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2012年7月27日 金曜日

 今年はイギリス行きのために、大学の仕事をぎりぎりいっぱいまで入れたせいで、去年までみたいにのんきにテレビでサッカー観戦ができない。それでもロンドン・オリンピックのサッカーにはぎりぎり間に合うはず(夏休みに入るので)と思っていたのだが、ユーロ(サッカー欧州選手権。ヨーロッパの国別ナンバーワンを決める大会)のことを失念していた! 今年は毎日地上波でやってくれたのに(あいかわらずデジタルテレビが買えない。お金がないわけじゃなく、部屋を片づける暇がなくて)、1個も見れなかったよー!
 私は典型的な夜型なので、去年みたいに午後の授業ばっかりなら午前3時試合開始でも余裕なのに、朝5時起きで仕事でそれは無理。さすがにこれだけやらせてもらうには、時間のえり好みなんてできなかったんで(泣)。
 まあ、例によってイングランド弱かったからユーロなんてどうでもいいんだけどさ(苦笑)。準々決勝でイタリアに敗れたんだが、またもPK戦で負けるなんて、つくづく勝ち運がないとしか。なぜか大舞台に弱いんだよなあ。
 それでもワールドカップの最終予選(こっちは日本)は必死で見てたんだけど、どれも途中まで書いただけでまとめる余裕がなかった。これは順序が前後するがのちのちアップしますのですいません。とりあえず、今日のこれは歴史的瞬間だと思うので、何が何でも書いておかなければ。

 というわけで、ここにも書いたように期待していたオリンピックの男子サッカーが開幕したので、それについて書く。英国はすったもんだの末に統一チームでの参戦が決まったが、ふたを開けてみたらスコットランドは参加してないし、まああんまり関係なかった(笑)。でもライアン・ギグズ(ウェールズ人なので、名選手であるにもかかわらず、大舞台に縁がなかった)がOAで出るのがちょっと楽しみ。
 つーか、今回のオリンピックは、そんなこんなであくまでイギリスを応援するつもりだったのに、始まっていきなり、日本代表がすべてをかっさらっていったという、よい意味で裏切られたというお話。(試合開始前の妄想が長いので、結果に対する感想を読みたい人は下へスクロールしてください)

スポーツ

ロンドン・オリンピック
サッカー男子 下馬評と期待

 と言っても、期待してなかったわけじゃありません。実は内心めちゃくちゃ期待していた。それで前回北京オリンピックもやっぱり日本に期待したのに、三連敗でがっかりしたことはすでにここに書いた。
 もちろん北京組のその後の華々しい活躍は、当時誰ひとり想像もしなかっただろうが、それでもあの世代には華やかさがあったし、期待も高かったように思う。天才と呼ばれた平山や家長、ビッグマウスで目立っていた本田、華麗なテクと甘いマスクで人気だった水野など、キャラも立っていたし。

 その北京五輪のメンバーがこれなのだが、

■GK 山本海人/西川周作
■DF 水本裕貴/森重真人/安田理大/内田篤人/吉田麻也/長友佑都
■MF 本田拓也/谷口博之/梶山陽平/本田圭佑/細貝萌/香川真司
■FW 豊田陽平/李忠成/岡崎慎司/森本貴幸

