2007年12月の日記

このページのいちばん下(最新記事)へ

2007年12月6日 木曜日

12月6日 ころぶ

 なんだ、そりゃ? と言わないように。これがもう、誰かがビデオに撮ってたらYouTubeに投稿されてネタにされるような、すごい転び方だったのだ。
 郵便局で今日の発送を終えて、晩のおかずを買おうとスーパーに向かっていたとき、前方の信号が青に変わった。この交差点は五叉路で、一度赤になるとなかなか変わらないので、なんとか青のうちに渡ろうと全力でダッシュ。ところが交差点の真ん中で何かに足を取られ、気が付いてみたら、気持ちいいぐらいビヨーンと宙に舞っていた。
 交通事故のときもそうだが(*注1)、こういうときって時間が止まったようになって、妙に冷静にものが考えられるのよね。最初に思ったのは、「メガネがこわれちゃう!」ということ。なにしろ頭から真っ逆さまに落下している最中だったので(笑)。メガネより頭の方が大事だと思うが、冷静なようでいて理屈に合ってないね。
     *注1 私は運転しないが、助手席に座っていて何度もクラッシュしている。
 その次に気づいたのは、自分が交差点の真ん中に、つぶれたカエルみたいに大の字にのびていたこと。「あー、やっちゃったよー」と思って立ち上がろうとしたが、動けない。というのも、頭がぐるぐるまわって、上下の感覚がないのだ。「やべー! 頭打って全身麻痺か? 治っても半身不随か?」と思ったが、頭はぜんぜん痛くはなく、ぶつけたような記憶はない。
 次に考えたのは、「信号が変わっちゃう! 車に轢かれちゃう! 誰か助けてー!」ということ。手足もしびれたように感覚がないし、起き上がることもできない。混雑した交差点で、周囲に大勢の歩行者もいたのに、誰も助けてくれない。まあ、日本じゃそんなものとは思ってたけどね。自分が助けを必要とする身になってみると、情けないよね。
 それから思ったのは、「誰も助けてくれない。自分でなんとかしなくちゃ」ということで、どっちが上だか前だかもわからないが、とにかくもがいて立ち上がり、どうにかふらふらと歩道まで行き着いた。
 そこで壁に寄りかかり、被害を点検する。てっきり頭から落ちたと思っていたが、頭はなんともない。どうやら、両膝と右肘、それに左手の指3本で着地したらしい。というのもそこが痛むから。でも痛みはなんか遠くの出来事みたいでぼんやりしている。それよりひどいのは、地面がぐるぐる回転しているみたいな猛烈なめまいと、それに吐き気。おまけに背筋がゾクゾクして、脂汗がタラタラ出てきた。
 これがもし本当に頭を打っていたら相当ヤバい症状で、それこそすぐに病院言ってCTスキャンでもしてもらうしかないが、頭はなんともないのに変だ。でも、この症状は私には覚えがある。自律神経失調症の症状だ。私は子供のころ、これに悩まされていたが、大人になって治った。でもころんだショックでそれが再発したらしい。
 そんなわけで、足はほとんど痛くないのに歩けない。あっちへよろよろ、こっちへよろよろしながら、すごい時間をかけて家に帰った。

