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『氷と炎の歌』 キャラクター評

Cersei Lannister サーセイ・ラニスター

想像上のサーセイ 『GoT』のサーセイ

その生い立ち

 エイリス・ターガリエンの「王の手」を勤めたタイウィン・ラニスターの長女。ジェイミーとは双子で瓜二つ。9才年下の弟のティリオンが生まれたときに母がお産で亡くなる。
 サーセイは少女時代、怪しげな占い師の老婆から予言を聞く。それによると、彼女は王と結婚し、3人の子供をもうけるが、3人とも彼女より早く死ぬ。彼女自身は「より若く美しいクイーン」によってその地位を追われたあげく、valonqar(ヴァリリア語で弟)の手にかかって死ぬ運命にあるという。同時に占ってもらった友達が、占い通りの非業の死を遂げたために、サーセイはすっかりこの予言を信じ込む。
 父のタイウィンは娘をエイリスの長男であるレイガー王子に嫁がせるもくろみだったが、エイリスはこれを拒否。レイガーはマーテル家のエリアと結婚する。これに続くロバート・バラシオンの反乱で、タイウィンは王に反旗をひるがえし、ターガリエン王朝は滅びるが、サーセイは新たな王となったロバートと結婚させられる。彼女はその後3人の子供を授かるが、その子供らの父親はすべて弟のジェイミーだった。そしてそれが発覚しそうになると、ロバートに密かに毒を盛って殺す。
 「父」の死後、王位を継いだ長男ジョフリーの摂政として、サーセイは国を牛耳ろうとするのだが、エダード・スタークの処刑をきっかけに、ロバートの弟たち、スタニスとレンリーをはじめとする諸侯が反旗を翻し、ウェステロスは戦乱の嵐に巻き込まれていく‥‥
 この小説きっての悪女のはずのサーセイだが、その美貌と恵まれた出自にもかかわらず、やることなすこと裏目に出て、ひたすら坂を転げ落ちるように転落していく様子は気の毒でさえある。あの予言が実現するのかどうかも含めて、その運命は風前の灯火。

『氷と炎の歌』のサーセイ

◆ サーセイはねえ、かわいそうな人なんだよ。あの予言もそうだけど、普通に女としての幸せという観点からしてもかわいそうすぎる。
★ レイガーってのは、強くて美しくて優しくて高貴で、すべての女のあこがれのプリンス・チャーミングだったんだよね。そのあこがれの王子様と結婚して女王になることを少女時代からずっと夢見ていたのに、レイガーは他の女と結婚したばかりか、あっさり殺されちゃって、彼女自身は、よりによってそのレイガーを殺した憎い男のところへ嫁がされる。
● それでもクイーンになるのが夢だったんだから、そのためには妥協したと思うのよ。当時のロバートはまだ太ってなくて、ハンサムだったそうだから。ところがロバートは死んでしまったエダードの妹、リアナ・スタークのことが忘れられなくて、サーセイには愛情のかけらも持っていないし、それを公然と表に出して、臣下の人々の前で彼女を愚弄したりする。妻を抱こうとするのは、酔っぱらって正体をなくしたときだけ。それも彼女が痛がろうが、おかまいなしのレイプ同然の性行為しかできなくて。
◆ これはきついよねえ。
▲ エダードとカトリンだって、べつに愛し合って結婚したわけじゃない、露骨な政略結婚なのに、あちらは年を取っても熱々なのもシャクだったろうねえ。
★ あちらとは人格が違いすぎますからね。

▲ サーセイとジェイミーの近親相姦が取り沙汰されるけど、あれはそんな真剣なものじゃなかったと思うんだよね。
● 「ターガリエンは代々兄妹で結婚していた」と言い訳してるけど、この人たちもターガリエンの血を引いてるし。
★ 小さい頃から姉弟で禁じられた遊びをやっていたのは事実だけど、それって子供同士の戯れに近かったと思うんだ。サーセイがジェイミーをベッドに迎え入れたのは、やっぱりロバートに相手にされない寂しさをまぎらすためだと思うよ。回りじゅう誰も信じられない、陰謀渦巻く宮廷で、心を許せるのは双子の弟だけだったはずだし。
▲ 王妃としては当然世継ぎを求められるけど、ロバートの子供は絶対に産みたくないというのもあっただろうな。
★ 実際、子供が産まれてしまうと、わりとジェイミーにも冷たかったしね。ジェイミーが彼女を欲しがっても冷たく拒否したりして。彼女は他の人間同様、弟を利用しただけだと思う。
◆ でも子供たちのことは溺愛してたんだけどね、それが墓穴を掘った。
● 計画では、ロバートさえ亡き者にすれば、事実上、王座は彼女一人のものだったのにねえ。
▲ しつけの悪いガキのために、ここまで零落するとは‥‥

