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2012年1月4日 水曜日

スポーツ

サッカーヨタ話その3
オリンピックと日本代表と北朝鮮

オリンピック・スタジアムの完成予想図
これは陸上競技場でサッカーはここではやらないみたいだけど

ロンドン・オリンピックに期待する

 いよいよ、オリンピック・イヤーですね。ワクワク‥‥。なーんちゃって、オリンピックにもほとんど興味失ってて、前回の北京オリンピックなんか、中国政府のやり口が気にいらないせいもあって、ほとんど見てないんだけどね。
 見るのはほとんど男子サッカーぐらいだけど、それも日本代表はたいてい開会式の頃にはあっさり敗退しちゃってる(サッカーだけは開会式に先駆けて始まる)から、それっきり見ないというのがパターン。なのになんで今回はウキウキしてるのかわかります?
 もちろん場所がロンドンってこともあるけど、それだけじゃないの。サッカーがすごい楽しみなんだよー。だって、今大会はなんとサッカー英国代表が参戦するというんだから!

 と書いても、サッカーに疎い人には、「え? それがどうかしたの?」と言われてしまうと思うので、ちょっと解説。
 ワールドカップとかを見ればおわかりのように、イギリス(UK)はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4協会がそれぞれ別々に代表を送り出している。なんでイギリスだけが特例なのかというと、4協会のほうがFIFAよりも先に存在していたからということらしい。要するにフットボール発祥の地なので、そこに敬意を表して多少の特例は認めているということ。
 それにひきかえ、オリンピックを運営するIOCにはそんなしがらみはないし、そもそも国家単位でしか出場を認めていない。ならばオリンピックはUKで出ればよさそうなものだが、4協会は当然のように呉越同舟には大反対するので、オリンピックにはイギリスは出場していなかったのだ。たとえ、イングランド・チームがオリンピック予選を兼ねた試合で勝って出場権を得ても、単独では出場できないため、いつも出場を辞退していたぐらいなんである。(昔は事情が違ったようで、サッカーがオリンピックの公式種目となった1908年ロンドン大会とその次の1912年は英国チームとして出場して優勝している) 

 しかし、1948年から64年ぶりのロンドン・オリンピック、一番人気の種目で、しかもサッカー発祥の地で、イギリスが参戦できないのはあんまりだというので、早くからさまざまな根回しが行われてきた。それでやっとのことでまとまって代表を送り出せそうだと思ったら、やっぱり交渉決裂して瓦解。私はがっかりだったけど、もうしょうがないからイングランド代表を送り込もうということになっていたのだが、国民的行事にそれじゃああんまりだというので、直前になってまたも決定をひっくり返して、やっぱり統一チームで出ることが決定したらしい。(今度は覆すなよ、頼むから)
 外野としては、まったくもういい加減仲良くやれよ。ワールドカップだって統一チーム組んだほうが有利に決まってるのに、なんでそこまで伝統や過去に固執する?と思うところだが、当事者にとってはそうもいかないあれやこれやがあるんでしょう。言ってみれば日本と韓国・中国みたいなもので、なまじ歴史的因縁が深すぎ、なまじ近くにいるからこそ角突き合うみたいね。

