2007年5月の日記

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2007年5月7日 月曜日

鳥のはなし

 西葛西は野鳥の楽園である。が、なんでそういうことになるんだか、さっぱりわからない。私の住んでいるあたりはマンション地区、それも完全な商業地区で、人が多くて騒がしいし、地面なんか街路樹の根本とプランターにしかないような所なのに。
 とにかく、春になると鳥がうるさくてかなわない。以前、うちに泊まった友達が、「鳥の声がうるさくて早く目が覚めてしまった」と言っていたが、確かに、鳥たちの「夜明けのコーラス」(オスが縄張り主張のために歌うのだが、まだ空気が冷たく澄んでいて、周囲も静かな早朝がいちばん声が遠くまで届くので、夜明けに一斉に鳴き出すのだ)はうるさいが、私は慣れてしまったのでそれで目が覚めるということはない。でも春になると、さすがに鳥があっちこっちで鳴く声が耳に付くようになる。目をつぶっていると、いろんな声が交錯して、まるでジャングルにいるようだ。
 驚くべきは、ここで鳥というのは、東京でいちばんありふれた(少なくとも私が住んだことのある山の手では)スズメやカラスやハトではないのだ。そういう鳥は、町を歩いていると声は聞こえるが、駅や公園に群れているハト以外はほとんど姿は見ない。うちに来るのはみんな、いわゆる野鳥のたぐい。ほとんどがここへ引っ越してきて初めて見る鳥だ。私は千葉にも住んでいたことがあって、あっちは東京にくらべるとはるかに自然が残っていたし、庭に餌を置いていたのでよく野鳥がやってきたが、それよりもはるかに種類が豊富。
 まあ、考えてみれば葛西臨海公園はバード・ウォッチングの名所なので、それほど驚くことはないか。でも、公園まではずいぶん距離があるし、あそこは海鳥が主でしょ? べつに餌があるわけでも巣があるわけでもない、こんなところまで飛んでくるとは考えにくい。だって鳥の餌になるような虫なんてほとんどいないし、巣も見あたらないし。(少なくともうちにはない。マンションというのは隣も見えないから、どこかにあるのかもしれないけど)
 とりあえず、うちでは双眼鏡なんかなしでバード・ウォッチングができるんです。なにしろ今これを書いている椅子からほんの1メートル先のベランダに鳥が来て、歌っているのを観察できるんだから。窓が閉まっていれば、家の中で人が動いたり音を出したりしても気にしないし、窓が開いていても、こちらが動かなければ気にしない。さすがに窓を開けて顔を突き出すと逃げていくけど。
 こうなると、名前がわからないのがくやしい。今度野鳥図鑑を買おう。ツバメ、ヒヨドリ、セキレイ、オナガぐらいはわかるけど、あの真っ黒ですらっとした鳥はなんだろう? ここ数日は姿は見えないが、近くでウグイスが鳴いている。ウグイスですよ! 間違いない。だって一日中はっきり「ホーホケキョ」って鳴いてるもん。ウグイスなんて山里でしか見られないと思っていた。しかし、ウグイスの歌は遠くで聞こえるぶんには風情があるが、近くで大声で鳴かれるとかなりうるさい(笑)。
 なにしろみんな耳元で力一杯歌ってくれますからね。このマンションは私が買ったんだけどな、なんて言っても、鳥さんたちはまったく耳を貸さずに、ここは俺の場所だと主張してくれるわけです。夜明けならまだいいけど、朝は3時頃から鳴き始めるし、この間は深夜にも鳴いていた。
 餌がなくてもこれだから、ベランダに餌台でも置いたら、それこそわんさとやってくるに違いない。そうしたいけどできないの。鳥のフンはマンションのコンクリートや鉄製の部分を腐食させるから。今も毎日ベランダを掃除しなくちゃならない。

 ちなみに鳥は大好きです。自分でも飼ってたし、恐竜の子孫というだけでもひいきしているし。飼ったことのない人は意外と知らないようだが、鳥はかわいいよ。ヒナのうちから餌をやって育てると、少なくとも猫並みに人になつくし。どこにでもついてきて、なでてほしがったりね。
 鳥がかわいいと思うのは、求愛ダンスを見せてくれるから。つがいで飼って発情期になると、歌いながら真剣な表情でピョコピョコ踊るのがとにかくおかしくてかわいい。求愛に関しては、臭いおしっこを振りまく猫よりずっと文化的だ。一生懸命卵を抱いたり、ヒナを育てる様子も愛らしいし、ヒナそのもののかわいらしさもたまらない。

 しかし、都会をすみかにする野鳥はそれほどめずらしくないらしい。都会のビル街にワシやハヤブサなどの猛禽類が住み着いているというのは、私は見たことがないが納得がいく。高いビルは彼らの本来の生息地である山や崖に似ているし、ハトとかスズメとかネズミとか餌になる動物もたくさんいるからね。うちにも来るといいな。そしたら本気で餌付けして馴らすのに。

 海鳥はうちには来ないが、近くの動物園へ行くと見られる。いや、飼ってるんじゃなく野生なの。ここでは以前書いたように、オタリア(アシカの一種)の餌やりをショーみたいにして見せているのだが、こないだ見に行ったら、飼育係が投げてやる魚を、横で真っ白なサギがねらっている。でもそんなに広い池じゃないので、魚が人の手を離れてオタリアの口に入るまではほんの一瞬、その一瞬に飛んできて、空中で魚をさらっていくのだ。
 オタリアはなにしろ巨大なので、サギぐらいパクりと一呑みにできそうなのに(実際にペンギンぐらいは食べるらしい)、その口元から魚をさらっていくとはいい度胸だ。おかげでどっちかというとオタリアのショーというより、サギのショーになってしまっていて、サギがうまく魚をキャッチすると歓声が上がる。
 ところが、別の日に行ったら、今度はペンギンの餌の時間にペンギン用の魚を狙っている。どうやら、このサギは動物園の住み込みらしい(笑)。確かに野生動物にとっては天国かも。