▲ あの異常なまでの権力欲は?
◆ これはやっぱり父親に対する反抗心でしょう。数分の差とは言え彼女が長子なのに、ジェイミーは帝王教育を受ける一方、女は通貨みたいに嫁にやられるだけで、父親は彼女にそれ以上の価値はまったく見いだしてない。何度も「自分が男だったら」って言ってるでしょ。彼女は女になりたくなかったんだと思う。
● でもそのくせファザコンだよね。タイウィンのことは偶像視していて、自分は女タイウィンだと思ってる。
▲ ところがタイウィンにいちばん似てる(特に頭の中味が)のはティリオンだったという悲劇。
◆ 権力を握るために奮闘するのも、父に認めてもらいたいからというのもあるね。なのに、それが全部裏目に出てしまう。
★ 王座を手にすることは、父親だけじゃなく男社会への復讐だったのかも。
▲ あと、ラニスターとしてのプライドも。タイウィンがレイガーの嫁にと申し出たとき、エイリスは「大事な跡取りを家来の娘なんかと結婚させられるか」と言って断ったわけでしょう。この屈辱を晴らすためには何が何でもナンバーワンになるしかなかった。
◆ マーテル家よりラニスター家のほうがよっぽど金も力もあるのにね。

◆ だいたいサーセイと言えば、弟とは寝るは、従兄弟とは寝るは、ケトルブラックみたいな卑しい出自の男とは寝るはで、まるで淫乱女みたいに見えるかも知れないけど、男好きっていうより、男を利用するのにセックスを武器にしているだけなんだよね。
★ どこかで、「そもそも男と寝るのは好きじゃない」って言ってた。
▲ それでレズに走ったのか? やっぱり性同一障害だったのか?
● そこまでは思わないけど(笑)、でもそういう性向のある人。ジェイミーと自分の性が逆だったらと嘆いていたけど、本当にその方が幸せだったかも。

★ でも作者意地悪だなあと思うのは、これだけかわいそうな人なのに、何から何までぶちこわすバカ女として描かれていること。ほんとバカ女の典型じゃない? 自分ではすごい賢いつもりで勝ち誇っていると、えらいしっぺ返しを食うという。親バカも目に余るし、なんかいわゆる女の浅知恵の集大成みたい。
◆ そういう人間くささがあるからサーセイは魅力的なんじゃない。
● マーティン女嫌い説というのがありましてね。デナーリスだって本来なら悲劇のプリンセスなのに、なんかあんまりな扱いじゃない。個人的にはカトリンに対する仕打ちがいちばんひどいと思うけど。なんで「母の鑑」みたいな良妻賢母が殺されたあげく化け物に!
▲ マーティンが女嫌い? それはないね。だって、男の悪役なんて単に極悪非道なだけじゃなく、マジで耐えられないほどキモいもん(笑)。女はまだみんな美人だし、同情できる部分もあるだけまし。
★ 要するにマーティンの登場人物は全員ひどいってだけ。そういう人なんです。
◆ いいじゃん! だから私たちはディズニー・プリンセスにはうんざりなんだって! こういう等身大の女の方がずっといいよ。
★ 等身大にしちゃめちゃくちゃデフォルメされてますけど。

◆ そお? でもこういう女性って、夫に毒盛ったり弟と寝たりしないだけでいっぱいいると思うよ。夫に不満を持つ妻から見たらヒロインじゃない? 
★ 私には縁のない話だけど、でもサーセイ大好きなんだよね。
◆ 好きっ! 私はこういう冷酷なクール・ビューティーが大好きなんだ! 男を手玉に取りながらも決して心を許さないどころか、冷酷に突き放すところがステキすぎる!
▲ 手玉に取ったつもりが結局その玉につまづくところを別にすればね。
◆ そういう愚かさや弱さも含めて好き。

