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2011年2月28日 月曜日

教育

大学入試英語を考える

(タイトルが思いつかなかったので、なんか偉そうなタイトルが付いてますが、ただの雑感でネタ3割ですので、あまり真剣に読まないように。ネタというのは、嘘ではないけど、多少は誇張してたり、極論なのを承知でわざと言っている、ということです)

参考資料 (技術評論社の雑誌『英語野郎』に連載した記事。pdf形式ですので、読むにはAdobe Readerが必要です)
「大学生の頭ン中」 前編
「大学生の頭ン中」 後編

 さすが早稲田は危機管理に敏感というのか、今回の「Yahoo!知恵袋入試問題流出事件」についても、さっそく「教職員はマスコミに余計なことを勝手にペラペラしゃべるなよ」という勧告がまわってきたので、たぶん数十人しか読んでない個人の日記だけど、その話はあえて避け、なんとなく思ったことを書く。

 今回に限らず、一流大学やセンター試験の英語の入試問題を見るたびに思うことがある。

(入試問題を読んで)
すっげー!!! こんなむずかしい問題解けるなんてかっこえー! こんな学生教えてみたいー!!!!
(その入試を通ってきた学生たちを教えてみて)
‥‥おまえら、マジで中学出てんの?

 って、この落差はなんなんだー! それでも昔の早稲田の学生(私が教えた中でいちばんレベルが高かったのが早稲田なので、つい引き合いに出してしまうがすまん)は試験問題のむずかしさとほぼ比例して勉強もできたけど、その落差が早稲田でさえも年々深まってるような気がする。ということは、東大でも京大でも程度の差はあれ同じはず。

 お世話になってる大学の悪口はあまり言いたくないんだけど、これだけ証拠を見せつけられちゃうとねー。現実として直視しないわけにはいかないでしょ。
 私が今の早大法学部で教え始めたのはもう10年以上前だけど、初めてここで授業したときは驚いた。それまで早稲田と言えば文学部(当時から、文学部入るようなやつはそもそも就職捨ててるってことで、ユニークな変わり者が多かった)しか知らなかったので。何に驚いたかというと、その几帳面さとまじめさ。とにかく授業中はシーンとして、ノートを取る音だけがカリカリと響く。あまりに真剣に一語一句ノートに取っているので、うっかり冗談も言えない雰囲気だったし、授業後は質問に来る学生が行列を作るという感じ。
 さすが法学部!と、何がさすがだかわからないなりに感動した。いつも言うように優等生が苦手な私は、むしろ居づらく感じたけど。なにしろ授業の後に学生に声かけても(なるべく学生と仲良くしようと思っている私は、時間外にはできるだけ無駄話もするようにしているのだ)、事務的って言うのか、冷たいっていうのか、とりつく島がない感じだった。(と、若かった私は思ったが、今にしてみると、単に女性と話した経験がないので、上がってしまって何も言えないという感じだった。それはそれでいかにもマジメ学生っぽいが)

 それからほんの10年で、すべてがものの見事に変わりました。確かに、服装と言葉遣いと頭の出来は底辺校とは少し違うけど、言ってる内容とやることはほぼいっしょ
 授業の後、ひとりの女子学生が真剣な顔で、「先生、質問があるんですが、いいでしょうか?」と言ってきたので、こっちもついハッと居住まいを正して、「ハイ、なんでしょうか?」と訊くと、「先生は眉の手入れ、どうされているんでしょうか? いつも決まってるので知りたいと思って」 「あわわわわ‥‥!」 と泡を食ってしまいました。(私はもともと体毛が薄く、眉毛もほとんど生えないのでいつも描いてる。単にエンピツでグリグリ描くだけだけど)
 前にも「学生の服装チェックがきびしい」と書いたけど、私がおニューの(ってなんかすごい古くさい表現!)スニーカーを履いていくと、「先生、リーボック好きなんスかー? いつもリーボックですよね。オレ、ちゃんと見てるっスからね」 (言葉遣いの違いでわかると思うが、これは早稲田じゃなく他校の学生) ああん? それがどうした? ほめてほしいわけ? (私がいつもリーボックなのは、イギリスかぶれなのと、これがいちばんクッションが効いてて膝が楽だからである。Easytone最高!)