2007年5月9日 水曜日

天国の情景

映画 『フラットライナーズ』

 以前、ここでほめたコニー・ウィリスの小説『航路』。この映画はあれとよく似た話のようなので(逆か)、なんとなく気になって借りてみた。というより、この映画のことは公開時から知ってたが、見るからにつまんなさそうなので見る気がしなかったのに、『航路』を読んだせいで気になりだしたというのが正しい。
 で、見てやっぱり失望した。なにしろあの世とも臨死体験ともなんの関係もない、ただのホラーなんだもん。単に臨死体験が罪の意識を刺激して幻覚を見るようになるというだけで。そもそも、人の命を救うために自分の命を危険にさらすまじめな研究者だった『航路』の主人公にくらべ、こっちは単に有名になりたいだけのバカな医学生の無謀な実験というだけ。20分以上も心停止してもピンピンしている(『航路』には5分で脳死に至るって書いてあったぞ)というふうに、科学的にもでたらめだし。
 私はもとより臨死体験なんか信じてはいないが、それにしてもこんなんだったら死ぬのは絶対いやだと思った。

 で、今日のお題目はこの映画じゃないの。映画があんまりひどかったものだから、また『航路』を読み返していたら、もし天国が本当にあるとしたらどんなものだろう?と考え始めてしまった。まあ、だいたいの宗教が提供する天国のイメージというのは、私には退屈きわまりないか拷問に等しいもので、ちっとも行きたいようなところじゃないから、私ならどんな天国に行きたいだろうかとか考えてた。やっぱり天国というのは人それぞれであってほしいよね。
 で、そんなことを考えながら寝たら夢を見た。実は、現実生活で落ち込んだり追い詰められていると、私はすごく楽しい夢を見る。それって明らかに現実逃避で、精神を正常に保とうとする自衛本能なんだと思うけど。まあ、私が落ち込むというのはもっぱら仕事と金銭の問題で、商売で損したとか、いやなお客に会ったとか、学生がバカでやってらんねーよとか、その程度のことですけどね。
 でも最近はけっこうへこむことばっかりで、おまけに急に暑くなったせいか体も弱っていて、今日は1時間ほど時間があったので、少しでも寝ようと思って横になったら夢を見た。こういうあわただしく浅い眠りの中で見る夢は、決まって異常に鮮明でリアルなものになると決まっているが、これもそうだった。

 夢の中で、私はなぜか1匹の子猫と、見知らぬ若い男といっしょに暮らしている。猫のことは文字通り猫かわいがりしていて、どこに行くにもいっしょだし、夜はしっかり胸に抱いて寝ているのだが、男はけっこういい男であるにもかかわらず、生意気で高慢そうなやつなので、最初は嫌って意地悪したりしていた。でも、男が私の子猫に夢中になってしまい、「かわいいかわいい」と言い出し、結局猫が取り持つ縁で、むふふな関係になってしまう。
 いちばんはっきり覚えているラストシーンはこういうものだ。私は自分のマンションで、自分のベッドに、現実と同じようにだらしなく横になり、猫が餌を食べるのを見ている。すると、猫が皿をひっくり返して餌をばらまいてしまったので、「ああー! そんなに汚して!」と叫ぶと、男が、「だいじょぶだいじょぶ。ぼくが掃除するから」と言って、買ったばかりの高性能掃除機(これも現実のもの)で掃除を始める。
 ほっとして窓の外を見ると、ベッドの横は天井から床までの大きな窓なのだが、外は現実とは似ても似つかない、山に囲まれた大きな湖である。その景色が夕日に照らされて、ありえないような鮮やかなオレンジ色に染まっている。なんかよく絵で見る「太古の地球」とか、むしろ地球上ではない、異星の風景のようだ。そして湖面には長い首を持った巨大な動物が百頭ぐらい群れている。私はそれを見ながら、「ほら見て! ネッシーたちが帰ってきたわ」と言うところで、目覚ましが鳴っておしまい。

 起きてからあきれた。すると私の理想の天国というのは、猫がいて、掃除をしてくれるきれいな若い男がいて、恐竜(首長竜は恐竜じゃないが、あれだけたくさんいるところを見ると、どこかに恐竜もいそうだ)がいればいいのか?(笑) うーん、確かにそうかもしれない(笑)。

 というのは冗談として、実は「天国というものがあるとすれば、これこそ天国に違いない」という夢も見たことがある。見たのはずっと昔、まだ十代のころだが、あまりに強烈な印象を残す夢だったので、今でもはっきり覚えている。
 その夢はストーリーらしきものはなく、見渡す限りの湿原を馬で駆けていくだけのものだ。湿原といっても水は見えない。水面はすべて、小さい白い花にびっしりとおおわれているからだ。水の深さはせいぜい20〜30センチ。それがあらゆる方向に、地平線というか、水平線まで、どこまでもどこまでも続いている。水があることがわかるのは、馬が水を蹴立てて走っていくと、細かい水滴と花びらが舞い上がるからだ。その飛び散る水滴の1粒1粒がダイヤモンドのようにキラキラと銀色に光って、なんともいえず美しい。それといっしょに宙を舞う花びらも桜吹雪のように美しい。
 見回すと、私はひとりではない。同じように馬に乗った美しい人々が、彗星の尾のように光る水と花びらをまき散らしながら、みんな一直線に同じ方向に向かって走っている。
 これも大変美しい光景だが、でもこの夢で重要なのは、景色の美しさではなく、その時の私の気持ち。なんというか、ほとんど宗教的法悦に近い状態で、幸福の絶頂という感じなのだ。何がそんなにうれしいのかわからないが、とにかくうれしくてうれしくて、永遠にこうしていたいと思うような感じだった。
 あまりに印象的だったので、この場面がラストシーンになるような小説(若気の至りでしたが)まで書き上げてしまったぐらいだ。

