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2010年2月20日 土曜日

ゲーム評

Elonaのはなし

 でまあ、引きこもっていた間、何をしていたかというと、もちろん仕事だけしてたわけじゃなくて、いかにも引きこもりらしくゲームなぞやっておりました。
 前に紹介したToME(2009年3月11日および2009年4月25日参照)には飽きたわけじゃないんだけど、いちおうToMEは極めたと思ったので、なんとなく別のがやりたくなって、(あと、英語ばっかり読まされるのに疲れたせいもある)、たどり着いたのがこのElona。(私はつい英語風に「イローナ」と読んでしまうけど、日本じゃ「エロナ」と言っているようです)
 前、ローグライクのフォーラムに出入りしていたころ、Elonaの噂は聞いていたけど、「あれはローグライクじゃない」とか、「単なるお使いゲーム」とか、わりとバカにされてたように思うんだよね。それでも妙に記憶に残っていたし、気分を変えてみたかったので、ひとつやってみようと思ったわけ。
 どんなゲームかというと、ローグライク(というか、band系)をベースに、(私は知らないが)『ルナティックドーン』と『ウルティマ・オンライン』を混ぜ合わせたような国産RPGだそうだ。もちろんフリー。

 で、私の印象はというと、まず「グラフィックと音楽がついている!」というのが衝撃的でしたね。なにしろずーっとローグライクばっかりやってたもので、画面は真っ黒、キャラも地形もアルファベット、もちろん音楽も効果音も一切なし!というのに慣れきっていたもので。(上の画面はフィールドマップ。そういやローグライクの写真載せてなかった。それじゃ参考までに変愚蛮怒のプレイ画面を。だいたいローグライクはどれもこんな感じです) 実はToMEや変愚蛮怒もグラフィック版でプレイすることはできるのだ。しかし、文字のスペースに無理やり絵を押し込むものだから、小さすぎて見にくくて、これならabcのほうがまだ見やすいので使ったことがなかった。その点、これはちゃんと絵が付いてて、アニメーションもする。
 絵は昔のファミコンみたいな二等身キャラ。3Dがグリングリン動く今の時代にドット絵かよー!と最初は思ったが、@からは大きな進歩だし、これはこれでやっているうちに違和感なくなる。私は自キャラやモンスターは文字でもかまわないけど、さすがに風景や町の様子は絵がついたほうがはるかに見栄えはいいねえ。ローグライクではあくまで想像するしかないもんね。

 それとびっくりしたのは音楽の良さ。実は個人がひとりで作ってるゲームなので、絵や音楽はすべてフリー素材からの借り物らしいのだが、音楽は実に雰囲気があっていい。ローグライクの飛ぶようなスピードに慣れちゃったので、さすがに戦闘アニメーションはまだるっこしくて、すべて切ってるけど、音楽はないとやっぱり寂しい。

 とりあえずはキャラクター作りだ。例によって膨大な種族と職業(は少ない)を組み合わせて作るのだが、これはWikiを調べたら、どれを選んでも、最終的にはたいして代わりはないらしい。そこでとにかく強そうなやつにして、次は「異名」を選ぶ。自分で付けた名前のほかに、通り名みたいなのがあるんだね。これはランダムで生成される中から選ぶのだが、受け狙いのふざけた名前が多くて、選びながら爆笑してしまった。
 私は2種類のキャラで進めているのだが、男の子は「混沌を統べる太陽」セヴェリアン(『新しい太陽の書』を読んだ人ならわかるはず。ああ、これのリビューは書きかけのまま長年放ってあるがいずれなんとかしたい)。種族は神の化身! 女の子は「比類なき猫」バステト(エジプト神話の猫の女神。種族を「猫の神」にしたので)。職業はどっちも魔法戦士。魔法も肉弾戦も両方やりたい欲張りなので。

