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2011年9月14日 水曜日

旅行記

また鴨川シーワールドに行ってきた

 暑いし足痛いし、予想はしてたけど、去年の天国に較べると腐った夏休みだった。でも腐ったまま仕事に戻るのもいやだったので、夏休みの終わりに一泊二日の小旅行に行ってきた。例によって「自分への誕生日プレゼント」も兼ねて。行き先は何の代わりばえもなく、また鴨川シーワールドですけど、ここは私にとっては天国なので。ちなみに前回の訪問については2006年9月12日の日記参照。

 きっかけはお友達の石神さんとどこか行こうと話していて、なんとなくそういうことになったから。石神さんが行ったことないと言うから、私が絶対一度は行くべきと説得し、どうせなら車で行こうということに。
 実は私には下心があった。(またかよ‥‥) 2006年に行ったとき、初めてアクアラインを通り、海ほたるを見て感動したのだが、あのときはバスで行ったので車を降りることができなかったのだ。だから自家用車で行きたいんだけど、周囲に車持ってる人が彼女しかいないもので‥‥
 なにしろ車に縁がないので何も知らない私は、実際に見るまで海ほたるなんて聞いたこともなかったし、長い海底トンネルを抜けたらいきなり海のど真ん中へ出て、そこに巨大な戦艦みたいなサービスエリアがそびえ立ってるのを見て、ドギモを抜かれた。それ以来、なんとしても一度はあそこへ降りてみたいと夢見ていたのだ。だから、私としてはもうよく知っているシーワールドより、どっちかというとこっちがメインのつもりだったのだが。

宿選びの話

 そこで1日目は海ほたるに寄って、千葉の山道をドライブして、2日目がシーワールド見物と決めた。
 宿選びは私に任されたんだけど、なにしろ決行を決めたのが1週間前なもんで、これはという宿はすでに満員。セカンドベストで我慢するしかなかった。つまり何かをあきらめきゃならないのよね。設備はいいけど高いとか、眺めはいいけど建物はボロいとか。
 石神さんからは「おいしい魚が食べたい」というリクエストがあったので、やっぱり料理がうまそうなところ優先、だけど2人とも決して裕福とは言えないので、ほどほどに安いところで探してみた。
 魚が食いたいって気持ちはわかるんだ。彼女は海の幸に恵まれた北海道出身なので、いま住んでる海なし県埼玉ではさぞかしつらいでしょ。かく言う私は魚好きであるにも関わらず、肉と較べると割高なのと料理が面倒なので魚なんてめったに食わない。年に一度ぐらいは死ぬほど魚が食べたい。
 幸い、千葉なんて魚とピーナツぐらいしかないところなので、(千葉は野菜や果物の大産地でもあり、東京にも多くを卸してるが、私は千葉の農産物は大味な気がしてあまり好きじゃない)、この機会に魚を食べずしてどうする?ってぐらいで。(ついでにピーナツは主産地というだけで、べつにおいしいものでもない)
 と言ったら、「だってお刺身とかいっぱい出ますよ」と石神さんに不信の目で見られた。はい、確かに魚介類はなんでも、生で食うより煮たり焼いたりしたほうが絶対うまいとは信じているが、現金な体質なんで、新鮮でおいしければ刺身だろうとなんだろうと食べるんです、私は。
 それで決めた宿は舟付という名前の江見の旅館。漁師宿風の作りで、漁師料理が売り物。漁師宿ってことは要するにあまり小ぎれいじゃないということだろうが、そもそも千葉という土地自体がまるで気取った土地柄じゃないし、料理も料亭みたいな気取ったのじゃなく、漁師風ってのが野趣があっておいしそうな気がした。漁師料理って、よくテレビのグルメ番組でやってるみたいな、漁師が舟の上で作るみたいな料理か。なんかうまそうだなー。だから料理はちょいと奮発して、ちょうど季節が始まったばかりの伊勢海老と金目鯛の煮付け付きのプランにした。
 舟付は写真だけ見ても、部屋やお風呂はいかにもちんまりとしてぱっとしないが、私は部屋や風呂なんか最低限清潔ならいい。っていうか、虫さえいなくて、隣が朝まで宴会してワーワー騒いでなければそれだけでいい。それに日本の宿で清潔じゃないとかうるさいということはめったにないし。それよりうまい魚食べさせてくれるならなんでもいいや。

 そうそう、話はそれるが、千葉で気取ってもしょうがないという話。鴨川周辺で宿を探していたとき知ったのだが、鴨川にはバリ島の高級コテージをまんまコピーした有名なホテルがあるんだそうだ。もちろんコテージ一軒がまるまる借りられて、庭にはライトアップされたプールやジャグジーが‥‥と、写真だけ見ると本当に高級リゾートそのものなので、私も一瞬「うわー!」と思ったのだ。
 だけど利用者のコメントの、「プールの向こうに隣の民家が見える」というのを読んで、大笑い。
 そこに布団が干してあったりして(そんなことは書いてない。あくまで私の想像)、すべての夢が壊れるという、これぞ千葉クオリティ! 考えてみれば、こういう嘘くささってディズニーランドにも通じるよね。あれは本場そのものだと感心してる人が多いようだが、あれ自体がそもそもアメリカ・クオリティのまがい物だし。
 にもかかわらず、それに高価な料金払っても満足してるお客さんがこれだけいるってところに、日本人の悲しさも見えた。これまたディズニーを喜ぶ人々を見るといつも感じることなんだけど。単なる貧乏人のひがみにしか聞こえないと思うけど、こういうコメント読んでいると、「べらぼうな金払っても最高の品質を求めるアタクシたちってステキ!」というスノッブな自己陶酔がたまらんのだわ。
 それを言うならやたらとヨーロッパを引き合いに出す私のほうがよほどスノッブに聞こえるだろうが、基本的にまがい物を許さない、本物しか認めないというのがヨーロッパの主義なので、(その代わり、本物ならばどんなにボロでもガタガタでも汚くても気にしない)、鴨川をバリ島に偽装したりする神経って、ヨーロッパ人にはわかるまいね。まあ、同じまがい物でもラスベガスにピラミッド建てちゃうアメリカ人のスケールには負けるけど。こっちはもう正気の沙汰じゃないというレベル。
 で、何が言いたいかというと、こういうダサさがいかにも千葉だなーと。

 ああ、千葉のことバカにしてるように見えるけど、千葉の人、怒らないでね。私は千葉にはけっこう長く住んだ(私が大学に入ったとき親が千葉に家を買って、私もしばらく一緒に住んでいた)ので、千葉については多少は語る資格あると思う。東京のすぐ隣の県だから、何も違いはあるまいと思ったけど、それでもはっきり県民性ってあるので驚いたぐらい。私の考えでは、生粋の千葉人(私らのような千葉都民でなく)は無骨で言葉遣いは乱暴だけど、純朴で人はいい。まさに漁師のイメージだ。
 だから、漁師っぽい宿の方が、本物の千葉のサービスが受けられるのではと期待したわけ。偽物の豪華リゾートよりそっちのほうがずっといい

海ほたるの話

アクアラインと海ほたる

 たった1泊2日の旅なのに、私の手にかかると大旅行記になってしまうので、よぶんなところは極力省いて要点だけ書く。

 とりあえず、日曜日の早朝、石神さんがうちまで愛車のスズキジムニーで迎えに来てくれて、車は一路アクアラインへ。アクアラインって川崎のあたりから出ているので、うちからはすごい距離があると思っていたが(うちはほとんど千葉に近いしね)、西葛西から高速に乗ってしまうとあっという間に着いた。海岸線通っていくと意外と近いことを発見。ていうか、車ってあるとやっぱり早いし便利だなー。というのは渋滞しない時だけですけどね。
 海底トンネルもバスでトロトロ走っていたときはすごく長く感じたけど、石神さんの運転だとなんかすぐ外へ出ちゃう感じ。
 ところでこのアクアライン、できた当初は料金がバカ高くて、誰も使わないから公金の無駄だなんだとずいぶん騒がれたのだが、今は「社会実験」としてのディスカウント中だそうで、昔は確か5000円とかしてたのが今はたったの640円!(ETC車で軽の場合) ただ同然じゃん!
 そのせいか、海ほたるもかなりの人出でごった返していた。昼過ぎは満車になるという石神さんの情報で、早めに出たのだが正解だった。なにしろ海の上なんで、ちょっとそこらに違法駐車ってわけにいかない(笑)。駐車場の空きがなかったら通り過ぎるほかないからね。