 というわけで、土壇場でまた転ぶようなことがない限り、生まれて初めてサッカー英国代表(U23だけどね)が見られるので、私は今からドキドキ‥‥。ユニフォームは何着るのかなあ。この上は、1908年以来の優勝を期待してしまうね。
 問題は、あー、フットボールの世界じゃオリンピックがめちゃくちゃ軽視されていることぐらいか。この世界じゃFIFAの傘下に入っていない大会は余興としか見てもらえないのでね。でもこれって逆に狙い目だと思うんだよ。そんなだから、たとえ23才以下でも、いい選手はクラブが出したがらない。そのためオリンピックじゃ必ずしもその年代の最強選手が出てくるとは限らないし、出られたとしても、ろくに練習する暇もないから、ぱっとしないまま終わることも良くある。日本も香川クラスの選手はおそらくクラブが出してくれないだろうし。
 しかし! イギリスの選手はほぼ全員がイングランド・プレミアリーグでプレイしているのである。地元に世界最高のリーグがあるんだから当然だが。(リーガが何よ、ふん!) ということはプレミアさえ丸め込めば、選手動員はほぼOK。自国リーグなんだから、国益優先ってことで! オーバーエイジ(24才以上の選手も各チーム3人までは認められる)も大いに活用して。
 おまけに地の利があるからねえ。サッカーにおいてホームがどれだけ有利かは、日本や韓国でも自国開催ならあれだけやれるというのを見てもわかる通り。はっきり言って、イングランドが(スコットランド他は言うまでもなく)、ここ数年の内にワールドカップで優勝できる確率は限りなく低い。だけどオリンピックなら優勝だって夢じゃない。
 これまではどこが強かったんだろうと思って調べたら、ここ最近はアルゼンチンが2回連続で優勝してるじゃないか! アルゼンチンにだけは負けたくないし、そうあっさり負けるとは思えない。(もうメッシはいないもんね) それこそプレミアも含めて、国全体がなりふり構わず一致協力すればなんとかなるかも!
 ただ問題は、その一致協力がいっとう苦手な連中の集まりだってこと(苦笑)。なんかそう考えるとイングランド単独出場のほうがましに思えてきた‥‥だからあ! こういうときぐらいは仲良くやれよ! っていうか、やってください。万一オリンピックで優勝しちゃうようなことがあれば、国民は盛り上がるし、最高のオリンピックになること間違いないんだから。

 あと、大会の運営がちゃんとできるのかもちょっと不安。日韓W杯のときはチケット発行の不手際でさんざん振り回されたからね。(チケット販売を任されたのがバイロム社というイギリスの会社だったのだが、そこがめちゃくちゃいい加減な会社だった) あいつらそういう事務能力ないからなあ。っていうか、ヨーロッパ全体が適当な連中だから(笑)。
 とか思ってたら、さっそくチケット販売でミスしたりしてもめてるじゃないか。ほんとイギリス人って、他のことではすごく有能な面もある、っていうかたいていの面で有能なのに、事務能力だけはないんだな。 

 というところで、イギリスだけじゃなんなので日本の話も。もっちろん日本代表にも期待してますよ。特に北京オリンピックは私としてはかなり期待したので、3戦全敗のショックは大きかった。前にも書いたが、この時の日本代表のメンバーは、主なところだけ拾っても、吉田麻也、長友佑都、内田篤人、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、李忠成といった現A代表の主力メンバーがほとんど顔を揃えていたにもかかわらずである。とか言って、当時の私は彼らのほとんどの顔も知らなかったんだけどね。
 もちろん本田は知ってたけど、それほど気にしてたわけじゃなかった。むしろ、家長とか平山のほうが天才とか言われてもてはやされていたような記憶がある。とにかく北京オリンピックの前に、テレビで見たんだか雑誌で読んだんだか忘れたが、日本チームの紹介を見て、なんか今年はやってくれそうと思ったので期待してたんだよ! なのに、アメリカ、ナイジェリア、オランダに3連敗してグループリーグ敗退。

