2009年6月の日記

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2009年6月1日 月曜日

サッカー キリンカップ2009

 おいおい、何がどうなったんだよ?と、キリンカップを見て思った。(ちなみに、私はサッカー好きと言っても、めったに試合を見ることがないので、浦島太郎なのかもしれませんが。理由はメディア貧乏なのと、ふだんテレビを見る習慣がないので、見たい試合があっても、ほぼいつも忘れて見逃すから)
 とにかく今の日本代表と言ったら、いつも言われてたのが決定力不足。「日本じゃシュートはしちゃいかんと教えてるのか?」なんてどこかの外人にイヤミを言われたぐらいの、ゴールへ向かう気のなさ。シュートチャンスに無気力なパスとか、シュートする気があるのはDFだけみたいなところをさんざん見せられてきましたからね。岡田監督は勝ってもボロクソ言われてたし、監督は誰でも駒がいなければ何もできないみたいなことも言われてたし、確かに期待の若手は北京オリンピックで見る影もない惨敗だし、私も、そろそろ衰えの見えてる中村俊輔におんぶにだっこではヤバいんではないかと心配していた。
 それが何これ? 我も我もと全員がゴールへ向かう貪欲な姿勢。それでいて冷静にちゃんとボール見てるし、トラップやパス回しも的確だし、若手が大活躍する一方で、忘れられかけていたベテランが大奮闘。同じチームとは思えない!

 確かに相手が二軍だとか三軍だとか、アウェーで体調崩してたとかはあるかもしれない。でもチリとベルギーは、見るからに下手っぴーなアジアの弱小チームと違うでしょ。選手や監督のレベルからして違うでしょ。それも1回だけならともかく、2夜連続でこれを見せられちゃうと本当にびっくり。

 実は、国内組に見切りを付けた私は海外組に注目していた。と言っても、YouTubeで見てただけだけど。森本(イタリア ベルージャ)も長谷部(ドイツ ヴォルフスブルク)もすげー!と思ったけど、私のお気に入りは本田圭佑(オランダ VVVフェンロ)。(上の写真はチリ戦の本田) これも、「オランダの二部じゃねー」とバカにする人もいるが、ならばJリーグの選手は誰でもオランダ二部行けば、チームを優勝に導いて、MVPも取って、キャプテンにも選ばれるのかよと、私は憤慨していた。三大リーグでベンチ暖めてるよりよっぽどいいよ。まさに鶏口となるも牛後となるなかれだ。
 何より闘志があるし、自信にあふれてるし、ガタイも良くてパワーがあり、おまけにけっこう男前だ。

 だからチリ戦はどうせ日本がボコボコにやられるだろうけど、本田見たさに見ていた。大学があるので試合開始までには帰れなかったんだけど、開始後10分ぐらいに息せき切って帰ってきて、台所で夕飯の支度をしていたら、テレビがギャーギャー叫びだしたので、「もう点取られたのか」と思ってみたら、岡崎がゴールしたところだった。うそー!
 あとは見た人はご存じの通り。チリ戦もベルギー戦も無失点、4得点の圧勝。惜しいシュートは数知れず。いつもならしょっちゅうあるひやっとさせられる場面は、闘莉王の大ポカと(この人、ミスがこわすぎるのでいらないと思うんだけど)、交代枠使い切ったあとで大久保が負傷退場して10人になってしまった場面だけだった。これ、4点目取られてカッとなったベルギーのGKが腹いせに思い切り蹴ったボールに直撃されたもので、かわいそうだけど笑える。

 で、本田はまさに期待通り。こういうタイプの日本人離れした選手って、仲良しグループ体質の日本チームでは浮いてしまって空回りという悪い予想もないではなかったのだが、それとは逆に本田の意欲がみんなを引っ張ってるように見えた。いや、正確には岡崎だな。岡崎が2点取ったあたりで、本田が「くそー! 俺も!」とくやしがってるのが手に取るようにわかって、火がついたようにゴールへ向かっていくのに、全員が引きずられてるみたいに見えた。それで最後の最後で本当に決めてくれるあたりも憎い。
 もちろんゴール以外にも、矢のようなクロスを入れて何度も好機を演出してくれたし、文句なしです。間違いなくこれからの日本代表を引っ張ってくれる男。キャプテンも務めたってことは、単なる「俺が俺が」のワンマンじゃなくて、全体への気配りもできる人みたいだし、ワールドカップで主力となることを期待する。
 だいたい本田は面構えと眼光がいいよね。私はサッカー選手は見た目で相手を威嚇しなければならないという変なモットーを持っていて、だから、中澤とか、楢崎とか、眼光鋭い人が好き。もっとも、俊輔なんて寝ぼけたような顔しているけど、フリーキックを打つ瞬間だけは獲物に襲いかかる狼のような顔つきになることは知っている。どっちかというとお笑い系の顔つきの岡崎は‥‥あれはあれでいいです。
 長谷部もやっぱりすばらしかったし、地味だけど好きな阿部が見せ場を作ってくれたのも良かったな。中村憲剛が主役になるってのもまったく予期してなかった。

 岡崎は‥‥すばらしかったが、出来過ぎって感じがするのがちょっとこわい。親善試合で目の覚めるような働きをして、本番で消えてしまう選手ってたくさん見てきたから。もちろん、いつもこれができるならフォワードの軸は間違いないんだが。でもあの頭から突っ込んでいくヘディング・シュートって、怪我するんじゃないかとこわいね。
 「日本のワンダーボーイ」山田直輝だが、確かにセンスと才能はすばらしいものを持ってる。ただ、いくらなんでも小さすぎませんか?(166cm) おまけに童顔で、出てきたのを見たときは「中学生が日本代表?!」と驚いてしまった。そういや、こないだ読んでいた小説の中で、(日本人のことじゃないが東洋人は)「大人でも小学6年生程度の体格しかない」と書かれているのを読んで、まったくだと思ったものだから。身長だけじゃなく、厚みや骨格もね。
 いや、岡田ジャパンの「ちびっこフォワード」が叩かれていたときには、私は「身長は関係ない! 160cm台でも優秀な選手はたくさんいる」と思っていたのだが、見ていると、大人の中に子供がひとりみたいに見えて、頼れるかというとなんか心配。だいたいチビでも名選手って人は、背は低くても体はすごいし、もっともっと筋力付けて体鍛える必要がありそう。
 惜しいよねー。山田はお父さんもフットボーラーだそうだが、子供を選手にするつもりなら、どうして背の高い女性と結婚しなかったんだろう? と、変なところで八つ当たり(笑)。いや、私は自分が長身なので、背の高い女性を蔑視する日本の男に敵意持ってるので。だって、身長なんてほぼ遺伝だけで決まるし、チビが自分より小さいチビと結婚してるんだから、日本人の平均身長のびるはずないよ。西洋では、(スポーツ選手に限らず背の高い方が社会的にも有利だし、そもそもかっこいいので)、セレブだの金持ちだの上昇志向の強いチビ男は、必ずと言っていいほど自分より長身の女性と結婚するものなのに。

