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2010年11月4日 木曜日

身辺雑記

重度ニコチン中毒者の禁煙日記

 また日記の間隔があいてすみません。今ごろは、というか2か月前には、「スコットランド旅行記」が上がってるはずだったんですが、諸事情(単なる怠け癖)により中断してます。
 もうひとつ、日記の更新が遅れる理由は、ご存じの通り、私はキチガイみたいに長い文章を書くからです。ツイッターの時代に逆行もはなはだしいですが、これは生まれついての性癖なのでどうにもなりません。小学校の読後感想文からして大長編だったし、修論は(おそらく)大学史上初の大河論文で、「持って帰るだけで一苦労だった」と指導教官から文句を言われました。
 それは置いといて、それでもこの話は、学術的な価値を考えても書いておく必要があると思ったので、こっちを先に書きました。このご時世だから、禁煙体験記のブログなんかは腐るほどありますが、私みたいなのはそうはいないと思うので。

 というわけで、禁煙しました。いや、まだ完全に禁煙したわけじゃなくて、ニコチンパッチは貼ってるから、禁煙に挑戦中というところ。

 これがどれだけ驚天動地の出来事かは、私を個人的に知ってる人じゃないとわからないだろう。とにかく、私は私以上に重症なニコチン中毒患者を知らない
 16才の時から約40年間、一日もタバコを吸わなかった日はない。いや、正直に言うと、親に隠れて吸ってた十代の頃は何日かはあったかもしれないけど、親にカムアウトした(あきれられて許された)18才以降は一日もない。ちなみにその親は両親ともヘビー・スモーカーだったので、生まれたときからどっぷり煙に浸かって育ったわけだ。
 本数も年々増える一方で、今は一日に6ミリのタバコなら2〜3箱、1ミリの軽いやつなら確実に3箱以上は吸っていた。これだけ吸うには、もちろん、チェーン・スモーキングするしかない。とにかく1本消したら次の1本に火を付ける、箱が空になったら、次の箱を開封するというのを、もう何にも考えなくても、ちらりとも見なくても、手や体が勝手に動いて自動的にやっていた。
 家には常に2カートン(1カートンは10箱入り)の備蓄がある。1カートンだとうっかりすると吸いきってしまうからである。外出用のカバンにはどれにも封を切ってないタバコが数箱常備されているし、出かける前には、バッグの残り本数を確認するのが習慣だった。
 ばかりか、家中のあちこちにもタバコの箱と灰皿が備え付けてあり、どこにいても(トイレの中とか、ベランダとか)、何をしていても(ベランダで洗濯物を干してる最中とか)吸いたくなったときに吸える仕様になっている。(これはけっこう友達に笑われた)
 ただ、最近では、夜中にタバコが吸いたくて目が覚めるようになってきて、「これはちょっとひどいなあ」と自分でも思っていた。普通、どんなひどいニコチン中毒患者でも、寝ているときは吸わないよねえ。

 しかし、今の日本で、いや世界中で、ニコチン中毒患者がどれだけ謂われなき弾圧を受けているかは、今さら私が言うまでもない。でも弾圧にめげるような私ではない。大学でも、全面禁煙は当たり前、そうでないところでも、喫煙所はだんだん少なく、最も遠いところへ追いやられて行ってるのが実情だが、それでも授業が終わると、雨が降ろうが雪が降ろうが、タバコの吸える場所までダッシュで走っていく(ダッシュで行って戻らないと次の授業に間に合わないから)のが私の日常だった。

 禁煙なんて生まれてこの方考えたこともないし、もちろん挑戦したこともないし、だいたいやろうとしても無理に決まってると思ってた。
 私が禁煙するとしたら、禁煙外来なんて生やさしいものではとうてい無理。1か月ぐらい入院して、拘束衣でがんじがらめに縛られて、クッション壁の部屋に入れられて、食事はすべて点滴で取るぐらいの環境で、できるかどうかだと思ってた。

