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『氷と炎の歌』 キャラクター評

Jaime Lannister ジェイミー・ラニスター

想像上のジェイミー 『GoT』のジェイミー

その生い立ち

 キャスタリーロックのタイウィン公の長男として産まれる。サーセイは双子の姉、ティリオンは弟。双子の結びつきは幼少時から強く、やがてそれは性的なものに発展するが、母に見つかって引き離される。
 ジェイミーは幼い頃から武芸に秀でた才能を見せ、13才で武芸大会で優勝して以来、さまざまなトーナンメントで金星を挙げている。15才の時、キングスウッドでの戦いの功績により、サー・アーサー・デインから騎士の称号を受ける。
 タイウィンはジェイミーをリヴァーランのタリー公の娘、ライサ・タリー(カトリンの妹)と結婚させようとするが、それを拒否してエイリス王のキングスガードに入ってしまう。(キングスガードは王の親衛隊。メンバーは一生王に忠誠を誓い、妻帯を禁じられている) それは望まぬ結婚から逃れ、サーセイのそばにいるための方便だったのだが、タイウィンがサーセイを連れてキャスタリーロックに帰ってしまったため、そのもくろみは破れる。
 その頃、エイリスの狂気は歯止めがなくなり、エイリスにそば近く仕えていたジェイミーは、王が妻を虐待する様子や、リカードとブランドン・スターク(エダードの父と兄)を残虐に殺す場面を目の当たりにして苦しむ。反乱が起きたとき、エイリスはまだどちらにつくか迷っていたタイウィンに対する盾として、ジェイミーをそばに置いていた。しかし、タイウィンの裏切りが発覚し、エイリスが「おまえの父の首を取ってこい」と命じたとき、ジェイミーは王を殺し、以降、「キングスレイヤー(王殺し)」の異名を取る。
 その後ロバートが王となり、サーセイがその后となったため、ジェイミーはキングスガードとしての任務を果たしながら姉との逢い引きを続け、サーセイにジョフリー、マーセラ、トーメンの3人の子を産ませる。しかし、王とともにウィンターフェルに滞在していたとき、サーセイとの情事をブランに目撃され、「愛のために」ブランを窓から突き落として半身不随にしてしまう。
 そしてロバートの死後に起きた「五王の戦い」の中で、ブランの兄ロブに負けてスターク家の捕虜となるが、他の人々同様、運命のいたずらに翻弄されて思わぬ運命をたどることに‥‥
 たぐいまれな武勇の才と華やかな美貌、そしてウェステロス随一の富の相続者であるジェイミーは、世が世ならば全国の女性の羨望の的としておもしろおかしく生きて行けたはず。なのに、戦乱と、異常な主君や異常な父や姉によって、ジェイミーの人生はめちゃくちゃに引っかき回され、ついには戦士としては致命的な右手を失うに至る。しかし、運命の波にもまれてサーセイがだんだん常軌を逸していくのに対し、ジェイミーは逆にまともになっていくようなのが不思議。

『氷と炎の歌』のジェイミー

憎まれっ子ナンバーワンから正義の人へ

● ジェイミーぐらいガラッと評判が変わったキャラクターはいないよね。とにかく第一巻の始めで、出てくるなり姉とやってる上に、みんな大好きかわいいブランを突き落として片輪(すいませんが、原語でもそのまんまなので訳でも使わせてもらいます)にしちゃうという極悪非道で、読者から総スカンを食った(笑)。
◆ せっかくのハンサムなのにひどいなあとは思った。
▲ 私は最初から好きだったけど?
★ それはあなただけでしょ!

