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2012年2月21日 火曜日

映画評

春休み映画劇場 その3
Legion (2009) directed by Scott Charles Stewart

『レギオン』

片手にマシンガン、片手にナイフの死の天使
残念ながらこれはイメージフォトで、こんなかっこいいシーンは本編にはないので、あまり期待しないように

 それでこれはポール・ベタニー主演というだけで選んだ。ポール・ベタニーについては下記のリビューを参照のこと。

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現在製作中です。少々お待ちを。

 いちおうこれは何の映画かは知っていた。このタイトル聞いて、ジャケット見れば聖書もの、それもハルマゲドン系だってのは一目瞭然でしょう。「我が名はレギオン。我ら多きが故なり」ってね。やっぱり聖書は文語訳がしっくりくるね。しかし今、間違いがないかどうか確認のためにGoogleで「我が名はレギオン」を検索したら、ガメラばっかりが大量にヒットした。まったくこの国ときたら‥‥
 とりあえず私はポール・ベタニーの天使が見られるというだけでウキウキ。どうせこれもB級映画だろうが、それだけでもいいや。なんでかというと、天使を演じていい役者は限られるが、ベタニーは「生活臭がまったく感じられない、赤い血が流れているとは想像できない、人間離れした冷血動物な感じ」がなかなか天使にふさわしいと思ったのだ。

 映画が始まるといきなり、夜のLAの路地に、空からポール・ベタニーが降ってくる。あはは、これがほんとのfallen angel。っていうか、『ターミネーター』が始まるのかと思っちゃったよ。ベタニーが服着てるんでがっかりしたぐらい。(ターミネーターはいつも裸で降ってくる) でもすぐに服を脱いでくれるのでまたワクワクして見てたら、なんか鏡見ながら釣り針みたいなので背中をザクザク縫ってるんだけど? (ここの流血描写はちょっとセクシーでステキ。天使に赤い血が流れてるのかどうかは別として)
 ちょっと考えたらすぐに意味がわかった。つまり天国を追放されたときに翼を根こそぎもがれてしまってるのね。その傷口を間に合わせの針と糸で縫い合わせてるのだ。なかなか描写がリアルで細かくてよろしい。なぜかこれも『ターミネーター』の、シュワルツェネッガーが自分の体を切り裂いて修理する場面を連想させるんだが。

 ところで今、IMDbのシノプシスを読んでたら、「落ちてきたミカエルは自分で自分の翼を切り落とし‥‥」なんて書いてあるぞ。嘘だー! 翼なんかなかったもん。だいたい服着てたし。服のどこから翼生やすんだよ? 念のため、予告編を見たが、やっぱり翼なんかない。確かに落ちてきてすぐにナイフを振りかざす場面があるが、あれは首輪(?)を切り落としたみたいに見えたが。
 まあ、そんな真剣に考えるような映画じゃないので、どっちでも好きな方の解釈をどうぞ。私は私の説が正しいと思うけど。だいたい、翼がないからこそ「墜ちた天使」なんだしね。それはいいとして、しかし‥‥

ええっ、これがベタニー? 天使は天使でもヘルズ・エンジェルって感じよね。

 なんか今回すごい汚れ役でない? それに老けた? 全身刺青だらけだし、ムキムキだし。天使役って聞いたから、久々に美しいベタニーさんが見られると思って期待したのに! (以前はブロンドやゲルマン顔が好みじゃないとか書いてたくせに) だいたい羽をもがれた天使なんてー! しかし、前に「年取ったらルトガー・ハウアーみたいになるかも」とか書いてたが、本当にそうなってきたみたい。それはそれでいやじゃないが。
 もうひとつ、予想外だったことがある。堕天使だからして、私はベタニーは当然ルシファー役なんだと思ってたのだ。だってそうでしょう。あのルックスからして、この人はやっぱり悪魔、殺し屋、変質者のほうが絶対に似合うから。ところが彼は大天使ミカエル(どうしても英語でマイケルとは書けませんな、これは。それを言うならルシファーだってルキフェルなんだけど)だというのだ。えー、なんで?