 もう細かいことは何も覚えていないんだが、とにかくむちゃくちゃくやしかったことだけは覚えている。これがあったから、2010年ワールドカップでも3戦全敗確定だと思って、まったく期待してなかったんだよな。だいたいメンバーも北京組が多かったし。
 今年はなんとしてもこの汚名をすすいでほしいね。まだ出られるかどうかもわからないけど。(出場国が少ないので、オリンピックのサッカーはある意味ワールドカップより狭き門なのだ) でもなんか若い選手を見てると、すごく楽しみな選手が揃っているので、ぜひがんばってほしい。
 こちらの問題は、若手の主力がどれだけ招集できるかだよなあ。同時期にワールドカップの予選もやっているので、香川は当然としても、清武とかはA代表に取られちゃいそうだし。ん? 1月の合宿のメンバーには清武入ってるか。あと、宇佐美、宮市とかの海外組がどれだけ呼べるかも不安だし、呼べても本番ぶっつけじゃ機能しそうにないし。
 オーバーエイジをどうするのかも気になる。(今のところは使わない方針らしい) 北京は遠藤が入るはずで、なのに怪我かなんかで結局OA抜きでやって惨敗したし。ぶっちゃけ反則だけど、できるものなら私は本田入れてほしい。彼も北京では相当くやしかったはずで、雪辱したいと思ってるだろうし、OAでひとり入れるとしたら本田以上になんでもできて役に立ちそうなのいないから。それで香川(彼は若いので、もともと出場資格はある)が出れば完璧じゃん。下手すれば優勝じゃない。
 もちろん無理なのはわかってますけどね。夢ぐらい見たっていいじゃない(笑)。女子はワールドカップ取ったんだから、男子もオリンピックぐらい取らせたいよ。メダルに手が届かなかったとしても悔いのない戦いをしてほしい。なにしろオリンピック代表ということは、実質、この人たちが2014年のブラジル大会の主力になるはずなんだから。ちょうど北京組がワールドカップ直前で、年上の代表選手たちを押しのけて主導権を握ったように。

 で、イングランド、じゃなかった、英国は夢じゃなく本気なんでがんばれ!

ワールドカップ アジア3次予選 タジキスタン戦

2011年10月11日 日本8-0タジキスタン 長居スタジアム(大阪)
2011年11月11日 タジキスタン0-4日本 ドゥシャンベ(タジキスタン)

 ついでだからA代表の試合についても。前はどこまで書いたんだっけ? そうだ、本田が故障して、「本田様のありがたみを思い知るがいい」という話だった。
 で、実際、そのまんまになってしまった。10月にはベトナムと親善試合をやったんだが、試合前は、「よりによってなんでベトナム? そんなんじゃ練習にもなりゃしない」という声ばかりだったのに、その弱いはずのベトナム相手に大苦戦。かろうじて1点取って辛勝したが、それにしても本田がいないだけでここまで劣化するかと、ため息の出るような試合だった。確かにベトナムも強くなってるけど、アジア3次予選で苦戦しているようじゃ(日本は1次、2次予選は免除)、最終予選はどうするの? まじでW杯出られるの?って感じだった。

 そのあとは10月のホーム、11月のアウェーと、タジキスタン戦が2戦続いた。これがまたいろんな意味でのネタ試合。タジキスタンは、本来出るはずだったシリアが失格になったので繰り上がりで出場権を得た。当然このグループではいちばん弱いというのは誰でも想像できたのだが‥‥

 まず試合前の監督のコメントからして変だった。

「われわれは日本のレベルをよく知っていて、ここで見栄を張るつもりはない。今回はあくまでも勉強に来た。日本の選手をよく見て、世界レベルのサッカーを勉強したいという謙虚な気持ちでいる」

というのだが、いくら弱小国でも試合前ぐらいはもう少し虚勢を張らないか? 日本では「謙虚な態度」ということで一気に株が上がったようだが、これ、私には謙虚というより卑屈な態度に見えたのだが。

「7日のベトナム戦も見たが、1−0というスコアについては、チャンスがあったが使え切れていないという印象を受けた。スポーツだからそういうこともあるだろうが、本来ならばもっと得点できたと思う。」