良くも悪くも男の子

▲ でもジェイミーはわかりやすいよ。サーセイの項目で述べたように、双子の姉が良くも悪くも女そのものなのに対して、ジェイミーも男そのものなんだ。とにかく人をぶった切るのが好きだし得意で、この時代だから物騒な話だけど、要するに自分の強さや技術をひけらかすのが好きってこと。ジェイミーが現代に生きていたら、きっと何かのスポーツ選手か、カーレーサーとかになってたはず。
★ 極端な自己中で自分のことしか考えないってのも、男の悪い面だけど、そのものだよね。男っていうか、聞き分けのない男の子みたい。
◆ 確かに幼児的なところはあるね。そのブラン殺害未遂にしても、たまたま見つかっちゃって、それを言いふらされたら自分たちが困るから殺す。相手が子供でも、まったく躊躇しないし、ひどい話だけど悪意さえない。邪魔なハエを叩き潰す程度の良心の痛みしか感じてない。
● サーセイですら「あんた、バカじゃないの!」とあきれてるのに。
▲ 脳筋って言葉がこれほど合う男はいないな。見かけがゴリラじゃなくハンサムだからだまされるけど。
◆ 生まれついてのウォリアー=戦士で、戦ってる時がいちばん幸福なんだよね。
▲ あと、サーセイとやるのが好き。セックスと暴力。ほんとに男そのものだわ。

キングスレイヤー

◆ そういう直情的な後先見ない性格は、キングスガードに入ったところでも見えるよ。キングスガードの一員になるのは、非常に名誉なことでもあるけど、その一方で私生活のすべてを犠牲にして、一生王に仕えるという誓いを立てることなのに。
▲ ぜーんぜん気にしてないね。単に結婚を強制されるのがいやなのと、サーセイと離れたくない一心で誓いを立てちゃった。
★ おかげで自分も苦しむことになるけどね。
◆ これは父のタイウィンにとっても相当痛かったはず。大事な跡取り息子なのに。
● キングスガードって領主になれないの?
◆ 詳しいことは覚えてないけど、王に仕えながら自分の領地を治めることはできないじゃない。だから城とか領地なんて持てないんじゃないかな。かといって、タイウィンとしてはティリオンにキャスタリーロックを譲る気は毛頭ないし、頭を抱えたはず。
★ そういうわけで、キングスガードの誓いというのは非常に重いものなのに、邪魔になると王もあっさり殺してしまう。

▲ まあ、あれはジェイミーばかり責められないけどな。エイリスは殺されて当然の王だったし、自分の父親と王とどっちを選ぶかと言われれば、ジェイミーならためらうことなく王を殺すと思う。
● ていうかむしろ、エイリスほど憎まれた王はいなかったわけだし、ジェイミーのしたことは国民全員に利益をもたらす行為だったんだけど、ヒーローになるどころか「キングスレイヤー」と呼ばれて蔑まれる。
◆ そりゃだって、相手が悪人だろうがなんだろうが、守ってやる義務のある男を自ら手を下して殺してしまったわけだからねえ。あのときエイリスのそばにいたのはジェイミーだけで、エイリスにとっては彼が唯一の盾だったのに。
★ おかげで以降、誰もジェイミーを信頼しなくなるんだよね。ほとんどあらゆる残虐非道がまかり通るあの世界で、「誓いを破る」ことが大きなタブーになってるのがおもしろいね。
● それにジェイミーは態度悪いから憎まれるんだよ。あのときだって、エダードが王座の間に入っていったら、死んだエイリスの横でジェイミーが鉄の王座にふんぞり返っていたわけだから。
▲ だからといって、王座を狙う気なんてまるっきりないんだけどね。彼はサーセイのそばにいて、剣を振り回していれば幸せなんで、権力や富なんて眼中にない。
◆ そこがサーセイと意見が一致しないところ。サーセイは権力に取り憑かれてるから。
★ ていうか、あの姉弟、セックス以外に意見の合うことなんてなくない? そのセックスについてもけっこうもめてたけど。

