このページのいちばん下へ

サイト内検索 

2010年6月26日 金曜日

日本サッカーの夜明け

 あれから一夜、いや一朝が過ぎ(もう昼夜の感覚がまったくなくなってしまった)、病院のベッドで点滴を受けながらも(はい、とうとう毎日病院で点滴まで受けるはめに)、今朝の試合のことばかり考えていた。

 これは奇蹟だ。

 だってそうじゃない? 選手発表はお通夜だったし、本戦は日本代表のお葬式になるのは確実と、ほぼ全国民(というか、少しでもサッカー知ってる人)は思っていた。もっと悲観的な人は、これで日本のプロサッカーは終焉だと言ってたぐらい。
 つまり、三戦全敗 → サポーター離れる → スポンサー離れる → Jリーグじり貧という流れ。私はそれはないと思ったけどね。サポーターというのは、(私も含め)チームがダメなほど夢と期待を持つものだし、日本人には判官びいきというのもあって、ダメなチームほど応援したがるし。

 にしても、当分は暗黒時代が続くものと思っていた。ところが、実際は、2勝1敗で決勝トーナメントへ進んだばかりか、その中味が実に濃い。1戦目は勝つには勝ったが、それ以上にカメルーンのお粗末さも目立ったし、虎の子の1点を必死で守り抜くという、弱いチームの勝ち方だった。それが2戦目のオランダ戦で、負けはしたものの「やるじゃん」と思わせ、3戦目は堂々の横綱相撲で勝った。今思い返してみるに、これって強豪国の勝ち方じゃない? 先に2点取って、追いつかれそうになるとさらに点を重ねて突き放すっての。
 だいたい、サッカーで3点取るというのは、相当強いチームの勝ち方。まして相手が北朝鮮とかニュージーランドならともかく、ヨーロッパ予選をグループ1位で通過してきたデンマーク。もちろん国の格も相手の方がずっと上。それを手もなくひねってしまうって、これ、本当に親善試合の岡田ジャパンと同じチームなの?

 しかもその3点の内容が濃い。1点目の本田のFKは何度繰り返して見ても惚れ惚れするほどの美しいシュート。これをあの距離で、あの角度で決めるなんて。
 だいたい今大会はみんなFKに苦労していて、日本以前に決めたのは韓国だけ。それでボールのせいだとか、ピッチのせいだとか、高地のせいだとかいろいろ言われていたが、ああも見事に決められてしまうと、みんなただの言い訳に聞こえる。
 2点目の遠藤のFKもすばらしかったが、あれ、本田が先に「俺が蹴る」って言ったんだってね。というと、去年のオランダ戦のあの場面が浮かんできてしまうが、中村には譲らなかった本田が、遠藤にはあっさり譲った。これはもう野獣の本能で、遠藤なら入れられると直感したとか思えませんね。(そうじゃなければ、単に「先輩だから譲る」なんてことは絶対しない人だから)
 まあ、日本と言えばフリーキックなので、これだけなら単にお家芸が爆発したと見ることもできる。でも、最も価値があると思うのは3点目。本田がトラップしたボールをドリブルし、日本人にこれができるとは思わなかった魔法のような切り返しでDFをひとり、ふたりとかわし、キーパーまで引っ張り出して、誰もいなくなったゴール前に突進してきた岡崎に与えた。これ、完全な「プレゼント」だったよね? 岡崎は単にゴールに流し込む「アシスト」をしただけで。あれは本田が余裕で自分でシュートできたボールだった。
 どういうつもりだったんだろう? 自分ばっかり点とっちゃ悪いから、本来のエース・ストライカーのはずだった岡崎にも譲ってあげようと? 真意は不明だが、驚いたのはこの余裕。岡崎は「無我夢中だった」と言っていたが、確かにそれがこの人のいいところでもあり、一流にはなれないところでもある。なのに、そのすべてをひとりでお膳立てした本田は、岡崎まで見ていて、譲るだけの余裕があったというところに驚きあきれる。
 本田にはずいぶん前から期待していたが、本当にここまでうまい選手になるとは思わなかった。でも、考えてみれば、この試合、やろうと思えば本田のハットトリックも十分可能だったんだね。それも見たかったし、それをできれば、光速で次の目標(ビッグクラブへの移籍)に進めたとは思うが、ここはひとまず「チームプレイ」をほめておこう。本田もそうだが、チームも試合を重ねるごとに強くなっていくのが心強い。
 1戦目と2戦目は守備的なゲームをしたので、「退屈」と悪口を言う人も多かったが、今回は(入らなかったものも含め)豪快なシュート・シーンもいっぱいあったし、点もいっぱい入ったし、文句の付けようがないはず。これは私が日本人じゃなかったとしても、見ていておもしろい試合だった。
 そういや、今回は世界を代表する名ストライカーと言われる人たちが点とれないで呻吟してるんだよなあ。本田ってやっぱりすごい!