いや、それは事実だけど、あんなヘボ試合見てもまだ日本に勝てそうにないってのは‥‥

心ある人間なら同情せずにはいられない
あまりにもかわいそうなタジキスタンのゴールキーパー
、トゥイチェフさん

 それでいざ対戦してみると、結果はご存じの通り、日本が、8-0の圧勝。8点差のゲームなんて見たの、初めてかも知れない。岡崎とハーフナー・マイクと香川が2点ずつ、あと、駒野と中村憲剛が1点ずつ取ったのだが、私の目は日本の得点より、タジキスタンのゴールキーパーに釘付け。
 一見して他のチームメートより年上なのがわかる(35才)おじさんなんだが、この人が出てきたときから暗ーい顔して、マンガ表現で言う「おでこ一面に細い縦線」が入っちゃってるのよ。
 それで1点取られるたびに、その苦渋の表情がますます苦く暗くなってきて、「俺はこんなところで何してるんだ!」と叫び出しそうな、今にも泣き出しそうな顔してるもんだから、「もうやめてあげて! そんなにいじめないで!」と言いたくなるほど、ただひたすらかわいそうな人なのだ。
 それで8点目が入った頃には、右の写真でおわかりのように、もうすべてを捨て去ってあきらめきった、解脱の境地に達してしまっていた。彼自身はそれほど悪いキーパーではなく、ただ同僚が途方もなく下手すぎるだけなのに、本当にかわいそうでもらい泣きした。

 しかし、「サッカーは点が入らないのでつまらない」と非難する人に対して前に反論を書いたが、「点がバカスカ入るサッカーはつまらない」ことの、まさに例証と言える試合でしたな。本当にクソ試合だった。トゥイチェフさんがかわいそうすぎるということを除いても、8点も入る試合なんてただのいじめだし。
 それが証拠に、解説がセルジオ越後=松木安太郎といういつものコンビだったのだが、普通なら点が入ればはしゃぎまくるこの2人が、1点取るごとにだんだん口数が少なくなって、しまいには完全に黙りこくってしまったというだけでも、どれだけつまらない試合だったかわかる。
 大量点は日本がうまかったからじゃない。タジキスタンがほとんどサッカーをしてなかったから。監督が謙遜して「守備のチームというのもおこがましい」と言っていたが、確かにその通りで、まず攻めることは完全放棄。守備もほとんど棒立ちで、まったくプレスもかけない。あとはほとんどの選手がワラワラとボールを追いかけてるだけ。この人たち、そもそもサッカーを知らないんでは?という疑問がひしひしとわいてきた。
 タジキスタンと言えば旧ソ連だし、同じ旧ソ連のウズベキスタンはけっこう強いし、そのウズベキスタンと互角に戦っていたから、ここまで弱いとは思わなかった。正直、最初から試合を放棄してたとしか。
 ついでながら試合後のタジキスタンの監督のインタビューがまた、この結果を前にしたら当然とは思うが、試合前に輪をかけて卑屈なもので、ここまで行くとわざとやってるんじゃないかと思えてくるぐらい。

「われわれは日本を抑えられなかったが、これは単なる実力差であり、当然の結果であったと思う。日本代表はそれだけ偉大だった。昨日の会見で「なぜそんなに謙虚か」と質問されたが、その理由を分かっていただけたと思う。これは冷静な自己評価、自己判断として現実を分析した結果である」

って、勝ち誇って言うことか! やっぱりわざとだよ、これは!

 それで今度は敵地へ乗り込んでの2戦目も同じ展開になるかと思いきや、なぜか今度は普通にちゃんとサッカーをしていて、また日本が4-0で勝ちはしたけれど、圧勝という感じはなかったのも不思議な感じだ。わけがわからないが、アジアはやっぱり一筋縄でいかない。