● 確かに肉親であり愛人であるジェイミーにすら、しばしば冷ややかに接するところを見ると冷たい女に見えるけど、普段は意識的に隠してる、そうじゃない部分がふっと覗くところもいじらしいしかわいくない?
▲ たとえば?
● 何の場面だったか忘れちゃったけど、陰謀が上手く行って、うれしさのあまり思わずティリオンを抱きしめてキスしてしまう場面があったじゃない。そういうときのサーセイは若々しくあどけない少女のように見えて、それを見たティリオンが、「なるほど、これがジェイミーがいつも見ているサーセイなのか」と納得するところとか。
★ あれはむしろティリオンが不憫な印象が強かったけどな。一度も姉に(父親にも)愛されたことのない子供の嫉妬みたいなのが感じられて。
◆ あとさ、サンサがジョフリーに虐待されているのを平然と見ているから、ものすごい冷血の意地悪女と見えるけど、サーセイにとって、夫婦生活というのはそれで普通なんだよね。それどころか、サンサに向かって、いかにも同情した様子で、「かわいそうだけど、結婚すればこういうことばかりなんだから今のうちに慣れておきなさい」みたいなこと言うじゃない。私も最初はあれ聞いてなんてイヤミなんだと思ったけど、あれ、案外本音の親切心から言ってたのかも、と思うと、むしろサンサよりサーセイが不憫。

★ これって勧善懲悪の話じゃないけど、それでも天罰みたいなのがあって、サーセイは確かに悪女だけど、それに対する罰がひどすぎない?
◆ サディスト・マーティン全開だよね。特に“A Feast of Crows”での転落の極端さは。
● あの罰として全裸でキングスランディングの町を縦断させられるシーン、あれがテレビで見られると思うと胸が熱くなるわー。
▲ ありゃあひどいよな。だってキングスランディングの住民って、無防備な貴族を見ると、女はめちゃめちゃに強姦するし、男はバラバラに引きちぎってしまうようなケダモノばかりみたいだから(笑)。
● しかも、顔はきれいでも体はもうそろそろ衰えが目立つようになってきてる女の裸だからね。うふふふ‥‥これはエロいぜー!

★ で、やっぱり気になるのは予言の行方ですが。
▲ この小説の主な予言は、これまでのところほとんど的中してるからなあ。
★ でもサーセイは自分を殺すのはティリオンだと信じ切っているんだけど。
● だからこそ、実際はジェイミーに違いないと思ってたんだけど、なんかジェイミーはいい人っぽくなってきちゃったし、まだどう転ぶかはわからない。
◆ ああ、その続きはジェイミーの項目で。

『ゲーム・オブ・スローンズ』のサーセイ

素顔のLenaちゃん
● それではお待ちかね。テレビ版のサーセイを演じた(リーナ・ヘディ? あー、もう固有名詞は耳で聞かんとわからん!)についてですが。
★ 1973年、バミューダ島生まれの英国人女優。
▲ 1の時点で38才かよ。若いなー。
◆ いや、アップで見ると年相応に老けてはいるんだけど、それでも息を呑むほどきれいなんよ。好き好き大好き! 愛してる! このタイプの英国女が死ぬほど好きなの。
▲ ラニスター=ブロンドというと条件反射的に白痴美と思われて、だいたいイラストのサーセイもそういうビッチというかヴァンプ的に描かれることが多いんだけど、素顔を見たら黒髪で、しかもすごい知的な感じの女優さんなんで驚いた。
● わかるわー、◆がこのタイプの女性好きっての。『マトリックス』のトリニティータイプよね。すごい美人だけど、ちょっと中性的で、クールで、近寄りがたい感じで、それでちょっと年食ってるっての(笑)。
▲ この手のクール・ビューティー好みのルーツは、間違いなくシャーロット・ランプリングだね。
★ そう言われればキャリー・アン・モスに似てるかも。彼女はカナダ人だったけど。この人、『ターミネーター』のスピンオフ・テレビドラマ“Terminator: The Sarah Connor Chronicles”でサラ・コナーを演じてたんだってね。
◆ えーっ! 映画のサラ・コナーはあんなにブスなのに?!(でも実は筋肉女に変身した2のサラはすごい好き) 困った、あれも買わなくちゃ。
▲ 確かにこれだけ見ると時代劇よりはSFのほうが似合いそうな容貌だけど、中性的ならぬ中世的な舞台に置いても実にしっくりはまっているという。
◆ なんたってきれいだもの。エミリア・クラークなんて小娘は目じゃねーよ! どっちが女王らしいかは顔見りゃ一目瞭然じゃない。
▲ いや、顔で決めてるわけでは‥‥
● キッとなって怒った顔はすごくきつくてこわいんだけど、かわいい面もあって、むしろサーセイに対する印象は原作だけ読んでたときより上がったな。原作のイラストだとやっぱりこわい顔とか意地悪な顔にばかり描かれてたじゃん。
▲ そのため、サーセイの没落にもますます同情できると。
◆ 今から全裸シーンが楽しみすぎてどうしよう!

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