 とにかくこの勝利は、日本人のみならず、世界にとってのサプライズ。グループリーグ抜けただけでサプライズってのがちょっと情けないが、自国民が自虐気分にひたる一方、外から見ての日本なんて虫けら同然だったから。同じグループのチームから見れば、貯金箱にしか見えなかっただろう。ざまーみろ、と、こういうときだけ愛国者。
 ただね、私もさんざんバカにしたけど、それは岡田ジャパンをバカにしてただけで、全体的に見た日本選手のレベルは年々上がってると思ってたよ。だからこそ、その力を引き出してやれない岡田に腹立ててたわけで。
 なにしろ昔の日本人選手といえば、大きな相手にぶつかられるとたちまちコケる → 倒れたまま動かず担架で運び出される → すぐに走ってピッチに戻ってくる → なんなんだ、おまえは!という印象しかなかったし、空中戦では必ず競り負けるものと決まってたからね。
 それが今は体をぶつけることを恐れないばかりか、当たり負けしない選手が増えたし、空中戦でも背の低い日本人が競り勝つ場面もしょっちゅう。これだけでもすごい進歩だと思う。
 だいたい、昔は出るだけでも夢だったワールドカップに、出て当然という雰囲気になってきている時点で、どれだけ進歩しているかわかるはず。

 それでもまだパラグアイ戦は負けると思ってますけどね(笑)。もっともカメルーン戦前も、「日本がこの3連戦に勝てるとしたら、どういう場面でだろう?」とさんざん考えたんだけど、まるっきり思い浮かばなかった(笑)私の言うことだから、またもや外れるかもしれないけど。
 さすがに南米は手強いっていうか、これまでの対戦相手とぜんぜん違うことは予想つくけど、そこが狙い目かな。同じタイプなら、たぶん日本は16強には通用しない。でも違うタイプだからこそ崩す余地があるんではないか。

 しかし理屈では知ってたつもりだったが、本当にサッカーというのは(ワールドカップは特に)、強いから勝てるってもんじゃないんだなー。こういう番狂わせがあって、ネズミが巨象を倒すようなことがあるからサッカーはおもしろいのだが。

 それと本田についても一言。もうパーフェクト。今の時点で日本人選手に期待できるすべてを彼は持っている。あとはその「日本人」という枠を打ち破ってくれることだけに期待する。もっともそれも半ば達成してるけどね。必ずや中田ヒデを越える選手になるという私の期待が、こうも早く叶うとは思ってなかったけど。
 彼が活躍すると例によって、「日本にヒーローはいらない」とか、「天狗になるな」とかアホ抜かす奴がいるけど、そんなの気にせず、日本発の本物のヒーローになってもらいたい。ヒーローが嫌いなら、サッカーじゃなくて、みんなで手をつないで並んでゴールインする徒競走(というのが、最近の小学校ではあると聞いたが、真偽のほどは定かでない)でも見てればよろし。
 マラドーナからサッカーと奢りを除いたら何が残る? 単なるチビでデブのバカではないか。ブラジルやアルゼンチンからサッカーを取ったら何が残る? ただの未開の農業国ではないか。だけどサッカーが強いだけで尊敬される。今大会だけでもヒーローになれば、50年は語り継がれる。(日本では永遠にだ)
 本田にはさらに上を目指してがんばってもらいたいものである。

 すでに外国では「日本のメッシ」だの「日本のロナウド」だの言う声があがってるようだが、私、あの人たち嫌い。(なんか締めたつもりが終わらない) だいたいラテン系の色男って嫌いだし、(ただし、ラテン系にはぞっとするような美少年もいます)、動きが人間離れしていてキチガイみたいにうまいとは思うけど。あの動き見てると、キツネに追われたウサギ(見事なフェイントと方向転換の連続!)を思い出してしまうんだよね。私、やっぱり肉食動物のほうが好きだし。本田のことは前にも肉食動物にたとえたけど、何に似てるかな? もう少し足が速ければトラと言いたいが、やっぱりクマかな? クマも本気で走るとすごい早いんだけどね。パラグアイなんか食っちまえ。

 ところで次はどこへ行くのかな? すでにオファーも来ているようだが。本人はスペイン志望らしいけど、あんないつ破産してつぶれるかわからない国よりプレミア来いよ〜。名前が挙がってるシティはちょっといやだけど。もちろん、私としてはマンUなら最高。(出稼ぎ外人だらけになる前は好きでした)

 ああ、今日はイングランドその他について書くつもりが、もう体力の限界なので寝ます。
 とにかく、この夜明けの勝利は、まさに日本サッカーの夜明けであった。

P.S. 書き忘れたけど、デンマーク戦の途中で中継板見ようとパソコンを付けたら、アンドレ夫妻からメールが来ていた。「日本戦見てるよー。2-0ってすごいね。最後までこのプレス続けられたらいいね。徹夜したかいあったね」という内容だった。ベルギーは出られなかったので、日本を応援してくれているらしい。やっぱりいい人たちだなー。特に日本がオランダ(ベルギーにとってはお隣さんで目の上のたんこぶ)に善戦したので喜んでいるらしい。私の答はもちろん、「It's a miracle and Honda is GOD!」でありました。

 このページのいちばん上に戻る

ひとりごと日記トップに戻る

inserted by FC2 system