(今から見ると)このそうそうたるメンバーに対して、当時の2ちゃんねるはブーイングの嵐。本田や香川や岡崎や内田なんか名指しで使い物にならんとか引っ込めとか死ねとか言われてたし、平山、カレン、家長、水野、柏木ら、予選で活躍したにもかかわらず落選した選手を呼べという声が高かった。2ちゃんだから、これがサッカーファンの総意とは言い難いけど、少なくとも(私を含めた)「無責任なサッカー素人」の意見としてはこんなものだった。
 それでこのチームが手も足も出ない三連敗で敗退しちゃったもんだから、当時のバッシングはそれはそれはひどかった。特に人一倍大口を叩いていた本田なんかクソミソの言われようだったのに‥‥その本田が4年後の今やA代表の不動の中心になってるなんて、この中からインテルやMan-Uの選手が出るなんて、当時誰が想像しただろう。私もしない。もともとルックス優先の私は本田はハンサムだと思ったから嫌いじゃなかったけど、当時はまだ美少年好みだったので、水野の方が好きだった。私が本田を好きになったのは、オランダ2部のVVVで無双し始めたころだから。
 しかし本田に限らず、北京オリンピック組のその後の人生模様は、本当に人生の縮図のようだ
 何より、あの世代の中でその後華やかな成功を収めたのは、長友、岡崎、香川と、当時はどっちかというと軽視されていた地味なプレイヤーだったということ。それにくらべて、当時スター扱いされていた(本田をのぞく)連中の多くが失意のキャリアを余儀なくされているあたりもなんとも言えない。水野なんてほんといい選手だったのにね。どこでどう間違えたのかね。
 この話の教訓は何かというと、まだ若い選手の大会では前評判や過去の実績はあまりあてにならないということと、ヘボ監督に見えても、さすが玄人の目は素人とは大違いってこと。これは認めたくないが、ワールドカップ前の岡田にも言えるね。本田の扱いはともかく、あの時点で松井や大久保があんなに頑張るなんて予想できなかったもん。

 そこで迎えたロンドン・オリンピック、これが招集メンバーなのだが‥‥

GK
1 権田 修一 1989.03.03 187cm 83kg FC東京
18 安藤 駿介 1990.08.10 185cm 79kg 川崎フロンターレ
DF
2 徳永 悠平 1983.09.25 180cm 76kg FC東京※
5 吉田 麻也 1988.08.24 189cm 81kg VVV(オランダ)※
8 山村 和也 1989.12.02 184cm 75kg 鹿島アントラーズ
13 鈴木 大輔 1990.01.29 181cm 78kg アルビレックス新潟
4 酒井 宏樹 1990.04.12 183cm 70kg ハノーファー96(ドイツ)
12 酒井 高徳 1991.03.14 176cm 74kg シュツットガルト(ドイツ)
MF
17 清武 弘嗣 1989.11.12 172cm 66kg ニュルンベルク(ドイツ)
6 村松 大輔 1989.10.29 177cm 76kg 清水エスパルス
10 東  慶悟 1990.07.20 178cm 69kg 大宮アルディージャ
16 山口  螢 1990.10.06 173cm 72kg セレッソ大阪
3 扇原 貴宏 1991.10.05 183cm 72kg セレッソ大阪
14 宇佐美貴史 1992.05.06 178cm 69kg ホッフェンハイム(ドイツ)
FW
11 永井 謙佑 1989.03.05 177cm 74kg 名古屋グランパス
7 大津 祐樹 1990.03.24 180cm 73kg メンヘングラッドバッハ(ドイツ)
15 齋藤  学 1990.04.04 169cm 64kg 横浜F・マリノス
9 杉本 健勇 1992.11.18 187cm 79kg 東京ヴェルディ
バックアップ
  林  彰洋 1987.05.07 195cm 89kg 清水エスパルス※
  大岩 一貴 1989.08.17 182cm 77kg ジェフユナイテッド千葉
  米本 拓司 1990.12.03 177cm 70kg FC東京
  山崎 亮平 1989.03.14 171cm 66kg ジュビロ磐田