 森本については自分の目でちゃんと見てないので何も言えない。とにかく一度試してみてほしいとは思うが、今のシステムではむずかしそうだ。

 というところで元へ戻るが、森本や本田はあんなに化けたのか? 理由はヨーロッパに行ったことしか考えられない。ご存じのように西洋かぶれの私は、自分の学生にも「外へ出ろ! 井の中の蛙になるな!」と口を酸っぱくして言ってるが、サッカー選手ならもう義務だよね。日本のクラブはユースの有望選手を、お金払ってでも海外に出すべきだ。山田も今のうちにどっか行くといいのに。試合に出られるなら二部でけっこう。もちろんそれでダメになるやつもいるだろうけど、どっちにしろそんなんじゃ世界には通用しない。
 それと同時にJリーグの外人枠ももっと増やしていい。と言うと、「日本選手の出る幕がなくなって弱体化する」とかほざくやつが必ずいるのだが、それを言うなら長年「鎖国」状態だった競馬を見よ。鎖国の時代は日本のトップが海外行ってもまるっきり歯が立たなかったのに、「親の名前も知らない外国産馬ばかりが勝つようになったら、ファンが競馬離れを起こす」なんて言われていた。なのに自由化につれて、日本産馬が海外の重賞をポンポン勝てるようになったばかりか、父内国産馬が大活躍して、結果として弱体化どころか大きな底上げになった。
 昔の競馬同様、日本はサッカー後進国なんだから、海外と盛んに交流するしか強くなる方法はない。あいにく向こうのいい選手やチームは日本に来てくれないから、自分が出て行けというわけ。

 というわけで、私としては楽しかったが、ただ、この勝利でいきなり強気になるお気楽な風潮もちょっと。キリンカップ前は、岡田監督の「ワールドカップでベスト4を目指す」という大それた目標をせせら笑ってる人が多かったのに、「もしかして行けるかも」と思うのは甘い!
 だいたい、気楽な相手にはかさにかかったように大勝するけど、次はメタメタってのもいつもの日本代表だし、こんなふうに連携が鮮やかに決まると強いけど、ワールドカップみたいな異常な場で、ぐっちゃぐちゃの乱闘サッカーになったら勝ち目はない。(そういうとき威力を発揮しそうなのはやっぱり本田と森本だね。闘莉王もか?)
 私の感覚では「1次リーグ全敗」予想が、「もしかして1次リーグ突破も可能か?」に変わっただけ。でも若手が伸びてるのはいい感じで、2010年はだめでもその次というふうに、将来に希望が持てる。

2009年6月8日 月曜日

痛い話

 どこが痛いとか、そういういかにもババアっぽい話はなるべく書かないことにしていたが、これだけ痛い思いをしたのは初めてなので、なんかの記念に(笑)。あと、将来の介護生活の参考に。【誰のだよ?】
 と言っても、私がどこが痛いとかいうのは、むしろ今より子供時代のほうが多かったので、年のせいとばかりも言えないのだが。私は「異常に」虚弱体質の子供で、15才ぐらいまでは、病院通いをしていないことは一度もなかったと言っていいぐらいだったし、どこかが痛かったり、気分が悪かったりするのはむしろ常態だった。たまーにどこも痛くない日があると、「どこも痛くないってのはこんなにもすばらしいんだ! なのに他の子はそれが当たり前だと思ってる!」と気づいて、なんともむかっ腹がたったものだ。それにくらべれば、今は痛いところが「あんまりない」だけでも、あのころよりはずいぶん丈夫になったのだが。
 だから私は痛みには強い。慣れてるから。その私が泣き叫ぶほど痛いなんて、こんなの初めて!

 土曜の朝、起きたらベッドから出られなくなっていた。理由はものすごい腰痛。膝はもともと弱点でいつも痛いが(膝の話は2006年10月21日)、腰痛というのはあまり経験ないので意外だった。確かに最近(年と体重増加のせいで)起き抜けに腰の痛みを感じることはあったが、普通に動いていればすぐに消えたのだが。
 とにかく、身動きしただけで背骨を貫くような激痛が走り、上半身はまったく動かせない。動くのは手足だけで、なんとか起き上がろうとすると、ひっくり返ったカメのようにバタバタするだけ。かろうじて寝返りだけは打てるので、ごろごろ転がってベッドからずり落ち、あとはベッドにつかまってなんとか腕の力だけで起き上がった。
 しかし歩くのも一苦労。膝をやられたときは本当に歩けなくなった(立てないので這って歩いた)が、今回はいちおうは歩ける。しかし一歩ごとにものすごい激痛。実は人間は足だけで歩くのではない、上半身も使ってるんだということがよくわかった。座っても痛い。寝ても痛い。
 これがかなりの苦痛。少なくとも膝の時は寝てさえいればそれほど痛くないので息がつけた。なのに、今回はむしろ寝ているときの方が痛い。そのため寝られない。寝ていてどこかが痛いと、無意識のうちに寝返りを打つが、それがまた新たな激痛を招き、寝るどころじゃない。結局、土曜と日曜の夜は、合わせて2時間ぐらいしか寝ていない。それも疲れと痛みに耐えかねて、気を失うというのに近い。