 それであこがれの海ほたるなんだが、あー、うん、こうやって写真とかで見るとすげー!ってなるんだが、実際に降り立ってみるとただのSAの大きいのですな(笑)。それでも海はきれいだし、夜明けや日没の景色はすばらしいだろうと思うけど。
 ただ、私の印象では絶海の孤島みたいに思えたのだが、実際はもう木更津の町の近く。しかも対岸もはっきり見えて、正直、ここに立つと東京湾がすごく小さく感じられる。
 え〜〜? なんか東京湾ってすごく狭くない? 川崎から南房総って言ったら、それこそ昔ははるか海の彼方だと思ったけど、やっぱり最新の土木技術はすごいなあ。まあ実際は、海の上は視界をさえぎるものがなくて見晴らしがいいから、(その上、この日は絶好の好天だったし)、実際の距離よりはるかに近く感じられる錯覚も働いてるけどね。ただ実際、地図だとずいぶん遠く見えるのに、うちと川崎もあんなに近かったもんなー。
 ただやっぱりちょっと残念だったのは、対岸が見えるので、最初に感じた「海の上を走ってる」感じが薄く、単に橋を渡ってるとしか感じられないことか。あのときは『千と千尋』の電車みたいだと思ったんだけどなあ。

 予定ではここでブランチを食べるはずだったが、早く着きすぎたのでブランチというよりまだ朝食時間。店も開いていないところが多い。そこであっちこっちを歩きまわって見物。
 早めに食事をして昼食を抜かすのは、そうでもしないと夜食べられないだろうと思ったからだ。石神さんはガリガリに痩せていて見るからに食が細そうだし、私はダイエットで胃が小さくなってしまっているし、旅館の食事というととにかく大量で食べきれないという印象があるし。
 それで夜はどうせサカナ三昧なんだから、昼は別のものにしようということで、佐世保バーガーを食べた。名前は知ってたが、2人とも佐世保バーガーなるものは初めて。いちばん安いやつでもハンバーガーとしては破格に高い680円だったが、一口食って、「うまい!」。
 普通のハンバーガーの2倍ぐらいの体積があって、肉の他にベーコンと目玉焼きがはさまっている。私は日本のこの手のバーガーやサンドイッチにはさまっているベーコンが大嫌い――生焼けでベローンとして脂っこいから――で、ベーコンだけ抜いて捨てて食べるぐらいなのだが、ここのベーコンは端から端までカリッと焼けてて脂も少なく、私の大好きなタイプだったので喜んでむしゃむしゃ食う。
 野菜も新鮮だったし、かかってるソースもうまいし、肉はやや小さく感じたけど本物の肉の味がしたし――マクドナルドの紙みたいな肉、みんなよく食べられるな――これはうまい。確か高田馬場にもあったから今度食べてみよう。問題は包み紙が防水じゃなくて、汁がダラダラこぼれることかな。これじゃ持ち帰りできないじゃん。

 売店では千葉名産のびわのお菓子がいろいろ売られている。石神さんはびわのゼリー、私はびわソフトを食べた。あと、今夜のデザートに梨のゼリーを買った。

ドライブの話

 石神さんの車の助手席に乗ってると、なんかスコットランドがフラッシュバックしてくる。彼女もそう感じてたみたいだけど。
 それがあるから、「千葉の内陸部は人も少ないし、道もうねっててちょっとスコットランドっぽいよ」と入れ知恵しておいた。彼女はこういう曲がりくねった山道を走るのが好きだと知ってたから。ただ、そのあとに「ただし道はイギリスの比じゃなく悪いけどね」と付け加えるのを忘れていた。
 ここらが運転しない人間の浅はかさで、そういや昔父が運転しながらさんざん文句言ってたなあと思い出したのは走り出した後。これでもかなり良くなったと思いますけどね。道が途中でどんどん細くなって行き止まりとかなくなったし(笑)。昔は道路標識がまったく役に立たなかったけど改善されてるようだし。
 ここで活躍したのがカーナビ。恥ずかしながら国内では何十年も車に乗ったことのなかった私は生まれて初めて見た。あんなにちっぽけなゲーム機みたいなのに、次を右とか、何メートル先に合流地点とか教えてくれて賢〜い! ただ乗ってる人間が使い慣れてなかったり、あっちだこっちだと勝手なことをほざいたり、話に夢中で聞いてなかったりしたので、何度か迷いましたけど。でも私はすごい便利だと思ったな。歩行者用にもほしい! そうすれば私は道に迷わずにすむのに。
 ただ、ドライブ自体は、スコットランドと較べる方が悪いんだけど、お世辞にも快適ではなかったな。帰りは素直に有料道路を通って快適だったので、最初からそうするんだった。

鹿野山九十九谷展望台から見る雲海

 それでも景色はなかなかいい。東京近県ではいちばん開発が遅れてる県だからこそ、自然がいい感じに残っているのだ。標識を見ると、猿とか鹿とか猪とかも住んでるようだし。山の高いところでは、道のすぐ脇が切り立った崖で、下を渓流が流れてたりするのだが、木や藪が茂って何も見えないし、展望台みたいなところも少ない。
 もったいないな。道路をもう少し整備して、あと内陸部には集客力のある施設がマザー牧場ぐらいしかないから、何かひとつ目玉を作ればもっと観光客が増えると思うが、観光客が増えちゃったらせっかくの秘境っぽさがなくなってしまうから、やっぱりいやだ。

 そういうきれいな景色が見えるところとしては、マザー牧場の近くの鹿野山九十九谷展望台へは行ってきた。公園と名が付いているが、実際は小さい駐車場にあずまやとベンチが着いただけの、田舎によくある冴えない展望台。だけど景色はすばらしい。
 おっと、右の写真はプロが撮ったものだからだまされないでよ。そもそも雲海が見えるのは限られた季節の夜明けだけだそうだし。私たちが行ったときはカラカラの上天気だったので、印象はかなり違うが、雄大なパノラマという点では同じ。それより何より、私がスコットランドで口を酸っぱくして誉めたたえていた、「低山なのにまるで高山の頂上に登ったみたいで、山の向こうにまた別の山がえんえんと連なっていて、その間の谷間にガスがかかるとまるで雲海のように見える」というのとそっくりなので驚いた。「スコットランドっぽい」と石神さんに言ったのは、まんざら嘘でもなかったわけか。
 ここは東山魁夷の出世作「残照」のモデルなんだそうだが、そう言われれば確かに雰囲気似てる。

養老渓谷 粟又の滝

 予想以上に早く着いてしまいそうで時間が余ったので、滝も見に行った。養老渓谷を走ってたら滝の入口という標識が見えたので。そういや、伝説にある「養老の滝」ってここのことか?
 違います。本物の養老の滝は岐阜県。ここは正式名称を「高滝」、通称を「粟又の滝」と言うのだが、流れてる川が養老川という名前なので、養老の滝と呼ばれることもあるってだけ。というのは帰ってから調べて知ったんだけど。

 とにかく滝は大好きなんだけど、ひとつ問題が。懸命の努力にもかかわらず、膝の調子は悪くなる一方で、駅の階段の上り下りも一苦労、っていうか、歩くのも伝い歩きがやっとのことが多い身障者の私が旅に出る気になったのも、往復車だからなんだが、渓谷は切り立った崖のはるか下にあり、そこまでは細くてツルツル滑る階段を下りて行かなくてはならないのだ。
 これ、完全に転落パターンじゃないですか。実際、膝の痛みはそんなに耐えられないほどではない。ただ、いつなんどきガクッとくるかわからないので怖いから、階段やホームの縁は恐怖なのだ。ガクッというのはときどき本物の激痛が走るので、そうなるとまったく足のコントロールがきかなくなり、膝がガクリとくずおれてしまう。しかもそれがいつ来るかまったく予測がつかない。だから階段は上りより下りが怖い。上りなら普通は前に倒れるのでダメージが少ないが、下りは前に倒れたら顔や頭をもろに打つし、落下距離も長いから。(すでに上りでは何度もやってる。私は転び慣れてるので手を付いて無事だったけど、下りだと手を突っ張ることもできないし)
 そんなわけで残念だが、私は途中でリタイア。あとはまた石神さんにひとりで行ってもらった。