 願わくは、私が死んだとき、またあそこに戻れますように。(できたらそのどこかに猫と恐竜もいてくれるともっとうれしい)

 なんか今日は言うこと変ですか? けっこうヤバいかな、これは?

2007年5月17日 木曜日

ゲームの話

 あいかわらず落ち込んでいる。どうも商売のほうが御難続きで。私が悪いわけじゃないんだけど、なんか間の悪いことばかり起きるときってあるんだよね。
 それで、落ち込むと必ず、「なんの役にも立たない、どうでもいいようなこと」がやりたくなる。私の場合はたいていはゲームだ(笑)。ゲームと言えば、この数年、ずーっとシムピープルにはまっているが、それもそろそろ飽きてきた。それでふと「RPGがやりたい」と思ってしまった。あー、なんか無性にモンスターをバンバン虐殺して、意味もなくアイテム集めやレベルアップがやりたくなったよ。

 RPGに関しては、私はもうマスターと呼んでくださいってぐらいで、なにしろパソコン・ゲーム黎明期からのプレイヤーですからね。最初にやったのはもちろんテキスト・オンリーのゲームだったが、Rogueとの出会いは衝撃的だった。どういうのかというと、ドットだけのダンジョンを、@の主人公(主人公はアットマークで示されるだけなのだ)が駆けめぐって、FとかGとかのモンスター(モンスターもイニシャルの文字だけで表されるのだ)を倒すRPG。ところがこれがハマってハマって、それが運の尽き。その後、かのWizardry(もちろん初代)と出合って、決定的になったわけだ。
 テキストだけでグラフィックを描いていたRogueにくらべて、疑似3D(笑)(嘘。ほんとは真っ黒な画面にワイヤフレームでダンジョンが描かれるだけ)なのもすごいと思ったが、それ以上に感動したのは、これが無限に遊べるゲームだってこと。コンプリート後、これだけ長く遊んだゲームも他にない。
 その私がRPGに飽きてしまったのは、WizardryもUltimaもバージョンを重ねるごとにつまらなくなってきたと感じたのと、それら洋ゲーに遅れてブームがやってきた国産RPGがどれもこれも、死ぬほどつまらいと思ったから。なにしろ、自由で大人向けの洋ゲーに慣れていた私には、あまりにも幼稚で簡単すぎて、おまけになんの自由もなくてつまらないと思った。だって、いろんなクエストをやらなくちゃ先に進めなくて、そのクエストをやっているだけでレベルが上がって、自動的にエンディングに導かれるだけの一本道だったんだもん。むしろ日本のRPGの売りは華麗なグラフィックだったが、グラフィックなんかなくてもあれだけハマるってのはRogueが証明したし。

 しかし、いくらなんでもこれだけ年月がたてば、日本の、だけじゃなく、世界のRPGもずいぶん進化しただろう。それでちょっと見てやろうと思った。
 さっそくネットで検索かけると、やはり今の主流はMMORPG(マルチ・プレイヤーのオンラインRPG)ですね。そうかー、最近パソコン用のパッケージ・ゲームがはやらないのも、みんなこっちに流れたからなんだろうなあ。でもこれだけはやってるってことは、もしかしておもしろいのかなあ?
 オンラインゲームは私にはなんとなく鬼門で、今までやったことがない。シムズ・オンライン(シムピープルのオンライン版)ですらやってないぐらいで。だって、ゲームの中で知らない人と会ってチャットしたりするのなんて、めんどくさいだけじゃない。現実世界でだってそんなの楽しくない(共通の話題がないから天気の話とかして、必死で間を埋めたり)のに、ゲームだから楽しいとも思えない。
 でも食わず嫌いはいけないと思って、いくつか有名なゲームサイトをのぞいてみた。うーむ、確かにおもしろいのかもしれないけど、一度買えば一生遊べる(嘘だけど)パッケージと違って、毎月1500円もの課金は私には痛すぎる。でも、けっこう無料のもあって、出来映えは有料とそんなに変わらないみたいだな。
 見ていてからくりがわかった。そういう無料サイトは、基本プレイは無料だが、アイテム課金制と言って、特別効果が大きいスペシャル・アイテムはお金で買うようになっているのだ。えー! これって陰険な制度じゃない? だって、それだと結局めちゃくちゃ強くなるのはお金持ちだけで、金持ちが貧乏人を虐殺してまわるという、いやーな世界が出現しそうだ。そんな世界に住みたくない! だったらみんな平等な有料ゲームのほうがまだましだ。
 それに考えてみたら、オンラインRPGの最大の売りといえば、対人プレイができることでしょう? 確かにコンピュータがあやつるモンスターはバカだから、相手が人間のほうがスリルがあるに決まっているが、いくら仮想上とはいえ、人を殺すのは気色が悪すぎる。相手がパソコンだからいくら殺しても平気なわけで。