 しかもこの痛みが半端じゃない。私の知ってる最も痛いものと言えば歯痛だろうが、歯の痛みはまだ波がある。すごく痛いときと、少し痛みが遠ざかるときがあるし、氷で冷やすとか、痛みを軽減する方法もある。なのにこの腰の痛みは24時間ノンストップ! 今にして思えば痛み止めを買って飲めば良かったと思うのだが、なにせ痛さで頭がまったく働かず、ただうめいているだけだった。
 いや、ほんとに、抑えようとしても悲鳴が出てしまうぐらい痛い。息ができないほど痛い。息ができないから、必死で呼吸しようとすると、ハアハアとまるでマラソンでもしているような呼吸になってしまい、今度は過呼吸が心配になるぐらいだ。
 歯痛がつらいのは頭に近い部分なので頭の芯に響くからだが、脊椎というのも同じぐらいしんどいということを知った。なにしろ脊椎は重要な神経が集中しているところですからね。その神経が一斉に悲鳴をあげてる感じ。これはもう拷問だ。よく言われるけど、焼け火箸を背中に突っ込まれているぐらい痛い。だけど焼け火箸はいずれは冷えるし、神経が焼き切れてしまえば痛みは感じなくなるだろうが、その痛みが終わりなく続くと言えば、どれぐらい痛いかわかってもらえるだろうか?
 こうなると、とてもじゃないがものなんか食べられない。2日間まったく食物は口にせず、かろうじてジュースとドリンクヨーグルトだけ口にした。このヘビー・スモーカーの私がタバコも吸えない。吸い込むと背中が痛いから。

 あまりの痛さに脂汗がダラダラたれる。脂汗というのは普通の汗とまったく違うんだね。ぜんぜん水っぽくなくて、すぐに乾くんだけど、まるでジャムか水飴でもくっつけたみたいに、あとがすごいベタベタになるのだ。最初、顔や腕がベタベタだらけなので、どこでこんなのくっつけてきたんだろう?と思っていた。頭なんかひどい。このベタベタで髪がからまり、まったく解けなくなってしまう。私は細い柔らかい髪質なので、普段はブラシをかけてもまったく手応えがないぐらいなのに。

 寝てるほうが痛いのでフラフラ歩き回るのだが、実際は何もできないに等しい。腰がまったく曲がらないと、これほど不自由なものか。だいたい着替えもできない。私はふだんは一人暮らしを苦にすることはまったくないのだが、こういうときだけは誰かそばにいてくれたらと思わずにいられない。誰か靴下はかせてー!という感じで。パンツぐらいなら足だけを使ってはくという芸当もできるんですがね(笑)。これは膝を痛めて、やはりかがむことができなかったときに身に付けた。でもさすがに靴下だとこれができない。膝をぎりぎりできるところまで曲げても、まだ足先に指が届かない。
 あとトイレでも困った。拭こうとしても手が届かないのだ。上半身がそっくり返った形で固まっちゃってるので。かろうじて裏から手をまわせば届いたけど。ふと思ったが、本当の肥満の人、太鼓腹の人って、お腹がつっかえてやっぱり手が届かないんじゃないだろうか? 余計なお世話だけど。
 顔を洗うこともできない。私は背が高い上、うちの洗面所は極小の団地サイズだから、シンクが膝のちょっと上までしかないのだ。なのにかがむことができないので、顔を洗おうとすれば全身がびしょぬれになる。しょうがないのでシャワーで代用した。
 とにかく考えてみたら、体の不自由な人というのはこういう苦しみに毎日耐えているんですね。私は病弱だけど、それはもっぱら体の内側の話で、外科的な病気というのはほとんどしたことがない。これだけひ弱で骨なんかも細いのに、骨折もしたことない。だから、体が動かない苦しさというのは膝を痛めて初めて知った。
 それを一度体験してみると、普通に歩ける、日常生活ができるありがたさがしみじみわかります。それと同時に介護の重要さも。介護職の人なんて、私には神様に見えるよ!

 とにかくゼイゼイハアハア言いながら、なにしろ週末で病院は開いてないので、48時間、この痛みに耐えた。その間、ずっと救急車を呼ぼうかどうしようかと考えていたが、軽症で救急車を呼ぶ愚かさは知っているし、腰痛ぐらいでできない。この痛みの原因についてもいろいろ考えた。これぐらい猛烈な痛みと言ったら末期癌か(経験ないが)陣痛ぐらいしか考えられないが、まさか急性の末期癌なんてのがあるはずないし、それはないよなー。聞くところでは結石は死ぬほどの痛さらしいので、それかもしれないとも思った。そして月曜の夜が明けると、病院が開くのを待ってすぐに飛んでいった(実際にはよろよろと歩いていった)のだが、ここでまたさらなる拷問が

 東京の大病院はどこでもそうだが、外来は異常な込み方でえんえん待たされる。それは予期していたが、まさか朝の9時から午後3時まで待たされるとは! 病院に着いたころには、痛みも疲れも極限に達していて、そこにさらにめまい、胃痛、腹痛、頭痛、肺や心臓の痛みまで加わっていた。
 これはたぶん本当の痛みじゃなくて、言うなれば腰痛が飛び火したようなものだと思う。寝不足のせいもあるかもしれない。これは以前にも経験ある。自律神経失調症だと思うが、疲れや痛みが極限に達すると、体がパニックでわけわからなくなって異常な信号を発し出すのだ。前の時は深夜に自宅で起こったのだが、その苦痛の極限で失神してしまった。幸い、ここは病院だから、失神しても大丈夫だけど。でもむしろ気絶したいというぐらいの苦しみ。
 3時間ぐらい待ったところで、耐えかねてナースになんとかしてもらえないか頼んだのだが、「順番ですから」という冷たい返事。待ってる患者たち、当然老人多数なのだが、そりゃ車椅子だったりびっこを引いていたりはするが、みんな笑ったりしゃべったり元気そうじゃないの! 私みたいに瀕死の状態の患者なんかひとりもいない。
 しかたないので、待合室のベンチに横になったが、もう体が勝手にのたうち回ってベンチから転げ落ちてしまう。そしたらさすがに見かねて、処置室の空きベッドに寝かせてもらえた。でも横になったからといってちっとも楽になるもんじゃない。こんな硬い高いベッド、落ちないでいるだけで必死だし。
 おまけに隣のベッドで子供のギプスを外す処置が始まってしまった。歯医者のドリルをでっかくしたようなドリルの音がキーーーーン!!!と。これがもろに脳天に突き刺さって、ただでさえ耐え難い痛みに拍車をかける。やめてー! 誰か助けてー! ここから出してー!
 よって、やっと医者が来たときにはもう意識混濁状態。診断も、何か筋肉がどうこうとか神経がどうこうというのは聞こえたが、ほとんど聞き取れなかった。
 とにかく、この痛みを止めてくれと哀願したら、痛み止めの座薬を入れてくれて、コルセットを付け、湿布薬や消炎剤を山ほどくれた。座薬って初めて経験したよ。子供のころは体験したかもしれないが覚えていないし。なんか冷たくて気持ちいい。それで30分ほど横になっていたら、少しずつ痛みが引いてきてなんとか立って帰ることができるようになった。
 家に帰ると、ベッドに倒れ込んで寝た。それで起きたら痛みはほとんど消えていたのでこんなの書いてるんだけど。なんか医者の話では、よくあることで簡単に治るという話だったけど、腰痛持ちの人には本当に同情します。