 ただ、写真でご覧のように、ここは滝と言うよりは勾配のある岩の斜面を川が流れている渓流で、高い滝を期待するとちょっとがっかり。ただしこういう地形がどこまでも続いているようなので、足に自信のある人は沢歩きにはぴったりだろう。周囲も濃い緑に覆い尽くされて、深山のような雰囲気がいいし。
 ただしこれほど人が多くなければ。はい、夏の終わりの日曜日ということで、家族連れの行楽客が芋を洗うようにひしめいていて、残念ながらこれじゃ風情もなんにもない。水も少なくてチョロチョロとしか流れてないし、これだけ人が多くちゃしょうがないが、水もあんまりきれいじゃないし。
 上の九十九谷も、地元の若い衆のデートコースになってるみたいで、カップルやグループが多すぎてあまり長居したい雰囲気ではなかった。ここらがスコットランドとの決定的違いかな。日曜日や夏でなければこれほどは混まないとは思うけど。

 しかし、海と山と田んぼと渓流の流れるこのあたりの景色は、スコットランドよりもやはり日本の田舎、それも日本の夏そのものの景色だねえ。ほら、日本の夏と言うとき必ず出てくるステレオタイプの光景ってあるじゃない。山と緑の田んぼの中をあぜ道が走ってて、遠くに鎮守の森が見えて、真っ青な空に入道雲ってやつ。
 私は生まれも育ちも東京都心だから、そういう景色とは縁なく育ってるし、そういう写真を見ても何も感じなかったのだが、今日は胸がちょっとキュンとなった。それはたぶん幼少時の記憶に触れたから。私は田舎もなかったのだが、子供の頃の夏休みは、母が毎年(父は海外赴任でいなかった)旅行に連れて行ってくれたのだ。今にして思うと、子供のためというより、ひとりで子供を育てていた母自身の息抜きの旅だったんだろうが。だから、毎年違う場所を訪れて日本各地をまわって、旅館もけっこういいところへ泊まり、おいしいものを食べたのだが、なにしろ子供なので何も覚えていない(笑)。夏休みの自由研究はぜんぶスクラップブックに切符とか写真とか貼り付けた旅行記ですませていたので、行ったという事実を覚えているだけだ(笑)。(いま書いてるこれもその延長だなあ)
 ただ、あの頃旅行に行って見た田舎の景色って、そういえばこんなだったなーと急に思い出して、なんか切ない気持ちになった。これって私には夏休みの風景なんだな。

海鮮の宿 舟付

舟付の玄関
屋上の露天風呂

 そんなわけで、予定の5時よりもだいぶ早く宿に到着。それでも私は痛みと暑さで失神寸前。石神さんも遠くからのドライブで疲労困憊していたのでこれぐらいでちょうど良かった。
 しかし暑い! 9月も今ごろは少しは涼しくなるのを期待していたが甘かった。実際、一時少し涼しくなったのだが、猛烈な残暑が盛り返してきて、しかも晴天なので日射しが痛い! 空だけは秋の空で夏の日射しよりもっと突き刺さるような日射しなんだよね。私は日頃クーラーの効いた部屋に閉じこもってる軟弱者だからよけいこたえる。車はもちろんクーラー付きなんだけど、石神さんが寒がるし。
 とりあえず風呂に飛び込んで汗を流す。風呂は部屋に内風呂も付いてるし、大小2つの風呂があるのだが、さすがに大浴場とは言えず、この日入った小さい方の風呂は3人入ったらいっぱいのサイズ。部屋の風呂は檜張りが売りだが、うちのユニットバスより小さいぐらいだった。とりあえず、外の風呂は貸し切り状態だし、温泉だし、足がのばせればなんでもいいや。
 そうそう、温泉もあるんだよね。これはべつに期待してなかったけど、私はとにかく自分の家の風呂の狭さに閉口しているので、それより大きければなんでもいい。
 だけど、屋上の露天風呂は夜は有料で貸しきりだけど、朝は誰でも自由に使えるというので、明朝は早起きして入ってみることにする。
 で、温泉は気持ちいいんだが、なにしろ暑いのでお湯から上がったとたんに吹き出る汗で、ちっともきれいになった気がしないのが難点(笑)。温泉はやっぱり冬にしたほうがいいなあ。早朝の露天風呂なら少しは涼しいかしらん? 

 それでいよいよ待望のお夕食。食事は部屋ではなく、隣接する料理屋で取る。ここは本物の漁船を改造したもの。とにかく名前が舟付なので、なんでもかんでも舟にこだわっている。
 ただ、お座敷なんだよね。畳の部屋は私にとって最大の鬼門。正座ができないのはもちろんのこと。座るには膝を崩す程度ではどうにもならない。片足を立て膝して、片足を斜めに投げ出すような、倒れかかったみたいな姿でしか座れないうえ、立ったり座ったりがまた一苦労。それをおかみさんに話したら、私たちだけテーブル席を用意してくれることになった。助かりました。これでお料理に専念できる。

 メニューはというと、小ぶりの伊勢海老がめいめい1匹、料理方法は刺身か塩焼きのどちらかを選べる。金目鯛を甘辛く煮たもの。これはかなり大きいが2人で1匹。アジのなめろう(このあたりの郷土料理で、元は漁師が漁船の上で作っていた料理。味噌やしょうがで味付けしたたたきのようなもの)。サンガ焼き(なめろうをホタテ貝の殻に盛って焼いたもの)。沖なます(これもなめろうに近いんだけど、アジのたたきが氷の入った冷たい味噌汁の中に浮いている)。この辺が漁師料理ってやつだな。あとは揚げ物があなごの磯部揚げアジの骨せんべいさざえの壺焼き。あと、もちろんお刺身各種サバのなまり節を乗せた大根サラダ。あとはお汁とお漬け物とご飯。あー、お腹いっぱい。

 結論から言うとどれもおいしかった。名物のなめろうは刺身よりたたきが好きな私はうれしいし、もちろん刺身もおいしかったのでちゃんと食った。(東京の居酒屋なんかで出る刺身はめったに手を付けない)
 鯛の煮たのはもともと大好物なのでうれしかった。おかみさんが「鯛の鯛」について教えてくれたが、これは私がごく幼いころ母に教えてもらって以来忘れていたことなので、なんかすごいなつかしかった。お金が貯まるという縁起物で、1匹の鯛から2つ取れるのだが、石神さんはちゃんと取り出したのに、不器用な私は折ってしまって、やっぱりお金とは縁がないことを思い知らされる。
 エビカニに目がないので、久々に食べる伊勢海老にも期待していたが、これはやっぱり刺身にしてもらったほうがうまかったみたい。塩焼きはちょっと焼きすぎで固かった。しかし海老と鯛って、意図したわけじゃないがめっちゃくちゃ縁起がいいな。今年は私のみならず、日本もめちゃくちゃ悪運につきまとわれたので、これが厄払いになるといいが。

 あと、ご飯を次々お代わりして石神さんに笑われた。私は家ではほとんど米の飯を食べないという似非ガイジンなのだが、やはり日本人の本能なのか、魚がうまいとご飯がすすむのよ。その私がこれだけご飯を食べたということは、それだけおいしかったということ。ちなみに意外な感じがするかもしれないけど千葉の米はおいしいです。というか、宇都宮にしばらく住んでたときは栃木の米っておいしいと思って、母に送ったらおいしいと驚かれたし、こういうものは地産地消がいちばんなのかも。
 お酒好きの石神さんもビールと自家製梅酒でご機嫌だし、良かった良かった。