※徳永、吉田、林がオーバーエージ枠

‥‥このメンバー表を見たとき、何かのフラグが立ったような気がした。何がって、なんかいかにも華がない、ぱっとしない感じが(笑)。
 感じだけではない。さすがにオリンピックの予選まではすべて見てはいないが、それでも私が見た試合の印象だけ言うと、光るものもないわけじゃないけど、なんかいかにも頼りない坊やたちという印象。直前のトゥーロン国際も、オランダには勝ったけど、トルコとエジプトに負けてグループリーグ敗退したし。この世代はU20ワールドカップに出られなかったので、国際経験を欠いているとも聞いたし。
 アーセナルの宮市や、スペイン三部で活躍した指宿、高校サッカーのスターだった大迫勇也、浦和の有望新人の原口元気など、期待の選手や予選で目立った選手がもれているのも、いかにもな感じがする。
 世間の反応も北京の時より冷たい。メディアにはなでしこばかりが脚光を浴びて、男子が黙殺されていたのは、北京のあのメンバーでさえ三連敗だったのに、これでは敗退確実と思われてたからだろう。
 こうして、絶対無理だの、三連敗確実だの、谷間の世代だの、いや谷底世代だの、負けフラグが立てば立つほど、なんかその逆をやってくれそうな感じがするんですよね。北京の再現ではなく、南アフリカ・ワールドカップの再現のような気がして‥‥
 そういえば監督の謎采配ってのも加えていいかもしれない。WC前の岡田の迷走は忘れられないが、この関塚監督という人もけっこう何を考えてるのかわからない。五輪前のベラルーシ戦なんて、いくら親善試合とはいえ、前半後半で選手総入れ替えなんていう、普通なら非公開の調整試合でしかやらないようなことやってたし。いくらなんでもここまでくれば、メンバー固定して連携はかるときでしょう?
 さらに悪口を続けると、この人たち(ごく一部を除き)おそろしくルックスが悪い(笑)。不細工なのになぜか茶髪や金髪が多くて、田舎のヤンキーにしか見えない(笑)。本田の金髪はあまりにも似合いすぎるのでもう許したが、日本人が髪染めるのって、基本顔のいい人しか似合わない。田舎のヤンキー顔の人は、田舎のヤンキー度を加速するだけで。酒井高徳だけはドイツとのハーフだからたぶん地毛だが、それでもドイツのヤンキー顔(?)だし(笑)。

 というわけで、マイナス・フラグが付くたびに、私はそれを奇跡の前触れと思うことにした。なにしろ南アフリカ以来、日本サッカーには神が宿ってるみたいなんで、女子もワールドカップを手にしたことだし、次は男子U-23がオリンピックで金メダルでも取れば、それに釣り合うだろうと思って。
 だからメンバー発表時に私が激怒したのは、香川が呼ばれなかったことと、OAの選択について。

 いくらなんでもこの坊やたちだけでメダル取るのは無理でしょ。OAでなく本来の23才で出られる香川が今現在絶好調でいるのは、まさしく天の配剤というべきなのに、その香川が呼ばれないなんて! (OA=Over Age。23才以下しか出場が認められない五輪サッカーでは、各チーム3人まで、24才以上の選手の参加が認められている)
 いやMan-U移籍の件ではつい取り乱したが、もちろん私も彼の力は認めてる。「今はMan-Uで足固めをするほうが大事」なんていう、うんざりするほど聞き飽きた御託はやめてよね。香川が本当にMan-Uにふさわしい選手なら、練習参加がちょっと遅れるぐらいどうってことない。香川本人に出たいかどうか聞いてみたの? 聞けば絶対出たいと言うに決まってる。クラブがなんと言うかは知らないが、少なくとも私がイギリス人Man-Uファンだったら、せっかくの地元開催なんだし、加入前にぜひオリンピックでお手並み拝見したいと思うはず。
 だいたい昔から、JFAはオリンピックには消極的だし、オリンピックへの選手の招集に関してはまるで罪悪みたいに思ってるとしか思えない。これがヨーロッパの強豪国なら、「オリンピック? へっ!」となるのもわかるが、そんな偉そうなこと言えた立場か? 世界から見れば日本サッカーなんてまだ始まったばかり。サッカー発祥の地でやるオリンピックなんて、世界にアピールするいいチャンスなのに!

