ズンズン、タッ!」を開会式で聞きたいという、4年前の私の願い(2008年8月15日参照)は叶えられなかった。それでもまだ閉会式に期待してるけど。
 しかし、客受けということを考えると、そういった過去のバンドや歌手をかき集めてロックフェスにしちゃうっていう手もあったのにねえ。それじゃもうオリンピックとなんの関係もないか。

 そんなこんなで音楽でいちばんいいと思ったのはSex Pistolsじゃないほうの“God Save the Queen”。マジで。私、イギリス国歌ほど格調高く美しい国歌はないと思ってるから。聞くだけで泣ける。あと、国歌じゃないけど準国歌みたいな“Jerusalem”も大好き。私がウィリアム・ブレイクで卒論書いたというのは別としても好き。(この歌はブレイクの有名な詩に曲を付けたもの) これはどっちかというとボーイソプラノの独唱で聞きたかったんだけどな。
 あと、なんというのか、オリジナルスコアみたいな音楽がすごく良かったんだけど、あれUnderworldが作ったの? だったらCD買おうかな。っていうか、どうせ記念に買うつもりだけど。

 「ここからはイギリス産のファンタジーの世界に」という謳い文句にも思い切り釣られてぬか喜びさせられた。例のベッドの子供たちに『ハリー・ポッター』のなんとか卿の張りぼてがからんで、空からメアリー・ポピンズがいっぱい降ってくるだけ。(他にも小ネタはいっぱいあったようだが、テレビでは識別できず) ええええー! イギリス・ファンタジーなのに『アリス』なしかよ? それに『指輪物語』と『ナルニア』は? 悪と戦うというテーマなら、せめてガンダルフぐらい出せよー!

 ミスター・ビーンの出演シーンは長すぎ。ここだけほとんど彼のためのワンマンショーだし。私はイギリスのコメディにも目がないのだが、この人嫌いなのよ。あまりにベタすぎて笑えないと思うんだが。イギリスと言えば、コメディの本家本元でもあって、それこそ世界的コメディアンはわんさといると思うのだが、なんでミスター・ビーン。
 ここでも例によってのめちゃくちゃベタなギャグを披露。ただ、彼のギャグは無言劇だから、言葉のわからない人にも通じるという利点があるか。あと、ベタだからバカにもわかるし。実際、日本の某掲示板とかでは「おもしろかったのはミスター・ビーンだけ」という人が大半みたいだし。私はイギリスコメディの知性と毒が好きなのに!

女王陛下のスカイダイビング(笑)

 結局、ショーで私が楽しめたのは007の部分だけ。ここはショートフィルム仕立てになっていて、バッキンガム宮殿を訪れたジェームズ・ボンドが、女王をヘリに乗せてスタジアムまで飛んでくるのだが、ドアを開けて当然ボンドが飛び降りるのかと思ったら、飛び降りたのは女王陛下(笑)。
 そこですかさず、同じドレスを着た現実の女王陛下のお成りとなる。イギリス人のこの手のユーモアセンス好きだわー!
 そういえば、このショートフィルムも楽しかった。音楽がわりとはずしてしまったのに対し、さすがというか、会場とシンクロする形で何度も流れるフィルムはどれもよくできていた。このフィルムも女王(最初はそっくりさんかと思ったら、ご本人。飛び降りたのはもちろんスタントだけど)と彼女のコーギーが、完全に007を食ってしまってるのが笑わせる。特にコーギーの演技力抜群
 難を言えば007がダニエル・クレイグだってことぐらいか。こんなやせっぽちの、金髪の、チビのボンドなんか絶対認めない。ていうか、私はショーン・コネリー以外認めるつもりはないが。
 ダニー・ボイルはちょっと見ただけじゃわからないようなところにも、小ネタをたくさん散りばめている。たとえば、ちらっとバタシー発電所(ロンドン名所のひとつ)が映るのだが、バタシー・パワーステーションといえば、ロックファンにはPink Floydの“Animals”で、ちゃんと上空にピンクの豚が飛んでいたのにはニヤリとさせられた。
 他にもQueenの“Bohemian Rhapsody”が流れる場面で、ちらっと『ウェインズ・ワールド』の“Bohemian Rhapsody”を歌う場面が流れたり。切り替えが早すぎてわからなかったけど、あのシーンってどれも“Bohemian Rhapsody”に関係ある映画だったような気がする。確認したくてYouTubeで探してるけど、片っ端から消されちゃうんだよね。少なくとも、ボイルの撮ったフィルムだけまとめて見せてくれるといいのに。