 それからPC(プレイヤー・キャラクター)の外見を決める。キャラクター・グラフィックはいろんなパーツを組み合わせて、色を変えたりして好きなのを作る。パターンは多いが、ちっちゃいのでゲーム内ではあまり見栄えはしない。
 とりあえず、右が私のバステトちゃん。猫神だから猫耳少女(しっぽ付き)。身に付けている装具もちゃんとグラフィックに反映されるところが細かい。(わかりづらいけどマントを着ています) こうやって見るとなかなかかわいいね。しっぽを振り振り、ちょこちょこ歩くところもかわいいし。ただ、乗馬スタイルはすごく恥ずかしい。どう見てもおもちゃの馬で。
 でもちゃんとしているのはPCだけ。他のNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)やモンスターは正面向きのみで、アニメーションもせず前向いたままピョンピョン跳び回るのがすごい変。こういうところはいかにもフリゲらしく手抜き。

 で、ゲームが始まるとプレイヤーは乗っていた船が難破して、ノースティリスという大陸の岸辺に打ち上げられたところ。助けてくれたロミアスという男が、ここでの暮らしに早く慣れるようにコマンド操作のチュートリアルをしてくれるんだが、ここで私は「やっぱりこれはローグライクだ!」と思ってしまった。
 というのも、ローグライク(というか主としてTOME)の何が好きって、身も蓋もなく鬼畜なところだったんだが、これが史上始まって以来の鬼畜チュートリアルなのだ。
 普通、どんなにハードなゲームでも、チュートリアルってのは初心者向けに親切に教えるものじゃない。間違ってもチュートリアルで死ぬなんてありえないじゃない。ところが、「食べてみろ」と言って渡された肉は「乞食の肉」。このゲームでは人間の肉を食べると気が狂うことになっている。それを知らずに食べて苦しむPCに、「本当に食べてしまったのか?」って、おまえが食えって言ったんじゃないかよ!
 他にも装備の仕方を教えると言って、渡された装備品は呪われていて外せない。解呪の巻物はくれるけど、これは失敗することも多いので、失敗すれば呪われた装備のままゲームを始めなきゃならない。壁を掘ってみろと言われて金塊を見つけて大喜びしたら、実はそれは 「途方も価値のない錆びた偽物の金塊」。本当に無価値で売ることもできない。もらった宝箱はなかなか開かないうえに、やっとの思いで開けてもゴミみたいなものしか入っていない。あげくの果てにモンスターを呼び出して戦わされるのだが、私は強いキャラで始めたからいいようなものの、ひ弱な種族ではここで殺されてしまうこともある。
 おかげでロミアス(実はストーリー上、けっこう重要なキャラ)を殺害することに執念を燃やすプレイヤーが多いのも納得。

 まあ、過酷なローグライクの世界に早く慣れさせようという親心なのかもしれないけれど、このチュートリアルで挫折するプレイヤーもけっこういるんじゃないか? でも大丈夫。なにしろ、Elonaは死んでもいいゲームなのだ。
 ここがElonaのいちばんローグライクらしくない部分。とにかく死んだら終わり。何もかも最初からのローグライクの伝統に反して、Elonaは死に放題のゲームなのだ。チートなんかしないでも、「セーブしたところからやり直し」の機能が最初からついてる。デス・ペナルティも能力がちょっと下がるとか、持ち物を少し失うぐらいで、たいしたことないし、それさえ避けることもできる。
 うーん、これはちょっとつまらないなー。死んでもいいんなら適当にやってもいいじゃん。と思いながら適当にやってると、おもしろいように死にまくりますけどね(笑)。敵と戦わなくてもうろついているだけで餓死するし、重いもの持とうとして潰れて死ぬし、魔法書読んだだけで反動で死ぬし。何度も死にながら覚えるという点ではやっぱりローグライクと変わらないか。