 夜、石神さんとテレビを見ていたら(これも普段はまったくしないことなので新鮮)、内田篤人(サッカー選手。ドイツ、シャルケ所属)が出ていた。しかも彼が単独ゲストでしゃべるだけ。「かわいい」というので女性に人気があるが、あの通り独特の個性とノリの人なので、トーク番組のゲストなんてつとまるのかしら?と思っていたが、案のじょう完全にズレまくって浮いていた。仲良しの吉田や川島といっしょのときは、うまくいじってもらえるからおもしろいんだけど、司会者が彼のキャラクターをつかめていないのがもどかしい。
 中で好きなタレントを聞かれて、You(女性タレント)と答えたのだが、その本人が登場したら照れまくり。照れてるのはわかるが、隣に好きな女の子が座ってるのに、しかめつらでそっぽを向いて、決して目を合わせないって、やっぱりこの人かなり変‥‥(笑)。
 ところで「女の子」と書いたが、あとから調べて唖然。この人47才じゃないか! とは、石神さんも言ってたが信じてなかった。ということは内田からみると母親の年代! マザコン?! いやいや‥‥「うっちーホモ疑惑」はたびたびネタにされてきた(こことか参照)が、これで私はほぼ確信したね。だって、年上、ガラガラ声のガラッパチ風(ついでに東京の下町出身であることもしゃべり方きいただけでわかるが、やはり上野生まれだった)、年甲斐もない派手な外見と、ホモに好かれる女性タレントの要素がすべて揃ってるじゃない。というか、好きな女性のタイプを聞かれたらこう答えておけば安心みたいな。
 いや、前にも書いたが私はべつにやおいとか興味ないすから何とも思わないけどね! ただ年上好きってのはちょっと惹かれるね。(実は上のにけっこう当てはまるので私もホモにモテる。性格がまったく女っぽくないからだと思うが)

 閑話休題。夜はガイジンの私にはもうひとつの試練が。旅館のあの薄っぺらな敷き布団がどうしてもダメなんですわ。アンドレ&ヴァレリー夫妻が、「布団が固くて腰が痛くて一睡もできなかったから、日本旅館はもう二度と泊まらない」と言う理由もよくわかるんだ。というか、彼らが泊まるような高級旅館でも布団は薄っぺらなのかと驚いたが。それに厚い布団がほしければ言えば出してもらえたのにとも思うが。
 だから今日も膝にかこつけてそう頼むつもりだったが、押し入れを見たら予備の布団がもう一組あったので、それを重ねて敷いて解決。だいたい泥のように疲れてるので文句を言う間もなく寝入ってしまったし。
 しかし、石神さんは薄い布団の方が寝やすいと言うから、やっぱりここでも私はガイジンなのかねえ? ベッドがなかった子供のころも、うちは畳に厚いマットレスを敷いて、その上に敷き布団敷いて寝かされてたから、私は「豆の上に寝たお姫さま」(アンデルセン)になってしまったのだ。今なんかベッドのマットレスの上にさらに和風の分厚い敷き布団を敷いてるからふんわふわ。柔らかいのが好きな人にはこれマジおすすめ。
 あと、土足で座敷に上がろうとしてまたガイジン扱いされた。わざとやってるわけじゃないんだけどね! どうしてこうなるの? 

 翌朝の朝食もなかなか豪華。前の晩の伊勢海老の頭を味噌汁に入れてくれるのだ。これもここらだけの名物らしいが、出汁が出ておいしい。というか、伊勢海老なしでもベースの潮汁自体がすごくうまいんだが。
 何度も書いてるように、実は私は和食はあまり好きじゃない。どっちかというと嫌いと言ってもいいぐらいなんだが、和食で唯一好きなのは出汁の味。出汁って単刀直入に言っちゃうと、「魚と海草のスープ」であって、ものすごく生臭いものになりそうなのに、まったく生臭さがなくてこんなにおいしいのって、まさに日本料理のマジックだと思う。だから、潮汁も大好き。単なる温泉卵も、タレが濃厚な出汁の味がしてすごくおいしい。
 それに主菜のアジの開きが死ぬほどうまい。私、どんな高級魚よりアジの干物のほうがうまいと思う安上がりな人間。ところがこんな安いものなのに、東京の変な店で食うと吐きそうになるんだよな。だから買って帰るつもりだったんだけど、とにかくうだるような暑さなので、持ち歩くのは気が引ける。そこで帰りがけに買うつもりだったけど、帰り道は2人ともぐったり疲れてたので、「どうでもいいや」状態になってしまった。
 家に帰ってから隣のスーパーでアジの開きを見て、買おうかなと思ったが「オランダ産」と書いてあるのを見て、つい手を引っ込めてしまった。どこ産だろうとおいしければいいんだが、アジの開きみたいな庶民の味に、オランダ産はないだろー! やっぱり買ってくるんだった。

 とにかく食った。魚ばっかり大量に食った。たぶん私としては半年分の魚1日で食った。と言っても、昔の旅館(とにかく私が日常的に旅行していた頃の日本旅館)のように、半分以上残すこと前提で絶対に食べきれない量が出てくるわけじゃない。見た目は一瞬「これだけ?」と思う量なのだが、これでもお腹いっぱいになるしちょうどいい。それにお刺身とかは少量の方が品が良くておいしく感じるし。それでも私はご飯の食い過ぎで少し残したけど。
 ほんのわずかな野菜を除けば、すべて海で取れたものだけでこんなにいろいろ作れちゃうのもすごいね。日本人は本当に海の民だなあとあらためて感じる。いや、日本人でも当然山系の人と海系の人がいるはずだが、私は海かなと。
 またすぐ話がずれるんだが、「山の幸、海の幸」って並べて言うけど、海の幸に較べると山の幸って分が悪いよね。キノコは大好きだけど、あと何がある? 山菜? そりゃ一口ぐらいならいいけど、いっぱい食うものでもないし、特にうまいものでもないでしょ。それにどっちもほとんど栄養ないものだし。やっぱり住むなら山より海辺だなあ。

 そうそう露天風呂は良かったです。上の写真でわかるように、ちっぽけだし、露天と言ったって県道沿いの3階建て建物の屋上に目隠しして風呂桶置いただけだし、「なんか見るからにしょぼそう」と思ったので、お金払ってまで予約しなかったのだ。
 だがこれは予想以上に良かった。7時ごろに行ってみたのだが他には誰もいなくて貸し切り状態。写真で舟みたいに見えたのは本物の舟で、その上に小さい四角い風呂桶が乗せてある。確かに下を見れば景色はよくないが、どうせ下から見えちゃうから下は見えないようになっているし、遠くの海原と空に目をやれば、どこまでもどこまでも青が広がっていて、すごい開放感がある。やっぱり風呂だろうとなんだろうとアウトドアは最高です。飯だって外で食べた方がうまいし、キャンプとかやる人の気持ちもわかる。時間に余裕のある旅なら、(それにこれほど暑くなければ)、もっとゆっくり入っていたかったなー。

鴨川シーワールド再び

鴨川シーワールド(ほぼ)全景

 というわけで、朝食を終えるとすぐに宿を出て、鴨川シーワールドへ向かう。しかし、前回(2006年9月12日)からもう5年たっちゃったのか。あのときは近いからすぐにでもまた戻ってくるつもりだったのに。これが人生なんですよ、あなた。(誰に言ってるんだ?) 「近いんだからまたすぐ会おうね」と言うと5年はあっという間にたっちゃうし、「遠いしすぐにはちょっと無理かなー」と言ってると15年がたってしまう。それで気付いたときにはもう死んでる(苦笑)。
 それを悟ってからはもう、無理してでも思い立った時に行きたいところへは行く。会いたい人には会うというのを信条としております。一昨年のベルギーもそうだし、去年のスコットランドもそう。私なんか常識で考えたら「それどころじゃないだろ」という経済状態なんだけど、そこで行かないと二度と行けない可能性大だから。それに死んだあとじゃ何もできないから。
 いかんいかん。ここは死ぬほど大好きなんだから、来られるときは毎年来るようにしなくちゃ。

 というわけで、

不細工な作り物のネズミの化け物のかわりに、ここでは本物の、生きた、かわいらしくて美しくてかっこいいイルカ様やシャチ様が見られるんだよ! だからみんな、どうせ千葉に行くなら鴨川シーワールドに行こう!