 それでしばらくベッドに横になっていたら少し気分がよくなったので、おそるおそる怪我の点検。服を脱いでみるまで、どんなすごいことになっているか恐ろしかったが、確かに膝と肘を打っていて、明日には真っ黒なあざになるだろうが、軽くすりむけてるぐらいで怪我もたいしたことない。ただ、ぶつけてもいない右肩が痛い。どうやら衝撃はほとんどが右腕に抜けたようだ。外は寒いので着ぶくれてたのも幸いしたようだ。
 しかし、あの体勢から、無意識のうちにちゃんと四点着地ができるなんてすごい。と、変なところに感心。猫みたいだ。前々から私には猫の血が流れてるんじゃないかと思ってたが。(*注2)
    *注2 いつも寝てるから。
 実は私はよくころぶ(笑)。どうも二足歩行に向いてないらしく、ただ歩いてるだけでもすぐコケる。子供のころからそうなので、転び慣れてしまったのか、いつの間にか受け身がうまくなった。
 馬に乗っていたころはよく派手な落馬をした。それで仲間は多くが大怪我をして、救急車で運ばれたり、入院する人も少なくなかったのだが、(*注3)、私はせいぜいが打ち身とすり傷だけ。人より体も大きく、体重が重いことを思うと、これってけっこうすごいかも。ポーンと宙に飛ばされて、牧柵の上に放り出されたときはさすがに終わりかと思ったが、それでもけろっとしていた。いちばんひどい怪我をしたのは、足を踏まれて親指の爪がはがれたときぐらいだな。
    *注3 乗馬はものすごく危険なスポーツなのです!
 そういや、トラックに衝突したときも(*注4)、打ち身だけですんだしなあ。猫は9つの命を持つと言うが(*注5)、その意味でも私は猫かもしれない。と、変なところで自信を持ってしまった。
    *注4 トラックが私に衝突したのではない。私が走っているトラックに衝突したのである。これも前を見ずに道路に飛び出したせい。
    
  *注5 猫は高いところから落ちても怪我をしないことから生まれた言い伝え

2007年12月17日 月曜日

忘年会で驚いた

 忘年会のシーズンであります。私も今日も明日も仕事帰りに仲間と忘年会。
 と言っても、いわゆる仕事がらみの忘年会は徹底して避けている。だって、好きでもない連中と、興味もなければクソおもしろくもない話して、酒も飲めないのに高い会費取られて、セクハラされて、なーんもいいことないんだもん。だいたい私は一匹狼なので、大勢でつるんだり集まったりが大嫌い。集団で耐えられるのはせいぜい多くても4人まで。
 というわけで、忘年会と言っても親しい仲間といっしょに飲んだり食べたりするだけのことですけど。みんな忙しいので、なかなかこういう機会でないと会えない人もいるしね。今日も大学のゼミ仲間の男性2人(2人とも当然大学教授)と飲みに行った。(私は食べるだけだが)
 だいたい、大学人との飲み会がいやなのは、出る話題が仕事のグチか知り合いのうわさ話だけだからだが(まあ、これは日本社会ではどんな職場でもいっしょでしょうが)、今日は顔ぶれから言ってグチになるかと思いきや、うわさ話で大いに盛り上がった。
 まあ、大学も出てからこれほど年月がたつと、いろいろなことがあるものです。昔親しかったあの人が、病気で倒れて半身不随だとか、学生としてお世話になった大先生が、アルツハイマーでパープーになってしまったとか。でも今日はそれよりもはるかにショックな話を聞いた。

 いやー、何に驚いたって、30年間親しくつきあってきた人が、実はゲイだったと今になって知るとは。
 断っておくけど、私は音楽ファンなだけあってゲイには好感持ってるし、映画人でも作家でもゲイで大好きな人はたくさんいるし、ゲイの知り合いもいるので、なんにも偏見は抱いてないです。むしろ、それが見えなかったことに驚いただけで。

 噂のネタにされたのはゼミの先輩のAさん(仮名)。彼はセクシャリティ以前に、きわめつきの変人なので、とかくネタにされる人なのだが。私はあの人は宇宙人だといつも言ってる。べつに悪口じゃなく、事実(笑)。世間の基準から言うとかなり変人の私や、多かれ少なかれ変人が多い大学仲間に変人扱いされるんだから、どれくらい変わってるかわかるでしょ。
 ひとつ例をあげると、彼は人と会話がまったくできない人である。たとえば飲み会で4〜5人が車座になって話をしているとする。話題がなんであれ、彼以外の全員は普通に会話をしているのだが、Aさんだけはまったく別の話を勝手にしゃべっている。それでも人が話しているときは礼儀正しく黙って、うんうんとうなずいているのだが、自分の番になると、それまでの話とはまったく関係のないこと(その前に自分が話していたことの続き)をしゃべり始める。
 私たちはみんな慣れているので、彼を無視して会話を続けることをなんとも思ってないのだが、Aさんをよく知らない人がまじっていると大いに困惑してとまどうようだ。でも本人はちっとも無視されてるとは思わず、ちゃんと会話に参加しているつもりになっている。なんでか知らないが、彼の頭の中ではちゃんと整合性が取れているのだ。ちなみに大学の授業は一方的に話せばいいので、少しも困らないらしい。
 ただ、Aさんに何かを伝えようと思うと非常に困る。なにしろ人の話をまったく聞かずに、自分だけの架空の世界に生きているので、たとえば電話で会合の日時と場所を伝えても、勝手に別の日に別の場所に現れたりする(笑)。