 でも最初の印象はずいぶんぬるいというものだった。死にやすいのは確かだが、事情が飲み込めてくるといろんな救済措置(ただで食べられるものとか、最初から強力な装備品を手に入れる方法とか、手っ取り早く金を稼ぐ方法とか)がちゃんと用意されていて、初心者でも無理なくゲームが進められるようになっているのだ。つねに緊張感を強いられ、早く強くなるか、ひたすら臆病者に徹するしかなかったローグライクとくらべ、なんかのんびりしている。
 戦闘以外の部分が充実しているのも、大きな違い。早い話が一度も戦わなくても、食料を確保し、税金を払って(プレイヤーがしなくてはならない義務と言えるのはこの2つだけ)、暮らしていくことは可能だ。畑を作っての農民プレイ、牧場経営で酪農家プレイ、店を持って商人プレイ、穴掘りで坑夫プレイ、演奏で稼ぐ吟遊詩人プレイ、すりを生業にする泥棒プレイ、とどのつまりは体を売って稼ぐ娼婦プレイまで、プレイスタイルの幅はものすごく広くて、ひたすら殺しまくるしかなかったローグライクから来ると、実にまったりしていてなごむ。ローグライクが原則としてひたすらダンジョンに潜り続けるゲームなのに対して、広いフィールドを観光客気分でのんびり旅して歩けるのも、初めてウルティマ(オリジナル)をやったときのことを思い出す。
 そこでToMEのリビューにならって、Elonaの特徴や楽しさをいくつかご紹介しよう。

その1.エーテル病が(最初は)こわい

こちらは首都の王宮。黒マントの男(セヴェリアン)の後ろにいる2頭の恐竜は私が自分で作ったペット。

 このゲームを始めたときに、いちばんとまどったのがこれだ。ストーリー的になんたらかんたらで(覚えていない)この世界には「エーテルの風」というものが吹いていて、それに当たると「エーテル病」を発症する。症状はさまざまだが、ほとんどが能力が衰えたりするいやなもので、しかも症状は併発してだんだん増えていき最後には死に至る。しかも、この病気を完全に防いだり完治する手段はない。
 まあ、死は軽いんですけどね、この世界では。それにしても、主人公が不治の病にかかってるというゲームはあまりないんではないか。
 最初これを聞いたとき、いやだなーとは思ったものの、「発病したらリロードすればいいんじゃない?」と思った。それでそうしていたのだが、何度やっても必ずいつかは発症する。行動するうちに少しずつ、病気の因子が体に取り込まれ、遅かれ早かれ発病する仕組みになっているのだ。
 症状そのものはToMEでいう「堕落」や他のローグライクの「突然変異」に近いが、他のゲームではそれを回避する手段はいくらもあるのに。いちおう「エーテル抗体」という薬があるのだが、序盤ではすごく入手がむずかしいし、飲んでも2つか3つの症状が消えるだけ。病気そのものは治らない。
 最初はこれがいやでいやで、このゲームの最大の難点だなと思っていたのだが、「レベルが上がればどうでもよくなる」という上級者の言葉を信じてやっていたら、本当にどうでもよくなった。エーテル抗体は余るようになるし、だいたい自分が強くなれば多少の不便やマイナスは気にならなくなるから。むしろ役立つ症状もあるしね。