 おまえらっ! 授業中何考えてんだ! 何見てんだ! と言っても、この程度のことしか考えてない、見てないんですがね。なんなんスか、これ?
 もちろんどんな大学でもいつの時代でもこういう学生はいたが、ほんのちょっと前まではそれは少数派。誰かがこんなことを言おうものなら、「なに、あいつ?」と、クラス全員に思いきり白い目で見られたものだが、今はそれが普通なので完全にクラスに溶け込んでいるというのが問題。
 女の子はキャンキャンしたギャルだし、男はチャラい遊び人風だし。もちろん早稲田あたりにはまだ昔風のまともな学生もいるけどね。これがちょっと程度が落ちると、そういう学生はひとりもいなくなる。
 でまあ、それは成績にもはっきり表れております。ここで数字出すのはかわいそうだからやめておくが、私が「想定上、赤点がひとりも出ないようなレベル」(ということは早稲田未満の大学では本当に中学生レベル)で問題作っても、落第点(60点未満)が3分の1ぐらいいて、それ全部落としたら大変なことになるから、やむなく15点ぐらいゲタはかせて通してやってるだけ。

 毎年、この季節になると受験生の話がいろんなところで取り上げられて、こんなにがんばってる、とか、周囲もこんなに暖かく見守ってる、みたいな美談として語られることが多いが、私はもうそういうのを見ると、思いっきり引いてしまって、白けた目で見ざるを得ない。「入るまではそんなにがんばってるのに、入ったとたんにすべてのやる気も努力も捨ててしまうのはなんで?」ということで。
 あのね、誤解されると困るから言っておくけど、私は英語できない学生を責めてるんじゃないの。英語なんてバカでもやればやっただけできるようになるのに、あえて何ひとつやらないから責めてるの。
 早稲田の法学部で!(くどくてすまんが、本当に目に余るので)毎回30分遅刻してきて叱られる(しかも午後のクラス)学生とか、締め切りまでに提出しなかったら0点と、少なくとも50回は言ったのに、提出しないで平気で点よこせという学生とか、毎回当てても予習もしてなくて「わかりません」としか言わない学生とか、しかもそんなのがクラスに1人ずつならまだしも、2〜3人単位でいるなんて、ほんとに信じられないよ!
 それで今はそれが2〜3人だけど、それが年々増えて、やがてはすべてがそうなるってのが予想できるだけに、これはなんとかせねばならない。

 アメリカのまねをするのはいやだけど、もうこうなったらアメリカ式にみんな入れて、入れてから落とす方式にするしかないんでないの? 不正があろうとなかろうと、この手の入試が機能してないのはもう明らかなんだから。常識で考えて、一回きりの入試よりも、ベテラン教師が毎日毎日観察した結果のほうが、確実にその学生の実力を見ることができるし、だいたい「大学生の頭ン中」で書いたような、学力以前に生活能力ないような学生をチェックすることもできる。
 就職も厳しくて学生はかわいそうだが、今のレベルの大学生を企業に送り込んでも、使い物になるほうが驚きだ。

 なら、あんたが落とせばいいじゃない、と思われるかもしれないが、私ひとりががんばっても、どうにかなることじゃないのよ。現実に、毎回半数以上の学生を落とすという先生もいるけれど、それだけの学生に何も仕込めないのは本人の努力や能力にも問題あるし、責任放棄に近いと私は思ってる。結局、落とした学生は他の先生に押しつけて面倒みさせるだけだし。
 ただ、大学側ははっきり言うところは少ないが、「落とさないでほしい」という意向なのは明白だ。定員割れがひどい大学なんて、「落として退学でもされたら、学生いなくなっちゃうから落とさないでほしい」という、もうなりふり構わないところもあるけどね。
 あと、「落としてもいいが、落とした学生は担当教員が時間外で補講をやって、単位を出してやってほしい。ただしそのぶんの給料は出さない」というところもあった。我々、時間給で雇われてる非常勤講師にだよ! ただ働きさせられるぐらいなら、0点だって通すに決まってるので、これも卑怯。
 そこまでひどくなくても、やんわりと重圧をかけてくるところは多いし、今の情況で就職が決まってる4年生を落とすなんて事実上不可能、というところを学生もわかっててなめてかかってる。(私は当然落とすが。そういう世の中なめた態度のまま社会に出しても、本人のためにならないと思うので)