 以上はまだ頭がよく働かない時点で書いたのだが、結局、原因は今回も膝と同じ、骨がずれたか変形して神経を圧迫してたということらしい。
 それに気づいたのは、病院でもらった薬を入れようと救急箱を開けたとき。なんと! 膝のときにもらった鎮痛消炎剤も湿布も、まだたくさん残ってたじゃないか! しかも同じ薬! これがあれば病院行くまであんなに苦しむ必要なかったのに!
 あと、膝のとき、「当分お風呂は控えて下さい」と言われたのも思い出した。あっためちゃいけなかったのね。私はてっきり腰を冷やしたせいだと思って、(このところ夜は寒かったので)、熱い風呂にしっかり漬かって暖めてしまったよ! まったくもう!

 ちなみに、腰の痛みが取れたと思ったら、今度は背中の上のほうや首の後ろが痛い。あんなすごい痛みじゃなく、鈍痛ですが。薬はよく効いたが、コルセットは一度も付けてない。苦しくって痛みよりそっちのほうがつらいので。

インフルエンザの話

 ついでだから病気がらみでもうひとつ。この豚インフルエンザ・パニックの愚かしさについては、書くつもりでいて機会を逸してしまった。だいたいマスコミにもいろいろ出てるからもういいや。それより私のインフルエンザ体験を書こう。(例によって子供のころのことは記憶にないが)私は一度だけインフルエンザにかかったことがある。それでこれもすさまじかった。だから、インフルエンザの怖さは知ってるし、かつての狂牛病パニックほどバカバカしいとは思わない。
 私がインフルエンザに感染したのは、生まれて初めての海外旅行先のロンドンで。当地ではインフルエンザが大流行していたのだが、私も渡航して3日ぐらいで見事にかかった。
 ああ、余談ですが、私は海外に旅行すると必ず風邪を引きます。年取ってくると免疫ができるせいか、日本じゃもうめったに風邪なんて引かないのだが、海外の風邪はタイプが違うので免疫がきかないんだね。同様に日本の風邪薬を持っていっても、海外の風邪には効かないという話も聞いた。このインフルエンザで懲りたので、私は旅行先で風邪引くと、すぐに病院に駆け込むけどね。だって高いお金払って海外行って、寝たきりなんてバカくさいじゃない。
 で、高熱出して結局1週間寝込んだ。それは確かに苦しかったが、病気慣れしている私はそれほど応えなかった。フラフラしながらもちゃんとスーパー行って自炊してたし。(自炊式のホテルだった) 病院へ行くということも考えたが、ナショナル・ヘルスの病院(誰でも無料)はどこも超満員というのを連日テレビのニュースでやっていたし、とてもこの状態でえんえん待つ気になれなかった。プライベート・ドクター(保健の効かない医者)を呼ぶという手もあるのだが、私費治療のイギリスの医療費はめちゃくちゃ高いことも知っていたので、貧乏人の私にはためらわれた。
 それで一週間目。風呂に入ろうとして裸になって鏡の前に立って驚いた。ゲッ! まるで飢餓難民のような痩せ方! 確かに当時は今よりははるかに痩せていたが、しかし私がこれだけ痩せていたのは、健康診断で「栄養失調」と書かれていた子供時代以来だ。ピッチピチのタイトなスリムジーンズをはいていたのだが、はこうとするとまったく腰に引っかからなくてストンと下に落ちてしまう。あわててベルトを買いに行ったぐらいだ。1週間で推定15キロ痩せた。食べてなかったわけじゃない。むしろ体力付けなきゃと思って、高カロリー食をがんがん食べていたのに。究極のインフルエンザ・ダイエット。もっとも私は熱に弱くて、風邪でも熱出すとすぐに痩せるんだけどね。またすぐに元に戻るけど。
 とにかく、ここで初めて、「これはヤバい」と思って、フロントに頼んで医者を呼んでもらった。こっちは苦しんでるのに、医者は楽しそうに雑談なんかして、注射の1本も打ってくれない。だけどもらった薬を飲んだらケロッと治って、翌日にはコンサートに行ったぐらい。心配していた医療費も、旅行保険ですべてカバーできることがわかって、こんなことならもっと早く医者に診てもらうんだった!
 しかし、これだけ痩せるってことは、文字通り熱が体を(脂肪をだが)食らい尽くしてしまったわけで、持病のある人や体力のない子供や老人が死ぬのはよーくわかります。やっぱりインフルエンザはこわいので気を付けましょう。

 もひとつおまけ。外国(と言っても私は西欧しか知らないが)行ったら病院行くのが趣味みたいになってしまっている。だって、お医者さん優しいんだもん。日本の医者は昔なら変に威張ってて患者を見下した態度、今だと過労で見ているこっちのほうが気の毒になってしまうぐらいで、とても患者に気を遣う余裕なんてない。それにくらべて、外国の医者は本当に親切で優しい。診察だけじゃ終わらなくて、こっちが旅行者と知ると、必ず雑談とかして気分をほぐしてくれるし。
 まるで小さい子を相手にするように扱われるのも、元気なときならむかつくかもしれないが、病気で弱っているときにはものすごくうれしい。実は今の病院(東京臨海病院)に移ったのも、職員や看護婦さんたちが優しかったからだ。と思ったら、今日はおっかないガラッパチの婦長さんみたいなのに当たってしまって、何から何まで本当についてなかった。

