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『氷と炎の歌』のテレビシリーズ 『ゲーム・オブ・スローンズ』について

 『氷と炎の歌』のフォーラムで、テレビ化の話を聞いたのは、もうずっと前の話だ。
 昔の私だったら、大好きな作品が安っぽいテレビドラマなんかに!と、絶対拒否!の姿勢だっただろう。しかし、ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リングス』を見て以来、気が変わった。『指輪物語』は私にとっては『氷と炎の歌』以上に深く長い思い入れのある作品で、にもかかわらず、この私が(不満は数あれども)満足したというだけでもたいしたもんだ。昔は純粋に技術的な面でSF以上に不可能だったファンタジーの実写化が、CGや特撮技術の進歩によって可能になったことを、つくづく思い知らされた映画だった。
 もっとも、その後同じウェタが手がけた『ナルニア国物語』の第一作を見てがっかりし、やっぱり技術だけの問題じゃなく、センスも大事ってことを痛感したけど。『ナルニア』だって美術や技術はすばらしいし、いちおう原作にも忠実だったのにね。なんか違う。まるで似て非なるものなんだな。そう思わせなかっただけでも『LOTR』は偉大だった。

 それでは『氷と炎の歌』はどうだろう? テクニカルな面は『LOTR』を見た後では何にも心配していなかった。あれができるなら、クリーチャーとか異世界っぽい景色の少ない『氷と炎の歌』の特殊効果はずっと少なくてすむし、アメリカのテレビドラマはすごいお金をかけられるのは知ってたから。
 むしろそれ以外の面が心配。とりわけ、あれだけ登場人物の多い、錯綜したプロットの超大河ドラマをテレビでできるのかってことが。『LOTR』でさえ、話が複雑すぎ、登場人物が多すぎてわけがわからないって人が多いんだからねえ。

 映画じゃなくてテレビだってのはむしろ好都合。映画でできる長さは『LOTR』の3部作が上限でしょう。あれだって2時間の映画3本一気撮りという常軌を逸した離れ業で、ぎりぎりどうにかできたんだから。
 しかし、こちらは全7巻で、しかもまだ5巻までしか出版されていない。しかもその1巻が『LOTR』の1巻の2倍以上の長さがある。(『ハリー・ポッター』の原著と較べれば3倍以上ある) これはとてもじゃないが、映画では無理。だいたい、子役が多いからうかうかしていたら、みんな年取って30才になってしまう(笑)。
 その点、テレビは早撮りは得意技だし、週1時間ずつ流すことができるし、トータルタイムも映画よりずっと長くできる。問題はやっぱりセンスだよねえ。

 最初はBBCが手がけるという噂もあって、「やったー!」と思ったんだが、その後HBOというアメリカの制作会社が単独で制作することになった。ええ〜、ふあ〜ん‥‥
 いや、私はアメリカTVドラマで育った世代だから、アメリカのドラマの質の高さは誰よりよく知ってるし、熱狂したドラマもいっぱいあるんですけどねえ。だけど、ものが『氷と炎の歌』だからねえ。
 もっとも、それを言ったら原作者のジョージ・R・R・マーティンだってアメリカ人なんだが、私は今でもこれを書いたのがアメリカ人なのは奇跡と思ってるよ。どころか、これを書いたのがイギリス人じゃないのは一生の不覚だとさえ思ってる。それぐらいイギリス的・ヨーロッパ的な小説なのだ。
 それに対して、イギリスはやっぱりファンタジーの本場だし、BBCはコスチューム・プレイ(時代劇)には定評があるし、だいたいここにいっぱい出てくる中世風の町とか城なんか、セットを作らなくても現物で代用できるという利点がある。うわーん! なんでBBCにしてくれなかったのよ! マーティンのばかー!!