 そのAさんが実はゲイなのでは?という話になったのは、片方の男性がいっしょに学会に行ったとき、セクハラまがいの体験をしたと言い出したとき。彼は私たちとはゼミが違うので、Aさんとは比較的最近知り合ったのだが、なぜか彼にかわいがらていた。その人はまったくホモっ気はない人なのだが、酒の上での無礼講とは違う、明らかに性的な接触をされたというのだ。すると、もうひとりの男性が大きくうなずいたのだ。えー、そうなの?!
 それで、3人であれこれ考え始めたのだが、考えると思い当たることばっかり。実は私は男の子たち(と言っても今はもうみんなおじさんですが)が、口を揃えて「Aさんは変わってるけど、根はすごくいい人だ」と言うのを聞いて、ちょっと不思議に思ってたのだ。それでわかったのだが、彼は年下の男の子には異常に親切、だけど、同じゼミ仲間の女性に対しては冷たいということ。
 特に私は何度も同期の男の子と差を付けられて、明らかに差別としか思えない扱いを受けていたので、てっきり彼は女性蔑視のタイプなのだと思っていた。でも考えてみると、Aさんは基本的には紳士で、女性差別をするようなタイプじゃないんだよね。むしろ男の子が好きなだけなのだ。そして女性を前にすると、なんだか落ち着かないらしい。
 そんなAさんが気に入ってほめる女性もいて、それが2人ともレズ!(しかもタチ) つまり女性らしさをまったく感じさせない女性には好感を持つらしい。私なんてとっくに女やめてるんですけどねえ(笑)。でも他の2人が必死で説くところによると、私はこれでも十分女らしいのだそうだ(笑)。
  そういう風に考え始めると、「証拠」がぞろぞろ出てきた。Aさんは結婚して子供もいるのだが、奥さんとも子供ともうまくいっていなくて、家の中でも孤立していること、イギリス留学中にゲイにもてたことを、すごく楽しそうに話していたこと、猥談にはいっさい加わらず、男の子たちがしょっちゅう口にする、「あの娘かわいいね」というたぐいの発言を一度もしたことがないこと、学生にセクハラするので有名なイギリス人教師を、なぜかすごく感情的になって声高に非難していたこと、などなど。
 中でも私が「そう言えば‥‥」と思い出したのは、ゲイ小説について書いた私の論文を、めずらしくほめそやしてくれたことだ。彼は男の子たちのことは、大げさなぐらいにほめたたえるのだが、私は一度もほめてもらった記憶がない。だからめずらしいことがあるもんだと思っていたが、たまたまイギリスの階級問題をからめて書いていて、それは彼の専門でもあったから、そのせいかなと思って納得していた。まさかそっちの方面に反応していたとは気づかなかった。
 で、私たちが何より驚いたのは、彼がゲイらしいということではなく、これだけ長い間いっしょにいて、誰もこんな明白な事実に気づかなかったこと。特に私たちはそういうことに敏感な文学屋で、私なんか論文書くぐらいくわしかったのに!
 人間って、なまじ近しい人のことは何も見えてないものなんですね。だから親子が理解し合えないなんてあたりまえ。生まれたときからいっしょにいるんだから(笑)。
 でもこれを知って、少しはAさんに親近感がわいた。多少は人間らしさもあるんだなあと思って(笑)。