入場行進に退屈した女王様

 とにかく、この長い開会式を通じて、最大のスターはやっぱりエリザベス女王陛下その人だったね。いちばん感動したのも女王の登場場面だし、いちばん笑わせてくれたのも女王だし。イギリスでいちばんおいしいのはやっぱりロイヤルファミリー。
 笑ってしまったのは、入場行進の最後に英国選手団が入場したとき。毎回、その国のロイヤルファミリーか首脳が来ている国が入場する際には、ロイヤルボックスにカメラが向くのだが、英国選手団の入場の時、女王はいかにもつまんなそうに自分の爪を眺めてるところを大写しにされてしまった。確かに長かったもんねえ(笑)。あれは私もしんどかったから。
 あと、期待していたウィリアムとキャサリンはちらっと映っただけだった。せっかく結婚したばかりで、若いし人気もあるんだからもっと何かやらせればいいのに。女王ですら体張ってがんばったんだから(笑)。私はマジでこの2人がジャージ着て、聖火運んでトラック一周ぐらいのことは期待していたのでがっかり。
 しかし、女王様はやっぱりすてき。(昔から熱烈なファン) 年とったらかわいいおばあちゃんになったし。若い頃はむしろキリッとしたきつい美人だったんですがね。ただ、顔はそんなでもないのに、体型はどうしてあんなにも崩れちゃったんだろ? 86才というと、先日死んだばかりのうちの父と同い年なんだが。やっぱり白人はだめだな。それとも元々スタイルは悪かったのか? そういえばこの一家は全員長身揃いなのに、彼女だけ小さかったような気が。
 ちなみにサーモンピンクのドレスとお帽子は似合っていてとてもすてきでした。

 聖火と言えば、さんざん気を持たせた最終ランナーは、往年の名選手から、若い選手たちに集団でリレーするという、当たり障りのないものに落ち着いた。まあ妥当かな。そこになぜモハメド・アリがいるのかはわからなかったけどね。ロンドンで金メダル取ったわけでもないし、わけわからん。96年のアトランタでも、パーキンソン病でヨイヨイになってしまっていたけど、今はもうボケてるかなんかじゃないのか?というぐらい、挙動不審だった。
 あの出場国の数だけある花びらみたいな聖火は新しいアイディアで、ちょっときれいと思った。ただ、スタジアムの真ん中に聖火が立ってて邪魔にならないのかと思うけど。

 どこで出るのかが取り沙汰されていたデイヴィッド・ベッカム。英国一の人気者だから出さないわけにはいかないけど、なにしろ英国はオリンピックサッカーを拒否していたんで、スポーツ選手だけどオリンピックとはなんの縁もないという微妙な立場。聞くところでは聖火ランナーにという依頼は自分から辞退したそうだ。じゃあ何をするんだろう?と思っていたらこうなりました。聖火を乗せてテムズを走るボートを操縦してるふり‥‥という微妙な立場での出演だが、こういうわけのわからない登場でも変にかっこよく見えるのがイケメンの強みか。
 しかしベッカムってなんでこんなに人気あるんだろうね? 私はMan-Uのファンで、彼はMan-Uの生え抜きのエースだったし、私は美男が好きで、彼はハンサムだから私が好きなのはわかるんだけど、世間的には単に顔が良くてサッカーがうまい人というだけじゃん。イケメンのサッカー選手なんて世界中に掃いて捨てるほどいるのに、なんでベッカムばかりがこうもてるのか、本当に不思議だ。個人的には、すべてを持ってるくせに、天然のいい人ってところもポイントなんだが。

 続いては選手団について。さすがに長すぎて全部は見てなかったんだけど。これ見るたびいつも思うんだけど、このパレードって、黒人がいかにかっこよくてセンスが良くて、それにくらべて白人や東洋人はいかにブサイクでダサいかを世界に見せつけるためにあるように思うんですけど。ていうか、私は何度見てもそれしか感想が浮かばない。とりあえず、黒人選手団(特にアフリカ系)の神のごとき肉体を鑑賞するだけでも楽しいけどね。ユニフォームも絶対的に黒人国家のほうがかっこいいのも不思議。土人みたいな民族衣装でさえかっこよくて似合ってるし。
 ところで、今年の日本選手団は、東京オリンピックからタイムスリップしてきたのかと思ったよ。真っ赤なブレザーに、白シャツ、白ズボンっての。今でもよく覚えてるけど、あれとうりふたつ! そもそものセンスが昭和30年代で、21世紀のセンスじゃない。何あれ? 東京へのオリンピック誘致のデモンストレーションか何か? もうダサいなんてもんじゃなく、本気でやめてほしい。
 あと、日本だからって紅白もやめて。個人的には日の丸自体はそう悪いデザインじゃないと思うが――他に似たのがないから一目で日本の国旗とわかるし、Land of the Rising Sunってなんかかっこいいし、描きやすいし覚えやすいし――紅白の服着せるのだけはやめて。チンドン屋みたいだから。
 でもイギリスも同じぐらいひどかったけどね。全身真っ白の上に、キンキラのゴールドの襟! あんなの着るぐらいなら私なら自殺する!
 ところでアメリカはなんで軍服だったんだろう?
 開会式がバカバカしく長くなった理由は、毎年参加選手が増えてるせいもあるような気がする。あれってどうにか短縮できないの? 全員駆け足入場にさせるとか?

 あとはえーと、何があったっけ? 空飛ぶハト自転車はなかなかよくできていて美しかった。自転車が空飛んでるとどうしても『E.T.』に見えるんだけど。
 とにかく盛りだくさんで、同時にあちこちでいろんなことやってるんだけど、テレビじゃその一部しか映らないし、実況のアナはかんじんなことを何も説明してくれないので、なんかストーリーが読めないって感じだった。
 そういやNHKのアナも地に落ちたね。特に女の方は見るからに頭が悪そうでとんちんかんなことばっかり言っていてイライラした。日本語アナウンスだけオフにできるといいのに。

 というわけで、やっぱりおもしろくなかった開会式だったが、特に大きなトラブルもなく、無事に終わってひとまずほっとした。

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