 OAは明らかに穴だった守備をなんとかしなくちゃならないから、吉田と徳永というのはまだ許す。だけど、もう1枠をキーパーの林に使うってのは、枠を捨てたも同然じゃない。(普通、控えのGKの出番はまずない) この枠には私はマジで本田を呼んでほしかった。え? ロシア・リーグはすでに開幕してる? あんなところに骨を埋めるつもりはないから関係ないよ。それで干されりゃむしろ好都合だし。(完全に利己的な立場で語ってます)
 本田は彼ひとりいれば勝てるという選手ではないが、彼ひとりいないだけで負けるという選手にはなっているし、何より面倒見がいいリーダー気質なので、あのホワホワした坊やたちをまとめあげて活を入れるにはぴったりだ。清武や酒井宏樹はすでにA代表にも呼ばれて、それなりに結果は出してるけど、やっぱりなんかホワホワした感じがするよねえ。
 そういや守備のOAには闘莉王をという声もあって、本人は大いに乗り気でアピールしてたみたいだけど、闘莉王だとガッツはあるけど、活を入れすぎて殺しちゃいそうだし、やっぱり本田ぐらい優しさがないと無理。
 それに4年前の北京オリンピックの敗戦を、誰よりも悔しがってるのは人一倍負けず嫌いの本田だと思うのよ。敗退が決まってピッチに寝転がった本田の姿が、ドイツ・ワールドカップでの中田の姿とダブって、「かわいそうになあ」と思ったもん。彼としてもぜひその雪辱をしたいはずで、来いと言えばチェスカなんか放り出して来ると思うんだけどな。

 とにかく本田がいれば中盤が引き締まるし、頼りないボランチの補佐もできるし、ゲームメイクもできるし、フリーキックもできるし、要するになんでもできる天才だし、本田と香川がいれば、このチームでもメダルに手が届くんではと思ったんですよ、私は。ただ、それ抜きではかなりきついなー、まして緒戦は世界王者のスペインだし、やっぱり無理かも‥‥と、さすがの私も楽観はしてなかった試合だったが、結果はこれですよ。

スポーツ

ロンドン・オリンピック
サッカー男子 日本=スペイン戦
(グラスゴー ハムデン・パーク)

スペイン相手の先制ゴールを喜ぶ選手たち (左から清武、大津、吉田、酒井宏樹、東)

 これがフラグでなくてなんだろう! まさにワールドカップの再現だった。大津がゴールを決める前から、私は勝てるんじゃないかと思っていた。
 どこが再現かというと、これぞ東洋の神秘! 科学でも解明できないし、私もなんでかわからないし、外人から見れば不気味としか思えないだろうが、日本代表は大舞台で、なんかのスイッチが入ると、いきなり豹変して違うチームになることがあるんですよ。南アフリカの岡田ジャパンがまさにそうだった。直前の試合のどれを見ても、ただのへっぽこチームだと思ってたのが、いざピッチで対戦してみたら、抜き身の刀を引っ下げたサムライ集団だったから、対戦相手はみんな度肝を抜かれたんだが、今日のスペインもそんな気分だったはず。
 いや、ある意味、岡田ジャパンよりエライ。岡田ジャパンは負けないためにプライドも戦略も捨ててかかったが、この人たちは本来の日本の戦い方、で、なおかつ敵のスペインの十八番のパス・サッカーで正面から勝負を挑んで勝ったから。なんでこいつらにこれができるんだよ? っていうかこれができるならなんでもっと早くからやらないんだよ?
 思えば以前から、日本のパスサッカーを「スペインみたい」と言われるたびに、「いくらなんでもそれはほめすぎでしょう」と思っていたが、今日はほんとにスペインだった、っていうか、スペインが日本みたいだった、って、自分でも何を言いたいのかよくわからなくなった。何もかも謎でしかないが、これが東洋の神秘ってやつでしょう。