 もうひとつ付け加えると、共通の知り合いである女性教師がレズだったということも今日知ってびっくりした。Aさんのときとは反対に、私はそれほど親しくもないのに、彼女にすごく親切にしてもらったことがあるのだ。
 もっとも、いつでも上から下まで完全な男装、ネクタイまで締めて、もちろん独身で男っ気はゼロの人だから、気づかない私が鈍かったとも言えるのだが(笑)。でもそんなにわかりやすいレズが身近にいるなんて思わないじゃない!(笑) 小太りで背の低い人だから、男装がぜんぜん似合わないのに、なんか変わったファッション・センスの人だなあとばかり思ってた(笑)。

 ついでに言うと、大学教員にこれだけホモやレズが多いというのもけっこう驚いた。これって普通の会社とかでもそうなんでしょうか? 独身者が多いのもうなずけるわね。 

2007年12月30日 日曜日

古生物三昧の巻

 いやー、どうもどうも、またも日記の間があいてしまいました。理由は忙しいというより、寒いので冬眠していただけ(笑)。それと、最近、世の中暗くって、何か書こうとするとどうしてもイヤな話になっちゃうんだよね。でもイヤな話は自分で書いてもイヤになるだけなので、どうも筆が進まなかった。
 そこで開き直って、受けようが受けまいが、勝手に自分の好きな話を書くことにした。(というか、この日記もともとそれが目的だったんだけど) それで、私が今、何より楽しいのは動物を見ること。動物を触るのはもっと好きだけど、今は身近にいないのでビデオで見るか本で読むだけ。ほんと心の芯から癒されるっす。最近は寝る前に動物ドキュメントのDVDを1本見るのが習慣になっている。
 当然、大量に買ってもいるのだが、今日はその中から、古生物ものをピックアップして。

 動物はなんでも好きなのだが、やはりいちばん興奮するのは、もう絶滅しちゃってこの世にいない動物。理由はやっぱり現生動物はちょっと飽きが来てるせいだと思う。それぐらいうんざりするほど、たくさん本やビデオを見ているので。以前、「動物は人間とは異質なものほどおもしろい」と書いたけど、それもあるね。最近、節足動物や軟体動物にも関心をもっているのだが、それもやはり、哺乳類にくらべると未知の世界で発見がたくさんあるからだと思う。
 その点、絶滅動物はなにしろ誰も見たことがないんだから、めっちゃくちゃ新鮮なうえに、いくらでも勝手に想像力をたくましくできるからおもしろい。猫の目のように変わる学説や、相次ぐ新発見も見ていて飽きないし。おまけにでかくてかっこいいというわけで、これだから古生物マニアはやめられない。
 というと、また恐竜かと思うでしょ? もちろん恐竜がメインだけど、今日はそれだけじゃないよ。

Walking with Monsters (BBC Video, 2005)

 これはWalking with Dinosaur、Walking with Prehistoric Beasts(2005年3月6日)、と並ぶBBCの古生物3部作の第3部。あれ? Walking with Dinosaurのリビュー消えちゃってるね。短いからここに引用しておくか。

 きのう買った“Walking With Dinosaur”だが、やっぱりすごい! これを見ると『ジュラシック・パーク』が子供だましに思えると言うが、べつに見なくてもあれは子供だましだが、でも確かに比較にならない! どうせ私はJPを見るときも恐竜が出てくるところだけ見て、全体の5分の4をしめるヘボい人間のドラマは飛ばしてるんだから、全部恐竜というだけでもうれしいけど。
 何より『ジュラシック・パーク』は科学考証でたらめだが(古生物学者のフォーラムで“JP3”が特別上映されたときは爆笑の渦だったという)、これはとことん科学的正確さと本当らしさにこだわったところがすごい。あー、ディプロドクスの背中にはちゃんとトゲトゲが生えてるし、首は肩より上がらないようになってるし。というか、こういう「新説」が定着したのってこの番組のおかげだよな、きっと。
 BBCの動物ドキュメンタリーそのまま(たぶんこれはわざとやってるんだろう)の作りも気に入った。つまり、科学教養番組としてではなく、あくまで「生きている」動物番組として作ってるのね。交尾や出産はもちろん、この恐竜はウンコもおしっこもするし(笑)。これもJPじゃできないなあ。SFXマニアの 私としては特撮のすごさも注目に値する。あー、恐竜が歩くとちゃんと水しぶきや砂ぼこりがたつ! これまたJPではCG恐竜が背景から浮き上がってたり、 人間の演技と合ってなかったりするところが目立ったのに。とにかくこんなものをテレビ用に作ってしまうBBCの底力に敬服。(2002年8月20日)