 その信念がぐらつきだしたのは、去年のヨーロッパ旅行からである。とにかくこの私が、13時間かそこらとはいえ、生まれて初めての禁煙を強いられたわけだからね。(この前外国に行ったときには、まだ飛行機でもタバコが吸えたのよ) あそこでは冗談めかして書いてるが、実は相当悲壮な覚悟を決めていた。最悪の場合、途中のどこか(たぶんモスクワあたり)で、禁断症状で発狂して暴れ出し、飛行機は緊急着陸して、私は日本に強制送還される、というようなことがあっても不思議じゃないと思ってたのだ。
 ところが実際は、確かにむちゃくちゃイライラはしたが、なんとか生き延びたし、用心のためにわざわざ買った禁煙パッチも使わなかった。
 だいたい、禁断症状たって、ニコチン中毒の禁断症状なんてかわいいもんだよね。タバコが切れたからといって、隣の犬とか宇宙からの電波に命令されて包丁振り回すようなやついないもんね。これがアル中やヤク中だと普通にいるから困る。ニコチン中毒ってこんなに無害なのに、なんでこんなに迫害されなきゃならないのかわからないよ。
 なんだ、やればできるじゃん。これなら禁煙なんて簡単じゃない?
 という思いは今年の英国旅行でもますます強まった。今年のほうが禁煙時間は長かったのに、連れがいたせいか、禁断症状も去年よりもっと楽だったし。

 でもだからといって、不当な圧力に屈したりはしないよ、私は。むしろ喫煙者への風当たりが強くなればなるほど、「死んでもやめるもんか」と思っていたのだが、その私がついに禁煙に踏み切ったのは、もうだいたい想像が付くと思うが、経済的理由である。

 そう、あまりにも人並みですが、今回のタバコの値上げがlast strawでした。もちろん、私はイギリスで1箱1000円以上なのを見てきたし、日本でも1000円超えるまではがんばるつもりでいた。ところがそうも言ってられなくなってきたのは、このひどい円高とCD不況のせい。とにかくこれがダブルで来たおかげで、重要な収入だった店は売れば売るだけ損するようになってきて、実質開店休業。大学の給料ではまったく食べていけないので、今はなけなしの貯金を取り崩しながら生活してるところだ。
 おまけにその状態で、2年連続でヨーロッパでの長期休暇なんていう贅沢をやらかしてしまった(理由はそっちの記事に書きますが)ので、このまま行くと、タバコ1箱が1000円になる前に確実に破産するのが見えてしまったわけ。さすがに飢え死にしてもタバコにしがみつく気はしないしねえ。
 だいたい値上げ前からタバコ代はうちの家計を圧迫していた。というか、もうほとんど買い物もしない今では、他のすべての出費(税金・公共料金を除く)を合わせたよりタバコ代のほうが高い! ほんとに爪に火を灯すような暮らしで、スーパーで300円の肉や魚買うには一大決心がいるのに、同じ値段のタバコは文字通り空気のように消費している自分に矛盾を感じていたのも事実です。
 さらにこのタバコ代のほとんどは税金。私がいちばんやりたくないことのひとつは、(なんの恩恵も受けてないので)政府によけいな金を貢ぐことで、考えてみるとそれもくやしい。タバコさえやめればすべて解決じゃないの。

 というわけで禁煙しました。
 これはもう病気なんだから医者に頼る、というのも考えたけど、単に「めんどくせ」という理由でやめた。だいたい、中毒なんて意思で克服できるでしょ、これは自分との戦いなんだから。とか言って、自分の意志の強さにはまったく信頼を置いてなかったんですけどね。そうじゃなければそもそも中毒になんかならないし。
 とりあえず、値上げ前に10カートンのタバコを買い込む。そしてこれをすべて吸い終わったら、そこで止めると決めたのだが、これが最後だからと盛大に吸ってたおかげで1か月も保たなかった。げっ、6ミリのロングサイズを一日3箱以上も吸ってる!
 とにかく最後の1本を吸い終わったのが先週の話で、それから1週間、1本も口にしていない。

 さすがに最後の1本を手にしたときは、涙がこぼれましたよ。あまりにも長い間つき合った恋人に引導を渡すみたいでね。ごめんね、ごめんね。あなたはべつに(それほどは)悪くないのよ。みんな私が甲斐性なしだからいけないのよ。

 やめる代わりにいちおうニコチンパッチを買った。(去年買ったのは封も切ってないのにどこかへ紛失) 薬局へ行くとシガノンというのを薦められたので、それを買ってきた。なぜかアイルランド製。スコットランド製だと良かったのに。
 これを1日1枚貼る。けっこう高いが、1日あたり(値上げ後の)タバコ1箱ぐらいだから、これでニコチンの必要量が補給できるなら、タバコ吸うよりぜんぜん経済的だな、なんて計算しているあたり、本気で禁煙する気あるのかしらって感じ。というか、自分では禁煙に成功するなんてぜんぜん信じてなかったし、今も信じてない。