2009年6月8日 月曜日

サッカー・ワールドカップ アジア予選

 ワールドカップ出場を決めたウズベキスタン戦と、今日のカタール戦だが、さすがW杯だけあって、胃の痛くなるような試合が続きましたね。

 ただ、私としてはこれで良かったと思うよ。これぐらい苦しい試合をしないと練習にならないから。そう、練習。テレビの解説はこれが本戦の始まりみたいなこと言ってたが、この人たちって勝負ってものを知らないのかね。予選なんか2位で十分。問題は本戦なんだから。どんな競技でもそうだが、予選でベストタイム出したって、本番で負ければしょうがない。まあ、ファンのためとか、スポンサーの手前とかもあるだろうし、ここで情けない試合して負けるようじゃ問題だが、いちおう苦しい中にがんばったし、いい経験になったんではないか。逆に言うと、こういう試合をいっぱいしなくちゃ強くなれない。
 私の印象では、ドイツに乗り込んだときはいい気になってたと思うんだよね。、その前の日韓W杯でちょっといいところ見せたし(あれは半分ホームだし、梅雨時という外人選手にはまったく経験のない特殊な気象条件だったから、論外)、その直前の親善試合でやけに調子よかったから。だから、今回は予選で苦しむぐらいでちょうどいいと思ってた。

 だけど、思い返せば前回の予選突破は無観客試合だったんだね。それが今回はこれだから、なんかついてない。
 というのも、ウズベキスタン戦は、敵チームにではなく審判に苦しめられた試合だったから。始まってすぐに「アレ?」と思ったし、意味不明のニヤニヤ笑いが気持ち悪かったけど、日本選手の危ないプレーもノー・ホイッスルだったから、そういうジャッジなのかと思ってた。ところが後半、どんどんおかしくなってきて、ああ、これが噂に聞く「中東の笛」かと。なにもジャッジだけじゃなく、中東での試合というと、いろいろ意地悪されるそうじゃない。日本選手の控え室だけ冷房が入ってないとか(笑)。今日の試合のジャッジもかなりおかしくて、闘莉王なんかカンカンに怒ってた。
 でも、それもサッカーだと思うんだよね。サッカーのいいところは(野球みたいなローカル・スポーツと違って)裾野が広いことだが、そうなると当然、程度の低い国とも戦わなきゃならないわけで。だいたい、日本のスタジアムと、アウェーのスタジアムの違いを見てごらんよ。これだけプレー環境が違うんだから、多少はハンデをあげても勝つぐらいでなくちゃ。
 ただ、ジャッジがおかしいと思ったら、観客は楽しそうに歌なんか歌ってないでブーイングすればいいのに。選手や監督が抗議するとカード切られちゃうけど、ファンなら大丈夫だから。
 あと、余計なことだけど、2ちゃんねるで、「日本人って中東じゃ嫌われてるの?」なんて書いてるお子さんがいたので。アジアで日本が好きな国なんていねーよ。(ついでに言うと、オーストラリアは白人国では最も反日感情の強い国だ) その中では中東は、(歴史的にほとんど関わりがないせいで)日本には好意的だが、W杯というのは戦争だからね。勝つためには手段を選ばない人たちだし。

 それでかんじんの試合だが、ウズベキスタン戦は1-0で勝ち、カタール戦は1-1で引き分けた。私としては上等な結果だと思うが、幸運にだいぶ助けられた。というか、相手のシュートの下手さに助けられたというところで、本戦の相手じゃこうはいかないだろう。得点もどっちかというとラッキーゴール。
 ウズベキスタン戦の岡崎(またも岡崎!)のシュートは、一度跳ね返されて戻ってきたボールを、勢い余って倒れ込みながら頭で押し込んだもので、狙ってやったというより、たまたま角度が良かった感じ。今日の試合は敵ディフェンスのオウンゴールだし。どっちもこの1点がなければ負けてたかも。
 というか、ちょっと前の日本代表なら、先制点をとっても、そのあと崩れてバタバタになり、負けてしまうパターンだった。それを持ちこたえたのだから合格と言ってるわけ。

 しかし、岡崎は絶好調だなあ。乗ってる選手というのはしばしば運も呼び込むので、できればこの調子が本番まで続いてほしいのだが。逆にこのところずっと運に見放されてるのが玉田で、いい選手だし私は好きなのだが、こうなっちゃうとどうにもならない。もう岡崎のワントップでいいのに、なんで使い続けるのかがわからない。スポーツ選手って調子の波がすごく重要だと思う。本田を呼んでほしいと熱望してたのも彼が絶好調だったから。その意味では森本も呼んでほしかったが、W杯出場はほぼ確実だったので、彼としてはセリエで実績積んだほうがよかったのかも。
 しかし、なんで本田を先発で使えないの? 私はどっちかというと彼が見たいだけなのに。残り10分で結果出せと言われてもねえ。先発してれば今日だって1点ぐらいは取るかアシストしたのは確実なのに。私は戦略とかのことはよう知らんが、本田と中村俊輔を同時に使うってことできないんだろうか?