 それで今度は1人プレイができるオンラインRPGを探し回る。ないことはないが、やっぱり主流じゃないせいか、見るからにヘボそうなのばっかりだな。でもやっと見つけたのはMurlocというフラッシュ・ゲーム。これはすごい!と思った。とてもフラッシュとは思えないきれいな凝ったグラフィック。どう見ても化け物の、爬虫類みたいな主人公も気に入ったし、世界もちゃんとできてるし、ゲーム・バランスもいいし、もっぱらひらがなでしゃべる白痴みたいな国産RPGの主人公(昔のイメージで書いてます)と違って、NPCとの会話も気が利いていておもしろい。
 ところが、ひとつのクエストを終了して、新しいフィールドに移ったとたんに、ゲームが終わってしまった。えー、未完かよ! なんか壮大な話になりそうだったのに、さらわれた王女とかはどうなったんだ! どうやらここまで作って作者が力尽きたらしい(笑)。
 でも、フラッシュでこれだけできるなら、と思って、今度は国産に挑戦。「ねおきでクエスト」というやはりフラッシュ・ゲーム。フラッシュだと軽いし、ダウンロードとかインストールとか面倒なことをしないですむからいいんだよね。Murlocに較べると圧倒的にグラフィックはヘボいが、でもけっこう遊べる。だけど、簡単すぎ! ほんの2、3日で終わってしまい、コンプリート後はほとんどやることがない。

 そこで今度は、やっぱりこういう単純なゲームはだめだ、面倒でも重くても、一度本格的なMMORPGをやってみようと思い立ち、どうやらこの世界では世界をリードしているらしい韓国産の「グラナドエスパダ」というのに挑戦。するつもりだったのだが、会員登録まではしたのだが、マニュアル読んだだけで挫折した。めんどくさすぎ! ただでさえ忙しいのに、こんな面倒くさいことしてられるか!
 いや、実際にゲームに入れば、どんな複雑なシステムも覚えちゃうし、それなりにハマるのはわかっているのだが、私は脳の容量が少ないので、そういう無駄な知識が増えれば増えるほど、かんじんの仕事がおろそかになるのだ。とてもじゃないが、今はこんなことやってられない。やっぱりフラッシュぐらいがちょうどいいや。

 それで行き着いたのが、「ゲームばっかりやってなんかいられない人のための画期的なシステム」を使ったフラッシュRPG、Dragon Warcry。少しでも頭を使いたくないので(笑)、国産ゲームだ。
 で、やってみたらこれはおもしろい。私の目標である宝探しがメインになっているのも気に入ったし、アニメキャラ(これが洋ゲーでもアジアでも最近はけっこう多い)も出てこないし。が、しかし、問題となったのはその画期的なシステムなのだ。MVPシステムといって、どうやらサーバに負担をかけないための仕組みらしいのだが、プレイヤーが行動できる回数に制限があり、長時間はプレイができないようになっているのだ。MVPを使い切ってしまえば、しばらくオフラインでいないと続きができないわけ。
 それはそれで私にはありがたいともいえるのだが、このMVP、20分に1ポイントしか回復しないのだ。つまり、1時間に3回の戦闘しかできないわけ。しかも裏技もなし。RPGをやるときは狂ったように戦闘に明け暮れ、狂ったようにレベルアップするというのが私のやり方なのに、これじゃレベル最大値、すべてのスキルはMAXにして、すべてのアイテムを集めるという私の目標までは永遠に時間がかかる! おまけに雑魚敵との戦いでもMVPを消費するので、ひたすら雑魚から逃げ回るという情けない事態に。これじゃモンスター殺しまくりの楽しみもない!
 これさえなきゃおもしろいゲームなんですけどね。これじゃかえってストレスたまるわ。とりあえず、やめるつもりはないが、この欲求不満はミニゲームでもやりつつ解消するしかないな。

2007年5月22日 火曜日

はしかで大学が休校

 というわけで、昨日も日大で芸術学部も休校と聞いて、私はそういうの少しも引っかからないなーと思っていたが、帰ってみたら、早稲田から休校のメールが届いていた。「やったー!」と言いたいところだが、そうでもなくて、自宅待機で給料もらえるほど大学も甘くはないのだ。そのぶんの代替授業がどうなるのかが心配。夏休み2週間削って授業するなんてなったらやだなあ。私としては、やなものは一気に片づけてしまったほうが楽なので、むしろ夏休みも冬休みも日曜もなく、半年ですべての授業が終わるといいのに、なんて考えている。それだと、チケットが安いときに海外にも行けるし。

 早稲田からはそのあともまたメールが届き、それからファックス、それから今度は速達が届いて、大騒動みたいだ。私は次は電報が届くのを楽しみに待っていたのだが、さすがにそこまではやらなかった(笑)。
 しかしこれ、全学生に送ってるのかしら? だとしたら早稲田みたいなマンモス大学では大変なことだ。教員なんかはどうせみんな免疫があるので、知らずに行ってもたいしたことはないが、いちばん来ては困るのは学生だからね。

 しかし、今の若い人ははしかにかかったことがないというのは知らなかった。私なんか、とりわけ幼児期は病弱だったので、はしかも、おたふく風邪も、水ぼうそうもクラスで真っ先にかかったし、小児結核までやったぞ。でも、そのおかげで今はそういう病気にかかる心配がないんだから皮肉だ。
 確かに今の人は無菌培養で育ってるからなあ。今のお母さんたちは、スーパーで買い物するにも、健康食品だとか、無農薬だとか、無添加だとか、無着色だとか、賞味期限だとか、私に言わせりゃ、なーにそれ?って感じ。