 ついでにこのタジキスタン戦で代表初得点をあげたハーフナー・マイクについても。(しかし、いくら日本人だからって、この表記はものすごい違和感。なんでマイク・ハーフナーじゃいけないの? 戸籍上はともかく、スポーツ選手なんてニックネームや芸名で出てる人いっぱいいるんだから)
 とにかく日本が喉から手が出るほどほしい大型センターフォワードってことで、私も注目して見ていた。ただ、ああいう試合になってない試合で点取ってもねえ。なんの判断材料にもならないよ。
 それに初得点の時のパフォーマンスを見ていて、この人、ルックスは白人でも中味は完全に日本人なんだなーと思って、かえって白けた。確かに下積みが長かった人なので、代表での得点は死ぬほどうれしかったのはわかる。でも、うれしさをガッツポーズとかで表すんじゃなく、両手で顔を覆ったまま仰向けに倒れ込んでしまうという仕草が、なんか気持ち悪いほど日本人的。むしろサッカーの世界では、日本人でもまるっきり日本人らしくないセレブレーションやるのが普通だから、その正反対ですごい妙な感じ。それを言ったら、しゃべり方も言うことも、骨の髄まで日本人なんですけどね。氏より育ちとはまさにこのことか。
 もちろんいい選手であることに異論はないが、体格も背こそ高いし、骨格は白人なのに、ガリガリに痩せてて、線の細さが気にかかる。彼は両親の母国オランダのフィテッセに移籍が決まったが、向こうでガチムチに鍛えてもらってほしいな。

ワールドカップ アジア3次予選 北朝鮮戦

2011年11月15日 北朝鮮1-0日本 平壌(北朝鮮)

 というわけでタジキスタンも相当変だったのだが、変ということならこの国にまさる異常な国はないという北朝鮮。それでもホームの埼玉でやった1戦目は特に問題もなく終わったのでほっとしていたのだが、アウェーとなるとそうはいかなかった。だいたい私の覚えている北朝鮮戦といえば、ワールドカップ・ドイツ大会の予選の無観客試合。(その前のイラン対北朝鮮で、北朝鮮の観客が暴徒化したため、日本戦は中立国のタイで観客を入れずにやった) ほんとに北朝鮮でなんか試合できるのか?
 と思ったのは私だけじゃないみたいで、試合前からネットでは、「ちゃんと帰ってこれるのか?」だの、「もし日本が勝ったら拉致されて炭坑送り」だのといった憶測が飛び交った。ピリピリしてるのはあっちも同様で、取材陣も応援のサポーターも人数を制限された上、国旗もだめ、代表ユニフォームを着るのもだめという厳戒態勢。
 選手たちも例によっての「アウェーのいびり」を受けたようで、入国審査で4時間足止めされたとか、ホテルの部屋は至るところ壁が鏡張りで(監視用のマジックミラー!)眠れなかったとか、さすが北朝鮮(笑)。
 しかし見方を変えれば、もう3次予選突破を決めてしまっている日本にとっては、正直落としてもかまわない消化試合でしかない。それに相手はすでに3次予選敗退が決まっている格下。そのせいか、ザッケローニ監督は控え組の練習試合にするつもりだったらしく、いわゆる二軍で臨んだ。先発メンバーのうち、レギュラーなのは長谷部、岡崎、駒野、今野ぐらい。
 うーむ、本田ひとり抜けただけでもガタガタになってたチームなのに、こんなメンバーで勝てるのか? だいたいこの2軍のメンバーは、チャリティーとはいえ、けっこうガチ勝負だったJリーグ選抜との対戦で、まるで使えないことがばれちゃったんでは? とはいえ、そのヨレヨレ状態でも異常な強運に支えられて連勝街道を突っ走っているザックジャパンが、この期に及んで北朝鮮ごときに負けるという気もしない。

 というわけで、ドキドキハラハラの幕開けだったのだが、例によって間抜けな私は、いつものように7時から中継開始だと思いこんでいて、近所をほっつき歩いていたら、たまたま入ったリサイクルショップのテレビに代表選手が映ってる。「へえー、真っ昼間から特集番組やってるんだ?」と思って、のぞき込んだら特番じゃなく本番だった! 自転車に飛び乗って飛んで帰ったのは言うまでもない。
 しかし、客席のこの異様な人々はなんなんだ?