 やっぱり試験結果と順位は毎回張り出す一定の点数取れない学生は無条件で落第一定の単位取れない学生は無条件で退学、という仕組みをちゃんと作るべき。
 学生本人にもその方が優しいと思う。見てて思うが、どうしても4年間の専門教育には耐えられないタイプの学生もいるんだよね。そういう学生でもトコロテン方式で押し出してしまう今の制度だと、その子は人生の最も貴重な4年間を、ひたすら苦痛を味わうだけのために無駄に過ごしている(少なからぬお金も無駄にしている)ことになる。それよりは大学が向いてないことを早めにわかって別の道を歩んだ方がいい。
 もちろん落第退学で傷つく子や社会的に不利を被る学生もいるだろうけど、学年でほんの1人2人ならともかく、入学者の9割が卒業までに落とされるというなら、べつにたいした傷にもならないし、それ以前に4年間保ちそうにない子は入学をあきらめるだろうし、卒業した学生は本物の大学卒業生ということで、企業も安心して採ることができるし、いいこと尽くめのような気がするんですがね。
 おそらくそうした場合にいちばん負担が大きいのは大学側で、新入生と卒業生の数が極端に違うと、設備や人件費の面で頭が痛いだろうが、少なくとも学生を集められる大学は、途中入学者もどんどん入れて、入学金で稼いでなんとかするしかない。それもできない大学は確実につぶれるが。

 そこまで行かなくても、入試問題は見直す時期が来ていると思う。入試問題作りでは私もさんざん悩まされたから、出題者の悪口はあまり言えませんけどね。
 ただ、こういう有名大学ってプライドの問題があるのか、難題を出そうとする傾向がある。実は京大みたいな記述式の英作文(それも自然な日本語を使ったやつ)は、学生がいちばん苦手とする問題、学生の実力がいちばんはっきり出る問題なので、それはいいんだが、これでも高校生にはまだむずかしすぎると思う。これだとおそらくあまり点差が付かないんじゃないか。
 と思うのは、同僚の学内試験を見ていて、やっぱり出題がむずかしすぎて実態がつかめてないと思ってしまうから。必死で考えて書いた子の答案も、ぜんぜんわからないから適当に英単語だけ並べてみましたという答案も、ぜんぜん英語になってないというところはいっしょなので(笑)、結果としてあまり区別がつかないんだよね。むしろ「家族何人? 兄弟いるの?」レベルの、初歩の英会話みたいなの書かせてみると、ドギモを抜くほどできない実態がよくわかってかえって愕然としますよ。
 これは早稲田だが、短い英作文に「1ダース」という単語が入っていたら40人クラスでa dozenが書けたのが4人だけであせったことがあった。京大でもおそらくあまり変わらないからやってみ。しかも、普通こういうので間違ったら恥ずかしくて、下向いて黙ってしまうと思ったら、(少なくとも昔の早大生はそうだった)、ぜんぜん反省もせず、「だってチョコにダースってあるからdarsだと思ってました」とか言って、みんなキャピキャピ笑うんだよ。あと、“I are students.”とか、“1st, 2st, 3st”とかね。嘘だと思うでしょうが、ほんと。

 そういえば今の入試システムって、企業の新卒者優遇と同じぐらい奇妙だよね。大学や企業にはそれなりの思惑もあるのでまだわかるが、どっちも主役の学生が、大事な人生を一生にたった一度のチャンスで決められてしまう、しかもそのレールから落ちたら這い上がるのはなかなかむずかしいというシステムに、文句も言わずに甘んじてる、どころか積極的に支持してるように見えるのはかなり変。
 こういうことは私なんかがここでブツブツ言ってるよりも、学生から疑問の声が上がって当然だと思うんだけど。やっぱ若いモンの考えてることはわからんわ。
 日本もいつかアメリカみたいな「実力社会」になる、って言う人は昔から大勢いたが、結局、日本人ってそういう実力主義みたいなのがいやで、数字を突き付ける代わりに、印象とか精神論とかのうやむやですませたいみたいな感じなのかな。