 なにしろ生まれたときから、(今なら禁止されているような)農薬たっぷりかぶった野菜食べて、果汁なんか1滴も入ってない、(今なら禁止されているような)着色料や人工甘味料だけでできた「ジュース」をガブガブ飲んで育ってますからね。賞味期限なんか、母がクンクンと匂いをかいで、「まだ大丈夫」と判断すれば平気で食べていた。(ときどきその判断が外れておなかをこわした) おかげで、今でもスーパーで売れ残りを買いあさって、「肉も果物も腐りかけぐらいがいちばんうまいんだ」と称している。
 だいたい、私の子供時代とは吸ってる空気からしてぜんぜん違う。今の東京の空気は、昔から見ると信じられないほどきれいになった。うちのあたりでも、まるで高原のようなすがすがしさだと感じるぐらい。昔は(場所にもよるが、特に幹線道路沿いや工業地帯は)、晴れた昼間でも空がどんよりとどす黒い灰色に見えたぐらい、大気汚染が深刻だったもん。おまけにアスベストもたっぷり摂取したし。
 水だって、今のほうが技術が進んだから、ずっと不純物も少ないし、無菌に近いんだろうな。なのに今は、水は買うもの、水道水は絶対飲まないという家もあるようだし。
 これだけ大量のバイ菌や発癌物質を摂取しながら生きてきて、まだ(いちおう)生きてるというだけでも立派なものだと思う。つまり、衛生とか健康に関する観念が相当今とは違ったというわけだが、ならば昔のほうが病気は多かったかというと疑問。確かに新薬とか、新しい外科医療技術とかの登場前は、それで命を落とす人も多かっただろうが、一般的に言って、やっぱり昔の子のほうが強かったと思う。だいたい、そんなふうに健康に気を付けているわりには、子供のアレルギーとかぜんそくは絶対増えているじゃない。私なんか、それこそ花粉症なんて言葉がなかった時代から花粉症だが、誰に言ってもわかってもらえなかったもん。
 というか、子供をあんまり無菌培養で育てるのってかえって心配。この人たち、ちゃんと生きのびられるのかしら?と思うこともよくある。
 もっとも、毒入り医薬品やペットフードを平気で海外に輸出する中国みたいなのはどうかと思いますがね(笑)。そういや、中国のスモッグが日本にも及んでいるそうで、やっぱり多少はたくましくないと生きていけないよ。

2007年5月23日 水曜日

またゲームの話

 というわけで(5月17日参照)、まだドラゴンウォークライをやっている。とにかく1日にプレイできる時間がちょびっとだから、ちっとも強くならないし先に進まないが、自分でプレイしたり、いろいろなフォーラムとかを見ているうちに、オンラインRPGの特徴というのがわかってきた。(もっとも、小規模なフラッシュ・ゲームだし、本物とは違うだろうが、基本的な発想は同じみたいなので)
 私が知っていたRPGというのは、とにかく最初は弱くて、何をやってもバタバタ死ぬ。でも、そうするうちにレベルが上がったり、いい装備を手に入れるたびに嘘のように楽になって、あとは無敵状態まで育て上げるのが楽しいという感じのものだった。
 ところがこのゲームは最初はすごく楽。相手を選んで戦ってれば、めったに死なないし、デス・ペナルティ(殺されたときの代償)もほとんどないに等しい。(死んだのではなく戦闘不能に陥っただけということになっているらしい) このデス・ペナルティが軽いというのが、私の気に入らないことのひとつ。デス・ペナルティの重さといえばやっぱりWizardryで、なにしろ苦労してためた経験値が半滅、おまけに生き返らせるには莫大な金が必要というので、あれは絶対死ねないゲームだった。だからこそ、1戦ごとに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされる緊迫感があるんだし、死んだときのくやしさや、生きのびたときの安堵感の大きさがすごかった。ゆえにキャラクターに対する感情移入も大きいのだが、「死に放題」ゲームでは、戦闘になんの緊張感もないし、キャラにも愛着が持てないと思うのだが。
 レベルに応じて、行けるところが制限されているし、レベルに見合ったモンスターしか出てこないので、必死の思いで大物を倒す快感もない。やっぱり大勢が参加するゲームだけに、初心者フレンドリーに作ってあるのかな。

 でもフレンドリーでないと思ったのは、レベルアップしたり武器を持ち替えても、目に見えるほどの恩恵がないこと。こんなふうに行き詰まったときは、たいていいろいろ策略を練って、裏技も駆使して、巧妙に経験値や金を稼ぐ方法を考えたものだが、そういう抜け道もないのだ。あー、これじゃ無敵レベルまでは遠い道のりだよ。Wizardryのどれだったか、1匹倒すだけで何十万って経験値がもらえて、一気に何十レベルもアップするようなカモなんかいないし、もちろんゲームを解析してプログラムをいじることもできないし、リセット=再ロードでこまめに得をするような方法も禁じられている。
 でも理由はわかるのだ。オンラインと言うことは、対人戦もあるわけで、もしそういう裏技が許されてたら、ぜんぜん勝負にならなくなってしまう。だから、全員が平等に苦労するように作られてるんだろうな。わがまま放題ができる1人プレイに慣れていた私はこれもけっこうつらい。