 早くもネタバレだが、実は神が「もうこいつらぜんぜんダメ、見込みなし」というので、また人類を滅ぼすことにして、ミカエルはそれに反対したので、神の怒りに触れて落とされたのだ。ならばミカエルが人間の軍勢を率いて、華々しく神に戦いを挑む‥‥となるのが普通だと思うが、この映画にはそんな予算はない。〈関係者でもないのになぜ断言する?〉 そのため、話は予想とかなり違う方角へ転がっていく。

 LAのミカエルは落ちてきたところにほったらかしにされて、舞台は唐突に砂漠の真ん中にあるみすぼらしいダイナーに移る。このダイナーの名前がいかにもわざとらしくParadise Fallsというんでなかったら、あまりの関係なさに面食らっただろう。
 ここで天使も神もほっといて、このダイナーに集まった人々の紹介がなされる。

 まず、このダイナーの経営者ボブ(Dennis Quaid)と、その息子ジープ(Lucas Black) しかしアメリカ人はなんで子供に犬のような名前を付けるのか? 愛称としても息子を犬の名前で呼ぶか?)の親子。この2人は似たもの同士で、どっちも人はよさそうなんだが不器用な負け犬ってところが共通している。父ちゃんはこんな人里離れたところにダイナー建てて母ちゃんに逃げられてしまうし、息子は身重のウェイトレスに恋しているのだが、彼女の腹の子供は他の男の子だし、だいたい彼女は彼のことなんてまるで愛していない。
 その身重のウェイトレス、チャーリー(Adrianne Palicki)は、要するに男にヤリ逃げされた、これまたありがちな人生の敗残者。従業員はもうひとり、気の良さそうなコックのパーシー(Charles S. Dutton)。
 そこへ訪れる客は、車が故障してやむなく足止めされているアンダーソン一家。見るからに他の連中とは人種が違う中流階級の一家で、皮肉屋の夫と気取った妻、ティーンエイジャーの娘は反抗期真っ最中。さらに、ここに正体不明の黒人カイル(Tyrese Gibson)が電話を借りに来て加わる。(カイルの正体は後に明かされたのかもしれないが、その頃には私はあきれてしまって、ちゃんとまじめに見てなかった)

実はこの人たちが本当の主人公。左からパーシー、ジープ、チャーリー、ボブ、カイル。

 いや、客はもう1人。やたら愛想のいい、足の悪いおばあちゃんが1人でやってくるのだが、チャーリーに子供のことをあれこれ尋ねたあげく、いきなり牙をむいて襲いかかり、アンダーソンの夫の首にかみついたかと思うと、天井を蜘蛛みたいにシャカシャカと這い回る(笑)。いやー、これは笑った。かわいいおばあちゃんがいきなり汚い言葉を吐き散らすのも笑ったが、そのあとのアクションが完全にギャグ。これギャグのつもりだよね? なんか予想してたのとは、ぜんぜん違う方向に話が暴走していく!

 ここでまたネタをばらすと、実はこの婆さんはレギオンの偵察役。彼女を先触れに、この後、続々とレギオンがやってくる。というのも、実はチャーリーのお腹の子こそは、生き延びれば、人類を救う救世主になるはずだからだ。レギオン、そして彼らを送り出した神の目的は、その子供を産まれる前に殺すこと。そして、ミカエルは聖母チャーリーとその子をレギオンの手から守るために地上に降り立ったのだ‥‥

 ちょーーーーーーーっと待て! なんかそれって本当に『ターミネーター』の筋立てそのものじゃない? 単にスカイネットが神にターミネーターがレギオンにカイル・リースがミカエルに置き換わっただけで。それを言ったら、オープニング・シーンはまんま『ターミネーター』だったし、カイルという人物も出てくるし、もうこれはオマージュの領域を越えて、パクリって言うんじゃ‥‥?
 なら、いっそ『ターミネーター』にしちゃえば、まだそのほうがおもしろかったのだが、この映画にそんな予算はない