【おまけ】

 以下は余談だが、今回の事件はYahoo!知恵袋で訊くってのがバカすぎで、狙ったネタとしか思えない。「ベストアンサー」もひどすぎるレベルだし。それで、それについては2ちゃんねるでもさんざん叩かれていて、胸を張って「模範解答」を上げてる人もいっぱいいるんだが、それが揃いも揃って同レベルなんで笑っちゃう。
 (だいたいあの「ベストアンサー」って、私はてっきりアマゾンの評価みたいに、読んだ人の投票で選ぶのかと思っていたが、選ぶのは質問者なんですって? わからないから質問してるのに、わからない人が最終的に評価を下すってなんなの?)
 どのぐらいのレベルかというと、ああいう掲示板とかで、まともなほうの英語を書く人は、だいたい、ホームステイとかの経験があって、英語にちょっと自信のある早慶クラスの大学生、または、英語の勉強が趣味で、英語にちょっと自信のある若いサラリーマンの感じ。つまり日本人一般の中では英語ができる人だが、それにしたって上に書いたようなレベルだし、まちがってもプロの書いた英語ではないのは一目瞭然。(実際、入試の答なんだからプロ並みではまずいだろうが) ましてやネイティブの英語とは天地の差がある。
 まあそれは当然。英語で金もらってるプロが、ただで教えるわけがあるかよ。つまりこういうところで質問するのって、「オレ素人だからわからないけど、おまえら素人から見てどう思う?」と訊くようなものなのね。いや、医者や弁護士なら、中には奇特な人もいるかもしれないけど、英語屋なんてみんな薄給だから、そこまで人良くない(笑)。
 それにしても、英語で食べてる日本人なんて星の数ほどいるだろうに、答えてやる人がひとりもいないってのも。あれ? もしかしてあれがプロの答? それもありえないことではないのも恐ろしい。
 でも、海外のフォーラムとか行くと、ずっとましな英語書いてる日本人いるし、英語できる人は国内の掲示板なんて見ないのかも。私もそうだった。日本の掲示版って、キモチ悪い奴が多すぎるんだもの。最近見始めたのは、実はサッカーの日本代表が気になり始めたからで、つい誘導されて見ちゃうというだけ。

 それでふと思ったんだけど、英語がこのレベルってことは、他も同じってことだよね。前に弟(真性のオタ)に向かって、「便所の落書き」だとかなんとか2ちゃんねるの悪口を言っていたら、「そお? オレの分野ではけっこうプロが裏情報書き込んだりしてるけど?」と言っていたが、それも怪しく思えてくる。
 えー、2ちゃんはともかく、私には専門外のパソコンや電気製品のことなんて、けっこうYahoo!知恵袋を見てたんだけど、(見たくはないが、どうしてもGoogleで上位に出てくるので)、あれも嘘か! 実際、役に立った記憶は一度もないが。
 これらに限らず、日本語のネット情報の質の低さは目に余るものがあるので(英語だとだいぶまし)、皆さん、ネットで見たからって、玄人ぶった素人の言うことやデマを信じちゃだめよ。「プロ」の書くことだって、話半分(というのはちょっとひどいか。やっぱり7割ぐらい)に聞いておいたほうがいい。
 あ、私はべつに英語のプロではないからね。私は正式には英文学で学位取ってるんで、英語そのものは普通の学部生と同じ勉強しかしてない。留学経験もないし、大学院では英語の授業なんてなかったし。やむなく英語でお金もらってるから、その意味ではプロかもしれないけど。

 ところで、一目でわかる大学の偏差値の見分け方。2ちゃんねるのAAの落書きがあったり、2ちゃん用語でしゃべる学生のいる大学は間違いなく底辺校。早稲田がそうなったらどうしよう! (と言いながら、それを見ればわかる教員がいるのは内緒)

 あと、これは今まで書いたことがなかったのだが、(というのも、ほんとに精神病んでる人だったらかわいそうだからと思ってたからなんだが、どうもぜんぜん例外でもめずらしいタイプでもないみたいなので)、ついでだから晒しちゃえ。晒すと言っても、衆人環視のパブリックスペースで堂々と見せてたんだから、プライバシーも何もないしね。
 私が長年学生見てきて、心底キモいと思ったのは、授業中、自分の机の上にお人形さんを並べてた学生。私は男も女も(それを言うならOLやおばさんも)カバンや携帯にマスコットじゃらじゃらぶら下げてるだけでキモいと思うが、これ見たときは文字通りその場で凍ってしまった。
 お人形と言っても、萌えフィギュアとかならまだわかるの。なんの人形だか知らないが、動物みたいなのが多くてかわいらしい、大きくても高さ10cmぐらいの幼児玩具みたいなの。それを自分の机(50x40cmぐらいの一人机)の上いっぱいに、30体ぐらいぎっしり並べてるの。それも教科書を真ん中に広げて、そのまわりを二重、三重に取り囲むように円陣組ませて、顔を自分の方に向けて、全部きちんと整列させて。
 それを一目見たときの第一印象ってのが、まるで小さいおもちゃの軍隊みたいというか、彼の(もちろん男です。ここまで壊れた女の子はまずいない)傷つきやすい自我を守る衛兵に見えたのよ。それで思わずぞーっとしてしまって。確かに授業中にお菓子とか任天堂DSとか机に出してる学生はたくさんいるけどね、これほどすごいのは見たことがない。
 とっさに叱ろうとしても何と言っていいやら思いつかなかったから、とにかく「おもちゃはしまいなさい」とだけ言った(笑)。そしたら、言われることは予期してたみたいでそそくさと片付け始めたけど、照れ笑いひとつしなくて真顔なのがまたすごい気味悪かった。
 ところで今思ったけど、これなんてまさに2ちゃんねるに投稿したら受けそうなネタね。しないけど。だって、2ちゃんなんかに投稿したら、どうせこれの同類がゾロゾロわいてくると思うとこわすぎるじゃん。

