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2010年2月5日 金曜日

 どうも、どうもごぶさたしております。って、まだ覚えてる人いるんだろうかってぐらい間が空いてしまいました。

 理由はいろいろあるが、主としてもう永遠に終わらないんじゃないかという悪夢の翻訳。それと大学の仕事でアップアップしているうちに、なんか肉体的にも精神的にもおかしくなってきて、ほとんど引きこもり状態になっていた。実際はそれほどきつかったわけでもないんだけど、締め切りが目の前にぶら下がってると、出かけたくても罪悪感に駆られてしまって、それで家で毎日ダラダラとパソコンに向かっていると、人と口きいたり、外へ出るのが異常に億劫になるんだよね。歩いてほんの1分のスーパーへ行くのも億劫で、家にあるものですませちゃえとか。まあ、それでも大学へは行っていたから(行かなきゃクビだし)、本当の引きこもりとは言えないんだけど、ああいう人の気持ちがよくわかった。
 そういう話はまた機会があったらするとして、翻訳のほうは(いちおう私の分担の仕事は)1月で終えたし、大学の授業も試験も採点も来年度のシラバスも全部終わったので、今はリハビリ期間。リハビリの第一歩として日記でも書こうかと思ったわけ。
 いや、私は1か月ぐらい誰とも口きかなくても平気だし、家にこもったきりでもたいして苦にならないが、日記が書けないのはつらかった。書きたいことがないわけじゃないんだけど、これだけサボってしまうと逆に書きたいことが多すぎて何から書いていいかわからないし、とてもそんなに書いてる時間ないし、かえって書けなくなってしまうという悪循環。
 でもそんなご託もあとまわしにして、いきなり本題行きます。

映画評

Avatar directed by James Cameron (2009)
『アバター』

 映画もまったくといいほど見てないんですよ。(自分が持ってるやつを除く) ただ、正月はいつものように実家へ帰り、(元旦は半額になるので)弟と映画を見てきたので。しかもこれがなんかやたらと評判になっているようなので、忘れないうちに書いておこうかと。といっても1か月もたっちゃったので、半ば忘れてるんだけど(笑)。

 ジェイムズ・キャメロンはもちろん、『ターミネーター』シリーズ(1と2のみ。3は認めないし、4は旅行記に書いたように見たとは言えない)だけでも「私の監督」だし、個人的には『エイリアン2』も捨てがたい。『アビス』だって、ラストの『未知との遭遇』さえなければ、すばらしい映画になっていた可能性がある。『タイタニック』は世間ではボロクソに言われたが、それでも私は映画館でワンワン大泣きしてしまったのだ。
 キャメロンはおもしろい映画を撮れる人ではある。ただ、突っ込みどころがありすぎるんだよね。それはスピルバーグもいっしょだが、スピルバーグには私は悪意を感じるんだが、この人はどこまでも善良そうなので、憎めない人ではある。だからこの映画にも多くを期待はしなかったが、それなりに期待して見た。

 先に断っておくけど、ここではボロクソ言う予定だが、これは確かにいい映画である。だから、まだ見てない人はこの後は読んじゃダメ。例によってネタバレ満載なので、先入観なしで見るためにはこれは先に読まないでください。

 まず最初に3Dについて。3Dマニアの弟は映画の中味よりこっちのほうが目的だったみたいだし、3Dに感動したという人が多いみたいだけど、私に言わせれば、サ・イ・ア・ク

 まず第一に、メガネの上から偏光メガネをかけようとしても、引っかからなくて落っこちてしまう。私は近視なので、メガネなしではスクリーンなんかボヤボヤでなんにも見えない。心配だったから、弟の家にあったやつ(前に行った映画館ではくれたのだそうだ。今回はしっかり回収してたけど)をためしにかけてみたのだが、それは問題なくかけられたのに、ここのは小さすぎてかけられないのだ。それで上映中はずっと手で偏光メガネを持ち上げているはめに
 まわりを見回すと、メガネの人でも手放しで付けてられるようなのになんでだ? たぶん、私の鼻が人よりでかいのと、私のメガネがはやりの細いやつじゃなく、レンズが大きめで丸っこいせいだろう。ただでさえ長い映画なので、腕がむっちゃくちゃ疲れてうっとうしい!