と、前回もまるでシーワールドの広報みたいなことばっかり書いてたが、(金は一銭ももらってません)、なんでそれほどここが好きかってことはあまり書いてなかったな。ところでこの文句、我ながらなかなかいいキャッチフレーズだと思うんだが、広報で採用してくれないかな? 日本人は挑戦広告を嫌うから無理か。

 ところで前回記事をちょっと訂正。「子供のときに一度行った」と書いたが、この記憶力ゼロの私がかなり細部まで記憶していたところを見ると、これは絶対におかしい。その後も誰と行ったかすら覚えていないが、何度か訪れているはず。マザー牧場や行川アイランドですら二度以上行ってるもん。ただ、学校の遠足(勤めていた短大も含む)とかはいつもマザー牧場か行川アイランドだったのは、ここは入場料が高いからか。(調べたらそうでもない。ディズニーランドにくらべれば、大人2800円なんてただ同然じゃん)
 そういや、行川アイランドってなくなっちゃったんだね。あそこは遊ぶものや見るものは何もないが、トロピカルな雰囲気はいいから好きだったのに。それを言ったら多摩テックとか、私が子供の頃によく行った行楽地やテーマパークは、当時は人気観光地だったにもかかわらず、ほとんどがつぶれてしまった。その中で鴨川シーワールドが残っているのはそれだけでもすごいことなんだが。

 とりあえず、どんな人でも、べつに海にも動物にも魚にも興味なくても、お年寄りでも子供でも、来れば絶対楽しめて、つまらなかったなんて言う人は一度も見たことがない。というだけでも並大抵の水族館ではない。
 おっと、ここってテーマパークや遊園地じゃなくてあくまで水族館だからね。つまり研究施設でもあるわけで、なのにここまで楽しませてくれるってのはすごいと思う。葛西臨海水族館は地元でもあり、それなりに愛着を持ってるけど、いかんせん見せ方に工夫がない。その辺がいかにも親方日の丸、じゃなかった親方石原慎太郎なのだが、その意味ではもっと努力して欲しいね。その点、ここは完全な私企業が経営する水族館なのに黒字を出しているのもすごい。(黒字かどうかは知らないが、少なくともつぶれないってことはそうなんだろう。ちなみに水族館経営はおそろしく経費がかかる)

 とにかく、ここを目的地にしたのは私自身が行きたいというのはもちろんだが、石神さんに見せて驚く顔を見たかったというのもある。それで実際、「思ったよりずっと良かった!」というのを聞いてニヤニヤ。だけど私はむしろ海ほたるが目的のつもりだったのに、来てみたらやっぱり自分が夢中になってしまった。

シャチの話

鴨川シーワールドのシャチのジャンプ

 私は哺乳類では馬と猫の次か、それ以上にシャチが好きだ。だけど馬と猫ならどこでも(馬も競馬場へ行けば)見られるのに、シャチは日本ではここでしか見られない。それだけでも鴨川シーワールドに行く価値はある。

 実は5年前は国内の4つの水族館でシャチが飼育されていた。ここ以外にも、太地町立くじらの博物館、伊豆三津シーパラダイス、名古屋港水族館の3館にシャチがいたのだが、この3館のシャチはすべて死んでしまい、残ったのは鴨川シーワールドだけだ。
 名古屋のシャチなんて、太地町から譲られたのを、7か月で死なせてしまい、しかも誤診による人災っぽい。そのうえ「シャチは名古屋のシンボルだから」と言って、鴨川の看板であるオスメス2頭「ビンゴ」と「ステラ」のレンタルの話が持ち上がり、ファンサイトでは反対運動まで行われていたようだ。
 私もそれには絶対反対だが、少なくとも今日はまだ2頭ともいたので、レンタルの話は流れたみたい。というか、レンタル関係のブログの最後の日付が3月9日だから、震災でそれどころではなくなってしまったということか。

 というぐらい飼育がむずかしい動物なのだが、鴨川シーワールドは飼育に成功しているだけではない。もちろん日本で最初にシャチの飼育に成功した水族館であり、他の水族館では死に絶えてしまったシャチを現在7頭も飼育しているだけでなく、繁殖にも成功しており、2009年には水族館生まれの3代目である「アース」が生まれている。これでもう鴨川生まれは4頭目。その全員が健康に育っているだけでもすごいし、これなら口やかましい保護主義者も黙らすことができる。(YouTubeでショーのビデオを探してたんだが、こういうのって必ず海外の保護主義者が湧いてきてうるさいのよ。animals in captivityについての私の立場は、すでに何度も書いたから繰り返さないけど)
 現地で見ると、シャチのプールは他のシーワールドに較べると狭すぎて、なんだかかわいそうな気もするのだが、ここでそれだけ元気いっぱいに生きているんだから、経験豊富な飼育係に万全の世話をしてもらっているはずで、その意味ではここのシャチは幸せだと思う。

 それで、シャチと言えばやはりパフォーマンスである。これについては前回、ちょっと疑問に思ったことがあった。下の動画で見られるような、トレーナーがプールに飛び込んでシャチに乗ったり、シャチがトレーナーを空中に投げ上げる演技、これってシャチ・ショーの華だと思うのだが、2006年にはほとんど見られなかったので、「なんでかなー?」と思っていたのだ。
 その理由は、今ごろになってようやく中村元のブログ 『ブログ水族館』を見てわかった。私たちが行った2006年は、ちょうど「ビンゴ」と「ステラ」の三女に当たる「ラン」ちゃんが生まれた年で、危険なのでそういうパフォーマンスは休止していたんだそうだ。ここで危険というのは、赤ちゃんシャチにとって危険というのではなく、赤ちゃんシャチがトレーナーにとって危険だから。だって、生後6か月とはいえ、体重350キロの赤ん坊が、赤ん坊だけに手加減というものを知らないで暴れまくったらトレーナーの命に関わるから(笑)。

 いやいや、笑い事じゃないね。そういうので死んだトレーナーもいるから。前に書いたように、シャチが人を襲ったという記録はない。だけど、「事故」でシャチに殺された人はけっこういる。というと、いかにも恐ろしそうだが、それを言うなら事故で馬に殺される人の数はすごい数なので、要するに人間より大きな生き物はすべて生きた凶器と考えていいってこと。

 それですぐに思い出すのは、昨2010年、アメリカのフロリダ州オーランドにあるシーワールドで、シャチがベテランの女性トレーナーを水中に引きずり込んで殺してしまった事件。このニュースは朝日新聞にも載ったのだが、なんでこれを覚えているかというと、その記事にあったシャチの名前「ティリクム」に聞き覚えがあったからだ。
 私は『ダーウィン賞!―究極におろかな人たちが人類を進化させる』(講談社)という本を持っているのだが、これは「愚かな行為により死亡する、もしくは生殖能力を無くすことによって、自らの劣った遺伝子を人類の遺伝子プールから抹消し、人類の進化に貢献した人に贈られる賞」という、めちゃくちゃ悪意に満ちたブラックな賞の記録である。この本自体もむちゃくちゃおもしろいんだが、それは置いといて、その中にこのティリクムくんが出てきたのね。(ちなみにこの本は絶版です。『ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル』という題の本は、たぶん同じ原書からの翻訳だが、こっちは中味も薄くてカスなので買わないように)

 どういう記事かというと、こちらは犠牲者が客。ただし、夜の水族館にこっそり忍び込んで勝手にシャチのプールに入り(しかも全裸で)、勝手にシャチと遊んでいるうちに、水に引き込まれて溺死したというイカレポンチで、そのうえ以前にも同じことをやって捕まってる前科持ちだというから、やっぱり同情の余地はなくてダーウィン賞にふさわしいんだが、ちょっと気になったのはこのシャチが以前にもトレーナーを死なせてるというくだり。そういう悪い癖のある猛獣を、普通にショーに使っていいのかなと思ったのだ。
 そのシャチの名前がティリクムで、新聞を見てすぐ本を開いて確認したが間違いない。つまりこれで合計3人殺してることになるんだが、もちろんティリクムにはなんのおとがめもなく、シーワールドは彼を飼い続けることに決めたという。うーむ、確かに何十年も人に飼われていたシャチを海に帰すのは得策ではないが、いくらなんでもショーに出すのはやめたほうがいい。というか、本人に悪意はなくてもそんな殺人シャチを扱う仕事に志願者がいるだけでもすごいな。
 このニュースについてのコメントを読んでいたら、「どうして殺処分にしないの?」という質問に、「シャチの値段の方が人間3人の命の値段より高いから」というレスがあって苦笑した。でも本当かも。
 そういえば、ちょっと前に『動物の値段―シャチが1億円!!??』という動物商が書いた本もあったな。これはこれでおもしろい本で、その中で高価な動物の筆頭にあげられていたのがシャチだった。でも1億円というのは嘘だと思うな。ティリクムの記事にも数億円と書いてあったし。そもそもシャチは研究目的以外での捕獲が禁じられてるから。そんな高価なシャチを7頭も持ってる鴨川シーワールドってすごい! そんな高価な動物が見られるのに2800円って安い!(なんか宣伝臭が‥‥)