【もひとつおまけ】

 今日(3月1日)の朝日新聞を読んでいたら、このカンニング事件と並んで、「英語教育」というタイトルの社説が載っていた。4月から始まる小学校の英語必修の話だった。これについては私の考えは「大学生の頭ン中」に書いた通りなんだが、引っかかったのは、「学校英語は読み書きばかり、訳読や文法中心で、海外に行っても役立たず」という俗説を、そのまま現実として書いてるところ。
 私は今の中高のカリキュラムがどうなってるか知らないのだが、これホント?といつも思う。

 去年の早稲田の定期試験で、「外国人が日本に対して抱く素朴な疑問」として、いくつかの質問から好きなのを選んで、英語で解答するという問題を出したんですよ。中には、「日本の女の子のスカートはなんであんなに短いのか?」みたいなおもしろいのもまぜてあったんだけど(笑)。その中に、「日本人は中・高・大と10年間も英語を習ってきて、なんで英語がしゃべれないのか?」(もちろん出題は英語だよ)というのがあって、それに答えた学生の答が、どれもこれも判で押したように「学校英語は読み書きばかり」ってやつ。
 いちばん笑えるのは、そう書いてる本人の英語が文法でたらめなことだが、それについてはもう文句言う気も失せた。
 それ以前に、これって本当なの? 私自身は訳読だけの英語教育で育ったが、(文法なんて高校までだから、おかげで文法でずいぶん苦労した)、自分はもう10年以上、訳読なんて教えたことがないし、(今の大学英語でそんなのやってたら笑われる)、使う教材も会話や実用英語オンリーだ。なのに、中高はまだあれやってるのか?
 でも文法は今でもていねいに教えている。理由は学生がなんにも知らないし、文法知らないとそもそも最初の階段も登れないというか、英語を書くこともしゃべることもできないから。なのに、文法しか習ってないってどこの世界の話? いや、習ったってわからないやつはわからないだろうが、少なくとも早稲田に来るような学生はそこまでバカなはずないし。その人たちが、「過去形とは何か?」とか「現在進行形とは何か?」という話を聞いて、感心してうなづいてるんですけど。
 それで、もしやと思って、普段は訊かない日本語訳ができるかどうか訊いてみたの。そしたら、文法の例文程度の、本当に易しい、単純な文でもほとんど訳せない人続出で、「これは来年から訳読もやらなきゃダメか」と思っているところ。少なくとも私の時代の早大生は、高校生の頃から普通にペーパーバック読んでましたが?
 訳読と文法だけじゃ海外へ行っても話せないというのも嘘。私もそれをさんざん聞かされて信じてたし、実際にそれしか習ったことがなかったから、初めてロンドン行ったときはどうしようと思ってたけど、普通に話せたし(笑)。
 なのに、こういう俗説を真に受けて、中高で和訳や文法教えなくなったらどうなることか。今でさえ、授業がぎりぎり成立するかどうかの瀬戸際なのに、完全に崩壊するな。つまり、私たちは大学でアルファベットとThis is a cat.から始めなきゃならなくなる。
 私が人ごとじゃなく心配しているのは、日本の英語教育が崩壊した場合、最大の被害を受けるのは、我々教員だからだ。学生はまだいいよ。一生英語しゃべれなくたって困らない人は大勢いるし、必要な人は必要になってから勉強したって間に合うし。なのに、教員は絶対無理なノルマ(ABC知らない人にTOEIC700点取らせろとか)を押しつけられて、できなきゃこっちのせいにされるんだからね。そういう時代になる前に引退したいけど、金がないからそれもできない。トホホ‥‥

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