 その2。字幕うぜー! 前にもどこかに書いたが、私は翻訳小説はまったく気にならないんだが、映画の字幕は耐えられない。主として、耳から原語が入ってくるので頭が混乱するせいだと思うが、私には理解できないフランス語やドイツ語の字幕もイライラするので、「外国映画」を見ること自体がいやになってしまった。
 だから最近、映画を家で見る時は字幕を消して見ているし、そもそもDVDは輸入物しか買わない(国内盤高いから)。そのため、字幕がついてるだけでもうっとうしいのに、それがドーンと飛び出してくるのである。なんか字幕がいちばんくっきりはっきり飛び出して見えて、しかもそれがいちばん手前に来る。ふだん映画館で洋画を見る時は字幕は目に入らないように無視してみるのだが、これではいやでも目に入っちゃうし、字幕が邪魔で映画が見れない! これなら吹き替えのほうがまだましだった。 

 私はこれまで3D映画は一度しか見たことがない。といっても、まだ赤青メガネだった大昔のことで、『ジョーズ』の三番煎じみたいな映画だった。で、いかにも子供だましだと思っていたが、あれから技術は驚異的に進歩しているはずだし、もっともっとすごいのを期待していたんですよ。なんというか、ほら、目の前に実際に浮かんでるように見えて、手を伸ばせば触れられるような錯覚を起こさせるぐらいのを。
 しかし結論を言わせてもらえば、めっちゃくちゃ2Dやんけ! そもそも「立体感」がなくて、単に「前後感」があるだけ。ほら、なんと呼ぶのか知らないが、アニメの手法であるでしょうが。平らな書き割りを奥行きつけて並べてあるみたいなの。これには心底失望した。

 実は私も3Dにはそれなりに思い入れがある。前に書いたように、うちの親父は日本初のステレオカメラの開発者だし、立体写真は大好きだった。そうそう、この映画の立体感ってあれにそっくり。
 それだけでもすごいと思っていたのが、天地がひっくり返るほどの衝撃を味わったのはステレオグラム(裸眼立体視)を知ったとき。ステレオグラムにも2Dと3Dがあるんですよ。2Dのやつはこの映画みたいな書き割りだけど、3Dのは斜めの壁や球面がなめらかに見えて、本当に手を伸ばせば触れられそうに見える。あれを初めて見た時は本当にこれまで経験したことのない新しい次元をのぞき込んだようだった。私はああいうのが動くんだとばかり思っていたのに! (ちなみにまたステレオグラムがはやってるみたいなんで、本屋で手に取ってみたら、どれも2Dばっかりじゃないか! なんか退化してるのはなぜ?)

 そんなこんなで、後半はもう偏光メガネをはずして見てました。赤青メガネの時代と違って、メガネなしでも近景が多少ぼやけるぐらいで、普通に見られるからね。というか、ちゃんと3Dになってるシーンなんてアップのシーンぐらいじゃなかった? よって結論は意味なし!

 ここからやっと映画そのものの話。実を言うと、こっちはそんなに期待してなかったんだけどね。あの『タイタニック』のあとだけに、キャメロンもすっかりヤキがまわったんじゃないかという危惧があったし。

こちらが主人公のネイティリとジェイク(のアヴァター)

 というところであらすじ。脳筋って知ってますか? 脳みそまで筋肉でできているということで、要するに筋肉バカをからかう言葉なのだが、まさにその脳筋そのものの元海兵隊員ジェイク(Sam Worthington)が、死んだ兄の代わりにアルファ・ケンタウリの衛星パンドラに送られる。人類はここで貴重な鉱石の採掘をもくろんでいるのだが、この星には原住民のナヴィが住んでいる。グレース・オーガスティン博士(Sigourney Weaver)をリーダーとする科学者グループはナヴィとコンタクトし研究しようとしている一方で、マイルズ・クオリッチ大佐(Stephen Lang)率いる海兵隊は、原住民なんぞ蹴散らして鉱石を手に入れようとしている。
 で、ジェイクはいかにも脳筋の兵隊らしく、博士の下で働きながらも、最初は嬉々として大佐の命令に従ってたんだけど、原住民の女の子ネイティリ(Zoe Saldana)に一目惚れしたとたんに、コロリと心変わり、ナヴィたちを率いて人間に戦争を挑み、仲間の軍隊を壊滅させて(いちおう捕虜は取ってたから、皆殺しってわけじゃなさそうだけど)、めでたしめでたし。