 そこへやっとミカエルが到着。彼はみんなに事情を説明し、銃を配ってレギオンの襲来に備える‥‥
 あー、いちいち突っ込むのもヤボだが、なんで見も知らぬ、得体の知れない男が「俺は天使だ」とか、救世主だとか言うのを信じちゃうわけ? べつに奇跡とか超能力を見せられたわけでもないのにだよ。唯一彼らが見た超常現象といえば、あのばあちゃんだけなんだから。いくら脳みそがシンプルなアメリカ人とはいえ、この人たち信じやすすぎ!
 あと、この場面じゃなかったかも知れないが、「マイケルって誰?」 「神の軍団の将軍だ」とかいうやりとりも、事実っちゃー事実だが、なんかまぬけすぎ!

アイスクリーム・ヴァンから降り立ったアイスクリームマン

 そうこうするうち、レギオン第2弾(というわりには、また1人だけ)がやってくる。前のばあちゃんがアレだったから、今度もまたそのたぐいかと思ったら、それ以上だった。
 男たちが「何か聞こえる!」と耳を澄ます。そうすると普通は何か不気味な、あるいは暴力的な音が聞こえてくるものじゃない。ところが聞こえてきたのは、のんきなオルゴールのメロディー。これ、日本人にはピンと来ないでしょうが、アメリカではおなじみの、アイスクリーム売りのヴァンが鳴らしているメロディーなのだ。
 見ると夜の砂漠の一本道を、ライトをつけたアイスクリーム・ヴァンがやってくる。この映像と音楽はかなりシュールで、私は「あははは‥‥」という脱力笑いが止まらなくなる。そこからおりたったのは、やはり制服姿のアイスクリームマン。
 でもアイスクリームは売ってくれなくて、いきなり手足がゴムみたいにビローンとのびる。ばあちゃんのあれとか、この辺のクリップはオフィシャルサイトのフラッシュやトレーラーで全部見られて、ネタばらししちゃってるので、興味のある人は「レギオン オフィシャルサイト」でググってみればいいと思うよ。ていうか、この映画の見所はぜんぶ予告編に入っちゃってるし。

 いや、なんかこの映画好きになってきちゃったよ(笑)。この荒唐無稽さと脱力ギャグはかなり評価してもいい。ちょうど、ロメロのゾンビへのオマージュであるホラー・コメディ、『バタリアン』(Return of the Living Dead)や、『ショーン・オブ・ザ・デッド』を私が高く評価しているように。だって、ここまで見ればてっきりこのままギャグ路線へ行くんだと思ったのよ。それで次はどんなのがやって来るのか楽しみにしていたのに。しかし、予算もアイディアもこれで尽きちゃったみたいで(笑)、そんなわけで、このあとのレギオンは集団で襲来するが(「あまたなるもの」だからこっちのほうが正しい)、ゾンビ・メイク以外は特におもしろいのはなし。単なるドンパチの銃撃戦になってしまってつまらない。

 んんんん?? ちょーーーーーーーっと待て! なんかそれって本当にゾンビ映画そのものじゃない?(あえて「ロメロの」という枕詞は付けない。こんなのといっしょにされちゃ心外だから) 単にゾンビがレギオンと名前を変えただけで。たまたま一箇所に集まった少人数の烏合の衆が、孤立した一軒家に籠城して、次から次へと押し寄せるゾンビと戦うっていうのは、ゾンビ映画の定石そのもの。窓をガチャーンと割って手が伸びて、女が「キャー!」と言うところなんか、もう目をつぶっていても見えますね。
 そのレギオンが、車に乗ってくるところだけはゾンビと違うが(さすがに砂漠は広すぎてゾンビでも歩いてくるのは無理でしょう)、車から降り立ったところを見たら、どこからどう見てもゾンビの群ではないか。要するに身なりもさまざまな老若男女が、傷や血糊のゾンビ・メイクをして、「うがー!」と言いながら、ゾンビにしてはやや小走りで襲ってくるわけ。風船を持った幼い少女がまじってたりするあたりも、いかにもゾンビだし。夜の砂漠を、ライトを付けた車列が一列縦隊でやってくるところは、『ドーン・オブ・ザ・デッド』の暴走族の襲来みたいだし。『ターミネーター』になるのかと思っていたら、いきなりゾンビに。まあ、ゾンビは低予算でもバカでも撮れる映画の代表みたいなものだから、しょうがないか。しかし、天使はどうなってるんだ!