 というのが2002年時点での感想だったわけだが、それから5年たった今でも感動はまったく薄れていない。(CGアニメーションの世界で5年と言ったら、50年ぐらいに匹敵するのに)
 あれからいろいろな恐竜番組見たけれど、Walking with Dinosaurのあとでは何を見てもCGがヘボくてイライラするだけ。歩くと体が宙に浮いてるしさー、ぜんぜん重量が感じられないしさー、背景から浮き上がってるしさー。だいたい、どれを見ても、恐竜がぜんぜん生きた動物に見えないというのが痛い。
 もうひとつ、このシリーズがすごいと思うのは、CGの使い回しが1カットもないこと。普通テレビだと使い回しばっかりで、あれだけ金かけた『ジュラシック・パーク』だって、恐竜の登場シーンはほんの一部。なのにこれは出ずっぱりなのに、テレビでこれはやっぱり本当にすごい。

 それでもって、Walking with Dinosaurが恐竜時代、Walking with Prehistoric Beastsが恐竜以後、そしてこのWalking with Monstersが恐竜以前と、3部作でもって地球の生命全史を振り返ろうというわけですね。私はちょうど、リチャード・ドーキンスの『祖先の物語』、それに、リチャード・フォーティの『生命40億年全史』という、似たような趣旨の本を読んだばかりなので、あの生き物たちが動いているのを見れると思うとよけい興奮する。
 2005年3月6日に書いたように、Beastsは「哺乳類嫌い」という理由であまり感動しなかったのだが、逆の意味で、このMonstersには期待していた。なにしろ恐竜以前の動物ときたら、とんでもないやつばっかりで、それも化石の写真やイラストでしか見たことがない。それが動いてるのを見られるなんて!

 それで見始めて驚いた。なんと地球生命誕生から始まっちゃうんですか。それも小惑星の衝突が海を作ったとか、月を作ったとかって、それもう定説になってるんですか? おまけにその小惑星にはTheiaという名前も付いてるし。いやー、ここんとこ生物学に熱中してて、天文学とか地学にはさっぱり疎いんで知らなかった。すると、地球生命は宇宙から来たというのもほんと? (番組ではさすがにそこまでは言ってない) ほんとに科学はSFよりも奇なりだなー。

 で、とにかく登場する主な生き物は、

1.カンブリア紀(5億3000万年前) アロマノカリス(当時としては巨大な節足動物)と、ハイコウイクチス(原始的な魚)
2.シルル紀(4億7000万年前) ウミサソリ(巨大な海棲のサソリ)と、ケファラスピス(兜みたいな頭をした原始的な魚)
3.デヴォン紀(3億6000万年前) ハイネリア(巨大な淡水魚)と、ヒネルペトン(巨大な両生類)
4.石炭紀(3億年前) Mesothelae spinder(巨大なクモ。和名が見つからず)と、ペトロラコサウルス(トカゲのような小さな爬虫類)
5.初期ペルム紀(2億8千万年前) ディメトロドン(肉食の哺乳類型爬虫類)と、エダフォサウルス(背中に帆を背負った哺乳類型爬虫類)
6.後期ペルム紀(2億5千万年前) ゴルゴノプス(肉食の哺乳類型爬虫類)と、ディイクトドン(プレイリードッグみたいな小さな哺乳類型爬虫類)
7.三畳紀(2億4千万年前) テロケファルス(肉食の哺乳類型爬虫類)と、リストロサウルス(草食の哺乳類型爬虫類)と、ユーパルケリア(トカゲのような小さな爬虫類)

と、名前を書き連ねてるだけで興奮しますね。しない?  スティーヴン・ジェイ・グールドの『ワンダフル・ライフ』で有名になったバージェス生物が動いているのを見られるというだけでも興奮するけど、わりと地味なせいか、恐竜の影に隠れてめったに見られない哺乳類型爬虫類がこれだけたっぷり見られるのは興奮するじゃない。