 それで試合はというと、余裕のスペインはいつものように華麗なパス回しをしようと思ったら、鬼のような激しいプレシングでパスはおろか、ボールを持たせてもらえないばかりか、完全にお株を奪われてパスを回され、こんなはずはないと思ってる間にコーナーキックから失点。あせりまくってフォワードの永井をつかまえようとしたDFマルティネスがレッドカードで退場となり、残り50分を10人で戦うはめに。その後も繰り返し自陣に攻め込まれ、日本の拙攻に助けられはしたものの、とうとう満足なシュートも打てないままに1-0で試合終了。
 それに対して、日本は次々にスペイン・ゴールに襲いかかり、結果こそ1-0だったが、フィニッシュさえもうちょっとなんとかすれば、日本が4-0や5-0で勝ってもまったくおかしくない試合、ってすごいな。内容のすべてでスペインを圧倒していた。アンダー世代というくくりがあるとはいえ、死に物狂いの辛勝を続けたワールドカップの日本代表より、まるで余裕の勝ち方じゃない。このほんわかした坊やたちに、なんでこれができたんだ!

 これはワールドカップでも言われたことだが、日本の勝因を一言でいえば、「全員が90分間狂ったように走り回る」ってことかな。ペース配分とか、怪我とか、その後の試合とか関係なし。「緒戦からまるで決勝戦みたいな戦い方をする」というのも、前にも聞いたせりふだが、今回も聞いた。逆に言うとそこまでしないと勝てない相手なんだが、これこそしようと思ってもそうそうできることじゃないからねー。
 そういや南アフリカで何に感動したかと言って、本田のゴールやFKよりも、この走りだった、と今になって思い出した。特に岡崎、長友、松井、大久保あたりが、守備に攻撃に狂ったように全力疾走で上がったり下がったりを繰り返す様子は、なんか「このまま心臓が破裂して死んでもいい」と思ってるような感じで、かっこいいとかなんとかいう以前に、鬼気迫るものを感じた。(失礼、長友だけは余裕でした)
 今日の人たちも同じような走りを見せていた。それによってスペインのパスをカットするばかりか、きびしいチェックでそもそもパスを出させない。伝家の宝刀を封じられたスペインは手も足も出なかった。

永井と退場になったマルチネス。この体勢でも前へ突進することをやめない永井を止めるには反則しかなかった。っていうか、この顔が突進してくるのを見たら思わず殴り倒したくなるかも(笑)。

 それに今日は本物のスピードスターがいた。名古屋の永井謙佑である。結果としてシュートをことごとくミスったが、それでも永井の走りはよほど印象的だったらしくて、海外でも永井の話で持ちきりのようだ。
 永井のことはプロ入り前からアンダーの試合を見て知ってたし、南アフリカ・ワールドカップにも帯同していたし、速いのも知っていた。ただ足の速さでは宮市がいたからねえ。
 宮市より永井の方が速いという人もいたが、宮市は足が長いせいでゆっくりに見えるだけだろうと思ったし、この人こそ日本人によくいる速いだけの選手だとばかり思ってた。
 何より宮市が高校出てすぐアーセナルにスカウトされたのに、永井は大学に行ったというところだけ見ても、力の差は歴然としていると思ってた。
 大学を出て名古屋グランパスに入ったのだが、プロではいまいちみたいな話を聞いていたし。(実は今年になってからは絶好調らしい) アンダー代表でもしばらく見てなかったので、てっきりもう終わった選手かと思っていたよ。(実は私が宮市に注目して永井を軽視していた本当の理由はルックスの違いなんだが、かわいそうすぎるので内緒)