 するとミカエルの説明があるんだが、レギオンというのは普通の人間に悪魔ならぬ天使が取り憑いたものだと言うのだ。惜しい! これがデーモンなら『デビルマン』になるのに! いや、こんなのといっしょにされちゃ『デビルマン』がかわいそうか。しかし、百歩譲ってデーモンなら、まだこの所業も理解できる。ゾンビなら元が死体だから、醜いのも不潔なのも下品なのもバカなのもしょうがないなと思える。しかし天使が憑依してこれっすか? 天使っていったいどういう連中なの? なんでここまで下品で品性卑しいの? ミカエルもこういうのの同類なの? ていうか、こいつら本来ミカエルの部下のはずなんだけど。
 もう頭が爆発しそうなので必死に考えた。これはあれか? 『ロード・オブ・ザ・リングス』で、ゴブリンは拷問されて気の狂ったエルフのなれの果てだっていうあれ? でもこの人たち、神から直接遣わされて送り込まれたんだけどな。それとも、『デビルマン』で人間と合体したデーモンの多くは発狂して死んじゃうのと同じで、人間と合体した天使は発狂して理性を失っちゃうとか? なんかまじめに考えるのがバカくさくなってきたので、やっぱりやめた。
 ミカエルそのものも謎だらけなんだけどなあ。とにかく怪力らしいことを除けば、天使らしさがどこにもない。そもそも傷つくし、血を流すってことは、最初は彼も人間の肉体に憑依してるのかとも思ったけど、落ちてきたときからこうだったし、翼のあともあったしなあ。罰として、神に神通力を奪われたということなら納得できるので、一言そう言ってくれればいいのに。
 しかし、もう天使のイメージがた落ちですわ。なまじっか、ミカエルとかガブリエルとかは、さんざんファンタジーやホラーで取り上げられて、しっかりイメージ固まっているだけに、これはないわ。

墜ちる前の天上のミカエルさん。彼がきれいめの姿で出てくるのはこの回想シーンだけ。
見るからに絵に見えるマットペインティングの前でポーズをとるが、なぜか頭の光輪がない。

 というわけで、人間集団は手に手に銃を持って、ゾン、じゃなかったレギオン軍団を迎えうつが、相手もどっこいどっこいの戦闘力なのでほぼ互角。
 言うだけむだだが、ロメロなら、っていうかまともなゾンビ映画なら、ここはギリギリと神経苛まれるようなテンションがみなぎり、息が詰まる場面なんだが、こいつらはのんきに身の上話なんかしている。これを見ていてまたひとつ、ロメロがなんで偉大かに気付きました。
 B級映画の特徴のひとつ――ホラー映画で脇役が突然、子供時代の思い出とか、これまでの人生についての回顧を語り出したらそいつは死ぬ。あるよなー、ホラー映画に限らず、いきなり登場人物がおセンチな自分語りを始めるのって。前にも書いたが、ロメロの登場人物は一切よけいなことを語らない。だから彼らの生い立ちも素性も謎に包まれたままなのだが、彼らが明日もないような情況に置かれていることを考えると、過去なんかどうでもいいっていうのはよくわかるのだ。それに対して、この映画ではそういうことが一度ならず二度もあるので、そこらもいかにもB級臭の元。