 しかし、気分はもうワールドカップですね。今年は4位以内はノルマ、優勝も十分圏内だぞ! って、日本のことじゃないよ。もちろんイングランドの話で、だから私は非国民だって言ってるでしょ(笑)。もちろん自国も応援してるけどね。
 でもイングランドや日本が常勝国だったら、たぶん私はサッカーなんて見てないと思う。ひねくれ者なんで。だから勝って当たり前の野球なんてぜんぜん見る気が起きない。勝てそうだけど勝てない。でももしかしたら勝てるかも‥‥っていう、希望を持たせてハラハラさせるところが好きなんだよね。

P.S. 最後に言わずもがなのイチャモン。例の「世界を驚かす覚悟がある」Tシャツね。あれ、だいぶ評判悪いみたいだし、確かに日本語としても不自然だけど、問題はその裏側だってことに誰も気づいてないようなので。背中には英語で、「Go to South Africa」という文。「南アフリカに行け」って、誰に言ってるんだよ? 命令文でしょ、命令文! 敵を鼓舞してどうする?
 まあ、いろんな商品にヘンテコな英語が付いてるところを見ると、日本の大企業も誰も英語しゃべれるやつがいないらしいから、驚かないけどね。
 ついでに言わせてもらうと、スポンサーのキリンはポカリスエットの広告だけは打たないでほしいし、選手に飲ませないでほしい。あれ見るとどんな外国人も大笑いするんだよね。「汗」という名前の飲み物を喜ぶ日本人ってどういうセンスなんだ? 「ポカリ」って外国人にはなんだかわからないから、(日本人だってわからんが)、なんかの動物を想像して、「ポカリの汗」でできた飲料だと思うぞ。
 それも発売当時から言われてるのに、未だに引っ込めないあたりの神経も疑う。とにかく選手がポカリスエットを飲んでる場面がテレビに映ると、「おえっ!」となるんですが。それともあれは、敵に見せつけて気持ち悪くさせようという作戦なんだろうか?

2009年6月11日 木曜日

天使に恋する話 (夢の話)

 夢の中で私はサッカー・スタジアムにいる。べつにサッカーを見に来たわけではない。なんかのイベントに来て、そのあとサッカーの試合があるのだが、なぜか入れ替えがなかったので、ついでだから見て行くかと思っただけ。確か浦和レッズとどこかの試合だったが、もう消化試合で、客の入りも閑散としていた。それに私はどちらのサポーターでもないので、応援合戦に巻き込まれたくなくて、まわりに誰もいない、てっぺんに近い席にひとりでぽつんと座っていた。
 休憩時間に喉が渇いたので、お茶を入れようと思って席を立った。上の通路に、なぜか学校の校庭の水飲み場みたいなのがあって、そこにコンロが付いていてヤカンも乗っているのである。ヤカンに水を入れてお湯をわかそうとしていると、知らない女の子が「私たちのぶんもわかしてもらえますか?」と声をかけてきた。私は快く承諾し、水を余分に入れてお湯をわかし、なぜか持参している紙コップとティーバッグでお茶を入れて席に戻った。
 するとロディが来ていた。ロディというのは、私の初恋の人(うそ)アズテック・カメラのロディ・フレイムのことだが、もちろん本人ではない。ただ単に、彼にそっくり(すなわち夢のような美少年)なのと、名前がないので、便宜上そう呼んでいるだけである。私の夢の登場人物にはそういう人が多い。本物のロディはもうおじいさんだが、夢のロディはもちろん彼がいちばんきれいだった18才ぐらいに見える。当然、私もそれに合わせて若返っている。それに本物のロディは、すかしたルックスに似ず陽気で気さくな人だが、夢のロディはどっちかというとルックス通りで、暗いとか冷たいというんじゃないが、限りなく物静かで、優しくて、おだやかな人柄である。私が彼に気が狂うほど恋していることは言うまでもない。本物のロディはスコットランド人なのに、なぜかこの夢の中では日系アメリカ人ということになっていて、私とは訛りのない日本語で話す。

 で、とりあえず、私は彼にお茶を見せて、「あなたも飲む?」と訊いたが、首を振って「いらない」と言う。私はお弁当を持ってきていたが、自分の分しかないので、バッグの中をかき回すとカップラーメンが出てきた。こんなものは持ってきた記憶がないので、スタジアムに入るときにもらったのかもしれない。そこで(「ロディがカップ麺なんか食べるわけないな」と思いつつ、「何か食べる?」と言うと、やっぱり「いらない」と言う。
 いったいこの人、何か食べたり飲んだりすることってあるのかしら?と思った。いっしょに住んでるんだから、(ここで初めて彼と私は同棲していることがわかる)、彼が飲食するところは見たことがあるのだが、いつもほんのちょっと口を付けるだけ。
 以前、業を煮やして「食べ物は何が好きなの?」と訊いたことがあるが、そのとき返ってきた答は「うーん、ブルーベリー?」というものだった。ブルーベリーなんて小鳥の餌じゃないの。そういえば、フルーツをすすめると手を出すことが多いから、果物しか好きじゃないのかもしれない。本当はこの人、何も飲み食いしなくてもいいのに、私の手前食べるふりをしているだけかもしれないと思った。
 いや、それを言ったら、この人はウンコもオシッコもしないのかもしれない。これはいっしょに住んでるにもかかわらず記憶にない。やっぱりこいつ、人間じゃないや。宇宙人? いや、むしろ天使というべきかも。トム・リーミィ(アメリカの小説家)は、彼の短編(「ハリウッドの看板の下で」)の中で、天使にもオチンチンや肛門はあるが、排泄はしないということを教えてくれたが、そう考えるとすごく納得する。
 だったらセックスは? これがいくら記憶を振り絞っても、私が彼とセックスしているのかどうか思い出せない。やっぱりセックスもしないのかもしれない。もっともリーミィの小説ではしてましたけどね。人間の男に拉致監禁されて強姦されるんだけど(苦笑)。

 そんなふうに私がモヤモヤ考えているうちに試合が始まった。ロディは礼儀正しく座って観戦しているが、べつに試合に興味を持っている様子はなく、ただいつも通りおだやかな微笑を浮かべて見守っているだけだ。私も隣のロディの存在が気になって試合なんてまるで目に入らないし、その沈黙に耐えられなくなったので、彼に話しかけて、世界の貧富の差のことについて話し始めた。最愛の人とデートなのに、なんちゅう話題だと自分に突っ込みながら。というのも、そういうパブリックな話題のほうが、彼が乗ってくるのを知ってたから。
 するとやっぱり彼も多少は乗ってきて、「日本の人はお金持ちでも質素だね」なんて言い始めた。それは私もそう思う。それで、「結局、ぜいたくという点ではアメリカだけが突出してるのよ」と、ネチネチとアメリカいびりを言い始めた。アメリカの悪口を言うと、彼がちょっとだけ傷ついたような表情になるのを知っていて、それが見たいからだ。
 この間も、いかにも夢らしく不条理なことはいろいろ起きている。私がロディの回想の中に入り込んでいたり。彼がお父さんにジャケットをもらったときのことを回想していると、私がひょいと手を伸ばしてそのジャケットにさわり、「やっぱり生地がいいわ」なんて言ったりして。
 そういや、この人はお金持ちのボンボンなんだった。そのことをネチネチいびると、やっぱりちょっと傷ついたような表情になる。でもそこがすてき! 金持ち、ハンサム、スタイル抜群、おまけに性格もいいって、できすぎじゃない。だけど、この人とは結婚できない。(と、いきなり妙に現実的な方向に考えが向かう) だって、いっしょに暮らしているのに、私はこの人のこと、何も知らない。こんなに愛しているのに、彼のことがまったく理解できない。やっぱりこの世の人じゃない。殿上人っていうか、私とは違う世界に住んでるんだ。
 そういう風に考えると、私はだんだん情けなく悲しい気分になった。会話はまだ続いていて、人種差別の話とか、かなりヘヴィな話になっているのだが、私は自分のことだけで頭がいっぱいで、会話にもまったく集中していない。