かっこいいトレーナーのお姉さん

 というわけで、鴨川シーワールドのトレーナーの皆さんも単にかっこよくて運動神経抜群な(これは人間の方も相当の運動神経がないと危険すぎるでしょう)だけじゃなく、ものすごく勇気がある人たちで命かけてるんだと思うと、同じショーでもよけい感動するはず。
 そんなわけで、2006年に私が見たときは、「シャチについて学ぼう」という感じのお勉強会ふうの内容だったのに、今日はダイナミックなパフォーマンスが堪能できた。上の動画よりずっと良かったよ。あの狭いプールの中でぐるぐるまわる4頭のシャチと4人のトレーナーが切れ目なくジャンプを繰り返して、本当にかっこよかった。女性トレーナーもすごいんだが、やっぱり男性のほうが体が大きくて力強いぶん見栄えがするかな。ところで今ふと思ったんだが、なんでイルカのショーではこういうのやらないのかな? 人間を飛ばすのはイルカじゃ無理としても、イルカに乗ったら気持ちよさそうだが。
 とにかく私が大きくなったらなりたいもののひとつは「シャチのトレーナー」だ。(大きくなったらって、いつ???!!!)

 なんで私がシャチが好きかというのはこれまでも書いたが、基本的には大型動物と肉食獣が好きだからだ。それで地球最大の肉食動物はシャチだから、当然のようにシャチがいちばんとなる。
 ただ、私の大型動物好きの土台を作ったのは馬である。本当の都会っ子だった私が生きた馬を間近で見たのは高校で馬術部に入ったときだったが、馬房で馬たちに引き合わされたときは正直言ってビビッた。こんな大きい動物だとは知らなかったので。うちのクラブの馬はほとんどがアラブとサラブレッドの混血だったが、体高(肩の高さ)が160〜170cmだから私でも横に立つと向こうが見えない。(サラブレッドは大きいやつは180を越える) 頭の高さは軽く2メートルはあるし、後足で立つと3メートルを超えて、高く作ってある馬房の天井に頭をぶつける。と、数字で書くとどうってことないんだが、実際に3メートルの高さの動物が頭上から迫ってくると命の危険を感じます。逆に言うと犬猫って人間みたいな巨大生物のそばにいて怖くないなんてどうかしている。(まあ、野良は怖がるからそれで正しい)
 馬でこうだから、10メートルのシャチ(最大級の大きさ。鴨川でいちばん大きいビンゴは6.5m)なんて、想像しただけでゾクゾクする。
 大きい動物の良さってのは、怖いだけじゃなく、ある種の畏怖を感じさせるところと、それだけ大きい生き物と心が通じたときの喜びと、それだけ大きい動物を意のままにあやつる征服の喜びなんだよね。これまた相手がシャチならどんなにか。征服っていうと言葉が悪いけどね。でもあの喜びはやっぱり経験してみないとわからないと思う。

 とりあえず、鴨川シーワールドのいいところは前にも書いたように、動物とトレーナーの一体感や、動物が本当に楽しそうに演技をしているところ。イルカもそうだが、ここのシャチは本当にいっしょに楽しんでるみたいに見えてよかった。

水族館まるごとウォッチングとベルーガの話

 前回の「シャチとのキス」みたいな参加企画だが、今度は「水族館まるごとウォッチング」というツアーに乗せてもらうことにした。理由はというと、私が上にも書いた中村元さんの本『水族館の通になる』(講談社新書)を読んですごくおもしろかったからというそれだけ。この本は、と言っても新書だからペラペラの薄い本で初心者向けなのだが、かねてから疑問に思ってたことの答がすべて書かれていて勉強になった。シャチはどうやって運んできたのかとか、調教はどうやるのかとかね。それでこの本で読んだような水族館の裏側を見てみたかったわけ。料金700円。ベルーガタッチ付き。
 最初に連れて行かれるのは変電設備とか濾過装置とかなので、子供はぽかんとして退屈そう。でも工場萌えでもある私は見てるだけでワクワクする。そういや、このあたり大震災の被害は免れたんだね。なにしろ水族館はどこも海辺にあるので、東北沿岸の水族館はどこもひどい被害を受けたんだが。良かった良かった。
 ここではアカウミガメの子供を抱かせてもらった。なんとシーワールドの前の浜がアカウミガメの産卵地で、研究や保護のためにかなりの数のウミガメを育ててるんだよね。子供と言っても甲羅の長さが40cmぐらいに成長した子供で、持つとずっしりと重く、手足をバタバタさせていやがる。かわいー! 爬虫類好きの私はカメももちろん好きなのだが、中でもウミガメの美しさとかわいさは特別だと思う。いいなー。リクガメもかわいいが、手足がヒレになってるウミガメのかわいさは格別。これが陸上で飼えるものなら飼いたい。

この状態のベルーガの頭をもませてもらいます
しゃべったり歌ったり大活躍のベルーガのパフォーマンス

 それから水槽を普段は見られない上や裏側から見せてもらって、ベルーガ(和名はシロイルカ)とご対面。いや、前回見て、ベルーガには心底惚れましたからね。あのおっとりとした優しさと癒し効果に。あのかわいいベルーガに触らせて頂けるなんて、なんてありがたい。
 連れて行かれたのはベルーガのいる屋内プールの上(観客は下のガラス越しに見る)。そこで2頭のベルーガがプールの縁にちょこんとあごを載せてじっとしている。このポーズだけでも愛らしくて死にそう。
 今日初めて知ったのは、ベルーガの体はすごく柔らかいということ。北極圏に住む生き物だから、厚い脂肪の層に覆われてるのは知ってたが、その脂肪がこんなにぷるんぷるんだとは知らなかった。イルカもシャチも皮下脂肪は厚いし、特におでこの部分には「メロン体」という特殊な脂肪組織があって、これを使ってクジラ類はエコーロケーションをするのだが、イルカもシャチも体はツルツルで固かった。
 なのに、なぜかベルーガは触るとしっとりフニャフニャなのだ。石神さん曰く、「革張りのソファの感触」。うーん、私に言わせると本革で作って水を詰めたビーチボールみたいだな。個人的に「脂肪」という文字は見ただけでアレルギー起こすほど憎いし、考えようによってはかなりグロテスクなものだが(頭だけでなく全身がプルプルする)、ベルーガがあまりにかわいいのでなんでも許せてしまう。
 ただ、本人たちはこんなふうにペタペタ触られたり揉まれたりしてどうなんだろう? そこんとこ質問すれば良かった。見学の最後に、案内のお兄さんが「何か質問はありますか?」と聞くんだが、みんな沈黙してるんだよね。質問時間があると知ってれば考えておいたんだが、ほとんどの疑問の答えは中村さんの本に書かれてあったんで、何も思いつかなかった。