その2.NPCが楽しい

 Elonaの楽しいところは(グラフィックは情けないが)NPCがちゃんと意思を持って生きてるってところだね。ローグライクの町人なんて、それこそプレイヤーに虐殺されるだけの虫けらみたいなものだったのに。一部の国産RPGみたいに、ぶつかると決まったセリフをしゃべるだけの「人の形をした看板」とも違う。
 ElonaのNPCは勝手に飲んだり食ったりして、酔っぱらって人にからんだり、娼婦を買って路上で「気持ちいいこと」をおっぱじめたり、発狂して変なことを口走ったり、モンスターに変身したりして、実ににぎやか。町にはシティガードがいて、こちらが良い子にしていれば、親切に尋ね人を教えてくれたりするのだが、犯罪(殺人は犯罪ではないが、窃盗は犯罪になる)を見咎めると、ものすごい勢いで追いかけてくる。でも町にモンスターが出現すると、捨て身で戦ってくれる頼もしい人たちでもある。しまいには軍隊まで出動してくるのだが、それには必ず観光客の一団がつきまとっているのもご愛敬。
 でも、ガードがいないと困るだろうなと思うぐらい治安は悪い。町では酔っぱらっての殺し合いはしょっちゅう、娼婦が子供を誘って「気持ちいいこと」をしたあげく、金を持っていないからと怒って殺してしまうようなことが日常茶飯事の町ですからね。あのかわいらしい二等身キャラでそこまでやるか! こういうのはコンシュマー・ゲームじゃ絶対にできない、フリゲならではのアナーキーさ。のんびりしたところと妙に鬼畜なところが共存しているのがすごい変でおかしい。
 ガードや店主だけではなく、プレイヤーのような冒険者もそこらを徘徊している。この連中は持ち物の交換に応じてくれたり、金を出せば護衛になってくれるのだが、いっしょに酒を飲んだりして仲良くなると、いろいろプレゼントをくれたりするのに、うっかり敵にまわすと勝手に家に押しかけてきて、火炎瓶を投げて放火したり、家中にゲロを吐いてまわったりする。(どっちかというとゲロのほうが迷惑。家具はそれを見越して防火措置をしてあるけど、ゲロは掃除してまわらないとならないので) なんかやたらゲロ吐くゲームなんだよね。酒を飲むとすぐ酔っぱらって吐くし、腐ったもの食べると吐くし。ちなみにゲロも1Gだけどちゃんと店で売れます(笑)。飲み物扱いなので飲むこともできます(オエッ)。「○○のゲロゲロ」と、吐いた人物の名前が付くので、ゲロゲロ・コレクターなんてのもいるらしい。

その3.不条理が楽しい

 ローグライクと言えば不条理はつきものだが、その点でもElonaはローグライクらしい。この世界の住人は人間もモンスターも(原則としてNPCもモンスターも同じ扱い)みんな哺乳類なのに(それが証拠に「乳」を出す)、なぜか卵生(笑)。どうやらみんなカモノハシから進化したらしい。要するに牧場でニワトリを飼って卵を採ることができる、牛はいないが馬を増やして乳を搾ることができる、というのを全生命体に適用したため、ヘンテコなことになったらしい。だからこの世界では王様だろうがなんだろうが、卵を産むし乳を出すというけったいなことになっている。よってプレイヤーはウサギの卵を食べたり、ヤドカリの乳を飲んだりしながら冒険を続けることになる。卵コレクターや乳コレクターがいることは言うまでもない。
 そういえば性別も無視されている。もちろん同性でも「結婚」できるし、女の「キング」も男の「クイーン」も(これは別に変じゃないか)いる。

その4.料理が楽しい

パン屋でお買い物

 食べるで思い出したが、「食料が切れると餓死する」というローグライクのお決まり。これはふつうよけいな手間で面倒なだけだったり、逆に食料がいくらでも手にはいるので無意味だったりすることが多いのだが、Elonaでは食料探しと食べることが楽しい。前に書いたようにToMEでも殺したモンスターの死体から肉を切り取って食べることはできたのだが、あれはあくまで非常用食料。だけどElonaではそれが常食。
 町の店では食料はほんのちょっとしか売ってない。そこでプレイヤーはモンスターを倒して死体を集めたり、フィールドを歩いて木の実を拾ったり、果樹から果物を集めたり、魚を釣ったり、牧場で卵や乳を採取したり、畑を作って野菜を育てたりするのだが、これが楽しいのだ。それに集めた食料は生のままで食べたりはしない。その場で料理して食べるのだが、料理するとグラフィックも変わってちゃんとお皿に載って出てくる。料理スキルが低かったり用具がボロいとと見るからにまずそうなものしかできないのに、だんだんうまそうなものができるようになってくる。この辺、『シムピープル』を思い出したね。食材や料理の種類はシムピープルよりずっと多くて、何ができるか楽しみ。だいたい「魔法の冷蔵庫」から無尽蔵に食材が出てくるシムより、苦労して集めた材料だけにありがたみが違う。
 焼けると勝手に料理に変化してしまうので、ドラゴンなどが暴れ回った戦場には「ティラノサウルスのピリ辛炒め」とかが散乱しているのも笑った。