 とりあえず、他のすべてはマーティンに免じて妥協しよう。だけど私が絶対妥協できないのはキャストである。私の愛するキャラクターたちをアメリカ人俳優が演じるのはぜーったいにいや!! あり得ない! 死んだ方がいい!
 いや、顔の問題じゃないよ。顔なんて私が見たって英米人の差なんてそんなにない。(でもやっぱりある人はあるけどね。露骨なアメリカ顔とか) 問題はセリフ回しだ!
 私はアメリカ語を聞くだけで頭が痛くなるほど嫌いなのだが、あのキャラクターたちがアメリカ弁で話すと考えただけで気が遠くなる。これは英語を知らない人にはなかなかピンとこないだろうが、たとえばあなたのあこがれの男性、誰でもいいが、その白馬の王子様が、いきなり名古屋弁でみゃーみゃー話し出すところを想像してみて欲しい。(名古屋の人すみません。単に語呂がいいから使っただけで、他意はありません。むしろ私の耳には、アメリカ弁はレロレロしていて、大阪弁のように聞こえる)
 ニュージーランド人のピーター・ジャクソンは、それを多国籍軍で乗りきった。まあ、確かに『LOTR』はいろんな種族が出てくる話だし、いろんな訛りがあっていい。でも私の頭の中ではウェステロス(というかその北部)は完全にイギリスなんだよ。しかも原作は擬古文調の典雅な話し方なのに、それをアメリカ弁でやられたら‥‥
 だけど、長期ロケができる映画なら、長期間英国人俳優を拘束することもできるけど、テレビじゃ無理だろうなあ。それ以前に、アメリカの視聴者が英国訛りばかり聞かされることに耐えられないだろう。映画だってそうなんだから、ましてお茶の間であらゆる人が見るドラマではなあ。したがって、もちろんイギリス役者も出るだろうけど、メインキャストは絶対アメリカ人で固めるはず。変な若手のアイドルスターとかがジョンやロブを演じるとしたらやだなあ‥‥と、もう悪い方にしか想像できない。

 そのうち、どんどんトレーラーとかスチルとかが入ってきて、役者陣の写真見て、「おっ、いいじゃん」と思ったりもしていたんだけど、私はなるべくそういうのは見ないようにしていた。だって変に期待しちゃったら、本編を見てのがっかり感がひどすぎるじゃない。そうこうするうち、オンエアが始まって、IMDbにキャスト一覧が載っていたので見たら‥‥

 うっそー! 全員イギリス人やんか! ざっと見たところ、50人は下らない主要登場人物のうち、非イギリス諸島人は、ティリオン(Peter Dinklage)がアメリカ人、ジェイミー(Nikolaj Coster-Waldau)がデンマーク人、ドロゴ(Jason Momoa)がハワイ人なだけだ。しかもティリオンは小人だから、もともと選択肢がそんなにない。ジェイミーは金髪碧眼が売りだから北欧人でもおかしくない。ドロゴはもともと「外国人」で「原住民」だからハワイ人はぴったりというわけで、これなら私でも許せる。
 それ以外はぜーんぶイギリス人。これだけ英国率高いアメリカドラマは映画でも見たことがない。(ちょっと英国っぽいアクセントで話せるので)よく使われるオーストラリア人やカナダ人もまったくいない! これだけ見て、私は速攻でDVD注文しましたね。

 届いたのは立派な箱入りの5枚組のボックスセット。全10話が1クールで、ちょうど1巻の終わりまでの話が収められている。すると、全部で7クールかける気か。たまたまヒットしたから良かったようなものの、外れてたらどうなってたんだろ? もちろん途中打ち切り。(アメリカのテレビは視聴率に関しては恐ろしく過酷) なんとか最後まで人気が続いてくれればいいが。というか、マーティン、早く続き書かないと子役がマジでみんな30になってしまうよ! 4巻以降、異常にペース落ちたからすごく心配。

 とりあえず見始めたが、私はもう冒頭の「ザ・ウォール」やウィンターフェルの風景だけでノックアウト。私が思い描いていた通りの風景なんだもん。
 これは『LOTR』でも感じたことだが、それもそのはず。そういう私のイメージというのは、挿絵やイラストが元になって構築されているのだが、映画やドラマ製作者もその絵やイラストを下敷きにしてデザインを起こすんだから、イメージ通りで当たり前なのだ。それはわかってはいるんだけど、これまで心の中と夢の中だけで思い描いていたウェステロスがまざまざと眼前に浮かび上がってくるのは本当に感動。寝るのも忘れてテレビにかじりついてしまったという次第。

 というわけで、リビューに行きたいんだけど、なにしろ原作自体がまだ現在進行中の作品で、この先何がどうなるのかもわからない。おまけにとてつもない大河ドラマなんで、ストーリーをまとめるのも容易じゃない。
 そこで、今のところは登場人物ごとの批評と感想ででお茶を濁すことにした。私にとっては「顔」も大切なので、元のイメージと役者のスチルの写真も添えて。というところで、以降はトップページからどうぞ。
 

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