 このガイドツアーでは、もうひとつ忘れられない体験をさせてもらった。ベルーガの「歌」を聴かせてもらったのだ。クジラ類はすべて泳ぎながら歌いかわすことで仲間とのコミュニケーションをとっているが、中でもベルーガは高い声が愛らしく、「海のカナリア」という異名を持っている。と、ここまでは知識として知ってたし、DVDで見たり、ショーでも見た。だけど、DVDは録音された声だし、ショーで聞かされるのは水中マイクが拾った声なのである。それを生声で初めて聞かせてもらった感想は‥‥
 ??????????!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 いや、2頭のデュエットで30秒も続いただろうか。これ以上聞かされたら脳細胞が破壊されるという、まさに限界。マジで「歌」で気が狂うなんてことあるんだ! 音が大きくてうるさいというのではない。もちろん音量もすごいのだが、それ以上にどこまでもどこまでも上がっていくピッチと不協和音が! 2頭ともすごく張り切って歌ってくれるのだが、彼らががんばればがんばるほど、こちらの脳みそががががががが‥‥!
 もちろん彼らはエコーロケーションをするので、人の耳には聞こえないような高周波の声も出せるのだが、たとえ聞こえていなくても脳は理解してるみたいで、あえてたとえるならチェーンソーで脳みそをガリガリかき回されているような感じ。これは立派な兵器になる! 人を殺すところまでは行くかどうか知らないが、ずっと聞かせていれば発狂させるには十分。マジでなんですでに採用されていないのかわからないぐらい。(おそらく生きたベルーガを戦地へ運ぶのが困難だからだと思います)
 あー、すごい破壊力だった。どこがカナリアだよ! ということは、あの哀愁を帯びて美しいというクジラの歌も、近くで聴いたらこれ。チイチイとかわいらしいシャチの声もこれかよ。
 いやはや、見た目が愛らしいとか、人によくなつくということで見失いがちだが、この人たちはれっきとした異次元世界の住人だということを思い出させてくれる話だ。(重力で地面に縛り付けられた我々が二次元世界の住人ならば、海の生き物は文字通りの三次元に生きているわけで、本当の意味での異次元なんだが)

 このあとで、ベルーガのパフォーマンスを見た。こちらはほぼ前に見たのと同じだが、新しい演目も加わっている。目隠しをしたベルーガを使ってのエコーロケーションの実演。目隠しをしてない仲間とペアを組んでの「言語」の実演のあと、しゃべるベルーガの実演があるのだ。

 動画を見てもらうとわかるが、最初は音の高低のまねだけなのかと思ったら、「ピヨピヨ」とか、「ホーホケキョ」とか、かなり正確な発音で口まねができる。
 確かに鳥が「しゃべれる」のは音声コミュニケーションが発達した生物だからだが、それを言うならクジラ類もそうだ。だから彼らがオウムのようにしゃべってもなんの不思議もないわけ。しかもオウムは舌の形状からしわがれ声になってしまうが、ベルーガは高い声が楽々出るので、女性や子供の口まねのほうが得意そう。(間近で聞くと殺人音波ですが)
 あと、ダイバーのマウスピースから空気を口にふくませてもらって、それを泡のリングにして吐き出すのも新しい芸だな。これはイルカとかが遊びでやってるビデオを何度か見たから、できることには驚かないが、人間と酸素を分け合ってるところがおかしくてかわいい。

その他のショーや展示について

 もちろんイルカやアシカのショーも見ましたよ。ただ、イルカやアシカは定番だけあって、見てれば文句なくおもしろいけど、シャチやベルーガにくらべると驚きが少ないのよね。特にアシカはイルカクジラよりも人間に近いだけあって、芸達者すぎてやや引くかな。猿回しがうまいけどあまり楽しめないのと似てるかも。このサッカーのやつも前に見たのと同じだったような気がするし。
 イルカのショーは大型のバンドウイルカ2頭と、小柄でスリムなカマイルカ2頭で勤め、これは前と同じだったような気がするが、演技者の腕はちょっと落ちてるような。カマイルカの1頭がまだ慣れてないのかリズムが合わないみたいに見えた。まあ、この人たちもけっこう気分屋だから、日によって出来も違うし、演目自体が毎日変わるから出来不出来があるのかも。
 ジャンプとかももっと高く飛べるはずだと思ったけど、プールがあまり大きくないから無理なのか? それとも安全のためにあまり高くしてないのかも。どのショーも演技時間が短く感じられて、もっと見たいと思うけど、これも動物のことを思えば、ストレスを感じない程度の時間にとどめてほしいので文句は言えない。
 それでもこの4つのショーが30分刻みで終日行われているので、何もかも見ようと思うと、半日ではとても時間が足りない。

 とか言いながらもがんばって一通り見て歩いたけどね。ショー以外でやっぱり好きなのはイルカのプールや海獣たちの住処を水中から見られる地下の部分。もちろんセイウチにも挨拶しましたよ。セイウチって本気で人間に興味を持ってるからかわいい。前回はオスは眠ってたが、今回はオスが大活躍で、泳ぎながら何度も何度も私たちが見ている窓にやってきてすごい流し目をくれて行きました。

写真小さいけどぬいぐるみみたいなラッコちゃん

 あとラッコがかわいすぎてもだえ死ぬ! 前回の記事の変に冷たい口調でわかるように、ラッコのことはわりとバカにしていた。あまのじゃくなのでラッコとかパンダみたいに一般に人気の動物が嫌いなのと、「しょせん齧歯類じゃん、ふん!」と気持ちがあったから。で、実際にあのときのラッコはけっこう憎たらしかった。
 だけど今日はメロメロ。オスとメスの2匹がいて、大きめで顔が黒っぽいのがオス、小さくて色白で顔も優しいのがメスなのだが、前は確か1匹だけだったような‥‥
 それでそのカップルが並んで例のラッコポーズで仰向けに浮いてるのだが、ちょっかいを出し合ったりじゃれあったりする仕草が殺人的にかわいい。それにラッコをこれだけ間近でこれだけ鮮明に見られたのも初めてのような気がする。
 こないだラッコを見たのは確かベルギーの動物園だったのだが、あれは水槽のガラスが汚れ過ぎでよく見えなかった。だいたいラッコの住む水槽は濁ってたりして見づらいのだが、その理由も中村さんの本を読んでわかった。ラッコはすごい大食漢でビチビチのウンチをするうえ、細く密集した毛が大量に抜けるので水が汚れやすいのだ。にもかかわらずきれいな水でないと生きられないという難儀なやつらなのだが、ここのラッコの水槽は水もガラスも完璧な透明度で、隅々まではっきり見える。これだけ見ても、鴨川シーワールドがどれだけ動物を大切にしているかわかる。

 あ、もちろん餌やりも見ましたよ。例によって大きな貝をもらったラッコがどうするかなと見ていたら、まっすぐ私の目の前まで泳いできて、ガラス(便宜上ガラスと書いてるが今はみんなアクリル板)に1回だけカチンとぶつけて、みごとに蝶番の部分を破壊。お上手! あとは開いた貝をお腹に載せてパクパク食べていた。あーっ、ビデオカメラがあればすごくいい絵が撮れたのに残念! これほどカメラがないのを残念に思ったことはないね。とにかくこちらに迫ってくるときのあのかわいらしさと言ったら! ていうかせめてデジカメ欲しい!と思ってしまった。 

 あと、ペリカン。これも今回初めて見たと思うんだが、どこにでもいるモモイロペリカンのほかに、コシグロペリカンというのがいて、園内を散歩させていた。このコシグロちゃんがすごい変な顔で、ハシビロコウさんに続くアイドルにしたいぐらい。まん丸で大きな黒い目のまわりに黄色い輪があって、さらにその輪に黒い縁取りがついてるから、一見マンガみたいな目に見えるのだ。
 この目はアデリーペンギンのいっちゃってる目といい勝負だな。(アデリーペンギンも目の周囲が白いのでいつでもびっくり目をしているように見える) どっちもなかなかキモかわいい。

 あといつも言うが、普通の水族館部分の展示の仕方がすごくうまい。川の源流から海までの房総の自然をそのまま再現したエコ・アクアロームは地味な展示なのに、巨大なジオラマみたいであまりによくできているので感動するし、熱帯の珊瑚礁を再現したトロピカルアイランドはきれいで幻想的で、本当に海に潜っているような気分にさせる。このサメやエイのいる大型水槽ってこないだはあったっけ? 暗い洞窟を表した水槽もすごい。水族館としては決して広くないのに、この密度はすごいし、純粋に見てきれいだし、べつにめずらしい魚がいなくても、これらの水槽の作りだけでも興奮する。

 というわけで、半日しかいられなかった(遅くなると首都高の渋滞に巻き込まれてしまうので)が、後ろ髪を引かれながら鴨川シーワールドを去った。だいたい、かんじんのシャチをショー以外でほとんど見る時間がなかったし、心残りがいっぱい。絶対近いうちにまた来る。今度は冬に!
 結局何が悪いかというと、ここまでいっしょに来てくれる友達はなかなかいないのと、私ほど暇な友達もいないのと、さすがにひとりでこういうところへ来る根性がなかったからだが、もうそんなことは言ってられないからひとりでもまた来る! 