 とまあ、要約してしまうと身も蓋もない話だが、(それにいい加減な記憶で書いてますが)要するにそういう話だ。
 これだけでも突っ込みどころ満載! 確かに私も兵隊は嫌いだが、それにしても、こいつも人類のはしくれでしょうが。いくら惚れた女のためとはいえ、元仲間の兵隊を虐殺してなんの良心の呵責もおぼえないあたり、さすが脳筋の面目躍如というか。最初はグレースの人道主義なんか鼻でせせら笑っていたくせに! つーか、こいつって「人類の敵」なんじゃないすか?
 だいたいこれでハッピーエンドといえるか? これだけ派手にやっちゃって、しかもあのアメリカが(笑)報復攻撃しないはずないじゃん! 当然、地球からははるかに大規模の軍隊が送られてくるはずで、石器時代レベルのナヴィに太刀打ちできるはずもなく、核爆弾(か、この時代のそれに相当するもの)落とされて一巻の終わりってのが見えるんですが。

 とまあ、見始めて1時間ぐらいで、このあまりにも古くさい”noble savage”(未開人礼賛)、取って付けたようなエコロジーにあきれてしまって、話はなんかどうでもよくなってしまった。

 悪口ばかりでもなんなので、それじゃいいところも。やっぱ異世界ちゅうのがいいよね。私は異世界マニア、ついでにクリーチャー・マニアなので、それだけ見てても楽しかった。そこでその美しいパンドラの森のスチルを捜したのだがこれがどこにもない。キャラクターを写したのばっかりで。えー、あの翼竜の写真もないの? あれがいちばんの見せ場なのに! ちっ。
 とにかくお話も3Dもなくても、それだけでも見る価値ありです。個人的には『LOTR』のエルフの森に似すぎてるなって気はしたけど。そういや、飛行シーンはまんま宮崎駿だし、ていうか、ほとんど『ナウシカ』+『もののけ姫』+『アラビアのロレンス』って感じで、やっぱり日本アニメの影響力はすごいなあと感心したりもした。しかし、私は宮崎脚本ってめちゃくちゃだと思うが、これほどめちゃくちゃじゃないな。
 ただ、いくらきれいでもしょせんアニメなんだよね。『LOTR』はあれをセットで作ったのに。ぶつぶつ‥‥。私はやっぱりアンチCGなので、絵ならいくらでもきれいに描けるでしょ、とつい嫌味を言いたくなってしまう。

これも宮崎アニメをほうふつとさせる飛ぶ森。
乗り物のデザインがレトロなのも宮崎っぽいね。

 CGついででキャラクターも。クリーチャーはいい。馬みたいなのも翼竜も。ナヴィは最初は「すごい醜い」と思ったのだが、見ているうちにだんだん美しく見えてくる。特にジェイクはほとんど終始アヴァターのままなので、しまいのほうで素顔で出てきたのを見たら、「おえっ!」と思ってしまった。やっぱり人間の顔ってグロいよね。私たちは単に見慣れてるから美しいと思うだけで。
 というわけでこのデザインはいいのだが、私は大いに不満なことがひとつある。
 なんでナヴィは6本足じゃないの!? この世界の動物は、(鳥も飛竜も)すべて6本足なのに、唯一の知的生物のナヴィは人は地球人と同じ4本なのだ。この人たち、いったい何から進化したの?
 弟にそう文句を言ったら、「それだとモンスターになってしまうから」と言っていたが、だったら痕跡肢でもいいから付けといてくれれば、「ああ、やっぱりこの星の原住民なんだ」と納得するのに。だいたい顔立ちもモロにネイティブ・アメリカン+ネイティブ・アフリカン(+エルフ耳)で、とてもエイリアンには見えない。というより政治的意図が見え見えで見苦しい。
 しかも哺乳類なんだぜ。ブラジャーしてるし(苦笑)。哺乳類ってそんなに宇宙で一般的な生命体だったのか。しっぽからニョロニョロ触手を出して意思疎通ができるほどの異星人がブラジャー。とほほ‥‥