その5.演奏が楽しい

 楽器と演奏スキルがあれば誰でも吟遊詩人になれる。そこでさっそく街角に立って演奏するのだが、演奏スキルが低いと犬や猫にまで「下手くそ!」と言われて石をぶつけられてしまう。ときには投石で殺されてしまうことがあるので、せいぜい好感度が下がるだけのシムピープルより過酷だ。そこでなるべく人のいない物陰とかでひっそりと練習を重ねるのだが、下積み時代の苦労が多いぶん、上達してからの爽快感がある。
 金稼ぎには演奏がいちばん。聴衆を満足させることができれば、おひねりとして大金が飛んでくるし、貴重なアイテムが投げ入れられることもある。商店で高い買い物をしたあとは、店主の前で演奏すれば、かなりの金額を取り戻せるし。
 問題はたとえ「ストラディバリウス」を奏でても、サウンドはなく「‥‥ジャンジャン‥‥」というテキストしか見られないことか。

その6.コレクションが楽しい

博物館で自慢のコレクションの前に立つセヴェリアン。
並んでるのは畏れ多くも神々とその使徒の剥製。

 シムピープルの話が出たところで、根がコレクターである私にとって、Elona最大の楽しみはこれ! 変愚蛮怒やToMEでもユニーク・モンスターの死体集めに奔走していた私だが、基本的にテキストだけのゲームなので、コレクションと言っても単に文字が並んでるのを眺めるだけである。
 それにひきかえ、Elonaのユニーク・モンスターは死ぬとほぼ必ず剥製とカードを落とす。どっちもちゃんとそのモンスターのグラフィックが付いていて、剥製はガラスケースに収まっている。さらにこれを展示するための博物館も建てられる。博物館を建てると展示品の価値によって観客もいっぱい集まるし、お金ももらえる。うおー! 一石二鳥じゃない!
 さっそく私が全モンスター(とNPC)の剥製集めに乗り出したのは言うまでもない。さらにランダム生成される冒険者の剥製も集め始めたので、現在博物館は5館。まだ増えそうだ。
 そうそう、無尽蔵にものが集められるのもElonaの長所。他のローグライクでは一度に持てるアイテムや家に置けるオブジェクトの数に限りがあり、泣く泣く捨てたり売ったりするしかなく、非常に歯がゆい思いをしたものだが、Elonaではもともと家がきわめて広い上、莫大なお金を出すことでさらに大きい家に建て替えられるばかりか、2階や地下を増設することもできる。2階しか建てられないシムピープルよりすごいや。
 それでも置ける数は限界があるのだが、倉庫や博物館は無制限に建てられるので事実上無限。持てるアイテムの数もバックパックがいっぱいになったことがまだない(その前に潰れて死ぬ)ぐらい多い。まさにコレクターを意識して作られたようなゲームだ。今は博物館で手一杯だが、このあとは自慢の武器を集めた武器庫や、稀覯書を集めた図書館も建てたいと思っている。
 ちなみにモンスターのカードはいずれ実装される予定の(今はまだデモが見られるだけ)カードゲームに使うらしい。これはこれでおもしろそうなので楽しみ。

その7.家造りが楽しい

わが家のほんの一部です。上から時計回りにベッドルーム、バスルーム、キッチン、ミュージックルーム、ダイニング。これでも全画面の6分の1ぐらいで、同じ広さのフロアがあと4つある。王宮より豪華!