おみやげについて

私の買った巨大ぬいぐるみのシャチ。もちろん黒い方。
アングルのせいで丸っこく見えるが、実際はかなり長い。

 実はおみやげはあらかじめ決めてたんですよ。特大のシャチのぬいぐるみに! 理由を述べよう。 

 ほんとの幼児だったころを除いて、私は人形というものが嫌いで、ぬいぐるみさえひとつも持ってなかった。なんか生物の形をした無生物というのが、哀れっぽくて情けなくて不気味でとにかく嫌いだったの。まして毛が1本もないシャチやイルカのぬいぐるみなんてグロ!と思っていたのだが、前回来たとき、誘惑に負けてコウテイペンギンのヒナの小さいぬいぐるみを買ってしまったのだ。
 いや、さんざんぬいぐるみ嫌いって吹聴したあげくだから、同行したゆうこさんにもバカにされました(笑)。

 でもこの子がほんっとうにかわいいの。あれからコウテイペンギンのぬいぐるみを見かけるたびにうちの子と見比べてるけど、こんなにかわいいのは他では見たことがない。
 もともと鴨川シーワールドのオリジナルぬいぐるみは出来がいいのだ。デフォルメとリアルさの加減が絶妙なのよね。毛の手触りも抜群だし。ぜひ皆さんに現物をお見せしたくて写真を検索してたら、自分の写真が出てきた。げっ、これはいらない。
 だからもっとほしいと思ったのがひとつ。

 それと今年の夏は暑かったので、掛け布団(うちはタオルケットだが)を使う気になれず、ずっと抱き枕がほしいと思って探してたの。ところがけっこう高価な上に、デザインの気に入ったのがない。それで、これならいっそイルカかシャチのぬいぐるみでも抱いてる方がましと思ったとたん、どうしてもほしくなってしまった。ほら、どっちも細長くて流線型だから、抱くのにちょうどいいと思って。ラッコでもいいんだけどさ。
 さらに車なら大きなぬいぐるみも楽に持って帰れるというのもチャンスだと思った。

 そこで売店へ行ったのだが、シャチの大きいのは1万数千円もして私にはとても買えないし、デザインもいまいち。ペンギンぐらいならともかく、こういう精悍な動物はあまりかわいらしくデフォルメしたのはいや。かっこよくないと。だから目が大きかったり、白目があったり、寸詰まりで丸っこかったりするのはNG。ジャンプしてるところとかポーズを取らせたのもダメ。飾っておくものじゃなくいじり倒す気でいるから(笑)。
 結局シャチの気に入ったぬいぐるみがない代わり、ベルーガに一目惚れ。もちろん真っ白で、かなりデフォルメしてあるが、ベルーガは冷静に考えるとかなりグロテスクなプロポーションなので(笑)これぐらいデフォルメした方がかわいい。(普通のイルカのプロポーションになってる) ちっこい目と、まあるいおでこと、笑ってるようにしか見えない口がチャームポイント。大きさも60cmぐらいで手頃。2100円。ベルーガは元々がフニャフニャだからぬいぐるみにしても違和感ないなー。

 と、これで満足して帰ろうとしたところ、外のワゴンでシャチの大型ぬいぐるみのバーゲン品を発見。9000円のものが売れ残ったのか3000円。これなら買える! しかもマグロサイズ! しかもプロポーションもリアルですごいかわいい! 迷わず連れて帰りました。両手に花。
 帰ってからウェブで見ていたら、同じものが通販で買えるのを発見しましたけどね。ちゃっかりYahoo!にも楽天にも出店してるし。そこで同じのをやはり3000円で売ってた。それが上の写真。持ち帰る必要なんかなかったのか。だけどここにあるのはほんの一部で、私の買ったベルーガもコウテイペンギンもいない。だけど、アナゴの抱き枕なんか売ってる! ううっ、ほしい‥‥

 で、さっそく抱いてベッドに入りました(笑)。しかし、ぬいぐるみもこの大きさだとけっこう重い。無造作に抱き上げたらヒレでビンタ食らった。それで横になって足でしっぽの付け根をはさむと、ほどよい弾力があっていい感じ。これだとちょうど顔のあたりにシャチの頭が来てそれもいいんだけど、首が太すぎて腕が回らない‥‥はずはないけれど、腕が疲れる! なにしろメタボのおっさんの胴回りぐらいありますからね。ベルーガのほうだと、抱きしめるにはぴったりのサイズなんだが、短すぎて股にはさむことができない。
 ならばといって、横に置いて添い寝しようとすると、やはりあまりに大きすぎて狭いベッドの半分以上を占領してしまう。思いあまって仰向けに寝て腹に載せてみたら、適度な重みがかかってこれはこれでなかなか気持ちがいいんだが、やっぱり抱こうとすると腕を高く上げなきゃならなくて疲れる。お腹に載せると両方のヒレ(ぶらぶらに付いてるのだが、それなりに重みがある)がちょうどこちらの両脇を抱きしめるようにぺたっとくっついて気持ちいいんだが。
 惜しいなあ。これでもう少し細長いプロポーションなら抱き枕にぴったりだったのに。やっぱりぬいぐるみだから、多少寸詰まりに作ってあるんだよね。やっぱりぬいぐるみを無理やり抱き枕にするのは無理があったみたい。アナゴを買えということか。どっちかというとウツボのが欲しいんだけど作ってくれないかな。
 結局いろいろ試したあげく、ベッドで本を読むときに使えることがわかった。寝転がって本を読む時って、本を持ち上げている腕が疲れるじゃない。そういうとき、この子を台にして本を置くと楽なのだ。あと、枕や足載せ台に使っても気持ちよさそうだが、それはなんかかわいそうな気がしてしまう。
 あと、この太さと柔らかさは誰かを思いきり抱きしめたいときにいい。猫だと細すぎるし、ジタバタして引っかくし、犬だとゴツゴツしすぎだし、ジタバタして暴れるし、人間は単にかわいくないし。

 とりあえず、実用になるかどうかはさておき、すっかり情が移ってしまっているのがこわい。ベルーガもシャチも(今は名前を考慮中)かわいくてかわいくてしょうがないんだよー。私はバカにしていたが、おたくがフィギュアとかをかわいがる心理もこんな感じなのかしら? 私は人間のかたちの人形なんて見たくもないし、たとえアニメ絵でも人間の付いた抱き枕なんてホラーでしかないけど。
 ほんとに生き物みたいな気がしてくるのよね。もちろんこれが本当のシャチだとは思えない。何かシャチに似てて、毛がもさもさ生えたかわいい生き物って感じ。しかし持ち運ぶときは、つい新巻ジャケみたいにしっぽの付け根をつかんでぶら下げてしまうのがなんかなー(笑)。
 しかし私って、つくづく人外が好きなんだなと思う。前にも書いたけど、人間から遠い生き物のほうがかわいく思えるのだ。イルカなんて体型はほとんど魚類じゃない。ぬいぐるみ買うのに、定番のクマとかパンダとかアザラシとかラッコとかの可愛げな動物じゃなくてイルカってのがなんともね。あと前からすごく欲しいのがワニとサメのぬいぐるみなんだが、それも変か? 逆にサルとかクマとかの人間に近いプロポーションの動物のぬいぐるみは気色わるー!と思ってしまう。鳥や魚や恐竜も好きだけど人間とはほど遠い生き物だしねえ。
 考えたら馬だって相当グロテスクだよ。見た目が美しいからみんなだまされてるけど、手足の中指だけが異常に伸びて肥大し、他の4本の指はすべて退化してなくなり、さらにその中指の爪が丸く太く伸びて、その爪の先だけで立ってるって、めちゃくちゃグロです。

 何を言いたいのかわけがわからなくなってきたが、要するに鴨川シーワールドはいいところなので、特にまだ行ったことのない人は必ず行きなさいということです。終わり。

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