 やけになって、弁当を取り出して、ひとりでボソボソ食べ始めた。ロディはいきなり会話を打ち切られても、いやな顔ひとつせず、またピッチに視線を戻して、おとなしく見ている。私がほとんど食べ終えたころ、彼が「悪いけどぼく、先に帰るね」と言って、腰を浮かせた。ほら、やっぱり私といても退屈なんだ。そう思ったら、悲しくて寂しくて本当に泣き出しそうになった。
 すると彼が身をかがめて私にキスしようとする。お別れのキスだ。こういうところがやっぱり日本人と違うなあと、変なことに感心しながら、頬を差し出した。
 すると、私が予期していたような軽くチュッというキスではなく、彼は私をしっかり抱きしめて唇を押しつけてきた。まるで私が悲しんでいることに気づいて、慰めようとしてくれているようだ。私はあわてて、「食べてる最中なんだから舌はだめ」と、これまた妙に実際的な心配をするが、彼は言われた通り口は開かず、ただ唇をぎゅっと押し当ててそのままじっと動かない。「もういいから」というように、私が腕で押しのけようとしても、放さない。
 ああ、やっぱりこの人も私を愛している! というところで、これが普段だと、たとえそこが公共の場所であろうが、人が見ていようが、興奮して18禁シーンになるのだが、(だってロディが出てきた時点で、これは夢だってことがわかってるからね)、さすがに相手がロディだとそうはいかない。私はうれしいのと同時に、「やっぱり私はこの人に値しない」という自己嫌悪に引き裂かれて、それより何より彼の優しさが痛いほどで、本当に涙がぽろぽろこぼれてくる。というところで終わり。

以下蛇足

 他人の恋の話を聞かされるだけでやりきれないのに、(少なくとも私はそうだ)、おまけにそれが夢っていうあたり、しょうもない話ですみません。でも私にとっては大事な夢なので。
 ちなみにロディは私の「天使の恋人」。私には初恋の人(こっちは半分ほんと)の顔と名前をもらった「アキラ」という名前の「悪魔の恋人」もいるのだが、当然のように、彼が出てくる夢はまったく雰囲気が違うし、私のキャラクターも変わる。
 ただ共通しているのは、見たあと胸がいっぱいになって、なんとも切なく泣きたい気分になることだけ。これが恋なのね。って、ガラにもない話ですみません。

2009年6月19日 金曜日

オーストラリアの話

 これは前にも書いたと思うが、親父が長年オーストラリアに駐在していたせいで、うちはオーストラリアとは縁が深い。小さい子供のころは、いちばん身近な外国だったぐらいで、成長してからは二度も長期滞在している。(あいにくうちは貧乏だったので、家族を呼び寄せるどころか、オーストラリアの父を訪ねて行けたのは、自分で旅費を稼げるようになってからである)
 特に動物好きの私にとってはオーストラリアは夢の国で、さぞかし美しい大自然や、めずらしくてかわいい動物でいっぱいなんだろうと思ってドキドキしながらあこがれていたものだ。ところが実際に行ってみると‥‥なんか肌が合わない!
 だいたいコアラやカモノハシみたいな珍獣は、野生のはオーストラリア人だって見たことのある人は少ないぐらいで、観光客が行けるようなところにはまず出てこない。掃いて捨てるほどいるというカンガルーだって、砂漠を半日走ってもめったにお目にかかれない。景色もねえ、確かにでっかいことは事実だが、なんかデリカシーってものがないし、なんでもかんでも埃っぽくて薄汚れてるって感じ。(グレートバリア・リーフとか行けばまた違うのだろうが、あっちへは行ってない) 私は馬に乗りたいので、けっこう山奥まで行ったのだが、ワイルドではあるものの、きれいとかそういう感じはしなかった。
 人もそう。オーストラリアは巨人の国である。この私が言うんだから本当だ。私は日本にいると、まるで小人の国に住んでるようで、狭苦しくて不自由でしょうがない。とにかく何をするんでも腰をかがめなきゃならないし。(171センチの私がそう感じるんだから、もっと背の高い男性なんか、もっとそう感じてるはずだが) それがイギリスに行くと、何もかも自分サイズなのでほっとする。イギリス人だって、でかい人はとてつもなくでかいんだが、私は英米人の女性の平均身長を軽く越えてるしね。
 ところがオーストラリアへ行って驚いた。確かに人もでかい(縦にも横にも)が、まわりのものすべてが大きい。さすがによく海外に行った日本人が言う、「トイレに座ると足が床に届かない」ということはないが、ドアノブなんかあり得ない高さに付いてるし、洗面所のシンクが胸のあたりの高さで、胸がつっかえてしまって顔が洗えない(笑)。これまた巨人国に迷い込んだガリバー気分。
 ただ、大きいのはいいが、すべては大味で大ざっぱで野暮ったくて田舎臭いのだ。特にセンスのなさはすごい。これは私がアメリカにも感じていたことで、だからアメリカをバカにしていたのだが、オーストラリアとくらべるとアメリカ人ってなんて洗練されているんだろうと思うぐらい。やっぱり大陸気質なんだなー。インドや中国あたりもそういう感じがするし。私は根っからの島国体質なので、だからイギリスがいちばん性に合うのかも。
 あと飯まずいし、量だけキチガイみたいに多いし(これはルーツを同じくする英米もだが)、それにまさに文化果つる所って感じで、文化の匂いがまったくしないのもすごい。町も汚いし、町行く人のファッション・センスは絶句もの。
 人種差別はすごいしね。平和な住宅地の壁に、ネオナチの宣伝ポスターが貼ってあるのにはあきれかえった。ヨーロッパなら考えられない! 確かに、メルボルンなんて「ここはどこ?」ってぐらい、まわりじゅう韓国人みたいな地域もあって、最近はアジアからの移民が大半なので、白豪主義者はあせってるみたい。親父は詳しいことは教えてくれなかったが、やっぱり人種差別は根深いと言っていた。ちなみに、上に書いた反日感情というのは、戦時中、オーストラリア軍は連合軍の尖兵として太平洋で日本軍と戦ったので、日本に恨みを持っている人が多いからである。これはオーストラリアだけを責められないが。
 あと、ハエね。オーストラリアといえばハエの国! なんつっても、これがいちばん印象深かった。なのに観光局は絶対そんなことは言わないので(あたりまえだ)、これを知らない日本人は多い。町だろうが砂漠だろうが、真冬でもまわりじゅうでっかいハエだらけ。しかも異常に乾燥しているので、ハエは水分を求めて、人の口や目を狙って寄ってくるのだ。虫嫌いの私にはまさに悪夢!
 というわけで、あこがれのオーストラリアで待っていたのは失望だけだった。なのになんでオーストラリアにあこがれる日本人って多いのかねえ。やっぱり昔の私と同じで何も知らないんだな。だから、とてもじゃないが、好きな国とは言えない。(親父はそれでもオーストラリアが好きらしいが) もちろん私だって向こうに友達もいるし、オーストラリア映画は(単に変なので)愛好しているが、いい印象はあんまりない。