サーセイとの関係

ジェイミーとサーセイ
★ そこで気になるサーセイとの関係ですけど。
● これもサーセイとはまるで対照的。他の男とも寝ているサーセイとは逆に、ジェイミーはひたすら彼女に操を立てて、他の女には目もくれない。
▲ でもジェイミーはサーセイもそうだと思ってたんでしょ。「あの人は酔っぱらって寝てしまうだけ」というサーセイの言葉を信じて、夫とすらやってないと信じてたみたいだけど、絶対やってるよな。
◆ たぶんサーセイが初めての女だし、他に女を知らないってことだよね。すごいなあ。
▲ だから子供みたいに、めちゃくちゃ純粋で一途なところもあるんだよ。ジェイミーはほんとにサーセイが好きなの。だけど、サーセイのほうはそこまで彼を愛していない。少なくとも我が子を愛するほどは愛してないし、どっちかというと自分と子供を守ってもらうためにエサをやってキープしているだけ。
★ なんかかわいそうになってきた。ここまで相手に対する態度がちがうところで、この2人の破局は見えてたんだけどねえ。

▲ だから“A Feast for Crows”のラストで、ついにジェイミーが姉を見捨てたときはショックだったよ。
● あれ、ほんとに見捨てたの?
▲ だって、あれに続く“A Dance with Dragons”では、サーセイのことなんて何にも触れてないし、何もしてないよ。
◆ うん。とうとう進退窮まったサーセイは、ジェイミーに宛てて助けを求める手紙を書くんだよね。この手紙がまた哀れで心を打つもので。ところがそれを読んだジェイミーは返信は不要だと告げて、手紙を燃やさせる。
▲ とうとう本当に怒らせちまったな。
★ そこまでジェイミーを怒らせたのはティリオンなんだけど。ティリオンがティシャの一件にジェイミーがからんでいたことを知って、腹立ちまぎれにサーセイの浮気をバラし、ついでに道化のムーンボーイとも寝ているなんていう嘘を付いたのをジェイミーが真に受けてしまって、本気で怒ってしまった。
● つまりジェイミーの身から出たサビがティリオンを苦しめ、お返しにティリオンがジェイミーを苦しめようとしたら、それが誰よりもサーセイを苦しめる結果になってしまったと。因果な兄弟たちだなあ。
◆ この因果が巡る様子が、『氷と炎の歌』の醍醐味なんだけど。

ティリオンとジェイミー、ブリエンヌとジェイミー

▲ 悲しいことだよねえ。というのもティリオンに対するジェイミーの態度こそは、彼が優しい心も持っているという証明だったのに。
◆ できればティリオンの顔なんて見たくもない、早く死んでほしいと思っている実の父や姉はもちろん、世界中がティリオンを嘲笑し、憎む中で、ティリオンの味方はジェイミーだけだったのに。
● ティリオンも唯一自分を愛してくれる人間を傷つけてしまったんだよねえ。
▲ でもティリオンが好きってことは、世間の因習や外見に曇らされない目を持っているということでもある。いいところはもともとあったんだよね。
◆ それで何がジェイミーを変えたかというと、やっぱりブリエンヌを知ったことが大きいと思うけど、これはブリエンヌの項目に書こうと思うので、ここでは省略。
★ サーセイとつき合うってことは毒を吸い込んでるようなものだからさ、あらゆる面でサーセイと正反対のブリエンヌが強烈な解毒剤になったのは間違いないね。
▲ あと、キングズガードに入ったことも。さっきから書いてるように、ジェイミーはまるで不純な目的でキングズガードに入ったんだけど、そこで過去の偉大な騎士たちの業績に触れて、自分もそうなりたいと思い始めたみたい。
◆ 典型的な偽悪者ってのが私のジェイミーに対する印象だな。ワルぶってるけど、実はいい人。
★ いい人が子供殺すか!
◆ まあ、あれは若気の至りってことで。

★ で、結論はやっぱり‥‥
▲ ジェイミーはステキだってことで。
★ “A Dance with Dragons”のラストではどうやら罠にはめられたようで、命も風前の灯火ですが?
● たぶん助かるよね? ここでブリエンヌとジェイミーを殺したらマーティン許さない!

予言の行方――ジェイミーはサーセイを殺すのか?