 それでとにかく走る走る! ディフェンスの裏へ矢のように飛び出すカウンターもすばらしいが、ボールを奪われるとハチのようにしつこく追いかけ回して、攻撃の起点を封じる守備面でも貢献していた。普通これだけの走りは90分は続かないはずだが、たまたま2人が足を痛めて交代枠を使ってしまったため、最後まで走らされるはめに。それでバテるかと思ったら、さすがに表情は苦しそうだったが、それでも最後まで走り抜いた。
 しかし、これだけ速いと見ていて気持ちいいなあ。必死で併走しながら置き去りにされたスペインのDFが、「ええーっ?!」という顔になるのがおもしろいし気持ちよい。加速がすごいと言われるが、本当に奥歯のところに加速スイッチが付いてるみたい。いろんな形容を読んだが、「リードの切れた犬」って表現がぴったりで笑った。
 確かにボールを追いかけて走る走り方が犬っぽい。この手のスピードスターでは長友が有名になったが、長友は猪突猛進という感じで、猪突したあとはつぶれることが多いのに、この人は機動性もあるし。ただし、スタミナでは長友の比じゃないけどね。永井は今にも死にそうな顔で走るけど、長友は涼しい顔でこれぐらい走るから。
 それに強い。ひところ速い選手をバカにしてたのは、日本人には足が速いだけで軽いタイプが多かったからだが、この人は長友以上に体幹がしっかりしている感じ。
 レッドカードのシーンも、マルティネスが併走しながら激しく体をぶつけてきたのにびくともしない。しょうがないので、両手でユニフォームのパンツとシャツをつかんで引きずり倒そうとしたのだが、体勢を崩しながらもまだ突進し続ける。(それが上の写真) それでもうどうしようもなくなったマルティネスが体ごとのしかかってつぶしたのでレッドを取られた。これはいくらなんでもやりすぎだと思うが、確かにそうでもしなきゃ止められないからねえ。ただ、その後のシュートミスを見ていると、あのまま行かせてもたぶん点は入らなかったんじゃないかと思うけど(笑)。後半を見ながらマルティネスは地団駄踏んだだろうなあ(笑)。
 おっと、永井(とシュートを外したほかの皆さん)の名誉のために言っておくと、あれは単なる拙攻ではなかったよ。なにしろスペインのゴールを守るデ・ヘアはMan-Uの正ゴールキーパーですから。(Man-Uのことは見捨てたはずなのに、こういうときだけ得意げ)

 最初は私もイライラしてた。シュートチャンスでいきなり消極的になって横パスしたり、宇宙に打ち上げるのは、昔の日本代表そのものだったんで、まだこれやってるのかよ!と思って。昔と今の代表の違いは攻撃意欲の差だと思ってたから。でもよく見てると、これはキーパーがうますぎるんだと気づいた。うまい具合に体を入れてシュートコースを邪魔してるんだよね。これだけうまくて、これだけ体の大きいキーパーとはほとんど対戦してないはずで、その辺、経験の浅さが露呈したかも。「日本はもうシュートするのをやめて、ドリブルでそのままゴールに突っ込むべき」という2ちゃんの意見には賛同するが。
 しかし時代は変わったなあ。セットプレイでしか点が取れなくて、もちろんパスも回らなくて、「誰かひとりぐらいドリブルで切り込むやついないの?」と嘆いていたのはそんな昔じゃなかったのに。今や優秀なドリブラーがひしめいてるじゃない。もともとすばしこくて器用な日本人には向いてるし、これはA代表でもいい武器になりそう。

 日本は変わったと思わせられることは他にもいろいろある。少し前から「高さで競り負けることがなくなったなあ」と思っていたのだが、日本人大きくなってない? 上のメンバー表を見てもわかるが、実際背の高い選手が増えたし、空中戦で負けることが減った。これまた昔は背の高いチームと対戦すると(特に苦手にしていたのがオーストラリア)、文字通り手も足も出なかったのに。170cm台の小さい選手でもジャンプ力でけっこう負けないしね。特にスペインは小柄な選手が多いので、「日本の方がでかい」というだけでもけっこうな快感だった。(ただし足は向こうの方が絶対的に長い)
 あと、少しずつだが、フィジカルの強い選手も増えている。前は本田しかいなかったのに(嘘)。この永井も、両酒井も見るからにたくましくて強そうだし。一方で宇佐見や大津みたいにヒョロい選手もいるけどね。