 しかしどういうわけか、これまで1週間は奇跡的に成功しているみたい。もちろんタバコが吸いたくならないわけじゃない。折りにふれて、「吸いたいなー」とは思うんだが、我慢できてる。すごーい! 私ってもしかして鉄の意思の持ち主? という気は自分ではぜんぜんしないのだが。
 でもほんとにびっくり。これまでなんらかの理由でタバコを切らしたときって、ほんとに半狂乱になって、タバコにありつくまでは他のことは何も手に付かなかったのに。

 これがパッチのおかげだとしたら、すごくない? こんな小さなバンソーコみたいなもの貼り付けるだけなのに。
 ただ、これに含まれるニコチンって相当多いような気がするな。これ1枚でまる1日保つってのも驚異だし。私は肌が弱いせいもあり、貼ったらそこがかゆくてかゆくて、剥がしたあとも真っ赤に腫れ上がってしまった。だんだん慣れたのか平気になってきたけど、なんかかえって体に悪そうな感じ。
 でも考えてみたら、私ぐらい大量のニコチンを摂取してた人がそうはいるはずがない。それで私ほどじゃない普通の禁煙者が、そんな強いもの貼ったら体壊すに決まっている。薬剤師も、医者が処方するようなパッチにはもっと強いものがあるって言ってたし。つまり、どういうことかというと、私は驚くほど微量のニコチンで1週間耐えているということ。
 そればかりか、そのうち1日はパッチがなくなったので、まったくニコチンを取っていない。それで今はずっと弱いパッチに変えて、それでもまだ続いている。説明書によると、これを8週間貼り続けろということらしいが、8週間も続けなくても3週間ぐらいで十分のような気がしてきた。
 まあ、まだ我慢しているだけで、吸いたいという気分はなくならないから、本当に治ったわけじゃないし、なんであれ、依存症というのは完治まで長い時間がかかるのは覚悟しているけど。

 とまあ、ここまではありきたりの話。本当に書きたかったのは以下の部分で、本物の中毒患者の禁煙への感想

禁煙のメリット・デメリット

 まだ完全に成功したわけじゃないから早すぎるかもしれないけど、禁煙に成功した人が言う禁煙のメリット、特に食事がうまいとか、寝覚めがさわやかだとか、頭がすっきりするとか、体調も快調とか、お肌がツルツルにとかいうの、私はぜーんぜん感じられないんですが!
 飯は禁煙しようとするまいと、うまいともまずいとも感じない。むしろ食後の一服が味わえないぶん、いかにも単なる栄養補給という感じで、味気なく感じる。
 寝覚めはもともと良くないが、それにしても朝起きると頭がどよーん。以前はとりあえず1本付ければ、少しは目が覚めてシャッキリしたのだが、それがない今は、どよーんと曇った頭のまま仕事に行く。
 それより気になるのが咳。私は慢性のアレルギー性鼻炎で、いつも鼻をグズグズさせているので、よく痰もからむし咳をする。タバコのせいでそれがよけいひどくなってると思ってたので、咳から解放されるだけでも禁煙する価値はあると思ってたのだ。
 ところが実際は、なぜか禁煙してからこの咳と痰がひどくなった。というのは詭弁だし嘘だってのは自分でもわかってる。だけど体感としてそうなのよ。理性的に考えると、以前は咳をしてもタバコのせいと考えていたのに、今はタバコも吸わないのに咳が出るので、なんかだまされたような気がして、よけい気になるだけなんだろう。
 特に寝起きなど、なにしろ寝ている間は鼻がかめないので、鼻から喉にかけて、粘性の液体が詰まってるような感じになる。そういうときは毒をもって毒を制すという感じで(迎え酒と同じ理屈ね)、タバコを立て続けに吸うと、痰がスポンという感じで出て喉がすっきりしたのだが、今は鼻も喉も一日中なんかが詰まったような感じで、ものすごく気持ちが悪い。
 肌に関しては、年のせいでくたびれてきたとはいえ、私はもともと桃のようなモチモチ肌なので、べつにタバコで肌が荒れたという記憶もないし、べつに変わらない。

 というわけで、体調面では「やめてよかった」と思うことがひとつもないのよ! やっぱり純粋に金の問題だけで。
 ああ、あといいことは部屋が汚れないこと。もうさんざん汚したあとだからあまり意味ないけど(笑)。それに窓が閉められるのがいいね。私は矛盾するようだが、汚れた空気が我慢ならない(し、アレルギーにもよくない)ので、クーラーを付けてる夏でも、真冬でも窓は開けっ放しだったのだが、タバコを吸わないと窓を開ける必要がないのだ。これで光熱費もだいぶ助かるなあ、と思って何日か締め切りでいたら埃アレルギーでやられた(笑)。そっか。やっぱり換気は必要なんだな。