 おっと、勘違いしてる人が多いと思うから言っておくけど、これはSFじゃないですよ。宇宙船とか出てくるからSFみたいな印象を与えるけど、これはれっきとしたファンタジー。これをSFと言ったら、SFファンは泣いちゃう。まあ、『ターミネーター』が時間SFとしては完全に破綻してたから、キャメロンはそういうのが苦手なのは知ってるけど。
 SFでは今どきヒューマノイド(人間型)宇宙人なんて恥ずかしくて出せない。どうしてもヒューマノイドを出したいときは、大昔に移民した人類が進化したものとするのが普通だ。あと、今どき青い肌の宇宙人を出す当たりのセンスがなんとも‥‥

 こういうこと言い出したらきりがないけど、恒星間飛行ができるほどの未来に、いきなりアメリカ海兵隊ってのも苦笑もの。それまでアメリカ合衆国があると思ってるのかね。最近のSFでは普通ありえないっていうか、おそらく近未来SFにソ連を出して恥かいたせいか、最近のSFじゃまったく別の政治形態を考えるのが普通。
 あと、私はこの手の異星探検ものが大好きでよく読んでるのだが、この会社(なんと私企業なんですよ。ウェイランド・ユタニみたいなものかな)みたいなことできるわけがない。私が普段読んでるようなSFだと、(たとえ自衛や善意からでも)異星生物に干渉しただけで死刑って感じですものね。今だってこれだけうるさくエコエコ言ってるのに、未来はもっとひどくなってるはずだとは思わないんだろうか。ああ、だとすると『エイリアン』のリプリーも極悪人だな。なにしろ貴重な異星生物を虐殺してまわってるんだから。

すてきなシガニーお姉さま

 話はガンガンそれるが、そのリプリーさん、じゃなかったシガニー・ウィーバーについても。私は「背が高くて強くておっかないした顔したおばさん」フェチなので、彼女は大のひいき。どうせ映画はくだらないだろうが、シガニーが見られるだけでもいいやと思ってた。
 彼女を見るのはA4以来なので、さすがに年とったなあとは思ったが、それでもやっぱりすてきです。ただ、キャメロン映画ということもあって、私はシガニーが「今度は戦争だ」と言って、パワーローダー(A2でキャメロンが考案したものだが、ここでもちゃんと出てきます)に乗って大暴れをするのを密かに期待していたが、さすがにそれはなかった。それやったら、単にA2の二番煎じになっちゃうもんね。でも私はおしとやかなシガニーはあんまり見たくないな。それだったら悪役の方がいい。
 主演のサム・ワージントンはデク。イラネ。大佐役のスティーヴン・ラングはけっこう好き。完全にギャグだが徹底してて笑わせてくれるので。ヒロインのゾーイなんとかさんは声だけの出演だしどうでもいい。

 あと、なんかあったっけ? そうそうナヴィは背が高いのがいいね。身長推定3メートル。もっとも人間といっしょに出てくることがめったにないので、ピンと来ないのだが、ジェイク(のアヴァター)が小さい女の子を抱きかかえているシーンがあって、あれ誰?と思ったら、シガニーだった。あの巨人(公称はどうあれ、190センチ近くあると思う)のシガニーが子供に見えちゃうぐらいの身長。この身長のせいで、不思議と神のごとく見えるのだ。

 なんかもう思いつかないや。とにかく、ラブストーリー、冒険活劇として見れば、一級の作品ですので、とりあえずおすすめ。

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