 バージェス生物としては最大最強の補食動物アロマノカリス(と言っても60cmぐらいだけど、他がまだ数センチのサイズだったから)が主人公になるのはわかるんだけど、さすがにハルキゲニアやなんかは出てきませんね。あれがいったいどういう動きをしたのかはわからないからねえ。

 哺乳類型爬虫類(獣弓類)というのは、もちろん恐竜がらみで知ったんだけど、イラストを見たときは絶句した。なんて奇妙な生物なんだ! エダフォサウルスみたいな初期のやつは、確かに見るからに爬虫類でよく恐竜と間違えられるけど、しまいのほうになってくると、どう見ても哺乳類。キノドン類なんて、イラストで見るとまるで耳のない狼みたい。おまけに、毛皮で覆われてて、卵じゃなく子供を産んで、母乳で育てて、それでもなおかつ爬虫類なんだから頭がくらくらする。
 動いているのを見ると、その違いがよけいはっきりわかるね。つまり初期のやつは爬虫類そのもので、お腹を引きずってのたのたと歩くんだが、テロケファルスまで来ると、ほとんど直立して哺乳類みたいな跳躍する走り方ができるのだ。でもやっぱり爬虫類だからガニ股、ってところがまた変なんだけど。(生物が完全な直立歩行を獲得したのは恐竜と哺乳類が誕生してから)

 このリストを見てもわかるが、Walking with Dinosaurが完全な「動物ドキュメンタリー」として作られていたのに対して、これは進化についての教養番組にもなっている。つまりつねに食う者と食われる者が対になって出てきて、しかも食われる側の動物(右側のやつら。ユーパルケリアのみは恐竜のご先祖様として特別出演)が、我々の直接のご先祖様なわけ。それでも間一髪で恐ろしい捕食者から逃れたやつが、進化して次の段階に進むというわけ。
 その場面はモーフィングで数千万年の時間を短縮して見せ、進化の様子がよくわかるようになっている。これはおもしろいしすごく勉強になる。
 残念なのは、あくまで人類のご先祖様(とその天敵)に焦点を当てたので、三葉虫みたいな成功した種がすっぽり抜けちゃったこと。(人類とは類縁関係がないし、強力な肉食動物でもないから)
 とにかく、私も子供のころは、哺乳類型爬虫類も恐竜の一種なんだと思っていたが、大人になって、恐竜は人類とはまったく血のつながりがないのに、あの奇妙なエダフォサウルスやディメトロドンの血は私の中にも流れてるんだと知ったときは、ものすごい衝撃を受けた。その衝撃は今見ても同じ。

 しかしくやしいよなあ。どうして人間もかっこいいやつ(恐竜)のほうから進化しなかったんだろう。と言うのも、なまじ似ているだけに恐竜と哺乳類型爬虫類のかっこよさの違いは一目瞭然で、だから人間はこんなに不格好なのかと。肉食恐竜は言うに及ばず、巨大な竜脚類だってあんなに優雅で美しいのに、哺乳類型爬虫類ってやつは、どいつもこいつも見るからに不格好で不細工なんだよね(笑)。恐竜の子孫である鳥が、どれも優雅で美しいことを思うと、やはり血は争えないっていうか(笑)。
 そんなわけで、シリーズのラスト、ちっぽけなユーパルケリアが見る見る大きくなってアロサウルスに変わるシーンを見たときは感動で涙がこぼれそうになった。これで3部作がきれいに第1作につながったわけだし。

 そうそう、言い忘れたが、BBCのシリーズは音楽もすばらしいね。中でも私はWalking with Dinosaurのテーマ曲が大好き。このシリーズでも最後だけそのテーマが流れて恐竜時代の幕開けを告げる。あの金管のパララララ〜という響きを聞いただけで胸が高鳴るのだが、その響きに合わせて巨大なブラキオサウルスがそびえ立つあたりにはもう胸がいっぱいです。

 というところまで書いて今日は力尽きたので続きはまた。

 このページのいちばん上に戻る

inserted by FC2 system