どこからどう見てもサッカーの試合とは思えない異様な雰囲気の観客席
日本から駆けつけたサポーターもこの通り軍隊の監視の中で居心地悪そう

 超満員のスタンドを埋め尽くすのは、制服なのか、それとも着るものがこれしかないのか、みんな同じような服装の、顔までクローンみたいに同じに見える人々の集団。(上の写真の人たちだけじゃなく、他に女性のグループもいるし、別の服装のグループもいるが、とにかくみんなクローン集団) さらにグループごとに指揮者みたいなのがいて、その人たちの合図で、お得意の一糸乱れぬ応援を見せる。もちろんマスゲームもあるし(笑)。明らかに今日のために動員されてきた連中で、声はでかいがおそらく誰ひとりサッカーがなんなのかもわかってないと見た。
 一方の日本サポーターは5万人の大観衆に対してたったの150人。しかも旗も横断幕も鳴り物も禁止され、軍人ににらまれながら弱々しく拍手するぐらいしかできない。あの無観客試合のときは、スタンドは空っぽだったけど、スタジアムの外に集まったサポーターが、中で試合をしている選手に届くほどの大声で90分間歌い続け、選手もそれに勇気づけられたというのに。あのときは私もついほろっとなった。
 しかし今回はそれとは天地の差だ。サッカーでホームとアウェーの差が大きいのは、サポーターの応援の力だってよく言うけど、ほんとかもしれない。私は間に合わなくて見れなかったが、国歌もブーイングで聞こえなかったんだって。なんなの、この国?

 しかし、スタジアムの険悪な雰囲気なんぞ精神力で跳ね返せばよい‥‥のだが‥‥「借りてきた猫のような」というのは、情けない日本代表を評して私が何度も使った比喩だが、ここでの日本代表(二軍)は借りてきたウサギの集団のようだった。とにかく顔だけ見てもビビリまくり、萎縮しまくり、完全に腰が引けている。なんなの、この人たち?
 どうせワールドカップには出られないし、もう後のない北朝鮮は、せめて日本をつぶして気を晴らそうとばかりに、ラフプレイも辞さずにガンガン攻めてくるのに、日本はそれに翻弄されるばかりで手も足も出ない。前半、それでも点が入らなかったのは、気合いが空回りした北挑戦がシュートを外しまくったおかげだ。それでもめった打ちに打たれまくっていたのに、日本のシュートはわずか2本。

 それでも私は楽観していた。少なくとも点は取られてないし、いくらなんでも北朝鮮なら1点ぐらいは取れるだろうし、アジア杯なんかでもこういう危ない場面は何度もあったけど、その都度切り抜けてきたし、このひどい状態を見れば、ザックが何か手を打ってこないはずはないから。
 しかし、北朝鮮は後半開始早々にゴールを決める。ザックも、中村憲剛を内田に、清武を李に、前田をハーフナーにと、次々カードを切ってきたのだが、かんじんの攻撃陣が点取れないんじゃどうにもならない。いや、フォワード陣は手をこまねいていたわけではなく、岡崎も、李も、ハーフナーも、それぞれに惜しいシュートはあったんだけど、オフサイドだったりして点にはならなかった。
 それで口あんぐりのうちに試合終了。歓喜する北朝鮮。

 あああああー!!! 非公式世界王者の座が!!!!!!!

 そうなんです。消化試合とはいえ、私がハラハラしていたのはここで負けると非公式世界王者が北朝鮮に移ってしまうからなのだ。
 なんだかんだでこれ、すっかり気に入ってたんですよ。イギリスのサイトなのに、行くとつねに日本代表のことしか書いてない(しかもなかなか的確な論評で読ませる)だけでも気分いいもんね。
 どうせならこのまま防衛記録を伸ばしてほしかったのだが、その記録も16試合で途切れてしまった。(しかし16試合負けなかったって、やっぱり奇跡としか思えない) もちろん永遠に勝ち続けるはずはないので、いつかは負けるとは思っていたが、どうせならヨーロッパの強豪と戦って負けてほしかったのに、よりによって北朝鮮とは!
 そもそも日本がアルゼンチンを倒してこのタイトルを手に入れたとき、「これで日本がアジアの変な国に負けたりしたら、いつまでもアジアの中をまわってることになるぞ」というようなことを言ってた人がいたが、まさにその通りになっちゃった。というのも、なにしろ北朝鮮というのは鎖国をしてる国なんで、対外試合なんてまずめったにしないのだ。ワールドカップにも出て来ないし。
 ただ、ある意味、北朝鮮がタイトル持ってるなら、日本はまたそれを奪い返す公算大なので、それはちょっとうれしいかも。ただし、UFWCの人たちは当分の間、何も更新する内容がないということになり、これじゃサイト存続の危機じゃないか。そもそも読者もアジアの話ばっかりじゃ退屈だろうし。 