 でもって、つくづく矛盾した話だが、禁煙してからタバコの良さというかありがたみをしみじみ感じるようになってしまった。いや、吸ってるときはたいしてうまいとも思わなかったし、「体に毒だなあ」と毎日思いながら吸ってたんですよ。でもやめてみたら、失ったものが痛感されて、むしろ喫煙のメリットばかりが頭に浮かぶ。たとえば、

どういうときタバコがうまいか

 これはイコール、タバコがいちばん吸いたくなる時でもあるね。実際問題として、アディクトなんてのはうまいかまずいかなんて関係なく、とりあえず、血中のニコチン濃度が一定値以下になるとタバコに手を伸ばす。だけど、そういう化学反応だけじゃない部分があるのだ。

1. 食後の一服。これはよく言われることだけど、本物のアディクトは食前にも食中にも吸います。これがまたうまいんだー、というと、お行儀が悪いって言われるけど、酒は食前も食中も飲んでるじゃないか。私にはあれとまったく同じなんだけどな。と言うと、また屁理屈を言ってると思われて、「味が変わる」とか「鼻や舌がバカになる」と言われるけど、骨の髄までニコチンが染み込んでいる私は、その程度で嗅覚や味覚が変わったりはしないのよ。
2. 寝覚めの一服。ニコチンが染み渡るとともに、モヤーとしていた頭がスーッと晴れていく時がすごく気持ちがいい。
3. 仕事のあとの一服。他の仕事はともかく、教えるってのは私にとってはものすごいストレスなのだ。そのストレスのモヤモヤが、一日の終わりには後頭部あたりに黒い雲となって固まってるのだが、タバコを吸うとそれが一陣の涼風に吹き払われたように、スーッと消えていって、「明日もがんばろう」という気になるのよね。いわゆる気分転換の効果。
4. きれいな空気やきれいな景色の中での一服。これはなんでか知らないが、ゴミゴミした都会を離れて、美しい自然の中で吸うタバコはなんともうまい。今年のスコットランドでのタバコのうまさはもう格別だった。またスコットランドへ行ったら、禁煙続ける自信がない。

 まあ、要するにニコチンも向精神薬物っていうだけのことですけどね。ただ、生まれつきアルコールは1滴も飲めないし、その他の薬物も法律で禁止されている日本に住む私には、唯一のドラッグだったのに。私はもともとクヨクヨしないしストレスも貯めない性格なので、そういうのは比較的必要としないタイプだと思ってたけど、実は思い切り依存してたことを、これまた痛感させられました。その依存を断つのはいいけど、この先、何で気を紛らせればいいの?

 それ以上に、自分のquality of lifeがまた一段階、ガタンと落ちたような気がするのがすごいいや。たとえば、私がお金をかけずに家でできるささやかな楽しみと言えば、お気に入りのチームが出るサッカーの試合をテレビで見ること。そもそも地上波のサッカー中継は減っちゃったし、テレビの前で90分もじっとしているということは、私にはめったにないことなので、それなりにハレの準備をして臨む。
 座布団敷いて、脇にお茶の用意をして、見ながらつまむためのうまい軽食を用意して、手持ちぶさただからテレビ見ながらできるような、ちょっとした手仕事も用意して、仕上げはやっぱりタバコである。これだけ好きなものを揃えることで、すごいリッチな気分になれる。もちろん飲める人なら片手にビールってところなんだけど、私の場合はタバコがその代わりだったのね。それがないだけで、なんか大事なものが欠けてるような気がしてならない。

 というわけで、禁煙1週間の感想としては、タバコはやめた方が害が大きいという結論が出てしまいました(苦笑)。まったく経済問題さえなければ、禁煙なんかすぐにやめられるのに。(???)
 え? 肺癌で死ぬリスク? まあ、それは若い人なら気にした方がいいと思うけど、この年になりますと、節制しようがするまいが、どうせみんな最後は死ぬんだから、死ぬまではいい思いしたいという気持ちの方が強くなるものなのよ。あー、金ほしい。けど、今より働く気にもなれないので、やっぱり禁煙は続けるしかありませんが、どうなりますか。

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