 もうひとつ気になること。ドラゴンウォークライはパーティも組めないので、本物のマルチプレイヤー・ゲームとは言えないのだが、それを補うためか、いやでも他人と交易しないと先に進めないようになっている。クエストをこなすにも、新しい武器を調達するにも「材料」がいるのだが、そのすべてをモンスターが落としてくれるわけではなく、職業によって作れるものや手に入れられるものが決まっているのだ。だから、自分じゃ取れないものは人に譲ってもらうしかないわけ。転職もあるので、ずっと1人でやっていても、いつかはできるようになるのだが、このペースでは気が遠くなるほど先のことだ。
 それでそういう交易のために、フリーマーケットとか、オークションとか、店をやって、トレードや売買をすることになっている。普通の人にはこれがむしろゲーム以上の楽しみなのだろうが、私には苦痛。だって、これって私が実生活で生活のためにやっていることと同じじゃん(笑)。本物の店の経営だけで頭から湯気が出そうなのに、お店屋さんごっこで遊ぶ余力はないっす。
 しかもこのゲーム、フリマと言っても、その場で売買ができるわけではなく、もっぱら掲示板と「郵便」を使って、金や品物のやりとりをする。これだと、お金を送ったけど、ちゃんと品物が届くかどうかという、実生活と同じ不安とイライラを味わわされる。これがあるから私、オークションや通販って嫌いなんだけど。(それが商売だからやってるけど、自分では絶対買わない。基本的に自分以外の商人を信用してないから) それでもやむをえず、ぽちぽち買ってるが、ゲームの中でまで店開く気はしないなあ。それに実生活では、いやしくもプロのはしくれだし、経験だけは長いから、ヤフオクの素人さんたちよりは、あらゆる面でレベルが上というプライドがあるが、ゲームの世界ではこっちのほうが駆け出しの初心者なのもイラつく!(笑)

 とまあ、文句を言いながらも、よくできたゲームだと思いますけどね。特にこれを個人が作って個人で運営しているというのは驚きだ。

 それで、ドラゴンウォークライをできない間は、暇つぶしに(つぶすほどの暇ないんだけど、昨日は休みだったし)、やはりフラッシュのミニゲームをやっている。それで発見したのはアドベンチャー・ゲームのおもしろさ。
 アドベンチャーも鬼門だったんですよ、私には。というのも、評判につられていくつかやってみたけど(Mystとか)、ぜんぜんわからなくて、たいてい最初の部屋から一歩も出られないまま終わったから(笑)。今と違って、攻略本もほとんど出てなかったし、インターネットもなかったからね。
 でも大枚はたいて買ったゲームが部屋から出られず終わるんでは頭に来るけど、無料のオンライン・ゲームならいいかと思って、ためしにやってみたところ、おもしろい! いや、もちろんゴミもたくさんあるけれど、おもしろいやつは本当におもしろい。とか言って、私はやっぱりほとんどできなくて、もっぱら攻略のお世話になってるんだけど、攻略読みながらやってもおもしろいゲームはおもしろいんだな。
 せっかくだから私が見つけたおすすめゲームも書いておこう。

 Amanita Designというところの、Samorostというゲーム。(Flash Gamesというところにあります。2もあるよ) これはもうゲームというよりアートって感じで、この絵を見ているだけで感動。チェコのサイトだが、確かにチェコ・アニメを思わせる不思議世界。しかもゲームとしても非常に完成度が高い。(よって私は攻略見ないとわからない) Polyphonic Spreeのプロモ・ビデオならぬプロモ・ゲームも作ってるんだな。Polyphonic Spreeは大嫌いだが、これも絵は美しい。

 こちらは日本で、EyezmazelのGrowというシリーズ。これはアドベンチャーというよりパズルゲームに近いが、とにかく絵がかわいい! 私は人がかわいいというものをめったにかわいいと思えないのだが、トンティーかわいい! それに発想的にもよくこういうゲームを考えついたなと感心する。おすすめはGrow RPG。

 もっと正統派のアドベンチャーとしてはFasco-csというところが作っている、色の名前が付いた部屋のシリーズ。部屋から脱出するだけの単純なゲームだし、稚拙っぽい絵のせいで簡単そうに見えるが、謎解きは実に凝っている。

 ストーリーについ泣かされたGateway2。途中でパズルがあったりして、難易度はかなり高いが、理にかなっているので私でもけっこうすいすい進めた。でも英語がわからないとたぶんストーリーわからないかも。そう思ったのでここの掲示板に私がネタバレ書いてます。

 いずれも人気ゲームなので、タイトルに続けて日本語なら「攻略」、英語なら「walkthrough」でググれば、攻略法はたくさん見つかりますよ。

2007年5月26日 土曜日

靴のはなし

 「着られるものがない!」という悩みは、生まれついての規格外体型だから、もう悩む気力もなくなってしまったが、実はそれ以上に問題が多いのは靴である。
 当然ながら大柄なので足もでかい。それも全体が大きいならまだしも、足も(日本人としては)異常な形らしい。私はすべてが細長いのだが、足も細長いんですよね。特に足の指が長く、それでよけいサイズがでかくなる。それと、足の親指がいちばん長くて突出しているのも、めったにない形らしい。おまけに甲高。長さは足りても、たいてい甲が当たって痛くてしょうがない。
 それに加えて、膝を痛めてからは革靴が履けなくなってしまった。いや、革はいいんだけど、底の堅い靴という意味。あれだと歩くたびに膝にビーンと響いて痛いのなんの。
 しかし、ここ数年は靴に関しては、開き直ったせいで悩むことはなかった。いつでもどこでも、スーツ姿でもスニーカー。ゴム底だからやわらかいし、おまけにスニーカーはクッションがいいので、膝も痛くない。メンズを履いてるからサイズはいくらでもあるし、ひもで甲の高さを調節も可能。長時間歩いても疲れない。不細工なウォーキングシューズとくらべて(まあそれなりに)かっこいい。
 とにかく靴には苦労し通しで、若いころは靴というのはすべて痛いものとして、ひたすら堪え忍んできたあとだけに、この開放感は筆舌に尽くしがたかった。