 これもシムピープルを彷彿とさせるのは家造りの楽しさ。ローグライクでは家といっても目に見えるものは何もなく、入っても単に置いてある持ち物が表示されるだけだった。それでも基本的に「おうち人間」である私は家に帰ってきただけでほっとしたものだが、Elonaではもちろん目で見られる家が建てられるばかりか、自由に飾り付けや改装ができる。
 最初は上記のチュートリアルで使われた洞窟(噂によるとここに住んでいたのはロミアスに食わされた乞食で、ロミアスが乞食を殺害して奪ったものではないかと言われる)が家となるが、お金が貯まれば城も買える。我が家は好きなところに建てることができるので、足の便とか景色とかいろいろ考えるのも楽しい。
 でもいちばんの楽しみはやっぱり内装! もちろんそれが主眼のゲームであるシムピープルよりはオブジェクトも少ないし、向きも変えられないが、それでもRPGとしては不必要なぐらい家具の種類が多い。冷蔵庫や調理器具みたいに実際にゲームで必要な家具以外にも、ただの飾りの家具がいっぱい。家具にはランクがあり、「世界最高の」という接頭辞が付くのが最高なのだが、いつかは家を世界最高で埋め尽くしたいというのが私の夢。

自宅のチャペルの内部

 余談だが、椅子に「お客用」、「自分用」を指定できる機能はシムピープルにも実装してほしかったな。家の中を他人が勝手に歩きまわるのがうざかったので。あらかじめ指定しておくと、訪問者があったとき、自分も客も自動的にその椅子に移動するので話しやすくて助かる。

 ここで建築システムについて。これは私の「専門」なので、ちょっと話がくどくなるが勘弁してもらいたい。
 壁と床を同一のものとして扱うという発想は、シムピープルでは考えられなかったもので、これは衝撃だった。でも考えてみればこの方が合理的でシンプルだよね。建築ゲームじゃないため、すべては簡略化してあるElonaだが、こういうアイディアはシムにも取り入れてほしい。
 つまり通り抜けられるタイルは床、通り抜けられないタイルは壁として扱われるのだ。当然、壁も1タイルを使うが、紙のようにうすっぺらいシムピープルの壁が不満だった私としてはこっちのほうがずっといい。
 さらにシムピープルでは壁に窓や絵画を付けると、厚みがなくてペラペラに見えてしまうが、ここでは同一タイルに壁と窓を置くことで、ちゃんと窓が窓らしく見える。上のダイニングでテーブルに花瓶が載っているが、これも2つのオブジェクトを重ねて置いただけ。このテクニックはシムピープルでも使えたが、壁に厚みがないので窓や絵画には使えなかったんだよね。
 その壁や床のデザインもよくて種類も多い。こういったグラフィックは、グラフィック・ソフトをいじる気力があれば、すべて自分で差し替えられる。さすがにそこまでする気力がなくてまだいじってないけど。

 ちなみに右の写真は地下の拷問室(笑)。シムピープルでも作ったけど、なぜかこういうものがないといられない私(笑)。だってお城なんだもん!
 しかしディテールやグラフィックの粗さはともかくとして、これだけのオブジェクトがデフォルトで揃っているElonaって。アイアンメイデンやギロチンも見えますね。ギロチンは飾りじゃなくて実際に使えます。といっても自殺用だけど。
 でもなんといっても秀逸なのは、上に見えるサンドバッグ。帽子をかぶった「殺し屋」が吊されてるでしょ。サンドバッグというのはあくまで用途の話で、弱らせたモンスターに対して使うと、ご覧のように縄で縛って吊すことができる。吊されたモンスターはいくらダメージを受けても死ぬことがなく、反撃することもできないので、魔法や剣のスキルを鍛える練習台に使ったり、武器の性能テストに使えるわけ。このアイテムを作っただけでもElonaの作者のNoaさんって天才だと思うな。これもどこかからのパクリかもしれないけど。