 とまあ、すったもんだしているうちに脇役たちは死んでいき、チャーリーは無事出産する。いや、この子が産まれたときも星が輝いたり三博士が訪ねてきたりも、奇跡っぽいことは何ひとつ起こりません。ただの新生児。「ほんとに救世主なのかよ?」と言いたくなる気分。
 でも、ミカエルの言葉が本当だった証拠に、敵の親玉が自ら赤ん坊を奪いにやってくる。ミカエルのライバル、大天使ガブリエル(Kevin Durand)である。「おまえたちがかなう相手ではない」ということで、人間たちは脇へ置いて、やっとミカエルの出番。天使同士の一騎打ちになるのだが、間違っても幻魔大戦とかハルマゲドン的なものを想像しないように。単に取っ組み合って殴り合うだけですから(笑)。天使の殴り合い! 頭が‥‥。ガブリエルが持ってるトゲトゲ付きの棍棒は、『ロード・オブ・ザ・リングス』のサウロンの武器にそっくりなんだけど。ガブリエルってこんなもの振り回すようなガサツなキャラじゃなかったはずなんだけど。
 もう思い出したくないから詳細は避けるが、天使の力のほとんどを失っているらしいミカエルはあっさり敗退。でも天使だからなぜか死ぬと死体ごと蒸発してしまう。勝ったガブリエルは赤ん坊を抱いて逃げたチャーリーとジープを追いかけるのだが、絶体絶命のところで、なぜか翼が戻ったミカエルが天から降臨。ガブリエルをやっつける。なぜか神様に許されちゃったみたい。なんでだ?!とかいう突っ込みは無用。
 それで若い2人と赤ん坊は生き残った人類のキャンプに逃げ込んでめでたしめでたし。あー‥‥。

 これだけパクリまくったあげくに破綻したストーリー、もうこれ以上なぶり者にしてもしょうがないので、役者の話に行く。

なぜかポスターだけはかっこいいんだよな。私もベタニーの壁紙は保存したけど。
こういう主要登場人物のひとりひとりのポスターを作るのは『マトリックス』以来の流行。

 ああ、その前に、まだ似た映画があるのを忘れてた。やはり天使が出てくるということで、『ゴッド・アーミー』(God's Army / The Prophecy)と、『コンスタンティン』だ。どっちもこれと大して変わらないB級映画だったが、『ゴッド・アーミー』はクリストファー・ウォーケンのガブリエルや、ヴィゴ・モーテンセンのルシファーという配役だけでもうっとりだったし、『コンスタンティン』は天使じゃないけど、キアヌーが死ぬほど色っぽかったし、ティルダ・スウィントンがガブリエルだったしで、けっこう興奮して楽しめた。

やっぱりどう見ても天使に見えないが、『ターミネーター』や『ブレードランナー』の登場人物には見えるミカエル

 で、今回はやっぱりポール・ベタニーのミカエルをどう評価するかよね。私の結論としては、これがミカエルだと思わなければかなりイイ。こういう汚れ役は新鮮だし、アクションもできるってのを発見したのは新鮮だし、ただ顔つきから言ってやっぱりルトガー・ハウアー(を若くして繊細にしたの)に見えてしまうのだけが難点か。
 てっきり、絵に描いたような白皙金髪碧眼で、天使役にふさわしいから登用されたのかと思ったんだけどなあ。これだけ汚してちゃ誰でもよかったような気も。
 あと、上にも書いたが、ミカエルはあくまで添え物なので、出番や見せ場が少なすぎる。
 ただ、この人は意外といい体してるし、血も似合うし、見てていやではなかったな。映画は嫌いだけど『ダヴィンチ・コード』の殺し屋のほうが百倍魅力的だったけど。
 しかし、写真を探しながら最近の写真を見たら、太った? なんかまん丸顔になってたぞ。この手のヘビみたいな目つきの男が太ったら価値ないと思うんだけど。どっちかというとこの人には、年取ったらクリストファー・ウォーケンみたいになってほしかったんだけどな。
 あと、天使に変なアメリカ訛りでしゃべらせるな! せっかく天使は2人とも非アメリカ人を使ってるんだから。(私は聖書の人物がアメリカ語で話すのがどうにも納得いかない)