 でも、さすがに自分でもいやになってきて、たまにはちゃんとしたパンプスを履きたくなり、靴箱から埃を払って古い靴を取り出したところ‥‥入らない! どういうことだ? 3サイズが「成長」したのはやむをえないとして、足まで大きくなったのか? べつに足には贅肉なんか付いてないのに。
 どうやら、足というのはあまり甘やかすとふやけて膨張するみたいですね。ほんとに何年もきつい靴なんて履いてなかったもんなー。
 しかし、これは困る。いくらなんでもスニーカーでは行けない場所(お葬式とか。そういうときはパンプスを袋に入れて持っていって、その場で履き替えていた)へ行くとき用に、少なくとも1足は履ける革靴がなくちゃ。ところがこれがないんだ。
 ちなみに、私のサイズはずっと24.5cmだったのだが、年取ったらそれが履けなくなって、今持ってる靴はすべて25cm。それがダメってことは、26cmかよ。ちょっとー!
 ご存じの通り、日本の普通の靴屋ではサイズは24.5までしか置いてない。(日本在住の外人はみんな嘆いている) デパートなどには大きいサイズのコーナーがあるが、選べるほどの種類もないし25cmまでしかない。新宿に25cm以上の婦人靴専門店もあるが(バレーボール選手などが利用しているらしい。私はそれほどでかくないのに)、そこはすべてオリジナル・デザインなので、やっぱり好みに合わない。

 さらにそれに追い打ちをかけたのはサンダル。日本の夏にスニーカーなんか履いたら足が蒸れて腐ってしまう。そこで夏は素足にスポーツサンダルを愛用していたのだが、それが見つからないのだ。いや、中国製の安物とかは近所の靴屋にも売ってるが、ついこないだまではスポーツ・メーカーがけっこうおしゃれなスポーツサンダルを作ってくれていたのに、そういうのが(レディースでは)見つからない。スニーカーはメンズでも平気だが、いくらなんでも男物のサンダルはごっつくて不格好だし。安物はクッションが悪くて(これはスニーカーも同じ。これだけはすべてブランドものを買っている)、足が痛いし、だいたい作りが雑なので擦れて痛くて素足では履けない。
 ひえー、困った! これじゃ今年の夏は履いていくものがない! 私は長時間ドカドカ歩くので、スニーカーも1年で履きつぶすんだよね。
 そこで決死の思いで、近所のデパートや靴屋を渡り歩き、履ける靴を探した。そこで知ったのだが、靴にもやっぱりおばさん用ってあるんですね。さっきも書いたように、靴のサイズなんて一生変わらないと思っていたから、これは意外だった。つまり、ウォーキングシューズとか健康シューズとか言って売ってるのがそう。
 私が求める靴を説明すると、たいていすすめられるのがこれなのだが、やはり世間一般のおばさんの基準からは大幅に逸脱している私にはまったく合わない。だいたい24.5までしかないし、私の足は細長いのに、こういうのは丸くてずんぐりむっくりしているのだ。だいたいかっこわるいし!
 というわけで、結果は予想通り、ほぼ全敗だったのだが、もう泣きたくなったところで出合ったのが、クロワッサンのサンダル。サイズがSMLで大ざっぱだから、絶対無理だと思って試着したのだが、これがぴったりな上、底はゴムで、クッションが効いてふわふわ。おまけにストラップの肌に当たる部分にはスポンジのような素材を使っているという念の入れ方で、これなら素足に履いても絶対痛くない。さらに、スポーツサンダルは元がスニーカーなので、レディースでもやっぱりでかくてごついが、それよりは小さくて格好いい。値段も5000円と、スポーツサンダルより安いし、これは当たり!
 惜しむらくはヒールが低いことだけか。これでもっとヒールが高いといいのにね。特に膝が痛いと実感するのだが、歩くときはヒールはあったほうが歩きやすい。このシリーズでパンプスもないかと検索したが、サンダル以外はレインシューズだけみたい。残念。まあ、東京なら1年中サンダルで十分ですけどね。やっぱり見た目がね。

2007年5月28日 月曜日

美容院へ行った

 って、わざわざ日記に書くほどのことかって思うでしょうけど、それは普通の人の場合。私の場合、これは一大事件なのだ。というのも、私はもう少なくとも10年は美容院というものに足を踏み入れたことのない人だから!

 と言うと、ものすごい変人か、ものすごい貧乏人みたいに思われそうなので、もちろん人には話したことはない。でもどっちも事実か(笑)。実際、今は本当に貧乏なので、美容院代なんて出せないというのも確かだが、まだちゃんとフルタイムで働いていたころからそうなのである。その当時も貧乏だったのは確かだが、ヘアカット代ぐらい払えないほどじゃなかったのに。
 理由はですねえ。美容院へ行くと、必ず絶対に気に入らない髪型にされちゃうから(笑)。だから、美容院から帰るといつも、すぐに頭を洗って、せっかくセットしてもらった髪をぐしゃぐしゃにして自分流にアレンジし直していた。
 それは美容師が下手なだけだろうって? でも、どこでカットしてもそうなんですよ。これまでの一生で、気に入る髪型になったことなんて一度か二度ぐらいだな。
 理由のひとつは、毎度の話だが、私の髪質がまったく日本人らしくないせいらしい。天然パーマで、細くて、量が少なくて、腰のない猫っ毛。天然パーマと言っても、クリクリのカールで覆われていたのは子供時代だけで、今は長くしているせいもあり、一見ただの癖っ毛にしか見えない。ところがシャンプーしてブローなんかしようものなら、チリチリになってしまって美容師を手こずらせる。
 さらに猫っ毛(細くて柔らかい髪)のせいか、まったくパーマがかからない。かかっても、もともとのカールと相殺するのか、美容師が考えた形には絶対にならないのだ。おかげで、うまくいかないせいで美容師はだんだん不機嫌になるし、こっちは人の倍ぐらいの時間、臭い美容室に閉じ込められるし、ろくなことにならない。