その8.萌えうぜー

 ほめてばかりではなんなので、少しは文句も。何かといえば萌え要素だけどね。アスキー文字のみの変愚蛮怒でさえ、「@とか、pとかにどうやって萌えろと!?」とあきれていたが(2009年3月11日)、これにグラフィックが付けばもう無敵だわね。国産ゲームなのでそれは覚悟していたが、作者がここまで萌えにこだわってるとは知らなかった。ちなみにこのゲームの萌えの対象は、少女、妹、猫。猫は個人的に許すが(自分も猫だし)、他の2つはまったくなんの関心もない。というところだけでも、このゲームが女性ユーザーをまったく視野に入れずに作られていることがわかる。中には2ちゃんのElonaスレのおたく連中でさえ引く「妹の館」なんていう恐ろしいものまであるし。(その恐ろしさは入ったものでないとわからない)
 まあ、いいですけどね。少女は見つけ次第ミンチにしているし、妹は「妹の日記」を読むことで仲間になるのだが、そんな日記は見つけても拾わないし。なんでも妹のうるささはこれまたおたくも引くほどで、「黙らせる」というオプションは妹のためにあるとかいう話だが。
 ただ、「迷子の子猫」のうざさはなんとかならないのか。この猫は何も悪さはしない中立キャラクターなのだが、町にもダンジョンにも、終末の修羅場と化した戦場にも現れて、「ママどっち? おうちどっち?」 「おうちしってう?」 「おうちかえう」としゃべり続ける。あまりにうるさいのでこれもミンチだが、「しぬぅ!」、「ころさえう」と言って死ぬ。なんでもマンガが元ネタらしいが、しつこすぎてかわいくない。とか言いつつ殺してると、そのうち「すくつ」(後述)のボスとして出会って痛い目にあいますが。

その9.すくつが楽しい

 というところで「すくつ」についても。すくつというのは巣窟を表す2ちゃんねる語だが、その名のついたダンジョンがある。
 すべてにおいてインフレでぶっ飛んでいるToMEでも、さすがに神を倒して自分が神になってしまうとやることがなくなる。(もっとも旧バージョンの錬金術師以外ではまず無理ですが) そこで、「敵も無限に強くなる無限ダンジョンがあったらなー」と思っていたのだが、Elonaのすくつがまさにそれなわけ。
 実はElonaの本編の難易度はそれほど高くない。少なくともToMEや変愚のような異常な難しさではないので、ゲームクリア自体は簡単だ。そこで腕試しをしたい冒険者のために用意されているのがすくつというわけ。で、確かにここの敵は凶悪だ。ただ、モンスターのAIがあまり賢くないのと、強いといっても限界があるのである程度の攻略は可能。私はちょっとした裏技を使ってかなり深くまで潜ったが、1万階を越えるとバグるという噂を聞いたのでその前で止めてある。とりあえず、高級アイテムがガバガバ手に入るのがうれしいが、やっぱりElonaの本道は強さを極めることじゃなく、のんびり農耕や牧畜に精を出すことだと思うね。

その10.生きている武器が強い

 「成長する武器」という概念は他のローグライクにもあった。敵をたくさん倒すことによってレベルアップし、新たなエンチャント(さまざまな特殊能力)が増えていく武器だが、必ずしも思い通りに成長するとは限らないので、ToMEではぜんぜん使ってなかった。なのに、Elonaの「生きている武器」にはエンチャントと名前に関連があり、名前を変えることで自由にエンチャントを変えられることに気づいたえらい人がいるんだね。
 それはそれでえらい手間なのだが、こうやって作った生きている武器はまさに無敵。といっても敵を倒すことが主眼ではないElonaでは、なければないでやっていけるのだが。

その11.ペットがかわいい

 ローグライクではいっしょにパーティーを組んでくれるNPCのことをペットと言います。ToMEでもさんざんペットのお世話になったけど、Elonaのペットはまたひと味違う。
 ペットの数には15匹までという制限があるので、ToMEみたいに「101匹ドラゴン大行進」は無理だが、そのかわり1匹1匹にかかる手間がえらい違いなので、そのぶん愛着が湧く。ToMEのペットなんて、大量に召喚しては死なせる消耗品扱いだったからね。手間がかかるというのは、装備を調えてやり、食事に気を遣い、金を使って訓練しなければ弱くて使い物にならないからだ。実はそんな手間をかけなくても、すくつで強力なモンスターを捕まえてくればいいし、ペットなしでもべつに困らないのだが、やはり手塩にかけたペットには及ばない。