 話を代表に戻すと、勝負は負けることもあるんだから、負けは責めない。だけど、こんな負け方はあんまりだ! いくら二軍とはいえ、こんなチキン野郎しかいなかったのか? つくづく心臓に毛の生えた本田が恋しいよ。あ、そういえば、あの異常な雰囲気の中でただひとり、いつもの通りのマイペースで涼しい顔していた選手がいたが、ご想像の通り内田でした。やっぱりあの子って‥‥
 アウェーでのいやがらせだって、中東なんかもっとひどかったじゃない。先輩からそういうの聞いてなかったの? 試合だって確かにラフプレイもあったけど、かつての中国みたいに殺しに来てるわけでもないし。そういえば、こないだも浦和の山田が顔を蹴られて顔面血だらけになってるのを見たけど、あれは中国だっけ、韓国だっけ?
 まったく、ゆとり世代はこれだから!って、言いたくないけど言いたくなっちゃうよね。私は「ゆとり世代」がどうしてあんなにバカにされるのかよくわからなかったのだが、最近になってそれを痛感させられたところなので特に。

 北朝鮮ぐらい、内戦中のシリアに行くよりよっぽどましじゃない。実際、シリアが失格にならなければ、タジキスタンの代わりにシリアと戦ってたところなんだからね。
 しかし今さらだが、なんでアジアってこういう国ばっかりなんだ(苦笑)。なんの因果で日本はアジアにあるんだ!って嘆くのはサッカーファンにはよくあることだけど。でも、そういうめちゃくちゃな国が、サッカーに関してだけは本気なんだよね。(しかもけっこう強い) 考えてみたらこれはこれですごいことだ。北朝鮮なんて政治外交ではあれだけでたらめな、やりたい放題やってるくせに、FIFAの言うことにだけは素直に従うんだから(笑)。それというのも、FIFAのご機嫌を損じて除名でもされたら、ワールドカップに出られなくなっちゃうから。いつも思うが、国際紛争なんかはもうすべてサッカーの試合で決めればいいよ。そうすればミサイルやなんかも捨てられて、楽しく見られて、困る人は誰もいないと思うんだが。
 とにかく確かに北朝鮮が異常な国なのは認めるが、社会主義国や独裁国家ってみんなあんなもんで、そうめずらしくもないじゃない。そうか、今の若いもんは昔のソ連とか知らないもんなー。昔の彼氏が子供時代(ということはもちろん、一般の観光客なんか入れなかった時代)にソ連に旅行したことがあって、その話をいろいろ聞かされていたから、私は今さら驚かない。
 ソ連と言えば、私もロンドン行く途中にトランジットで寄っただけだけど、ソ連時代のモスクワに降りたことあるし。トランジットと言っても、乗り換えの飛行機が4時間も遅れたから、あの異様な雰囲気はたっぷり味わえましたよ。まさにシベリア抑留って感じ(笑)。とにかく、本田のロシア移籍にあれだけ反対したのも、そんなこんなでロシアについてはめちゃくちゃ悪印象あったからなんだ。
 そういうんじゃなくても、ヨーロッパだって混雑する駅構内を、自動小銃持った兵隊が警邏しているようなところだからねえ。日本みたいな安全や平和って世界では稀なんだよと、ゆとり世代にいくら言って聞かせても通じないわけだ。

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