 でまあ、そのうち、なんで高い金払ってまで気に入らない髪型にしなきゃならないのか疑問に思えてきて、それからはいつも自分で切っていたのだ。
 と言うと、これまた人にびっくりされるので言わないのだが、実は天然パーマのおかげで、案外かんたんなのだ。変にいじらず、そのままにしておけば(乾かすときも自然乾燥)、パーマなんかかけなくても自然にまとまるし、どうせもともと自然にカールしてあっちこっち向いてるので、切り方が不揃いでも気にならない。いつも長くのばしているので、切るのもかんたん。それでも、鏡すら使わずに、適当に勘だけでザクザク切って、3分で終わるのには、自分でもこんないい加減でいいんだろうかと思う。

 だから、もう美容院へ行く必要性をまったく感じなかったのに、なんで行くはめになったかというと、仕事帰りに駅でスカウトされちゃったのよね。夜遅く、改札を出ると、茶髪の若い男の子が「ちょっといいですか?」と寄ってきたの。というのは、普通キャッチセールスか宗教の勧誘だから、いつもなら見向きもせずに通り過ぎるのだが、なぜかこのときだけは立ち止まったんだな。それで話を聞くと、カットモデルをやってくれないかと言う。えー、美容室にはよく「カットモデル募集」とか張り紙が出てるけど、駅で勧誘してるのなんて初めてだ。それで、二つ返事で「いいよ」と答えてしまった。男の子はむしろびっくりしたみたいな顔していた。そりゃそうだよなあ。夜、女性にあんなふうに声かけたら、普通逃げられるわ(笑)。
 なんでそんな気を起こしたかというと、なんか最近煮詰まっていて気分転換をしたかったので、プロにシャンプーしてもらうだけでも気持ちがいいような気がしたから。自分で切る手間も省けるし、だいたいタダだしね。

 はい、本当にお金がなかった高校時代は、私はカットモデル専門でした。それも青山だの西麻布だのの、見るからに高そうな美容室にばかり出入りしていたのだが、それでもやっぱり気に入ったためしがない。
 でも今はそうしようと思わなかったのは、ああいうのは若い女の子じゃないとダメなんだと勝手に思っていたから。でも考えてみたら、美容院のお客は若い子だけじゃないし、髪に年齢関係ないよね。それでも、「おばさんでもいいのね?」と念を押した上で、あらためて予約を入れて行ってきました。
 行ったのは隣町の南砂町の美容院。わざわざ隣の駅まで来て捜してたのには驚いたけど、駅を降りて納得。同じぐらいの時間帯、西葛西は通勤客でごった返しているのに、ここはガランとしてひとけがない。ほんと、東西線は駅によってまるきり雰囲気が違うな。
 カットしてくれたのは、駅で声をかけてきた男の子だった。私は例によって変な頭にされるのを警戒して、いろいろ口出ししたのだが、「今の形のままで、先を切り揃えるだけですから」と、変に自信たっぷり。大丈夫かしら?
 だいたい、今のままって、これは私が裁縫ばさみでジャキジャキ切っただけなんだけど(笑)。それでも自分で切ってることがバレなかったのでけっこううれしい。でも、「いつもはどこの美容室利用してるんですか?」なんていう質問は適当にごまかす。
 見てると、毛先をボブカットのように揃えようとしているらしい。あー、むだなのに。どうせ自然に巻き上がって、あっちこっち向いちゃうんだから。ところがブローが終わってびっくり。まるでカツラでもかぶったように(と、私には思える)、上はきれいなストレートで、毛先だけがきちんと揃って内側にカールした髪型になっている! いつもくしゃくしゃ頭で過ごしている私は、こんなきちんとした髪にしてもらったのは初めてだと言ってもいい。
 もっとも、一度シャンプーしたらまた元に戻ってしまったけど。自分でいくらああいうふうにしようとしてもできないんだよね。さすがプロ。というか、見習い美容師にしちゃうまいじゃない! 考えてみたら、カットモデルというのは美容師にとっては試験みたいなもの。隣で先生が見てるんだからね。だから、細心の注意をもってやるし、ある意味、すごくおいしいかも。また美容院に行きたくなったらあそこでやってもらおう。

 これも前にも書いたかもしれないけど、髪は私の肉体の中で数少ない自慢できる部分だった。とにかく細くて柔らかくて手触りもいいので。色も薄めで、茶髪にする必要なんかぜんぜんないし。だからいつも長くのばしていたのだが、問題は白髪! そろそろ染めないとヤバいことになってきた。これも自分で染めようと思っていたが、なんかひどい失敗をしそうな気がするなあ。やっぱり美容院行かないとダメかしら?

 ところで、これまでずっと自分で切ったクシャクシャ頭だったのが、久しぶりにきちんとカットしてもらったので、みんな気づいてくれるだろうと思っていたのだが、誰ひとり気づきもしないし何も言ってくれない! プロがやっても、自分でジャキジャキでも同じかよ! と思うと、やっぱりお金払ってまで美容院行くのがいやになるのだが。 

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