◆ 最後にやっぱりあの予言は実現するのかを考えたい。
▲ 今の展開だと十分あり得るね。
● でもそれだと少なくともサーセイを殺すまではジェイミーも生き延びるってことだよね。ブラザーフッドに殺されることはないってことだよね。
★ ところがどこかに、「産まれたときもいっしょなら死ぬときもいっしょ」みたいなセリフがあったのが気になるんだけど。
◆ それっていかにもありそうな気がする。なんだかんだでこの2人は運命共同体だし。
▲ ところがサーセイはもう長くないような雰囲気だし。
● 別々の場所で同時に殺されるっての? それはあまりにかわいそうだよお! せめて死ぬときはいっしょにしてあげたい。ていうか殺すな!
▲ そこでどんでん返しで、やっぱり「弟」はティリオンだったということも考えられなくはないよ。
★ どうだろ? ティリオンは国外逃亡しちゃったし、そうすぐには帰ってこられないでしょ。
▲ あるいはもっと意表を突いて、予言なんて嘘っぱちだったということもありうる。
◆ 確かにこの小説はなんでもありすぎて、ぜんぜん先が読めないわ。もちろんそこが楽しいんだけど。
★ でもジェイミーがサーセイを殺すとしたら、よほど思いあまってのことだろうね。浮気なんてレベルじゃなく、もう絶対許せないようなことをサーセイがするんでなくちゃ。
● サーセイとブリエンヌのどっちかひとりだけ助けられるという選択を迫られて、ブリエンヌを選んだりして。
▲ ありえない!と言いたいところだけど、もう何があってもおかしくない。

『ゲーム・オブ・スローンズ』のジェイミー

◆ それじゃあ次にテレビでジェイミーを演じたについて。
▲ 1970年生まれのデンマーク人俳優。
★ なんて読むの?
◆ デンマーク語の名前まで面倒見切れないよ。英語だけでも苦労してるのに。
● それにしちゃ英語うまいね。デンマーク人も英語得意なのか?
★. 2001年からアメリカを本拠に仕事してるってIMDbに書いてあるから、そこで鍛えられたんじゃないの? リドリー・スコットの『ブラックホークダウン』や、『キングダム・オブ・ヘブン』にも出てたって。で、どうなんですか?
◆ ハンサムだよね。向こうの連中の考える典型的なハンサム。四角いあごで、あごにへこみがあって。
▲ 甲冑姿が似合うなあ。さすがバイキングの子孫。
● 『GoT』以前のジェイミーのイメージって、上に貼ったMichael Komarckのイラストだから、最初にスチルを見たときは、ほんとにあの絵そっくりだなあと思ったよ。ただ、私の好みの男じゃないだけで。
囚われのジェイミー
▲ と思っていたのだが、そのジェイミーが虜囚になって、血と汚物にまみれた姿になると、これがなんとも色っぽいんですよ、あなた。
★ 言うと思った。
▲ やっぱり男はこうでなくちゃ。ジェイミーががぜん魅力的に見えるのって、原作でも捕虜になってからじゃない。
● だったらこのあとまだまだお楽しみが待ってるよ。ヴァーゴ・ホートに捕まって拷問された上、手を切り落とされるんだから。
▲ もちろんそれが楽しみで楽しみで!
◆●★ ‥‥
◆ 私はやっぱり色男は手があったほうがいいけどなあ。
★ だけど、確かに手を失ってから、よけいいい人になったよね。人の痛みがわかるようになったのかな。
● 少なくとも障害者という意味でティリオンと同列になったよね。父親からも疎まれるようになったし。

◆ じゃあ、続きはブリエンヌのところで。
● あ、わりとどうでもいいことで言い忘れたけど、ジェイミーもサーセイも金髪には違いないけど、かなり暗い色の金髪だよね。これはもっと明るい色にしたほうがよかったし、ジェイミーの鎧も、サーセイのドレスももっとキンキラでも良かった気がする。「黄金の双子」って感じを強調するためにも。
★ 金のウンコをするという評判のラニスター家ですものね。ちなみにティリオンも金髪と青い目だけは家族と同じ。
◆ あえてあんまり明るい金髪にしなかったのは、デナーリスとの混同を避けるためではないかな。
▲ だからあっちは、アルビノみたいな真っ白な髪にすればよかったんだよ。

1m89

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