 あと、DF陣をほめるのも忘れちゃいけない。OA入るまで守備はボロボロだったんで、これはやっぱり吉田と徳永の功績。特にA代表でも不動のセンターバックに定着しつつある吉田麻也の成長には目を見張らざるをえない。これは吉田自身はもちろんだけど、彼を抜擢して辛抱強く育て上げたザッケローニの功績でもあるなあ。
 なにしろ南アフリカでの闘莉王=中澤のセンターバックは日本代表始まって以来の鉄壁のコンビと思えたので、その2人をあえて使わず、若い吉田をレギュラーに据えたザックはやはり見る目があったとしか。
 私は試合前、「マヤと言えばスペインに滅ぼされたんだから、吉田は代わりにスペインに復讐してやらないと」というダジャレを考えてたんだが、試合後、本人がブログに「その昔、マヤ文明はスペインによって滅ばされたとか…。しかしマヤヨシダは踏みとどまった。笑」と書いてあったのを見て驚いた。すごい、この男、さすがブログ芸人だけのことはある。目を開けてるんだか閉じてるんだかわからないような顔してるから、ついバカにしがちだけど、実は頭もかなりいいんだろうな。
 徳永はよく知らない選手だけど、やはりすごく効いてた。パスを封じられてとうとう他に手段がなくなったスペインは終盤、放り込みを始めたんだけど、それをことごとく跳ね返すのが、胸がすっとした。あと、鈴木や山口の守備もすごくよく見えた。しかし山口蛍(そのまんまホタルと読ませる)ってまたヘンな名前! 鈴木大輔はルックスもいいので以後気をつけて見ていよう。

 いやー、とにかく気分がよかった。日本が勝ったというばかりでなく、スペインをボッコボコにしてくれたから。「まさか、こんなはずは‥‥」とどんどん表情がこわばっていくスペイン人を見てるだけでも気持ちよかったよ。ああ、ちなみにいつも言ってるように、イングランド(スコットランド他含む)の敵はすべて私の敵ですから(笑)。中でもこのところ、2008年ユーロ、2010年W杯、2012年ユーロを立て続けに制して、世界王者としていい気になってるスペインの(U-23とはいえ)鼻っ柱を折ってやったのは実に気持ちがいいし、イギリス人も喜んでるはず。(ちなみにこの世代のスペインは欧州チャンピオンになっている)
 だいたいU-23と言っても、スペインのメンバーのほとんどはプレミアかリーガの強豪チームのレギュラー張ってるやつばかり。日本なんか香川ひとりが入っただけで大騒ぎしてるのに! OAも含めれば、こないだ終わったばかりのユーロの優勝メンバーが何人もいる。ってところだけ見ても、日本が勝つことなんてありえなかったはずなのに、それを誰ひとりスターがいないヤンキーもどき集団が、完膚無きまでに叩きのめしたからね。これは酔わずにいられない。
 サッカーにはジャイアント・キリングなんて言葉があるぐらいで、大物を弱者が倒すことはありえないことじゃない。だけどそれはあくまでまぐれ。こないだのメキシコ戦がまさにそうだった。五輪直前の壮行試合のメキシコ戦は、2-1で日本が勝ったのだが、テレビで見ていた私でさえ、「え? なんでこれで勝っちゃったの?」というぐらい、押されに押された試合だった。こういうのがラッキーな勝利というのだが、今回は内容のすべてで勝っていた、というのがすごい。
 おまけに相手のお家芸をそっくりそのまま奪って展開して見せる一方、相手にはそのお家芸を使わせなかったところが気持ちいい。「放り込みサッカーをするスペインなんて、なんという屈辱! ざまー!」というのを海外の掲示板で見たが、まったく同感。考えてみたらパスサッカーなんて、日本のためにあるような戦術だよなあ。肉食人種のヨーロッパ人は、あえて本能を抑えてやらなきゃならないが、協調とか連携って日本人なら本能的に備わってるものじゃない。(その意味では中国人も韓国人も肉食人種)
 そのパスサッカーが世界を制したなら、いつかは日本が世界王者になる日も‥‥と、つい夢を見ちゃったが、メダルに期待してます。マジで。

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