 じゃあ、天使ついででガブリエルのケヴィン・デュランドについて。なんかこの大味な感じがきっとオーストラリア人かカナダ人‥‥と思って見ていたが、やっぱりカナダ人だった。映画で見てたら変な顔、と思ったが、素顔を見たらけっこうハンサムなのね。単なるミスキャストか。
 しかもこのキャスティングと設定には、いくらいい加減なB級映画と言っても見過ごしにできない大きな間違いがある。

どう考えてもミカエルとガブリエルは配役が逆でしょうが!

 ミカエルは軍団長なんだから、そもそもミカエルがレギオンを率いて攻めてくるほうが理屈にも合うし、デュランドはベタニーよりガチムチ体型なので、あっちのほうが戦士役にふさわしい。一方、聖母マリアに受胎告知に来たのはガブリエルなんだから、やっぱりチャーリーに受胎告知に来るのもガブリエルでなくちゃ! ベタニーは整った顔立ちで知的な感じがするのもガブリエルにふさわしい。
 なんでわざわざキャラクターを逆にしたんだろう? もしかしてこの映画の製作者って聖書読んだことがないんじゃ‥‥?

 もうひとつ、天使についての大疑問。なんで2人とも羽が黒いんだ? 実は『コンスタンティン』でも天使の羽が黒い(正確にはあそこでは灰色だが、こっちは真っ黒)と言って不思議がってたんだが。ミカエルは神に見放されたから黒いのかと思っていたが、ガブリエルも同じ色。最近のアメリカじゃ、天使は黒い羽ってことになってんだろうか? 黒い翼って私には悪魔の象徴にしか思えないんだが。

 人間に話を移して、聖母チャーリーのエイドリアン・パリッキ。色っぽい、というところだけでいいことにする。が、見るからに売春婦顔なのはいいのかな? なんか今までの救世主とはずいぶん違うみたいなんで、こういう聖母でもいいのか。
 意外と拾いものだったのが、ダイナーの店主を演じたデニス・クウェイド。若い頃は好きでも何でもなかったんだが、年とったらいい感じに枯れて、いい顔のオヤジになったねえ。それにくらべて息子役のルーカス・ブラックはいかにもありふれてつまんないアメリカのガキ。いちばんの儲け役なのにねえ。
 黒人2人は2人ともかっこいい。特にチャールズ・S・ダットンには、『エイリアン3』を見て惚れた。あの映画での役柄が実に泣かせるものだったので、あの声を聞いただけで泣いちゃう。ここではあんなコワモテでなく、優しいおじさんを演じていた。
 カイルを演じたタイリーズ・ギブソン(という読みでいいのか? まったくアメリカ人の名前はわからん。日本の配給会社が付けてる読みもでたらめだから信じられないし)は、やたらハンサムでかっこいい黒人。アクション映画とかに出たら人気出そうだな、と思ったら、もう出てるか。

 というわけで、B級のくせに、役者はけっこういい有名俳優を揃えているのだ。だから芝居そのものはけっこう見られる出来になっているので、その半面、ストーリーやクリーチャーの安っぽさに笑ってしまう。まあ、それは『ゴッド・アーミー』や『コンスタンティン』にも言えたが。
 結論としては、聖書を引用した映画にろくなのはないってことか? (ホラーとファンタジーに限っての話。もちろん善良な天使が出てくる人畜無害のどうでもいいお話はいっぱいあるが、そういうのは興味ないのでパス) 唯一まともなのは悪魔を描いた『エクソシスト』だってのが皮肉かも。私は普通に女と見まがう美青年の天使が見たいだけなんですがねえ。

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