ワールドカップ アジア予選 オーストラリア戦

 なんでオーストラリアがアジアなんだよ!という突っ込みは置いといて、そんなわけで、この一戦には私としては負けてほしくなかったのである。もちろん8日の日記に書いたように、消化試合なんだから勝敗なんかどうでもよさそうなものだが、オーストラリアには恨みがあるからね。
 明らかに日本より格上ということは知ってるが、これまでの対戦を見て、オーストラリアをこわいと思ったことはない。むしろ力でごり押しするだけの野暮ったいチームという印象で、十分勝機はあると見えるのだが、いつも負けるのでよけい気色が悪い。特にドイツ・ワールドカップでの悪夢がまだ忘れられない。勝ったと思った試合が、終了間際の10分で立て続けに3点取られて逆転負け。ぜひともあれの雪辱をしてほしいと思ったわけだ。
 敵の本拠で、洗練されたパスサッカーで大男どもを手玉に取れたら、こんなに気持ちのいいものはない。

 という淡い期待は、試合前に完全粉砕されましたけどね。故障の中澤や山田直輝はしょうがない。レッドカードの長谷部はしょうがない。お疲れの中村俊輔もしょうがない。だけど、ピンピンしてて、やる気満々の本田を呼ばないのはなんで!!! どっちかというと私は本田が見たいだけだったのに!
 メンバー表見ただけで、絶対勝てないとあきらめた。やる前に負けてる。どうせ飛車角落ちのメンバーでやる消化試合なら、まだ試してない選手を試すとか、若手に経験を積ませるとかの手もあるだろうに、まるっきり新味もおもしろみもないメンバー。見る気も起きなかったが、義理で見た。

 それぐらい期待していなかったから、逆に闘莉王が先取点をあげたときは、不覚にも舞い上がってしまった。もしや?と思って。ところが結果は、またも逆転負け! またもケーヒル! しかも警戒していた通りの高さと力で押しまくられての敗戦。
 おまけに調子に乗ったオーストラリア・サポーターのバカ騒ぎを見せつけられて、腐りきった試合だった。なに、あの「NIPPON FOREVER IN OUR SHADOW」っていう横断幕は? たとえ憎いライバル同士でも、普通あそこまで悪意のある応援やらないでしょうが。本当にオーストラリア人って日本人が嫌いなんだな。

 という腐った試合の中で、輝いてたのは闘莉王だけだったな。あのヘディングは高さといい、精度といい、いかにも闘莉王らしい、目の覚めるようなゴールだった。それに何が何でも勝ちたいという闘志もすばらしかった。それだけに負けたときの悔しさも人一倍だったようで、あの涙には私もほろっとしてしまった。ドイツの中田ヒデの涙を思い出した。ミスが多いからいらないなんて言ってごめん。やっぱりこの人はいないと困るわ。

 他の選手に関しては言いたいことは山ほどあるが、どうせ2ちゃんねるあたりではまた「戦犯探し」と日本叩きが始まるんだろうから、少しは日本代表を弁護してあげよう。全体としては、そう悪くはなかった。敵地で、しかも中心メンバーを欠いていたことを思えば、確実にドイツの時よりは日本も強くなっている。だいたい、ドイツでは最後は完全に手も足も出ない負け犬モードになっていたが、昨日は最後まで戦う意志を捨ててなかったし。
 ただ、岡田監督に関しては、もう弁護の余地がないですね。無理とは思うけど、替えられるものなら替えてほしい。

 しかし、結局、背の低さとフィジカルの弱さかよ。こればっかりは言ってもしょうがないとは思うが、それにしても、小さくてか細い日本人選手が大男にぶつかられてコロコロ転ぶのばかり見てるとイライラしてくる。これならフォワードを鈴木隆行に替えたほうがまだましという、2ちゃん意見に賛同したくなるぐらい。少なくとも鈴木なら、体張って見るからに痛そうに転んでくれるからファウル取りやすいしね(笑)。
 少なくともここに本田と中澤がいれば、こんな見苦しい敗戦はしなかっただろうに。おっと、こういう未練がましいことは言わないつもりだったのに。全盛期の高原なんか、でかいディフェンス何人も引きずってゴールに突進したのに。あ、また言ってしまった。どうも今日は調子が乗らないのでやめた。

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