 Elonaには自分でNPCを作る機能もそなわっている。そこで少女だの妹だのには目もくれず、いちばん強そうってことで恐竜ペットを作りました。ティラノサウルス(はもともとゲームにも登場するのだが、グラフィックがいまいちだったので)と、デイノニクスね。上の王宮の写真に見えるのがそう。たいして役にはたたないし、邪魔なこともあるが、自分だけのペットってところがポイント。
 ただ、自発的に攻撃するようにできないのがちょっとねー。ToMEのペットはそこがかわいかったのに、Elonaではプレイヤーが襲われたり攻撃してはじめて攻撃参加するんですよ。あと、やたら地面に落ちてるものを拾い食いするのもなんとかしてほしい。

その12.その他システム的なこといろいろ

 ElonaはToMEによく似たスキル制を採用している。ほとんどあらゆる能力に独自のレベルが設定されていて、ほとんど何をしていてもレベルが上がっていく。ローグライクの常として、本体の経験レベルはたいして重要じゃない。スキルレベルを上げて初めて強くなれる。最初は普通にプレイしているだけでそれがサクサク上がるのが快適だが、一度に上がるのは微々たる量なので、だんだん上がりにくくなる。これは何年もかけてじっくりと育て上げるゲームである。
 しかし、種族や職業でいろいろ制限がかかる他のゲームと違って、Elonaでは誰でも好きなスキルが取れる。そのため、スキルレベルが上がると種族や職業の差異はほとんどなくなってしまい、別の種族、別の職業で始めるだけで、まったく別のゲームのような楽しみ方ができたローグライクとくらべるとこれはちょっと残念だ。

その13.自由は楽しい 

 というわけでElonaはおもしろい。ハマった。
 実は他にもいろいろ楽しみ方はある。たとえばネット機能を利用した「ハウスドーム」。私はまだほとんど見てないのだが、利用者が自分で作った家やダンジョンをネットに上げて、他の人が中に入って見られるシステムである。中にはちょっとしたミニクエスト風のルームを上げている人もいるらしい。これはシムピープルにこそ実装してほしかった! 単に写真を見せるのと、自分で中に入ってあれこれ見て回るのとでは大違いだから。それで気に入ったらダウンロードできるようにすればいいのに。って、とっくの昔に開発停止しているゲームに何を言ってもむだですけどね。
 そうそう、Elonaはまだ更新が続いているのもすばらしい。昨年暮れにはクリスマス・バージョンが出て、お年玉とか聖夜祭とか楽しい行事が追加されたし。ToMEも去年の3月で更新が止まってて、そろそろ終わりかなって感じだし。とにかく個人で無償でこれだけのものを作ってくださる作者には感謝。

 でも、Elonaの最大の良さは自由ってところにあると思うんだよね。これはローグライクすべてに言えることだけど、普通はゲームバランスのためにある程度の制約が課せられている。Elonaはそれを可能なかぎり取っ払ったようなゲーム。プレイヤーは何をするのも自由。その気になれば一生ダンジョンなど見ず、農民だけやっていても楽しめるという。

 世間はFF13がなんたらで騒いでるけど、噂に聞いたところじゃあいかわらずの一本道なんでしょ。いくらグラフィックが華麗でも、人の敷いたレールの上を走るだけのゲームになんでそんなに熱中できるのかわからない。Elonaにもいちおうメインストーリーはあるけど、ちゃんと攻略したのは初回のプレイだけで、あとは足を踏み入れてもいない。というわけで、まだ当分ローグライクから離れられそうにない。

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